第4機能(脆弱機能)
脆弱機能は、最小抵抗点、最小抵抗場(place of least resistance; PoLR)、痛みを伴う機能、敏感な機能、または単に第4機能と呼ばれます。この機能の要素は、フラストレーションや挫折感、至らなさを生み出します。人はこの要素の重要性を完全には理解していません。適切に考慮されていないせいで、あっけなく痛みを伴う結果に悩まされることがあります。
しかし、この機能に直接アクセスすると、不安感や苦痛が生じます。第4機能が人から見て最もわかりにくい機能だと感じられる理由は、その手前に他の3つの意識的な機能があるからです。人は多くの場合、動員機能(第6機能)の観点から、別のアプローチを見つけることができます。第4機能の使用には心理的な障壁があるため、人は通常、第4機能に関連する情報を無視しようとします。極端な場合には、第4機能に最も関連性が高い状況であってもそうしてしまいます。第4機能の理論的な特性を頭で理解したとしても、それを踏まえて実際の行動を変えるのは難しい事です。第4機能が実際に特定の状況で重要だと言う認識を持つことが、第4機能の開発にとっては重要なことです。
原則的に、第4機能を使用すべき状況があると気が付いたとしても、自分でその責任を負わないようにしたり、自分のニーズを最小限にすることで切り抜けようとしたり、一般的なものとは異なるアプローチ(第4機能以外の機能を使うこともあります)を身に着けようとすることになります。通常、双対タイプの存在によって、第4機能上の問題へのアプローチに対する懸念は解消されます。
いくつか例をあげてみることにします。第4機能Fe(SLI, ILI)を持つ人々は、具体的な結果(または目に見える結果)に繋がらない過度の感情表現や行動を中心とした活動といったものに、意義を感じられません。そういった感情表現に圧倒されてしまうと、自己表現が上手く出来なくなってしまうため、真面目で要点を抑えた会話に拘ります。社会的な交流の中で、喜びすぎたり、悲しみすぎたりするような感情表現を減らすために真剣に努力します。第4機能にFeを持つタイプは、そういった感情表現を晒すことは、他人からの影響を受けやすくなる悪手だと考えます。集団としての人々がどう感じるかを(たとえ自分の判断が少数派であったとしても)あまり重視せず、自分の主観的な意見や感情を自由に表現できる状況に価値を感じます。
第4機能Ne(LSI, ESI)を持つ人々は、特に自分の生活に具体的な影響がないような場合、新しいアイデア(または斬新に見えるアイデア)をなかなか理解できません。偶然任せにせず、何年も前から人生の計画を立てることが出来ます。そのため「生活上の予想外のトラブルが起きて、いつもの仕事が滞ったらどうしよう」「そのトラブルで未来がわからなくなってしまったらどうしよう」と、さまざまな「もしも」を恐れる傾向があります。何か迷いがあると、まったく変化を起こさないか、その逆に早合点して無謀な決断をしてしまい、チャンスを逃してしまうことがあります。
第4の機能Si(EIE, LIE)を持つ人々は、特に彼らが「非常に重要」だと考える事柄に関与している場合、「今、実際に何をすれば改善できるか」という問題に腰を据えて集中し続けるための忍耐力がほとんどありません。身体的な幸福よりも長期的な優先事項に基づいて行動しようとします。そしてそれが行き過ぎてしまい、現在の現実を認識できない、または気にかけられないといった問題や、身体的または精神的ストレスを認識できないなどの問題が生じます。一般的に、自分自身に課した長期的な追求に没頭するあまり、リラックスすることが出来ません。
第4機能Teを持つ人々(IEI, SEI)は、自分にとって馴染みのない情報源からの事実を拒否する傾向があり、「私は自分の視点と推論のみに基づいて、自分で決定することが出来る」と固く信じています [1]。しかしその論理的根拠や有効性について質問されると、客観的な『事実』なんて存在しないと言って自己防衛的になる傾向があります。また、日常生活におけるありふれた仕事や担うべき責任(日常的なメンテナンス、生産的な仕事など)に大きなストレスを感じやすく、それが一般的な意味での怠惰さや、もしくは極端な勤勉さとして現れます。
訳注
^ 本記事と同じ文献で、第1機能もまた「自分に強い自信を持つ」と説明されている。第1機能と第4機能の違いは、第1機能が外部からの批判に強いのに対して、超自我ブロックの第4機能は批判に敏感な点。
超自我ブロックの第3機能と第4機能は、外部から批判されると強いショックを受けて「敵意を抱く」「激しい自己擁護をする」「何日間も批判されたことについて悩んでしまう」といった反応を見せると言われている。関連記事「超自我ブロック」
批判された時、本当に心底動じていないのか、自分に対して強がって「平然としているフリ」をしているのかを当の本人が見分けるのはかなり難しいのではないかと思われるが、この難しさはそのまま第1機能と第4機能(ついでにいうと第3機能も同様)の見分けの難しさにもなるのではないかと思う。
モデルA:機能二分法の分類
補足情報(第3機能、第4機能、第7機能、第8機能の違い)
Stratiyevskayaは、全タイプに共通する話として、第3機能、第4機能、第7機能、第8機能に下記の性質があると解釈している。
- 第3機能(役割機能):「人からのサポートを求めておらず、自分の力でどうにかしたい機能」
- 第4機能(脆弱機能):「人からのサポートを求めている機能」
- 第7機能(無視機能):「まず状況を監視して、後になってから批評する機能」
- 第8機能(実証機能):「相手がサポートを求めているかどうかに関わらず、先回りしてサポートをする機能」
これによってどのようなことが起こるかと言うと、Stratiyevskayaは双対関係では発生しないようなギャップが、活性化関係では生じると解釈している。
例えばIEIとLSIは活性化関係であるが、IEIのNe(第7機能)は「まず状況を監視して、後になってから批評する」という形で働く一方、LSIのNe(第4機能)は「他者からの具体的なサポートを求める」という形で働く。そのため、LSIは自分の計画に起こりうる様々な可能性について、「気付いた時点ですぐに忠告して欲しい」と感じているのに対して、IEIは実際には「この計画にはあまり発展性が無い」と第7機能Neで強く察していたとしても、「まずは黙って見守る」という選択をしてしまう。そしてLSIの計画が破綻した後になってから、IEIが「あのときもっとこうすべきだったね」という「後出しの講評」を行ってしまうため、LSI(脆弱機能Ne)が「気付いてたなら先に言って欲しかった」となる。関連記事「活性化関係:ILE(ENTp)−ESE(ESFj) by Stratiyevskaya」
もしもこれがIEIとSLEの関係であれば、SLEのNeは第3機能(役割機能)「人からのサポートを求めておらず、自分の力でどうにかしたい機能」であるため、「上手くいくかどうかに関わらず、干渉したり、口出しせずにいてくれた」と感じてIEIの第7機能Neを評価するということが起こる。
別の活性化関係の例だと、ILEとESEの場合、ILEが外部からの圧力に晒されている時、ESEは第8機能Seの働きで、ILEが助けを求めるよりも先に「助けなければ」と感じて、敵に向かっていく。しかしILEとしては「この程度、自分で何とかできたのに。余計な手出しなんてされたくなかった」とESEに不満を感じることが起こる(第3機能と第8機能の不和)。一方、ILEとSEI(双対関係)の場合、SEIはILEを見守り、ILEがうまく外圧に対処出来たら「ILEやるじゃん!」と褒める流れになりやすい(第3機能と第7機能の調和)。関連記事「活性化関係:ILE(ENTp)−ESE(ESFj) by Stratiyevskaya」
まとめると第4機能は「積極的に手助けして欲しい」のに対して、第3機能は「余計なお世話を焼かれるのが嫌」だと感じ、第8機能は「つい他人の世話を焼きたくなる」のに対して、第7機能は「余計なお世話になりそうだから、黙って見守ろう」と感じる性質がある。なおこれはStratiyevskayaの解釈であるため、他の専門家がどの程度この解釈を採用しているかは不明な点は注意が必要である。
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