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はじめに
接触・不活性サブタイプというものがあるが、EII-NeのNeと、IEE-FiのNeは何が違うのか、考えたことは無いだろうか。
次元という考えを取り入れれば、両者の違いがわかりやすくなる。日本ではあまり有名ではないが、この次元という考え方は、英露のソシオニクス関連文献や関連サイトでは頻出する重要ワードである。
EII-Ne:EIIは第1機能がFi、第2機能がNe
IEE-Fi:IEEは第1機能がNe、第2機能がFi
概要
1989年、ブカロフはモデルAの機能ごとの位置を「機能の次元」というパラメータで特徴づけることを提案した。そして1995年、この仮説を記した論文が発表された。
この仮説は、イェルマークのシステム・ソシオニクス理論の核心部分に、若干の修正を加えて組み込まれて使用されている。
この理論によると、モデルAの機能は、強い機能(1,2,7,8)と弱い機能(3,4,5,6)に分けられる。これは次のようにも表現される。
1次元性機能(1,8)と2次元性機能(2,7)を「低次元性」機能、3次元性機能(3,6)と4次元性機能(4,5)を「高次元性」機能と呼ぶこともある。
次元ごとの説明
1次元性機能(第4、第5機能)
次元理論によれば、人の人生経験に関連する情報を蓄積して使用することができるが、不慣れな状況では不適切に動作する可能性があるとされている。
最も弱い機能も含めて、全ての機能は「経験」パラメータを使用することができる。
1次元の機能の側面から情報を吸収し、処理することは難しいことである。ここでは、自分が過去に経験した、あるいは他人を観察することによって得た個人的な人生経験のみに頼ることになるとされている。言い換えれば、1次元性機能において、人は自分の失敗経験からしか学べず、どんな説明であっても、それを受け入れて消化することができないのである。
これまでに経験したことのない新しい状況が発生した際、「このように行動すべき」といった行動のテンプレートが自分の経験の中にない場合、使えそうに見える方法(単に「使えそうに見える」だけで、実際には不十分な方法だったり、不適切な方法である可能性もある)に飛びついてしまうか、あるいは、1次元性機能を使うことを避けて、代わりに自分の得意な機能を使って強引になんとかしようとする可能性がある。
- 経験
経験とは:
パターンを認識し、個人的な経験に基づいて一般化する能力のことである。このパラメータは全ての機能に存在する。全ての機能は、人生経験を蓄積して利用することができる。この場合の経験とは、ある側面(機能が司る側面)についての情報を認識した個人の経験を意味している。
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2次元性機能(第3、第6機能)
人生経験に加えて、社会的規範や基準を吸収し、それらに従って行動することができる。
これらの機能は、「規範」「経験」の2つのパラメータを使用することができる。
「規範」とは「理論」から得られる情報である。つまり、自分では経験したことのない他の人々の経験、いいかえると社会的な規範を形成する集団的な経験から来る情報を処理できる。
これらの機能の側面について、人は「あるべき姿」や「典型的な解決策や規範的な方法」について、他の人が書いた説明や本から学ぶことができる。しかし、後述する3次元性機能とは異なり、この次元で扱われる情報は、状況に応じて適切に修正されたりはしない。様々な状況の特殊性を考慮することなく、標準的な方法で使用されることになる。
- 経験
- 規範
規範とは:
自分の周りの環境から標準的なやり方(社会で慣習的に「一般的」だとされているやり方、「普通の人ならこうする」というやり方)を認識して適用する能力である。この次元を持つ機能は、他者による側面の評価に関する情報、すなわち「慣習的に」、「あるべき姿として」という観点から側面を評価することができる機能であるといえる。
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3次元性機能(第2、第7機能)
経験と規範に加えて、状況をナビゲートし、非標準的な解決策を見つけることができる。
これらの機能は、「状況」「規範」「経験」の3つのパラメータを使用することができる。
3次元の機能は、個人の経験や規範、そして現在の状況の特殊性を考慮した情報を処理することができる。これまでに蓄積された経験や「理論」を創造的に利用し、それらを現在の状況に適応させたり、全く別の分野に応用したりするという特徴を持つ。また、様々な人生経験を組み合わせることで、これまでに経験したことのない新しい状況で発生した新しい問題であっても解決に導くことができるとされる。
- 経験
- 規範
- 状況
状況とは:
特定の状況の微妙な違いを認識し、それに対応する能力である。この次元を持つ機能は、特定の状況のパラメータ内で新しい解決策を生み出す能力を持っており、すなわち状況固有の特性や状況を考慮に入れた働きが可能であるとされる。
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4次元性機能(第1、第8機能)
人生経験、社会規範、状況の習得に加えて、時間指向があり、想像上の問題を解決したり、時代の先を行くことができる機能である。
これらの機能は、「時間」「状況」「規範」「経験」の4つのパラメータを使用することができる。
- 経験
- 規範
- 状況
- 時間
4次元性機能は、経験、規範、状況に加えて、時間を考慮した局面の情報を処理することができるため、その側面の情報を予測することに対して高い能力を発揮する。
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これらの機能は、ある経験や状況が実現する前に、さまざまな偶発性や結果を見抜くことができるという、「時間の先取り」が可能であるとされる。
つまり、ソシオニクスにおいて「時間の直観」と呼ばれるNi以外も、それぞれの機能は、それぞれ独自の形で時間の先取りができるし、Niでは不可能な「時間の先取り」も存在するということである。
4次元性のNiを持つILI、IEI、LII、EIIだけがあらゆる未来を見通すわけではない。ESEやLSE、SEE、SLEのNiは1次元性であるが、彼らは4次元性のFeやSeを持っており、FeやSeでは時間の先取りを行う。したがって、例えば時間の直観に優れるILIやLIIであっても、彼らが持つ1次元でしかないFeやSeの側面においては、ESEやSEEほど高レベルな時間の先取りをすることはできない。
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多様な状況を時間をかけて複合化する能力により、4次元性機能は、その人の理解の主要なプールとなり、ある一般的なグローバルレベルの理解をその側面から導き出すことができるとされる。その全体像を他人に伝えることは難しい。これらの機能は、原理的に全く新しいものを生み出すことも可能である。
タイピングで使用される指標
School of System Socionics(機能の次元に重点を置く学派)で使用されるタイピングの指標。
- 経験レベルでの直接的な認識の説明(好き / 嫌い、私はこう感じる、など)。(経験パラメーター)
または
「私の観察によれば、こうです」というような、次の① ②を満たす説明。(経験パラメーター)
① 自分自身の経験に基づいている。
② 何らかの基準(権威ある情報源や考え方、規則、社会で一般的に受け入れられている合意)との比較が存在しない。(経験パラメーター) - 試行錯誤と失敗を繰り返しながら、経験を積み重ねることで何かを習得すること。(経験パラメーター)
- 特定の状況の経験リスト。さまざまな状況を思い浮かべながら、列挙しながら話している場合。これは経験パラメーターに由来すると解釈するのが適切だが、「こういう状況では~」「ああいう状況では~」…というように、「状況」という言葉で語られることがある。「状況」というキーワードから「状況パラメーターに由来する」と誤解しやすいため注意。(経験パラメーター)
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- 情報を比較するためのツールが無い(1次元性)
① 決まった形の規範やテンプレート、規則に従うことができない。
② ルールは知っているが、それを使いこなすことができない。
③ 代替基準や代替規範を使用してしまう。
代替基準や代替規範の例A「一生懸命努力したから上手くいきました」「努力しなかったから上手くいきませんでした」(Teが1次元性)
代替基準や代替規範の例B「私が欠陥を見つけられなかったということは、その仕事が上手くいっていることを意味します」(Teが1次元性;売上や品質管理基準などの一般的に活用されている評価基準の代わりに、ただ「自分が欠陥を見つけたか、見つけていないか」という基準で評価している。) - 思考の特殊性。思考が一般的に受け入れられている考えに対応しておらず、それらを考慮に入れていない。(1次元性、またはバイタルの可能性もあり)
- 個人的な考え方、自分独自の意見、個人的な認識が見られる。(バイタル、あるいは1次元性、あるいは個人的な特異性があるという意味で第1機能、第2機能、第3機能以外の機能)
- 反応の不十分さ:一般に受け入れられていることに従わず、痛みを伴う感情の制御を伴う。(1次元性、または符号がプラス(プラス機能が無力領域に置かれた状態。関連記事「機能の符号とタイピング時の注意点 「品質」特性」)
- 過去の経験だけに頼っていて、経験を通してのみ理解することができる。(1次元性)
- アドバイスを受けた時、それを否定的な批判や攻撃として認識する。(1次元性)
- 一般的には受け入れられているものを「そんなもの必要ない」と拒絶する。(1次元性)
- 過去の経験を繰り返し参照する傾向。(1次元性、あるいはバイタル)
- 固執や、同じ状況や考えを維持し続けたいという欲求、それを変えることへの恐れが見られる。(1次元性)
- 世界に関する情報の一部を「遮断」したい、「背を向けたい」という欲求のあまり、自分の失敗を「なかったこと」として記憶を歪めてしまう。(1次元性)
- 暗示のされやすさ。情報を評価する際、批判的な視点が欠けている。(1次元性)
- 過剰な自信(恐怖や不安を隠すために社会に提示された仮面)(1次元性、または超イド)
- 特定の情報要素の側面に対して自分で自信を持って評価・判断できない。情報に溺れてしまって評価できなくなってしまう。評価を下す際の基準がない。(1次元性)
- 評価基準が、費やしたエネルギーと労力。(1次元性)
- 評価基準が、自分の気持ち。(1次元性)
- 特定の情報要素の側面に対する情報を受け入れる際に、苦痛、恐怖、パニック、劣等感が感じられる。(1次元性(脆弱機能の場合が多い)、または符号がプラス(プラス機能が無力領域に置かれた状態。関連記事「機能の符号とタイピング時の注意点 「品質」特性」))
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- 信頼性のある情報源の参照 - 人物、教科書、辞書など。他の場所で教えられた内容の言及(規範パラメーター)
- 日常において規範的とされる考え方、概念、文書、法則、法律、手法、方法などへの言及(規範パラメーター)
- 一般に認められているもの・受け入れられていることの言及、利用(規範パラメーター)
- 必要性、責任、正しさ
「~する必要がある」「~しなければならない」「~が正しい」「~すべき」「普通は~」 - 柔軟性のない前提条件や規則の主張(規範パラメーター)
- 決まりきった言い回し(ことわざ、熟語など)の使用、ステレオタイプな考え方(規範パラメーター)
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- 具体的な条件や状況に基づく問題の検討(状況パラメーター)
- 一般的に受け入れられている枠を超えること(一般的に受け入れられている枠を拡張すること)。規範を理解している場合は、規範を考慮しつつも、具体的な状況に応じて柔軟な対応をしたり、柔軟な理解を示せる。(高次元性、状況パラメーターの典型的な表れ方)
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- その情報要素に関する情報を一定時間トレースする。(例えば時間パラメーターを持ったSeの場合:パワーバランスの変化がめまぐるしく変化するような職場で、誰が誰に圧力をかけているのか、誰が誰に屈服したのかといった情報を、とりたてて努力しなくてもリアルタイムに拾い続けることができる)(時間パラメーター)
- その情報要素の側面によって自分自身という存在を認識する。あるいはその情報要素の側面が、その人の人生そのものと等しい。(時間パラメーター(第1機能))
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