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エニアグラム タイプの基本構造と全タイプ比較

2021年7月30日金曜日

エニアグラム

エニアグラム 全タイプ比較とタイプの基本構造

本記事およびリンク先の内容は、ドン・リチャード・リソおよびラス・ハドソンの情報をもとにしたものです。ナランホなど、他の専門家の定義や解釈とは異なる可能性があります。

エニアグラムのタイプの構成要素

基本的な恐れ

基本的な恐れ(Basic Fear)とは、各タイプが持つ根本的な不安のことです。幼少期に本質(Essence)とのつながりが失われることで生じるものであり、人格形成の起点となります。タイプごとの行動や反応の原動力となるもので、個々の不安パターンを特徴づけます。

基本的な欲求

基本的な欲求(Basic Desire)とは、基本的な恐れを補償するために生じた欲求のことです。この欲求が満たされれば、基本的な恐れに対処できると、人は信じ込んでいます。タイプの行動を方向づけるものであり、どのようにして基本的な恐れを補償するかの戦略を示します。過剰補償した結果として、歪んだ形で表れることもあります。

情念

情念(Passion)とは、各タイプを特徴づける主要な感情的傾向で、恐れが本質との断絶を深めると現れる歪んだパターンのことです。「七つの大罪」に「恐れ」と「欺瞞」を加えた9つが対応します。人がどのようにしてバランスを崩し、エゴに囚われ、心を閉ざし、思考や感情、行動を歪めてしまうのかを表わすものであり、恐れと欲求の相互作用によって、無意識のうちに繰り返される行動の根源となるものです。

幼少期の無意識のメッセージ

幼少期の無意識のメッセージ(Unconscious Childhood Messages)とは、幼少期に養育者や周囲の人々から受け取った制限的なメッセージのことです。人の自己表現を抑制し、人格形成に影響を与えます。基本的な恐れは人格形成の起点であり、いわば人格の種のようなものですが、この幼少期の無意識のメッセージは、その種を育む土壌のようなものです。

失われたメッセージ

失われたメッセージ(Lost Childhood Messages)とは、幼少期に十分に与えられることがなかったメッセージのことです。これは恐れを癒すことのできる肯定的なメッセージであり、各タイプが無意識のうちに求めているものです。

エニアグラムにおける人格と本質

人格(Personality)は、本質(Essence)の一部を反映していますが、習慣化した思考や感情によって人はこの本質を見失うことがあります。エニアグラムは、自分が無意識に作った枠組み(人格)を理解し、それを超えて本質に近づくための手助けをするものだと、ドン・リチャード・リソやラス・ハドソンは説いています。

人格

人格(Personality)とは、環境や経験によって形成された「後天的な自分」のことです。行動パターンや思考の癖を持ち、外の世界と適応するための仕組み。自己防衛的で、固定化しやすいものです。

本質

本質(Essence)とは、環境によらず存在する「生まれ持った自分」です。思考や感情の枠にとらわれない、より広い可能性や柔軟性を持つ部分のことです。

タイプの本質:基本的な恐れ

エニアグラムにおける9つのタイプを特徴づける核心は「基本的な恐れ(Basic Fear)」です。基本的な恐れは、全タイプに共通する「死や消滅への不安」のことですが、それと同時に、この不安はタイプごとに異なる形をとります。基本的な恐れは、幼少期に本質とのつながりが失われることから生じる深い不安であり、各タイプの人格が形成される起点となるものです。人が生まれつき持つニーズが、養育者や環境によって十分に満たされないとき、特定の喪失感が芽生え、それがタイプ特有の「基本的な恐れ」という不安として結実します。この不安は、人格が動き出す原動力となり、他の要素(基本的な欲求、情念)を引き起こします。

補足

タップで展開します。

 ウイング

ウイングとは、エニアグラムの基本タイプに隣接する2つのタイプのうち、特に影響を受ける方を指します。各タイプは円環上に配置されており、左右のいずれかの隣接タイプがウイングになります。たとえば、タイプ9であれば、ウイングはタイプ8またはタイプ1のいずれかです。ウイングは基本タイプに影響を与え、その表れ方に変化をもたらします。ウイングを考慮することで、同じ基本タイプでも異なる特徴を持つことが分かりやすくなります。例えば、タイプ7の中でも、タイプ8の影響を受ける人と、タイプ6の影響を受ける人では、性格の傾向が異なります。このように、基本タイプとウイングの組み合わせによって18種類のサブタイプが存在します。ウイングの決まり方には個人差があり、多くの場合、どちらか一方が優勢になりますが、両方のウイングを持つ場合もあります。ウイングを判別するには、自分がどちらの隣接タイプの特徴をより強く持っているかを考えるのが有効です。これは日常の行動や価値観、他者との関わり方に表れやすく、自己観察や他者からのフィードバックを通じて確認できます。


 センター

エニアグラムの9種類のタイプは、「本能(ガッツ)」「感情(ハート)」「思考(ヘッド)」の3つのカテゴリー(センター)に分類され、それぞれに3つのタイプが属します。本能センターにはタイプ8・9・1、感情センターにはタイプ2・3・4、思考センターにはタイプ5・6・7が含まれます。この分類は、各タイプが持つ心理的な側面の強調のされ方によって決まります。具体的には、各センターにおいて、1つのタイプはその側面を過度に表出し、別のタイプはその側面と最も接触しておらず、もう1つのタイプは十分に表出しないという関係になっています。例えば、感情センターでは、タイプ2は感情を過度に表出し、タイプ3は感情と最も接触しておらず、タイプ4は十分に表出しない傾向があります。同様に、思考センターではタイプ5が思考を過度に表出し、タイプ6が思考と最も接触せず、タイプ7は十分に表出しません。本能センターではタイプ8が本能を過度に表出し、タイプ9が本能と最も接触せず、タイプ1は十分に表出しないとされます。


 本能のサブタイプ(生得本能)

本能のサブタイプとは、人間の行動を動機づける三つの基本的な本能(自己保存本能、ソーシャル、セクシャル本能)のうち、どれが最も優勢であるかによって決まる特性のことです。エニアグラムの各タイプには、これら三つの本能のうちどれが支配的かによって異なるバリエーションが存在します。本能のサブタイプは、幼少期の経験によってどの本能が最も影響を受け、特定の関心や行動パターンが強調されるかによって決まります。すべての人に三つの本能が備わっていますが、その優先順位には個人差があります。最も強い本能が表面的に現れやすく、次に強い本能が補助的な役割を果たし、最も弱い本能は意識されにくくなります。本能のサブタイプは、エニアグラムのタイプとは独立して観察可能であり、エニアグラムのタイプを知らなくても識別できます。優勢な本能は、その人の価値観や関心の対象、人間関係の取り組み方に反映されます。たとえば、自己保存型の人は安全に強く関心を持ち、ソーシャル型の人は集団内での役割やつながりを重視し、セクシャル型の人は親密な関係や強い情熱を求める傾向があります。


 健全度

エニアグラムのタイプには「健全」「通常」「不健全」の3つの大きな区分があり、それぞれ3段階ずつ、合計9つの発達段階があるとされます。この段階は固定されたものではなく、個人は心理状態に応じて上下に移動します。健全度の段階は、タイプの基本構造に基づき、特定の行動や心理的特徴の現れ方によって区分されます。例えば、同じ性格タイプでも、健全な状態では建設的な特性が強く出るのに対し、不健全な状態では防衛的・破壊的な特性が顕著になる。この分類は、エニアグラムの理論に基づく観察によって整理されたものです。

健全な段階では心理的に安定し、柔軟で適応的。他者との関係も円滑です。通常の段階では自我の影響が強まり、内面の葛藤や対人関係の問題が増加します。不健全な段階では、強い防衛反応や衝動的行動が現れ、現実との接触が不安定化します。


 分裂(退行)

分裂とは、エニアグラムにおいてストレスやプレッシャーを受けた際に、個人が無意識的に取る行動のプロセスを示します。この過程では、自己のタイプの特徴が限界に達し、無意識的に他のタイプの特徴を模倣することがあります。分裂は、タイプが極端な状態に達し、健康的な成長から逆行する現象です。特に、問題が解決しない場合、タイプの行動パターンを限界まで押し進め、その結果として分裂の方向に進むことになります。この過程は「行動化」と呼ばれ、無意識的に起こり、必ずしも破壊的ではありませんが、問題を解決するものではありません。分裂の方向には防衛機制が存在し、どの方向にも適応が可能ですが、基本的には未発達な側面が強調される時期を示します。長期間のストレスや感情的な問題が続くと、自分が本来のタイプでなく、分裂の方向に進んだように感じることもあります。


 統合

統合は、意識的な選択に基づいて自己の成長を促進するプロセスです。この過程では、自分の古い習慣や制限的なパターンを手放し、自己の本質にアクセスすることが求められます。統合の方向性に沿ったタイプの特徴が自然に現れることで、タイプに固有の制限から解放され、成長が加速します。統合は、他のタイプの特徴を模倣するのではなく、防衛的なパターンや態度を解放することによって進みます。真の統合は、自己のタイプに固執せず、必要な資質にアクセスすることから始まります。このプロセスにより、自己の本質が表現され、自然な成長とバランスがもたらされます。


 セキュリティポイント

セキュリティポイントは、自己のタイプの統合方向で平均的な行動を取る特定の状況を指します。主に、人間関係で安心感を感じたときに表れ、他者との関係に自信があると、普段は取らない行動を試みることがあります。統合方向への動きとは異なり、セキュリティポイントでは、特定の状況下で一時的に他のタイプの特徴を発揮する現象です。セキュリティポイントと統合の違いは、セキュリティポイントでは、特定の安全な状況下で他のタイプの特徴を一時的に発揮することがあり、統合とは異なり、本質的な変化や成長を伴わない点です。一方、統合では自己の防御的なパターンを手放し、より深い自己理解と自然な成長が進行することが特徴です。


 レッドフラグ

「レッドフラグ」とは、各タイプが不健全な状態に陥る前に直面する警告サインであり、重大な危機を予告するものです。これは、自己の行動や態度が危険な方向に進んでいることを知らせる現実的な恐れです。この警告に気づき、それに対処することで、危機を回避できる可能性がありますが、無視すると自己破壊的な状態に進行してしまうことがあります。各タイプにおける「レッドフラグ」の恐れは以下のように表れます:
タイプ1: 自分の理想が間違っている、または逆効果であることに気づく恐れ
タイプ2: 友人や愛する人を遠ざけていることに気づく恐れ
タイプ3: 自分の成功が偽りであること、または失敗していることに気づく恐れ
タイプ4: 自分の人生を無駄にしている、機会を逃していることに気づく恐れ
タイプ5: 自分が社会や人々との関係で居場所を見つけられないことに気づく恐れ
タイプ6: 自分の行動が自分の安全を危うくしたことに気づく恐れ
タイプ7: 自分の活動が痛みや不幸をもたらしていることに気づく恐れ
タイプ8: 他者が自分に反旗を翻し、報復されることに気づく恐れ
タイプ9: 現実が自分に問題を解決させることを強制することに気づく恐れ

全タイプ間の比較

タイプ1

タイプ1:

  • 基本的な恐れ:自分が間違っている、欠陥がある、悪い人間だと思われることへの恐れ
  • 基本的な欲求:誠実であること(行き過ぎると完璧主義と批判に陥ります)
  • 情念:憤怒。完璧を求めるあまり、自分や世界に対して常に不満を感じ、思い通りにならないことに苛立ちを募らせます。しかし、怒りを表に出すことを良くないと考え、無意識のうちに抑え込んでしまいます。
  • 幼少期のメッセージ:間違いを犯してはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたは良い人です

タイプ2

タイプ2:

  • 基本的な恐れ:愛される価値がないと思われることへの恐れ
  • 基本的な欲求:愛されたいという欲求(行き過ぎると他人に必要とされることに執着してしまいます)
  • 情念:傲慢。自分の本当の欲求を後回しにし、他者を助けることで満たされようとします。そのため、自分の苦しみを直視せず、気づかないうちに無理を重ねることがあります。また、自分の優しさや献身を誇りに思うあまり、知らず知らずのうちに自己満足に陥ることもあります。
  • 幼少期のメッセージ:自分のニーズを持ってはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたは必要とされています

タイプ3

タイプ3:

  • 基本的な恐れ:自分には価値がない、存在意義がないと感じることへの恐れ
  • 基本的な欲求:価値ある存在になりたいという欲求(行き過ぎると成功を追い求めることに囚われるようになります)
  • 情念:欺瞞。自分が「エゴ(自我)」だけの存在だと思い込む自己欺瞞から始まります。その結果、彼らは本当の自分を隠し、社会的に価値があるとされる自分を作り上げようとします。これは「虚栄心」に繋がり、内面的な充実を求めるのではなく、成功や他者からの評価を追い求めることになります。
  • 幼少期のメッセージ:自分の気持ちやアイデンティティを持ってはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたはありのままのあなたとして愛されています

タイプ4

タイプ4:

  • 基本的な恐れ:自分らしさが失われ、誰からも特別だと思われないことへの恐れ
  • 基本的な欲求:自分らしくありたいという欲求(行き過ぎると自己陶酔に陥ります)
  • 情念:嫉妬。「自分には何かが足りない」と感じることから生まれます。他人が持っているものを羨ましく思い、自分に足りないものを欲しがり続けます。そのため、自分がすでに持っている幸せや恵みを見逃してしまうことがよくあります。
  • 幼少期のメッセージ:あまりにもうまく物事をこなしたり、幸せであってはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたはそのままのあなたを見てもらえています

タイプ5

タイプ5:

  • 基本的な恐れ:無能な役立たずだと思われることへの恐れ
  • 基本的な欲求:有能でありたいという欲求(行き過ぎると実用性のない専門知識にこだわるようになってしまいます)
  • 情念:貪欲。他人との関わりが自分の時間やエネルギーを奪うことを恐れ、過剰に消耗することを避けようとします。そのために、人との接触を最小限にし、距離を置くことが多くなります。
  • 幼少期のメッセージ:この世界で快適に過ごすことは許されない
  • 失われたメッセージ:あなたのニーズ(欲求)は、他人や状況にとって負担や問題にはなりません

タイプ6

タイプ6:

  • 基本的な恐れ:頼れる人や指針がなく、不安に取り残されることへの恐れ
  • 基本的な欲求:安心したいという欲求(行き過ぎると特定の信念に固執してしまいます)
  • 情念:恐れ。これは、実際に起こっていないことに対する不安という意味での恐れです。常に最悪のシナリオを想定します。未来に対する過剰な心配や警戒心が尽きることはありません。
  • 幼少期のメッセージ:自分を信じてはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたは安全です

タイプ7

タイプ7:

  • 基本的な恐れ:楽しみを奪われたり、苦しみに閉じ込められることへの恐れ
  • 基本的な欲求:幸せになりたいという欲求(行き過ぎると現実逃避に走ります)
  • 情念:暴食。楽しさや刺激を底無しに追い求めます。内面の空虚感を埋めるために新しい経験を次々と求めますが、どれだけそれが得られても「まだ足りない」と感じます。
  • 幼少期のメッセージ:誰にも何も頼ってはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたは守られます

タイプ8

タイプ8:

  • 基本的な恐れ:他人に傷つけられたり、支配されることへの恐れ
  • 基本的な欲求:自分を守りたいという欲求(行き過ぎると常に闘争的になります)
  • 情念:欲望。これは「常に強く、支配的でありたい」という欲求です。力強さを持ち続け、周囲に対して影響力を誇示し、物事を自分の力で動かそうとします。
  • 幼少期のメッセージ:弱さを見せたり、誰かを信じてはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたが裏切られることはありません

タイプ9

タイプ9:

  • 基本的な恐れ:大切な人とのつながりが失われ、孤立してしまうことへの恐れ
  • 基本的な欲求:平和でいたいという欲求(行き過ぎると極端な無関心状態に陥ります)
  • 情念:怠惰。文字通りの「怠惰」ではなく、「現実から目を背け、関わりを持たないようにする」という心理的な回避傾向のことを、ここでは「怠惰」と呼んでいます。日常に流されることが多く、自分の意志を主張したり、積極的に関わったりすることを避ける傾向があります。
  • 幼少期のメッセージ:自分を主張してはいけません
  • 失われたメッセージ:あなたの存在は大切です

参考資料

  • Don Riso and Russ Hudson (1996), Personality Types: Using the Enneagram for Self-Discovery
  • Don Riso and Russ Hudson (1999), The Wisdom of the Enneagram: The Complete Guide to Psychological and Spiritual Growth for the Nine Personality Types

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