エニアグラムのタイプ間の違いについてドン・リチャード・リソ、ラス・ハドソンの情報を参考にして整理しました。なお、他の研究者(イチャーソやナランホ、トライタイプのキャサリン・フォーブルなど)とはタイプの定義が異なる可能性があるのでご注意ください。他のタイプの比較:「エニアグラム 全タイプ比較」
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タイプ6とタイプ8の特徴の整理
タイプ6とタイプ8は、攻撃性や対人関係のスタンスにおいて似て見えることがありますが、その動機や行動パターンは大きく異なります。以下の比較を通じて、両者を見分けるためのポイントを示します。
主要な動機づけ
- タイプ6: 安全と安定を求め、他者の支持や承認を得ようとし、自己の信念を正当化しようとする傾向が強いです。外部の枠組みや権威に依存して不安を軽減しようとすることが多いです。
- タイプ8: 自立と支配を重視し、弱さを否定する態度が顕著です。環境や他者に影響を与え、自分が無敵であることを証明したいという強い衝動を抱え、他者の上に立つことで自己を主張します。
違い
タイプ6は「安全を保ちたい」という不安に駆られた動機が強調され、タイプ8は「支配したい」という力を求める欲求が際立ちます。内面的な安心を求めるか、外部での優位性を追求するかの違いがあります。
健全な状態の特徴
- タイプ6: 他者を信頼し、自己信頼が高まり、責任感と誠実さを持って行動します。コミュニティで安定を提供し、協力を重視します。
- タイプ8: 自信を持ち、リーダーシップを発揮して他者を力づけます。高潔で決断力があり、他者を守りながら挑戦に立ち向かいます。
違い
タイプ6は協力と安定を大切にし、タイプ8は自己主張と影響力を重視します。協調性が高いか、主導権を握る姿勢が強いかに違いが現れます。
通常の状態の特徴
- タイプ6: 安全を求めつつも疑念を抱き、優柔不断になることが多いです。受動的攻撃的な行動を取ることがあり、警戒心が強いです。権威に依存しながらも、反発する矛盾した態度が見られます。
- タイプ8: 自己充足と支配を重視し、他者に従順を強要します。威圧的で対立的になり、他者を自分の意のままに操ろうとします。
違い
タイプ6は態度が揺れ動き、依存的な傾向が強く、タイプ8は一貫した強さと支配欲が顕著です。行動の源が不安に基づくか、力を行使することに基づくかが異なります。
不健全な状態の特徴
- タイプ6: 極端に依存し、自己不信に陥り、被害妄想的でヒステリックな行動を取ります。衝動的な攻撃性を示し、自己破壊的な行動に走ることがあります。
- タイプ8: 無情で暴力的になり、誇大妄想を抱きやすいです。敵を完全に排除しようとし、冷徹に行動し、最終的には破滅的な衝動に駆られます。
違い
タイプ6は不安から来る衝動的な攻撃が特徴で、タイプ8は計画的かつ冷酷な支配欲が際立ちます。攻撃性の背景にある感情(恐怖か自信)や屈服の有無が大きな違いを生みます。
自己認識と他者への依存度
- タイプ6: 自己不信が強く、自分の能力を信じることができず、他者や権威に依存することが多いです。関係が不安定になりがちです。
- タイプ8: 強い自我を持ち、他者に依存せず自立を貫きます。自己の力を過信し、他者を支配することで自己認識を強化します。
違い
タイプ6は自己不信と他者依存が基盤となり、タイプ8は自己過信と支配欲が基盤となります。依存するか支配するかが根本的に異なります。
タイプ6とタイプ8を区別するには、動機が安全を求めるものか支配を求めるものかを確認し、行動が不安から来る揺れ動きか、一貫した力の行使かを観察することが大切です。特に不健全な段階に進むと(健全度の段階6)、攻撃的な行動が似てきますが、その背景にある感情(恐怖や自信)、そして屈服の有無に注目することが重要です。
親との関係における位置づけ
共通点
幼少期の大人の影響
- タイプ6とタイプ8は、幼少期に接した保護者や養育者との関係が、その後の性格形成に大きな影響を与えることがあります。タイプ6は指導や規律を与える存在に依存する一方で、タイプ8は愛情や価値観を示す存在との絆を通じて自己を形成していきます。
防衛的な傾向
- 両者は、親との関わりから生じた不安や傷つきやすさに対処するため、防衛的な態度を取ることが多いです。タイプ6は恐れから身を守る一方で、タイプ8は支配されることを避けるために強さを示す傾向があります。
信頼への課題
- 親との関係が信頼感の形成に深く関わっており、タイプ6は他者に頼ることが多い一方で裏切りを恐れ、タイプ8は他者を信じることが難しく、自己の力を優先する傾向が強いです。これが両者の生き方に重要な影響を与えています。
相違点
親への依存の度合い
- タイプ6: 親や保護者に対して安全や承認を強く求めるため、依存心が強くなる傾向があります。支援が得られないと不安が増し、自己の独立が難しいと感じることがあります。
- タイプ8: 親や養育者との結びつきは存在しますが、依存を嫌い、自らの力で立つことを重視します。むしろ他者に頼るよりも自己の主導権を握ることを選びます。
権威への反応
- タイプ6: 親や権威ある存在に対して、服従するか反発するか、極端な態度を示します。保護者への忠誠心と敵意が行動に大きく影響します。
- タイプ8: 親を含む権威を認めず、自分が権威を持つ立場に立とうとすることが多いです。支配されることを避け、自己主張が強くなります。
感情と親との関係の結果
- タイプ6: 親との関係が不安や恐怖を強化することがあり、外部の支援を求める依存的な態度や、逆に反抗的な行動を生むことがあります。
- タイプ8: 親との関わりが強さへの執着を強め、感情を抑えることや他者との距離を保つ傾向が強くなることがあります。
タイプ6とタイプ8は、親との関わりにおいて「影響を受けやすい点」や「防衛的な姿勢」といった共通点がありますが、それぞれの向き合い方には大きな違いがあります。タイプ6は親や外部の支援に依存し、不安の中で揺れ動く一方で、タイプ8は親から学びつつも自己の力を頼りに独立を目指します。これらの違いが、両者の行動や世界との関わり方に深く影響を与えています。
注釈:ナランホの解釈によると、タイプ8にはエディプス・コンプレックスがあるとされます。エディプス・コンプレックスとは、幼児期に異性の親に対して愛情を抱き、同性の親に対して競争心や敵対心を抱くという心理的葛藤のことです。この葛藤は無意識のうちに異性の親からの愛情を得ようとすることから生じ、同性の親に対しては対抗心を抱くことが多いです。
外見上の共通点(誤認されやすい理由)
タイプ6とタイプ8は、エニアグラムにおいて異なる動機や心理的な特徴を持ちながらも、外面的な行動や特定の状況下での反応が似ているため、しばしば混同されることがあります。特に共通しているのは、攻撃的な態度や対人関係における強い影響力です。両タイプは、ストレスや困難な状況に直面すると、好戦的な姿勢を見せ、他者に対して威圧的な行動を取ることがあります。
例えば、タイプ6が健全度の段階6に到達すると「権威主義的な反抗者」として、不信感から攻撃的な態度をとり、反抗的に振る舞います。同様に、タイプ8もこの段階では「対立的な敵対者」として支配的な行動を強め、他者を圧倒しようとします。この段階では、両者ともに短気で威圧的な態度を示し、敵対的な印象を与えるため、外見的な違いを見分けることが難しくなります。
また、両者は自己主張が強く、環境に対する影響力を求める点でも共通しています。タイプ6は安全を確保するために他者に対して試すような行動をとり、時には権威に反抗しながら自分を守ろうとします。一方、タイプ8は自立と支配を貫くために、自らの意志を強く押し通すことを重視します。このように、両者の行動が似ているため、通常の状態では混同されがちです。
しかし、タイプ6の攻撃性は不安や依存への葛藤から生じ、態度が揺れやすいのに対して、タイプ8は一貫した自信と支配欲に基づいています。この内面的な違いを無視すると、両者を誤って認識する原因となることがあります。そのため、識別を行う際は、外面的な共通点にとどまらず、行動の背後にある感情や一貫性を慎重に観察することが重要です。
本質的な違い(決定的な見分け方)
動機の根源
- タイプ6: このタイプの行動を駆動するのは、不安を和らげ、安全を確保したいという強い欲求です。自分や周囲への信頼が揺らいでいるとき、他者からの支持や承認を得ることで安定を保とうとします。例えば、信頼できる権威やグループに依存し、自分の信念を正当化しようとする傾向があります。不安が中心にあるため、状況によって態度が変わりやすく、他者を試すような行動を取ることもあります。このため、周囲からの安心感が得られないと混乱し、自己不信に陥ることがあります。
- タイプ8: このタイプの根底にあるのは、自立と支配に対する強い欲求です。自分の弱さを拒絶し、環境や他者に対して影響力を持つことで、自分の存在を証明しようとします。他者に依存することはなく、むしろ自らが状況を掌握し、無敵であると感じることを求めます。例えば、他者を従わせることで自分の力を誇示し、どんな困難でも乗り越えられると確信しています。この姿勢は、不安ではなく、力への渇望から生まれています。
行動の一貫性
- タイプ6: 不安や依存心に基づく揺れ動きが行動に反映され、一貫性に欠けるのが特徴です。恐怖を感じると攻撃的になることもあれば、逆に強い相手には従順になったりします。例えば、権威に依存しながらも反発する矛盾した行動や、決断を先延ばしにする優柔不断さが見られます。この不安定さは、自己不信や他者への疑念が影響しており、行動の予測が難しくなります。
- タイプ8: 行動は自信と強い意志に基づいており、非常に一貫しています。自己主張を貫き、周囲を従わせるために揺るぎない姿勢を維持します。例えば、対立が生じても自分の立場を変えることはなく、むしろ抵抗を力で押し切ろうとします。この一貫性は、不安からではなく、自分の力を確信していることに由来しており、どのような状況でも支配的で断固とした態度を貫きます。迷いや揺れはほとんど見られません。
他者への姿勢
- タイプ6: 他者を試しながらも、最終的には圧力に屈することが多いです。不安から相手の意図を疑い、関係を試すような行動を取りますが、強く反対されると防御が崩れ、従わざるを得ない場合があります。例えば、他者に頼りながらも裏切りを恐れるため、関係が不安定になりやすいです。このような姿勢は、安全を求めるあまり、他者との距離感を常に探る傾向として現れます。
- タイプ8: 他者を圧倒し、支配することを基本的なスタンスとしており、抵抗されても屈することはありません。むしろ、さらに攻撃的になり、立ち向かう姿勢を強めます。例えば、他者に従わせ、自らの保護のもとに忠誠を誓わせることで力を示します。他者を試す必要はなく、意志を貫くことが最も重要であり、関係は一方的で対立的なものとなりがちです。屈服することは彼らの自己認識とは相容れないため、決して受け入れません。
攻撃性の起源
- タイプ6: 攻撃性は、不安や押し込められたくないという防衛反応として現れ、衝動的で非合理的になりがちです。例えば、他者からの圧力を感じると突然怒りを爆発させたり、恐怖を隠すために威圧的な態度を取ったりします。この攻撃性は、内面の混乱や自己不信が引き起こすものであり、状況によって強まったり弱まったりします。不安を補うための手段であるため、計画性には欠けることが多いです。
- タイプ8: 攻撃性は、目的達成のために冷静に力を行使するもので、支配力を強化するために戦略的に使われます。例えば、敵対する相手を徹底的に打ち負かすために計算しながら行動し、自分の優位性を示します。この攻撃性は、不安からではなく、自信と支配欲に基づいており、衝動的ではなく意図的に発揮されます。力を示すための手段として、一貫した形で現れます。
自己認識
- タイプ6: 自己不信が強く、自分の能力や判断に確信を持ちにくいのが特徴です。そのため、他者や権威に頼ることで自分を補おうとします。例えば、自分の決断を他者に委ねたり、承認を得ることで自己価値を確認しようとします。この不安定な自己認識が揺れる態度や他者を試す行動につながり、内面の混乱が外部に投影されることがあります。
- タイプ8: 強固な自我を持ち、自己の力を信じ切っているのが特徴です。他者を支配することで自分の存在を確立し、自らの無敵さを確信しています。例えば、他者に頼ることなく自立を貫き、自分の意志によって環境を形作ることに誇りを持ちます。この確固たる自己認識は、他者への依存を拒絶する態度や一貫した行動として現れ、自己不信とは無縁です。
具体的な見分け方のポイント
安全を求めるか支配を求めるか
タイプ6は、不安を和らげるために他者と関わり、サポートを求める行動をとります(例: 何度も質問する)。一方、タイプ8は他者を支配し、自分の意見を押し通そうとします(例: 命令的な言葉で指示を出す)。
態度が揺れるか一貫するか
タイプ6は状況に応じて態度が変化し、決断を先延ばしにすることが多いです(例: 決めかねて迷う)。対照的に、タイプ8は常に自信を持って一貫した態度を貫きます(例: 速やかに決断を下す)。
他者を試すか圧倒するか
タイプ6は他者の反応を確認するために、意図を探るような行動を取ります(例: 相手の考えを知ろうとする質問をする)。タイプ8は他者を圧倒し、速やかに服従を求めます(例: 威圧的に強制する)。
攻撃が衝動的か計画的か
タイプ6の攻撃は感情に左右され、予期せずに現れることが多いです(例: 不安が増すと突然怒鳴る)。一方、タイプ8の攻撃は計画的で、冷静な手段として使われます(例: 戦略的に相手を追い詰める)。
自信が不安定か過剰か
タイプ6は自己不信が強く、他者からの承認を求める傾向があります(例: 自分の判断を他者に任せる)。それに対して、タイプ8は過剰な自信を持ち、他者に頼ることなく独立して行動します(例: 周囲の意見を無視して自分の決断を下す)。
まとめ
- タイプ6は不安によって動かされ、タイプ8は支配を目的として行動する。
- タイプ6は態度に変動があり、タイプ8は一貫性を持っている。
- タイプ6は他者の反応を確かめ、タイプ8は他者を圧倒する。
- タイプ6は感情的な攻撃をし、タイプ8は計画的な攻撃を行う。
- タイプ6は自己不信が強く、タイプ8は過剰な自信を持つ。
補足:辛口解説
タイプ6
タイプ6がタイプ8のような態度を取るとき、その背後には不安を隠し、安心感を得ようとする心理が働いています。彼らの超自我は「強さ」や「支配」を理想とし、その態度を取ることを促します。しかし、その結果、自己主張が中途半端で執拗になり、周囲から「見栄を張る臆病者」と見られ、反感を買うこともあります。ここでは、その背景や超自我の影響を探り、タイプ6のネガティブな側面についても考察していきます。
タイプ6がタイプ8的な態度を取る背景には、幼少期の厳格で支配的な環境が大きな要因として考えられます。感情を抑制することが求められたり、「弱さを見せてはいけない」と強さを強調される中で、「強くなければ生き抜けない」という価値観が身についていきます。こうした状況では、不安を感じながらもそれを隠し、威圧的な態度を取ることで自分を守ろうとします。厳しい家庭環境で「泣くな」と叱られ続けたり、競争の激しい環境で他者を圧倒することを学んだりすることで、タイプ6はタイプ8的な振る舞いをするようになるのです。
タイプ6の超自我は「強さが安全を確保する」と強く信じており、それが不安を隠す手段として威圧的な態度に繋がります。例えば、「自分のことは自分でやれ」と繰り返し教えられる中で、内面では「強さ=正しさ」と結びつき、威張る態度を正当化しようとします。職場で「俺が仕切る!」と強気に振る舞うタイプ6も、実際は不安を感じてそれを打ち消そうとしているに過ぎません。しかし、周囲の反応を気にするあまり、態度が揺れ動き、一貫性が欠けることがあります。タイプ8は過信から支配的に振る舞い、迷うことなく行動を起こしますが、タイプ6は内心の不安が表面に出やすく、結果として空回りしてしまうことが多いです。例えば、会議で強気な発言をしても賛同が得られないと急に黙り込むなど、典型的な行動として見られます。
こうした超自我の影響により、タイプ6のネガティブな側面が強調されることがあります。例えば、同僚の軽い冗談に「裏切られた」と感じてしまい、しつこく無視を続けたり、陰で愚痴を言ったりすることがあります。こうした執拗さは、不安による猜疑心が暴走した結果であり、本人は「正義を貫いている」と思っていても、周囲には迷惑な人物として映ることが多いです。タイプ8は反対者を屈服させるために徹底的に攻撃を仕掛けますが、タイプ6は一貫性に欠け、威厳が感じられない振る舞いに終始することが多いです。例えば、上司に叱られたとき、「見返してやる」と思いながらも、実際にはおどおどして謝ったり、ぎこちない笑顔で取り繕ったりすることがよくあります。タイプ8は失敗しても「次こそは勝つ」と自信を持って虚勢を張りますが、タイプ6は不安から急に従順になり、その変わり身の速さが情けなく見えることがあります。
このように、タイプ6がタイプ8のような振る舞いを取る背景には、幼少期の支配的な環境で「強さが安全を守る」という考えが影響していることがわかります。超自我によって強さを求められ、不安を抑え込むために威圧的な態度を取る一方で、自己不信から一貫性がなく、自然な振る舞いができません。タイプ8のように自信を持って支配することはできず、不安から生じるぎこちない強がりと脆さが表れ、結果的に「見栄を張る臆病者」として周囲を困らせることになります。
タイプ8
タイプ8は、一見すると自信に満ち、周囲を圧倒する存在に映ります。その堂々とした態度は、まるで誰にも逆らえない支配者のように感じられるかもしれません。しかし、その背後には単なる強さとは異なる一面が隠れています。強引な自己主張、しつこく粘る態度、そして時折見せる弱さ—こうした特徴は、表向きの威厳とは裏腹に、未熟さや滑稽さを際立たせます。タイプ8は、自分を大きく見せようとする一方で、無理をしている様子や無力さをさらけ出し、周囲に困惑を与えることがよくあります。
例えば、タイプ8は些細なことで執拗に絡むことがあります。職場で少し反論された程度でも、相手が折れるまで毎日嫌味を言い続けたり、仲間内で自分に逆らった人を無視し続けたりすることがあります。このしつこさは、単に力で押さえつけるのではなく、相手をじわじわと疲れさせる方法です。表面上は強そうに見えても、その執拗さが周囲をうんざりさせ、単なる厄介者になってしまいます。タイプ6も似た態度を取ることがありますが、それは不安からくる一時的な反応で、すぐに揺らぎがちです。一方、タイプ8は「自分が正しい」と思い込んでいるため、粘り強さがより陰湿で、長引く不快感を生み出します。
また、グループ内で自分を中心にしようとする傾向も見られます。例えば、自分に反論する人を「信頼できない」と決めつけ、周囲を巻き込んでその人物を孤立させようとすることがあります。威張る一方で他人を操ろうとする態度は浅はかで、指導者としての資質よりも単なる面倒な存在として浮かび上がってしまいます。タイプ6も仲間に頼ることがありますが、それは不安から来る自己防衛の手段であり、攻撃よりも自分を守ることを優先します。一方でタイプ8は、支配を維持するために積極的に敵を排除しようとしますが、その結果、周囲から距離を置かれ、影響力を持つ存在とは言えなくなります。
タイプ8の弱点が特に顕著になるのは、より強い人物に直面したときや、自分が不利な立場に置かれたときです。例えば、傲慢な上司の下で冷遇される場面を想像してみてください。普段は威張っているタイプ8でも、上司から軽視されたり、意見を無視されたり、雑務を押し付けられたりすると、抑えきれないストレスが溜まります。会議で自分の意見を聞いてもらえず、怒りを抑えきれずに机を叩きたくなることもありますが、上司の冷ややかな視線に黙り込んでしまうこともあります。この苛立ちの原因は、タイプ6のような一時的な不安とは異なり、「自分は特別だ」という思い込みが打ち砕かれたことから来ており、その感情は長引くことが多いです。
タイプ8は権力者に対して複雑な思いを抱きます。表面的には軽蔑しながらも、力の差を無視することができず、仕方なく媚びることがあります。例えば、上司の機嫌を取ろうと無理に笑顔を作り、過剰に賛同することがありますが、心の中では怒りを感じています。しかし、その媚び方は不自然で、すぐにバレてしまうため、逆に冷遇されることがよくあります。タイプ6は不安から素直に媚びることが多いですが、タイプ8はプライドが邪魔をして、中途半端な態度がかえってみじめさを際立たせます。権力者に認められたいという欲求と反発心の間で揺れ動き、その結果どちらにも従えない立場に陥ってしまうのです。
さらに、タイプ8が反逆に失敗した後、その弱さがより一層顕著になります。例えば、上司を出し抜こうと画策して仲間を煽り、反旗を翻そうとしても、最終的には圧倒的な力に圧倒されてしまいます。その後、「今回は運が悪かっただけだ」と強がって見せますが、声は震え、周囲の冷たい視線に耐えきれず、うつむいてしまいます。状況が不利になると、こっそり上司に取り入ろうとしながら、「次は絶対に負けない」と独り言のように呟くこともあります。この矛盾した態度は、かつての威勢とは真逆で、ただの騒がしい敗北者に見えてしまいます。タイプ6は不安から静かに従うことが多いですが、タイプ8は最後まで意地を張り、必死に足掻いた結果、無様な結末を迎えてしまうのです。
タイプ8の力強さには、タイプ6の強がりと似た特徴も見受けられます。どちらも他者に対して強い態度を示しますが、タイプ8は「自分が絶対に正しい」という信念が強いため、必要以上に派手でしつこくなることが多いです。タイプ6が不安から一時的に反応するのとは異なり、タイプ8の過信は日常的に陰険さや脆弱さを引き起こします。強い立場の人物に従わざるを得ない状況では、威張る相手がいないことへの無力感や、失敗後の情けない姿が目立ち、周囲をうんざりさせることがしばしばあります。このように、タイプ8の本当の弱点は、表面的な強さとは裏腹に、未熟さや滑稽さが浮き彫りになってしまう点にあります。
参考資料
- Don Riso and Russ Hudson (1996), Personality Types: Using the Enneagram for Self-Discovery
- Misidentifying Sixes and Eights
- Naranjo, C. (2019). "Dramatis personae: Eneatipos, cine y literatura"(エディプス・コンプレックスについての注釈部分)