内向的直観 Ni
内向的直観(Ni)は、内向、非合理、動的な情報要素です。
「内向的直観」と書く代わりに、「Ni」「T」「時間の直観」「白の直観」と表記されることもあります。
Niは一般的に下記と関連しているとされます。
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Niが「尊重する機能(モデルAの第1機能、第2機能、第5機能、第6機能)」がNiである場合 [1]、自分の人生が将来どのように発展していくかの具体的な計画を常に頭の中に描いておきたがります。そのため「今を生きる」とか「過去でも未来でもなく今のこの瞬間を最大限に活かす」という概念を考えることはほとんどありません。
純粋な余暇のためだけの活動は、一般的に短時間しか行いませんが、たとえそれが「純粋な余暇」のためだけの活動であったとしてもなお、そこに競争的な要素を持ち込みたがります。
ウィキソシオンの説明
第1機能 Ni(IEI, ILI)
モデルAでの第1機能:先導機能
先導機能としてのNiは、一般的に「自分の周囲の世界に対する直接的な注意の欠如」「世俗的な事柄から切り離されていて、そこに縛られていない感覚」を通じて現れます。
これは、高度に発達した想像力と非常にユニークな精神世界に繋がる可能性がありますが、非常な怠惰さや、明確な不活発性につながることもあります。
想像力を通じて世界に関わる主要な情報を得るため、先導機能にNiを持つ人(IEI, ILI)は、データが不足している状況や、通常であれば欠かすことができないような前提となる経験が不足していても、成功をおさめることがあります。
しかしながら、あまりにも世界に関する現実のデータを無視しすぎると、せっかくの主導Niがむしろ欠点になってしまうかもしれません。
また、「時間軸を超えた因果関係を理解する能力」も主導Niに特徴的なものです。この力は、時に「将来の大まかな傾向や、特定の出来事の結果を正確に予測できる能力」に繋がることもあります。
第2機能 Ni(EIE, LIE)
モデルAでの第2機能:創造機能
興味を感じる状況やトピックが、今後どうなっていきそうか、展開の予測を好みます。
高度に発達したビジョンの感覚を持っていますが、「ビジョンを作ること」自体が目的ではなく、より中心的な関心事と活動の発展を促進する手段として、それを活用します。
第3機能 Ni(SEI, SLI)
モデルAでの第3機能:役割機能
長期的な影響や、個人的な想像力に注意を向けることはできますが、それをしたとしても短時間だけです。
役割機能が十分に発達していないSEIやSLIの場合、自分の将来を広範囲に計画する一方で、その理由を評価できない場合があります。
第4機能 Ni(ESE, LSE)
モデルAでの第4機能:脆弱機能
現在の傾向やトレンドから予想できる結果を評価するよりも、目の前のタスクに集中し、物事をそのまま受け止めることを好みます。ある出来事がどのようにして別の出来事へと繋がったのか概説するよりも、起こった出来事を順番に話そうとする傾向があります。
時間を区別せずに認識します [2]。過去、現在、未来はすべて、現在または現在の近くにあるものとして認識されます。
将来、特に長期計画について話すとき、彼らはあたかも未来の情報を、今日すぐに確認できる情報であるかのように話しますが、実際にその計画を進めるにあたって把握しておかなければならない「物事がどう進展するか」の情報を、必ずしも把握できていないことがあります。
一般的に、ある物事が進展するのにどれくらい時間がかかるのか、どの程度の時間をかけるのが最適なのかといった感覚が鈍いです。そのため、詳細な、場合によっては完全な事前計画がない場合、予定通りに物事を進めるのは難しいです。
第5機能 Ni(SLE, SEE)
モデルAでの第5機能:暗示機能
この位置にNiを持つ人々は、「現在のトレンドがどこに向かっているのかを見極め、いつ行動を起こすべきか、控えるべきかを選択する能力を持つ人」のことを魅力的な人だと感じやすいです。
衝動的な人ですが、「自分の衝動が行き過ぎないようにしたい」と願っています。しかし、彼ら自身はこうした能力には自信がありません。そのため、「どこまでやるべきか、どこまでで止めるべきかを判断する力に自信を持っている人」を賞賛し、そういう人と仲間になりたいと感じます。
また、即物的な世界を超越したところにある「人が生きる意味」を感じたいとも望んでおり、こうした分野に光をあててくれる人との交流を楽しみます。
第6機能 Ni(LSI, ESI)
モデルAでの第6機能:動員機能
過剰に心配しすぎることを避けるために、「状況がこれからどのように進展していきそうか」に関する外部からの評価を定期的に必要としています。
「急がなくても時間内に達成できる」という安心感や、「進行中の問題への対処は不要。当面は様子を見るのが最善」という安心感が外部から与えられない場合、このタイプの人々は不安になってしまい、すぐに、時には衝動的に問題への対処をし始める傾向があります。
第7機能 Ni(ILE, IEE)
モデルAでの第7機能:無視機能
現在のトレンドが今後どうなっていきそうかという議論や、個人的な意味に関する特定の創造的なビジョンを探求することに焦点を当てた議論の内容をきちんと理解できます。
しかし、そうやって特定のビジョンやトレンドに集中するよりも、現在の状況と現実から考えられる可能性をできるだけ多く探求することをより重視します [3]。
第8機能 Ni(LII, EII)
モデルAでの第8機能:実証機能
現在のトレンドが将来的にどう発展していくのかの議論に十分ついていくことができますし、その気になればその議論に大きく貢献することもできますが、彼ら自身は、現在自分が興味を持っている分野の可能性を調べることに比べれば、あまり真剣には捉えていません [4]。
このタイプの人々は、「超自然的な主張」を聞いても、それが「自分がたまたま信仰していて、余暇の活動の一部にしたいと思っているような特定の宗教」に関連したものでない限り、くだらない希望的観測だと思って切り捨てるのが普通です。
価値機能の側面 by Dmitry Golihov
価値機能:モデルAの第1機能、第2機能、第5機能、第6機能のこと。別名「尊重する機能」
第1機能 Ni(IEI, ILI)
彼らは自分自身のことを、非常にイデオロギー的で、一貫性があり、原則的で、非常に保守的な人間だと考えています。自分の考えを批判する人に苛立ちを覚えます。彼らは内的状況の「全体性」に基づいて生きています。
多くの場合、物事を「見通して」、何か・誰かの内なる本質を見抜くことができます。
ロマンチストで理想主義者です。内面的な調和、静けさ、穏やかさによって生きており、自分の中からインスピレーションを引き出すことができます。
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一般的に、他人が自分の内面を探ろうとするのを好みません。もしもそういうことをされると、苛立ち、怒り出します。可能な限り、あらゆる状況において内面的な穏やかさと、内面的な一貫性を保とうとします。
「川のような流動性」:人と対話する際は、その状況に最も適した意識の形をとることで、無意識のうちに対話者に自分自身を合わせています。
これは、彼らが役を演じているという意味ではありません。彼らの意識は単に多面的であり、彼らの内なる「全体性」が、自分の中のどの面を見せるかを決めているのです。つまり、彼らとしては、ただ単に、自分自身のバリエーションを提示しているだけに過ぎません。
内省と瞑想を好みます。失敗した場合に備えて、自分自身を質的に分析することができます。
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特定の場所にいると、まるでカメレオンのようにその場に溶け込むことで、自分を目立たなくさせようとするかもしれません。
特に、自分の内なる静けさへの脅威を感じるような場所にいる時、例えば自分を煩わせる職場にいる時などでは、こうしていることが多いです。フォルダーのバリケードを作り、その死角に潜むことで、自分が見えないようにするなどの巧妙な手段で隠れることもあります。
落ち着きがなく、内面的に不安定な人を好みません。そういう人の状態が自分にまで伝わってしまうため、どんな犠牲を払ってでもそういう人から逃げ出そうとします。
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このタイプの男性が、彼の持つ内なる平和を狙った女性たちから逃げ回る様子は実に滑稽です。
しかし彼らにとって、自分の内的な「全体性」は商品ではなく、自分の内面で消費するための素材です。少数の人としか分かち合うことができないものなのなのです。時々、これをひったくろうとする人がいるかもしれませんが、それは彼らを非常に怒らせる行為です。
特に家族関係において、自分の原則から逸脱した行動をとる人がいると、彼らは攻撃的になります。そのためしばしば家庭内で批判的になりがちです。家族関係以外の状況ではなんとかして自制していたとしても、家では怒りを爆発させることがあります。
第2機能 Ni(EIE, LIE)
内面的に矛盾した人々を見つけだし、それを「掘り下げ」、内面的な調和とムードを作り出すことを好みます。
彼らは優れたアーティストへの適性があります。なぜなら、ある人物のイメージと「一体化」し、その人物の世界観から役を演じることに精通しており、またそれを好むためです。複雑な内的状況の本質を理解できるため、優れた分析者になる可能性があります。
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仕事探しに苦労することが多いかもしれません。なぜなら彼らの創造機能が生み出す物は、人間の内的葛藤と本質ですが、人の心の奥深く、「魂」にまで入り込むには許可が必要だからです。
しばしば不安定になり、脆く、壊れやすくなることがありますが、それは自身を調和させるためのものです。時には、自分自身を苦しめ、引き裂きながら、自身の問題を掘り下げようとすることもあります。
創造機能Niを、この世の中で十分に発揮することは難しいことです。なぜなら、需要が高くないからです。誰もが「誰かに自分の内面を掘り下げてもらいたい」と思っているわけではありません。
彼らが生み出すものは、大胆なアイデア、原則、信念や知識の体系です。彼らはそれを世に送り出し、広めていきます。しかも無理に押し付けるのではなく、もっと美しく、エレガントで、興味深い方法でそれを行います。
内面的に矛盾する状況を探し求め、その本質を把握しようとします。
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しばしば芸術や執筆活動で自己実現をはかることもあります。これもまた、創造機能Niの良い活用方法だといえるでしょう。
彼らは様々な内面的心理状態に入り込めます。他者の内面にポジティブな影響を与えることができる、話し上手な人です。
彼らが生み出す物、言い換えれば、彼らの創造機能が作り出す製品は、内的状態の「全体性」であるため、心理学の世界で成功を収めることができます。彼らは魂の癒し手です。
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人生において、全てをドラマティックに演出するのが好きです。周囲の人々は、彼らの気分や内面の状態の最も小さな変化についても知ることになります。
彼らは「モグラの塚から山を作る」のが大好きです [5]。これは彼らにとって創造機能のための仕事を探し出す方法なのです。自らをさらけ出すほどに、世界における彼らの個性がさらに輝きます。
第6機能 Ni(LSI, ESI)
これらのタイプの自己価値観の領域は、内的状況の「全体性」、内的調和、イデオロギーの一貫性、原則の一貫性、内的な平穏です。
自己価値観の防衛のために彼らがすることは、通常、ただ単にこの手の問題に関して他の人から離れて少し休憩をとるだけです。それだけで、ほとんどいつも内面的な葛藤にまつわる問題をうまく処理してしまいます。
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他の人から見ると、彼らはいつも非常に一貫性があり、原則的な人間に見えるかもしれません。
常に同じように考え、行い、発言します。つまり自分自身に決して矛盾がなく、他人にもそれを期待するのです。そのため、場合によっては「あまりにも正しすぎる」と受け止められてしまうことがあります。
彼らが受け入れる情報は、この内なるバランスを崩す危険性がない情報だけに限るため、時として非常に頑固になることがあります。自分の原則を曲げることになるような妥協は絶対にしません。
通常、抑制的で、礼儀正しく、閉鎖的で、秘密主義的で、一貫した人物という印象を他者に与えます。
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彼らの前向きな自己価値観は、彼らの理想によって裏付けされていますが、その理想が周囲の現実と乖離していて、現実を無視することがあります。
この位置のNiは、具体性の高い目標を達成するには効果的な性質を持っていると言えるかもしれません。外界や外部の意見を無視して、ただ真っ直ぐに、立ち止まることなく突き進み、目標を達成します。
特に、彼らが「目標に向かって、ただ真っ直ぐに突き進む」ことが望まれるような状況の場合は、とても気分が良くなります。例えば彼らの行動や手段の正当性を強調してくれるような、そして社会的観点から保障されているような立場や職業についている状況が該当します。
もしも彼らが「私は祖国のための義務を果たしているだけの兵士だ」と言う場合、「だから私の行動には正当性がある」と言っているのと同じ意味だと解釈すべきです。
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しばしば理想主義的な原則を説いて、理念や原則は、現実よりも優先されるべきだと強調します。
自分が本当に心から理想を信じていること、ただ方便として理想論を語っているのではないことを、何よりも彼ら自身が信じるために、他者を導く役割を果たそうとすることがあります。
彼らにとって内的な「全体性」を維持することは重要なことです。そしてそのために、彼らは一貫性・原則への献身性、忠誠性という点で、「自分の行動が完全に一貫していて、ゆるぎないものである」と自分自身が実感する必要性を抱えています。
状況があまりにも曖昧過ぎる場合、彼らは単純化することで解決しようとします。原則と一貫性は「良いもの」であり、原則と一貫性の無さは「悪いもの」です。矛盾や疑念だらけの人を嫌います。
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たとえ何か間違ったことをしたとしても、「自分が間違えてしまった」と認識するよりは、間違ったことに気が付かないままの方が、彼らにとっては遥かに快適です。
自己価値観を守るために、しばしば彼らは間違いを犯しても、単にそれを無視してしまいます。例えば「この人は自分を傷つけようとしている」と考えて「だから、そんな人の意見など、どうでもいい」と思うかもしれません。
一般的に、彼らの内なる観念的な「全体性」を乱す可能性のあるものは全て、彼らにとっては「考慮に値しないもの」です。
「負けてしまうかもしれませんが、私は私自身に忠実であり続けます」という在り方のほうが、彼らにはずっと重要なことなのです。
第5機能 Ni(SLE, SEE)
この位置にNiがある人々は、内面的な不快感や自分自身の矛盾を感じずに済む環境、わざわざ説明しなくてもアイデアと原則を共有できる環境を好みます。
そういった環境ではない場合、彼らがすることは「ただそこから移動すること」だけです。
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「自分の精神を高揚させ、魂に調和を生み出し、心の底から良い気分になるための方法」を知っている人を好みます。
他者が高揚した気分になったり、楽観的でいれば彼らも簡単にそれに染まります。気分が沈んでいる人がいると、簡単にそれに引きずられてしまうので、そうした人と一緒にいるのを好みません。
自己省察の痛みを鎮めるためにアルコールや他の物質を使用することがあります。また、他の人も自分と同じようにしていると信じこんで、アルコール依存症に陥ることがあります。
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彼らが環境に対して主に求めていることは、自分の理想や原則と、環境との間で、矛盾や衝突を引き起こさないことです。そして、それが不可能な場合、彼らは「これは私の世界ではありません。私はこの存在を面白く感じません」と言って去ってしまいます。
外的な状況のせいで「魂が傷ついて」しまい、心の中、自分の手で直接搔きむしることができない内面に「痒み」を引き起こされるような状況で、生きていくことなどできません。
しかし、もしもそこにいる全員が自分と同じ信念を共有していて、自然と「自分と同じ人間」「自分の側の人間」だと感じられるような環境であれば、彼らは快適に感じます。なぜならそこには、彼らが適切だと考えることを行い、創造するための前提条件がすべて揃っているからです。
彼らは「欠点も含めて」受け入れてもらえることを好みます。そして、互いの弱さを受け入れ合って生きていける、「自分」たちの小宇宙を作り出そうとします。小宇宙の人々を「自分の一族」、彼ら自身を「ゴッドファーザー」という言葉で例えることもできるでしょう。
そのような小宇宙に存在する彼らは、自分たちの小宇宙と、自分たちの原則を共有しない「異なる」世界とを、対立構造的に認識します。
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彼ら自身、内面的な調和を保つ必要性を自覚していますが、この試みに成功することは滅多になく、たいていコースから脱線してどこか別のほうへ向かって行ってしまうことになります。
実際のところ、彼らの内面的な調和を保つために必要なことは、彼らの頭に思い浮かんでしまった「閃き」を鎮めて、理性的に彼らを押しつかせることができるような人物の存在です。
「なぜそんなにカリカリしているの?すべて上手くいってる。大丈夫だよ」
と言ってくれる人が必要なのです。
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今日、彼らはどんなムードに支配され、そのせいで何をし始めるのか。
ここまでに説明したような理由から、この位置にNiがある人々の行動は、たいへん予測が難しいです。
訳注
- ^ Niが尊重する機能(第1機能、第2機能、第5機能、第6機能)であるクアドラは「ベータ・クアドラ」と「ガンマ・クアドラ」のふたつ。この2つのクアドラは二分法「賢明/果敢」が「果敢」である。そのためNiを尊重するタイプ(ベータ・ガンマに属するタイプ)の性質を知りたい場合、二分法「果敢」の記述も参考になる。
- ^ 時間を区別せずに認識します:Niが4次元性機能や3次元性機能に配置されている人々であれば、時間に関わる概念の中に見える微細な色合いの差異やグラデーションのようなものを鮮やかに識別し、それぞれの色に合わせて適切な言葉を細かく割り当てて、異なる概念として識別する(記号論的にいうと「言分け」する)一方で、ESEやLSEはそうした細かい差異をあまり区別しない。Niが強いタイプが「藍色」「空色」「群青色」などのように細かく区別しているところを、ESEやLSEは全部「青色」として認識しているような違いがある。
- ^ つまりNiよりもNeを重視する。
- ^ つまりNiよりもNeを重視する。
- ^ モグラの塚から山を作る(making mountains out of molehills):些細な問題を大げさに捉え、まるでそれが大問題であるかのように過剰反応したり、演技じみたヒステリックな行動をとることを指す慣用句。