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はじめに
ソシオニクスでは、タイプ自体の二分法(例えばILEが外向的、直観的、論理的、非合理的であるとする二分法)以外に、モデルAの機能自体にも二分法があります。本記事ではモデルA機能二分法のひとつ、メンタルとバイタルについて解説します。
モデルAの第1機能、第2機能、第3機能、第4機能はメンタルであり、第5機能、第6機能、第7機能、第8機能はバイタルです。
メンタルである4つの機能をまとめて「メンタルリング」、バイタルである4つの機能をまとめて「バイタルリング」と呼ばれることもあります。
メンタル / バイタル
モデルAの機能二分法の中でも、最も重要視されている機能二分法は、このメンタル/バイタルという二分法かもしれません。
我々の現実の認識は、外的現実と内的現実の2つに分割されます。
我々が外的現実について学んでいるとき、我々は周りの世界だけでなく、自分自身もこの世界という言葉で指し示される対象物の一つであり、世界の一部を構成するものとして学びます。
しかし我々の認識は外的現実のみではなく、内的現実もまた存在します。我々は内的現実を学ぶことで、内側から自分自身について学び、自分の外側にある世界に対する内的な認識や反応についての理解を深めます。
そしてこれらは、ソシオニクスのモデルAの情報処理が、メンタルリングとバイタルリングの2つのリングに分割されることに反映されています。
メンタル(第1機能、第2機能、第3機能、第4機能)
情報を言語化し、観察を整理し、個人の知的活動の中心を形成します。
メンタルリングの機能は意識的だと考えられています。このリングは、外的世界に関する情報を受信、処理、使用します。これは客体的な外的現実の認識と研究を担当しています。これには、外的世界の管理に必要な情報(自我ブロックが指揮します)と、外的世界に適応するための情報(超自我ブロックによってサポートされます)が含まれます。
ソシオニクスのタイプが動的タイプ(Exxj, Ixxp)である場合、メンタルリングには動的な情報要素が、静的タイプ(Exxp, Ixxj)の場合は静的な情報要素が配置されます [1]。
メンタルリングは、情報の収集、認識、伝達によって意識的に問題を解決します。
メンタルリングの機能は、世界や自分をあたかも外から見ているように捉え、客観性、普遍性を追求します。ここから発信される情報は非人間的であり、第二信号系システムのレベルで言語化され、具現化されます [2]。
バイタル(第5機能、第6機能、第7機能、第8機能)
物事を行うプロセスの中で、非言語的な形で、あるいは自然に生じてくる情念という形で、無意識的に表れる傾向があります。
内的現実の情報を受け取り、処理し、使用します。バイタルリングは、私たちの内なる世界における外的世界の反響のようなものです。バイタルリングの機能は無意識的であると考えられています。
バイタルリングは、信号や刺激を受信し、それに自律的に応答することが可能です。
バイタルリングの機能は、意識的にコントロールされることがほとんどない潜在的な機能です。自分自身の感覚や体験を通して、自分の内側に投影することによって世界を認識します。バイタル機能は、主観性、個人的な認識によって特徴づけられます。この機能から出力される結果は、通常、第一信号系システムを通じて、活動として具現化されます [3]。この機能を通して行われる主張は一人称的です。
タイピングで使用される指標
School of System Socionics(機能の次元に重点を置く学派)で使用されるタイピングの指標。
- 回答したり、質問する過程で、内省を行う。(メンタル)
- 「私は~」というような、自分自身の場合の話だけではなく、「人間とは~」「私たちは~」というような、一般化した視点で語ったり、多くの人や社会を代表して語ったりする。(メンタル、あるいは規範パラメーターの存在)
- 社会への言及(自分個人の話に留まらない、社会的な視点からの言及)。社会的なルールや慣習、法律など、様々な社会的な仕組みや規範、役割の考慮。(メンタル) [4]
- 情報を受け入れる際に、何らかの「注意」を払っている様子が確認できる。例えばメモをしたり、意識的に観察するなど。(メンタル)
- 意識的に考慮された上で生じる反応、行動、決断が見られる。(メンタル)
- 意識的な評価や、自己分析が見られる。(メンタル)
◆◆◆
- 思考の特殊性。思考が一般的に受け入れられている考えに対応しておらず、それらを考慮に入れていない。(バイタル、あるいは1次元性)
- 個人的な考え方、自分独自の意見、個人的な認識が見られる。(バイタル、あるいは1次元性、あるいは個人的な特異性があるという意味で第1機能、第2機能、第3機能以外の機能)
- 過去の経験を繰り返し参照する傾向。(バイタル、あるいは1次元性)
- 具体例をあげることができない。(バイタル、あるいは低次元性)
- 独特な癖や奇妙な癖(特定の行動や考え方や独特なクセなど、他の人と異なる個人的な癖や奇妙な習慣。はっきり目立つ場合もあれば、ほんのちょっとした些細な癖の場合もある)の存在。(バイタル、あるいは低次元性)
- 局所性(一般化した視点やグローバルな視点からの発言・多くの人や社会を代表した視点からの発言とは反対の発言。個別のケースに限定した場合の発言など)。能力の範囲を制限したり限定したりする傾向。(符号がプラス、あるいは個人的な見解のみが主張される場合はバイタル)
- 自分の力や考えを開示したり、広めたりするのを避ける傾向。(バイタル、または符号がプラス(ネガティブ側の領域から離脱したがる特性の表れ。関連記事「機能の符号とタイピング時の注意点 「品質」特性」)
- 普段の生活の中でありがちな出来事や経験を思い出すことが繰り返される傾向。(バイタル)
- 無意識で自動的な反応。あとになってから、自分が反応したことに気が付く傾向。(バイタル)
- その情報要素の領域に対する、継続的な監視やトレースの欠如。(バイタル)
- 考える意欲の欠如。説明する意欲の欠如。あまり注意を払わない傾向。(バイタル)
- 自発的で、予測不可能的に、突然あらわれる傾向。(バイタル)
- 他人からの評価を気にしない。自己評価にも関心がない。(バイタル、または自我ブロック)
- 社会の意見に無関心。(バイタル)
- 自分の理解を、社会の一般的な考え方に合わせる力が無い。自分の理解が、社会で一般的に受け入れられている理解と同じかどうか、よくわからない。(バイタル)
- 意識的に考え出されたわけではない、思い付きや気まぐれのような反応、行動、決定。(バイタル)
訳注
- ^ 動的な情報要素:Si, Fe, Ni, Te。静的な情報要素:Ne, Ti, Se, Fi。関連記事「情報要素」「静的と動的」
- ^ 第二信号系システム:ソシオニクスの用語ではなく、生物学の用語。言語が媒介となる信号のシステム。第二信号系システムは、意識的に現状を評価したり、結果を予測し、その予測をもとに行動を起こすシステムである。生理学者パブロフが条件反射について説明する際に使用した概念。
- ^ 第一信号系システム:感覚的な刺激に対する自律神経のバランスや気分の変化といった無意識的な反応のシステム。生理学者パブロフが条件反射について説明する際に使用した概念。
- ^ 脆弱機能(第4機能)は1次元性機能であるため規範パラメーターを持たないが、知識としての規範は知っているため、口頭では規範に関する話を行うことがある点に注意。