タイプ6とタイプ8の違いを整理しました。なお本記事はドン・リチャード・リソ、ラス・ハドソンの情報を参考にしてサイト管理人独自の観点から整理したものであり、正確な原典を知りたい方にはオススメできない記事です。ご注意下さい。他のタイプの比較:「エニアグラム 全タイプ比較」
タイプ6
タイプ6がタイプ8のような態度を取るとき、その背後には不安を隠し、安心感を得ようとする心理が働いています。彼らの超自我は「強さ」や「支配」を理想とし、その態度を取ることを促します。しかし、その結果、自己主張が中途半端で執拗になり、周囲から「見栄を張る臆病者」と見られ、反感を買うこともあります。ここでは、その背景や超自我の影響を探り、タイプ6のネガティブな側面についても考察していきます。
タイプ6がタイプ8的な態度を取る背景には、幼少期の厳格で支配的な環境が大きな要因として考えられます。感情を抑制することが求められたり、「弱さを見せてはいけない」と強さを強調される中で、「強くなければ生き抜けない」という価値観が身についていきます。こうした状況では、不安を感じながらもそれを隠し、威圧的な態度を取ることで自分を守ろうとします。厳しい家庭環境で「泣くな」と叱られ続けたり、競争の激しい環境で他者を圧倒することを学んだりすることで、タイプ6はタイプ8的な振る舞いをするようになるのです。
タイプ6の超自我は「強さが安全を確保する」と強く信じており、それが不安を隠す手段として威圧的な態度に繋がります。例えば、「自分のことは自分でやれ」と繰り返し教えられる中で、内面では「強さ=正しさ」と結びつき、威張る態度を正当化しようとします。職場で「俺が仕切る!」と強気に振る舞うタイプ6も、実際は不安を感じてそれを打ち消そうとしているに過ぎません。しかし、周囲の反応を気にするあまり、態度が揺れ動き、一貫性が欠けることがあります。タイプ8は過信から支配的に振る舞い、迷うことなく行動を起こしますが、タイプ6は内心の不安が表面に出やすく、結果として空回りしてしまうことが多いです。例えば、会議で強気な発言をしても賛同が得られないと急に黙り込むなど、典型的な行動として見られます。
こうした超自我の影響により、タイプ6のネガティブな側面が強調されることがあります。例えば、同僚の軽い冗談に「裏切られた」と感じてしまい、しつこく無視を続けたり、陰で愚痴を言ったりすることがあります。こうした執拗さは、不安による猜疑心が暴走した結果であり、本人は「正義を貫いている」と思っていても、周囲には迷惑な人物として映ることが多いです。タイプ8は反対者を屈服させるために徹底的に攻撃を仕掛けますが、タイプ6は一貫性に欠け、威厳が感じられない振る舞いに終始することが多いです。例えば、上司に叱られたとき、「見返してやる」と思いながらも、実際にはおどおどして謝ったり、ぎこちない笑顔で取り繕ったりすることがよくあります。タイプ8は失敗しても「次こそは勝つ」と自信を持って虚勢を張りますが、タイプ6は不安から急に従順になり、その変わり身の速さが情けなく見えることがあります。
このように、タイプ6がタイプ8のような振る舞いを取る背景には、幼少期の支配的な環境で「強さが安全を守る」という考えが影響していることがわかります。超自我によって強さを求められ、不安を抑え込むために威圧的な態度を取る一方で、自己不信から一貫性がなく、自然な振る舞いができません。タイプ8のように自信を持って支配することはできず、不安から生じるぎこちない強がりと脆さが表れ、結果的に「見栄を張る臆病者」として周囲を困らせることになります。
タイプ8
タイプ8は、一見すると自信に満ち、周囲を圧倒する存在に映ります。その堂々とした態度は、まるで誰にも逆らえない支配者のように感じられるかもしれません。しかし、その背後には単なる強さとは異なる一面が隠れています。強引な自己主張、しつこく粘る態度、そして時折見せる弱さ—こうした特徴は、表向きの威厳とは裏腹に、未熟さや滑稽さを際立たせます。タイプ8は、自分を大きく見せようとする一方で、無理をしている様子や無力さをさらけ出し、周囲に困惑を与えることがよくあります。
例えば、タイプ8は些細なことで執拗に絡むことがあります。職場で少し反論された程度でも、相手が折れるまで毎日嫌味を言い続けたり、仲間内で自分に逆らった人を無視し続けたりすることがあります。このしつこさは、単に力で押さえつけるのではなく、相手をじわじわと疲れさせる方法です。表面上は強そうに見えても、その執拗さが周囲をうんざりさせ、単なる厄介者になってしまいます。タイプ6も似た態度を取ることがありますが、それは不安からくる一時的な反応で、すぐに揺らぎがちです。一方、タイプ8は「自分が正しい」と思い込んでいるため、粘り強さがより陰湿で、長引く不快感を生み出します。
また、グループ内で自分を中心にしようとする傾向も見られます。例えば、自分に反論する人を「信頼できない」と決めつけ、周囲を巻き込んでその人物を孤立させようとすることがあります。威張る一方で他人を操ろうとする態度は浅はかで、指導者としての資質よりも単なる面倒な存在として浮かび上がってしまいます。タイプ6も仲間に頼ることがありますが、それは不安から来る自己防衛の手段であり、攻撃よりも自分を守ることを優先します。一方でタイプ8は、支配を維持するために積極的に敵を排除しようとしますが、その結果、周囲から距離を置かれ、影響力を持つ存在とは言えなくなります。
タイプ8の弱点が特に顕著になるのは、より強い人物に直面したときや、自分が不利な立場に置かれたときです。例えば、傲慢な上司の下で冷遇される場面を想像してみてください。普段は威張っているタイプ8でも、上司から軽視されたり、意見を無視されたり、雑務を押し付けられたりすると、抑えきれないストレスが溜まります。会議で自分の意見を聞いてもらえず、怒りを抑えきれずに机を叩きたくなることもありますが、上司の冷ややかな視線に黙り込んでしまうこともあります。この苛立ちの原因は、タイプ6のような一時的な不安とは異なり、「自分は特別だ」という思い込みが打ち砕かれたことから来ており、その感情は長引くことが多いです。
タイプ8は権力者に対して複雑な思いを抱きます。表面的には軽蔑しながらも、力の差を無視することができず、仕方なく媚びることがあります。例えば、上司の機嫌を取ろうと無理に笑顔を作り、過剰に賛同することがありますが、心の中では怒りを感じています。しかし、その媚び方は不自然で、すぐにバレてしまうため、逆に冷遇されることがよくあります。タイプ6は不安から素直に媚びることが多いですが、タイプ8はプライドが邪魔をして、中途半端な態度がかえってみじめさを際立たせます。権力者に認められたいという欲求と反発心の間で揺れ動き、その結果どちらにも従えない立場に陥ってしまうのです。
さらに、タイプ8が反逆に失敗した後、その弱さがより一層顕著になります。例えば、上司を出し抜こうと画策して仲間を煽り、反旗を翻そうとしても、最終的には圧倒的な力に圧倒されてしまいます。その後、「今回は運が悪かっただけだ」と強がって見せますが、声は震え、周囲の冷たい視線に耐えきれず、うつむいてしまいます。状況が不利になると、こっそり上司に取り入ろうとしながら、「次は絶対に負けない」と独り言のように呟くこともあります。この矛盾した態度は、かつての威勢とは真逆で、ただの騒がしい敗北者に見えてしまいます。タイプ6は不安から静かに従うことが多いですが、タイプ8は最後まで意地を張り、必死に足掻いた結果、無様な結末を迎えてしまうのです。
タイプ8の力強さには、タイプ6の強がりと似た特徴も見受けられます。どちらも他者に対して強い態度を示しますが、タイプ8は「自分が絶対に正しい」という信念が強いため、必要以上に派手でしつこくなることが多いです。タイプ6が不安から一時的に反応するのとは異なり、タイプ8の過信は日常的に陰険さや脆弱さを引き起こします。強い立場の人物に従わざるを得ない状況では、威張る相手がいないことへの無力感や、失敗後の情けない姿が目立ち、周囲をうんざりさせることがしばしばあります。このように、タイプ8の本当の弱点は、表面的な強さとは裏腹に、未熟さや滑稽さが浮き彫りになってしまう点にあります。
親との関係における位置づけ
共通点
幼少期の大人の影響
- タイプ6とタイプ8は、幼少期に接した保護者や養育者との関係が、その後の性格形成に大きな影響を与えることがあります。タイプ6は指導や規律を与える存在に依存する一方で、タイプ8は愛情や価値観を示す存在との絆を通じて自己を形成していきます。
防衛的な傾向
- 両者は、親との関わりから生じた不安や傷つきやすさに対処するため、防衛的な態度を取ることが多いです。タイプ6は恐れから身を守る一方で、タイプ8は支配されることを避けるために強さを示す傾向があります。
信頼への課題
- 親との関係が信頼感の形成に深く関わっており、タイプ6は他者に頼ることが多い一方で裏切りを恐れ、タイプ8は他者を信じることが難しく、自己の力を優先する傾向が強いです。これが両者の生き方に重要な影響を与えています。
相違点
親への依存の度合い
- タイプ6: 親や保護者に対して安全や承認を強く求めるため、依存心が強くなる傾向があります。支援が得られないと不安が増し、自己の独立が難しいと感じることがあります。
- タイプ8: 親や養育者との結びつきは存在しますが、依存を嫌い、自らの力で立つことを重視します。むしろ他者に頼るよりも自己の主導権を握ることを選びます。
権威への反応
- タイプ6: 親や権威ある存在に対して、服従するか反発するか、極端な態度を示します。保護者への忠誠心と敵意が行動に大きく影響します。
- タイプ8: 親を含む権威を認めず、自分が権威を持つ立場に立とうとすることが多いです。支配されることを避け、自己主張が強くなります。
感情と親との関係の結果
- タイプ6: 親との関係が不安や恐怖を強化することがあり、外部の支援を求める依存的な態度や、逆に反抗的な行動を生むことがあります。
- タイプ8: 親との関わりが強さへの執着を強め、感情を抑えることや他者との距離を保つ傾向が強くなることがあります。
タイプ6とタイプ8は、親との関わりにおいて「影響を受けやすい点」や「防衛的な姿勢」といった共通点がありますが、それぞれの向き合い方には大きな違いがあります。タイプ6は親や外部の支援に依存し、不安の中で揺れ動く一方で、タイプ8は親から学びつつも自己の力を頼りに独立を目指します。これらの違いが、両者の行動や世界との関わり方に深く影響を与えています。
注釈:ナランホの解釈によると、タイプ8にはエディプス・コンプレックスがあるとされます。エディプス・コンプレックスとは、幼児期に異性の親に対して愛情を抱き、同性の親に対して競争心や敵対心を抱くという心理的葛藤のことです。この葛藤は無意識のうちに異性の親からの愛情を得ようとすることから生じ、同性の親に対しては対抗心を抱くことが多いです。
参考資料
- Don Riso and Russ Hudson (1996), Personality Types: Using the Enneagram for Self-Discovery
- Misidentifying Sixes and Eights
- Naranjo, C. (2019). "Dramatis personae: Eneatipos, cine y literatura"(エディプス・コンプレックスについての注釈部分)