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機能の次元とは
ソシオニクスにおいて「次元」とは、「強い機能」と「弱い機能」の違いの原因になる要素である。
全ての機能は、4種類のパラメータ「経験」「規範」「状況」「時間」の一部・または全部を持っているとされており、各機能はこのパラメータを考慮して情報を処理する。
関連記事
「状況」パラメータとは何か
「状況」パラメータとはソシオニクスの4つの次元パラメータの一つのこと。
「状況の特殊性を考慮し、その状況に応じて適切な形で情報処理を行う」パラメータである。
本記事では大きく分けて下記の2点の説明をする。
- 状況パラメータを持つ機能と、持たない機能の判別法
- 3次元性機能である第2機能と第7機能の違い
高次元性機能とは
高次元性機能とは、モデルAで「強い」機能だとされる第1機能、第2機能、第7機能、第8機能の4種類の機能のことである。
第1機能と第8機能は4次元性機能であり、第2機能と第7機能は3次元性機能である。
モデルAに従ってみた場合、各機能の次元性とパラメータは下記の通りである。
次元 | 機能の位置 | パラメータ |
---|---|---|
4次元性 | 1, 8 | 経験, 規範, 状況, 時間 |
3次元性 | 2, 7 | 経験, 規範, 状況 |
2次元性 | 3, 6 | 経験, 規範 |
1次元性 | 4, 5 | 経験 |
- 4次元機能(機能1, 8)
- 3次元機能(機能2, 7)
- 2次元機能(機能3, 6)
- 1次元機能(機能4, 5)
◆◆◆
機能の状況依存性(機能が状況パラメータを持っていること)を正しく判断することは、機能の次元性を求める過程で最も重要であり、専門家に必要なスキルの1つである。
高次元性機能の最大の特徴は、具体的な状況やそのニュアンスを考慮した情報処理を行う点にある。
状況パラメータを持つ機能(高次元性機能)は、規範パラメータも持っているため、社会的規範を知り、それがどのように受け入れられているか、どのようにすべきかを知っている。
しかし2次元性機能(規範パラメータあり、状況パラメータなし)と違い、高次元性機能は状況に応じて規範的な「正しさ」から逸脱することが可能である。
また、状況の特殊性を踏まえて、何が最善で最も適切な判断であるか、状況の変化に応じて評価と判断を調整することができる。
状況パラメータの特徴
- 規範から逸脱することができる。
- 規範を守ることも出来る(規範パラメータも持ち合わせているので)。
- 状況の特殊性を踏まえて、何が最善で最も適切な判断であるか、状況の変化に応じて評価と判断を調整する。
◆◆◆
「どうすれば、自分自身や他人を『自分の望むものへと』変えることができますか?自分や他人に圧力をかける方法を知っていますか?」
「その時々の状況によって方法は異なるので、ここでその全てを挙げて説明することはできません。誰がどんな結果を必要としているのかによって、ゴールが変わってきます。その際の全てのニュアンスをお伝えすることはできません。
『してください』の一言でダメだった場合、『怒る』『不機嫌になって見せる』『ねだる』の3つの状態を活用します。これは目標を達成するに際してどの方法が効果的かによって使い分けられます。具体的に言うのは難しいのですが。
最近、私はそれに加えて新しい『影響の与え方』を学びました。『欲しい欲しい』という言葉を、より楽しく、より気まぐれに見せてみるという方法です」
⇒ この例(高次元性Se)では、状況を踏まえた上での行動や判断が語られている。こういった場合、状況パラメータが存在すると考えることが出来る。
◆◆◆
この例のように、状況パラメータの判別に際して、ミスしやすいポイントがいくつか存在する。
以下は次元性(状況パラメータの有無)を判定する際に起りやすいミスである。
- 「状況によって違う」というフレーズを、状況パラメータと安易に関連付けてしまうミス。
- 「人それぞれ」というフレーズを、状況パラメータと安易に関連付けてしまうミス。
- 「複数の規範を適用しているだけ」の状態を、状況パラメータと安易に関連付けてしまうミス。
- 多くの例や、様々な状況のバリエーションを示したことだけを根拠に、状況パラメータの表れだと考えてしまうミス。
- 独創的で予想外の解決策を提示された場合、それを状況パラメータに結びつけてしまうミス。
- 必要な時に規範通りの行動ができるかどうか、あるいは規範性を持つかをチェックせずに、状況パラメータと結びつけてしまうミス。
- 高次元性の特徴が見られず、低次元性の特徴だけが観察された時、安易に低次元性機能だと結論付けてしまうミス。
判定ミスしやすいポイント別の解説
「状況によって違う」というフレーズ
単純に「状況によって違う」というフレーズ自体は、「状況パラメータ」の根拠にはならない。
状況によって行動や判断を変える根拠が下記の場合も、「状況によって違う」というフレーズが出てくるからである。
- 「自分の成功体験」である場合(経験パラメータ)
- 「条件ごとに異なる複数の規範が存在する」場合(規範パラメータ)
「人それぞれ」というフレーズ
このフレーズ自体は以下の場合に出てきやすいフレーズである。
- 状況パラメータ持ちの機能(高次元性機能)
- 規範パラメータを持たない機能(1次元性機能)
- 次元に関係なく、符合がプラスである機能
◆◆◆
高次元性機能は状況の特殊性を考慮した結果として「状況による」「人それぞれ」となる。
それに対して1次元性機能は「規範的な区分の否定、拒絶の文脈上」で「結局人それぞれ・人によって違う」という発言をする。
また、1次元性機能(経験パラメータ)の唯一の基準となるのは「主観的な知覚、個人的な感覚、理解、経験」であるため、他の人の基準と「同じ基準」に調整されることがないものである(関連記事:1次元性機能とタイピングの注意点)。つまり1次元性機能は、個人的な感覚や経験を基に考えた結果として「状況による」「人それぞれ」と語られることになる。
◆◆◆
符合がプラスである機能はクローズアップ・局所性・特定の分野への特化という性質を持つ。
その影響で普遍的な定義・一般的な規範からの逸脱が生じることはある。
この場合「規範からの逸脱」の話の後で、通常「特定の場合を考慮した具体化」が生じることになる(符合とは:記事「モデルA」参照)。
◆◆◆
具体例
「真実、半分真実、そして虚偽。この境界線はどこにあると思いますか?『純粋な真実』『純粋な虚偽』という状態は存在しうると思いますか?」
「境界線を引くことは出来ませんし、純粋な真実や純粋な虚偽は存在しないと思います。真実と虚偽というのは、虹の色に似ています。
緑色が真実、赤色が虚偽だとして、虹の中から純粋な緑色や、純粋な赤色はどこの部分か、そうじゃない部分はどこか、はっきり線引き出来るでしょうか。虹の中には緑と言える無数の色、赤と言える無数の色があります。その中間状態と言える色も無数にあります。
何が真実か、何が虚偽か、それは個人の現実認識によって大きく左右されるのです」
- 規範(一般的に真実といわれるものと虚偽といわれるもの)の相対性を理解している。
- 真実と嘘の評価に、硬直的な固定観念を持っていない。
- 「人それぞれ」的なフレーズを使用している(「個人の現実認識によって大きく左右される」)。
- この人の場合の「人それぞれ」は、個人的な経験を根拠にしたものではない。
◆◆◆
「良いアイデアは、必ずしも正しいアイデアであるというわけではないという考えについて、あなたはどう思いますか?」
「『良いアイデア』というのは一体誰にとっての『良い』ですか?ある人には良くても、別の人には悪いということはよくあることです。良いとか悪いという形容詞は、実は大した意味を持っておらず、私たち個人の考え方に過ぎないことがわかります。そして『誰にとっても良い』という設定はそもそも破綻していると思います。これが私の考えです」
⇒ この例の場合、「個人的な見解への固執・強調」という反応が見られる。つまり規範的な(一般に受け入れられている)理解の存在を否定している。
「規範的な区分の否定、拒絶の文脈上」で「結局人それぞれ・人によって違う」というフレーズが出てきているため、1次元性機能である可能性が考えられる。
◆◆◆
「必ずしも正しいアイデアだけが良いアイデアではないという考えについてどう思いますか」
「やはり、人それぞれだと思います。ある人にとっては道徳的な束縛なしに正しさを求めると思いますし、別のある人は、道徳的な意味で良いこと、または道徳的な意味で良い結果を求めると思います」
⇒ これは誤判定しやすい「複数の規範を適用しているだけ」の状態にも合致する。
「状況に依存する」とは、さまざまな種類の規範的なテンプレートのシフトを指す。この例の場合、「道徳的な束縛なしに正しさを求める」「道徳的な意味で良いこと、または道徳的な意味で良い結果を求める」はいずれにせよ規範(外部の一般的な認識)の枠内に収まっているため、状況パラメータ由来の「人それぞれ」とは解釈できない。
◆◆◆
「人は何のために生きるのだと思いますか?人生には意味があると思いますか?また、それは全ての人が同じだと思いますか?」
「人生において何に興味を持つかは人それぞれです。木を植えたい、家を建てたい、子供を育てたいと思う人もいまし、お金をたくさん稼ぎたい人もいます。特定のもの(島や高価な車)を欲しがっている人もいます。仕事や自分の専門における成果に意味を見出す人もいます。そして、ただ生きているだけで意味を考えない人もいますし、一生かけて意味を探し続けても、見つからない人もいます」
⇒ この場合、具体的な意味の羅列、細部の描写に終始しており、一般化はしていない点が重要である。また、状況との関係性がない点も、状況パラメータの影響ではなく記号の符号がプラスの影響によるものだと推測できる。
「複数の規範」について話しているだけか否か
「複数の規範」について話しているだけという具体例は、上述の「人それぞれ」の例(規範の範疇に留まっている場合) が該当する。
一方、下記は一見すると上述の例に似ているものの、状況パラメータ由来の回答であると判定された例である。
「道徳的なもの・不道徳的なものは、なぜ道徳的・不道徳的だと言えるのか説明できますか?」
「道徳は、何らかの形で、優しさ、尊敬、良い態度に対する最も単純な人間の必要性によって生み出されます。その感情を生み出すものは、道徳的なものです。そして、少なくともそれに違反はしないというのが社会通念です。
また、誰かを傷つけているわけではなくても、悪い見本となるような行動も不道徳だとされています。例えば、道でウォッカを飲んだ人がいると思います(この件に関する法律はよく分かりませんが)。しかし、同時にウォッカを飲むことは直接誰かを傷つける行為ではありません。あるいは、独身男性がストリップ・バーに行っても、パートナーの機嫌を損ねる心配はありません。
ある状況ではそのような行動が原則的に容認されていますが、別の状況、例えば未成年が突然それを真似することは不道徳なことだとされます。それは将来的に健康や社会での立場、人間関係などを害する可能性があるからです」
多くの例や、様々な状況について言及した場合
多くの例や、様々な状況のバリエーション、反応を示したことだけを根拠に、状況パラメータの表れだと考えるのは間違いである。
様々な状況のバリエーションについて言及した際に、以下の特徴があることが重要である。
- 具体的な状況に対して、その状況のニュアンスを考慮した上で、被タイプ判定者自身の考えとの関係を示すものであること。
◆◆◆
以下の二つの例は、いずれも一見すると状況パラメータの現れとは言えない事例である。
具体例1
「あなたは遅刻することがありますか?」
「はい、そういうこともあります。つまり私が時間ぴったりに到着しようとした場合、5分は余裕を持って行動しなければならないということです。あまり行ったことが無い場所に時間通り到着しなければならない場合、もっと(10分~30分)余裕を見る必要があります。
学校ではいつも遅刻していました。の一時間目に遅れてしまったりとかはしょっちゅうです(1分遅刻とかそういうレベルの遅刻ですが)。私の職場はフレックスなので、自分の当初の予定より20分くらい遅れて出社することもあります。
決まった時間に必ず出社していないといけない場合の遅刻に限ると、寝坊で半年に1回くらいですね。寝ぼけて目覚まし時計のアラームを切ってしまったせいで遅刻してしまったので、今では手の届かない位置に目覚まし時計を置くようにしています」
⇒ この例では自分の経験から遅刻のさまざまな状況を挙げているが、行動や評価がどのように具体的な(実際の個々の)状況に依存しているのか、その状況に対して自分をどのように方向づけているかは見えてこない。
5分~30分早く到着するように心がけるのは複数の規範のパターンを適用した結果であり、目覚まし時計を手が届かない位置に置くというのは経験から得た学習である。
◆◆◆
具体例2
「人は何のために生きるのだと思いますか?人生には意味があると思いますか?また、それは全ての人が同じだと思いますか?」
「私自身に限定しても、『人生の意味』は何度か変わってきました。人間とは、外から与えられた世界観から成長し、別の世界観が表れるということを繰り返す生き物だからです。
私が初めて人生の意味を考えたのは11歳の時です。この時『本当の意味で人生に意味なんてない』と思ったのですが、それは不快な気付きでした。
その後、この世界観は宗教的な世界観に置き換えられました。そこで、『人の生きる目的は、神の楽園に入ることである』と教えられました。私はこれを受け入れて、しばらくその世界観の中で生きていましたが、やがてそれが窮屈になって息苦しくなりました。
様々な疑問が生じましたが、答えはありません。人生の意味は再び失われました。
その後、『神は私の中に住んでいる』という考えを持つようになりました。つまり、『自己実現と楽しみ』こそが人生の目的であると感じるようになったのです。それは同時に、私にとってはかなり過酷な世界観でした。自分の限界に挑戦するというのは大変なことです。
また、この頃、私は別の疑問を抱えていました。『なぜ人は恐れているものを引き寄せてしまうのか』ということです。まるで悪循環に陥ったかのように、往々にして人は不快な生活から抜け出せなくなってしまいます。そしてそれについて考えた結果、『人は、自分が望むどんな神も信じることが出来るのだ』と気づいたのです。これはなかなか信じられないかもしれませんが、人は何だってできます。そしてただ一つの罪は、落胆、現実の拒絶です。
この基本的な気付きによって、私がそれまでの人生で抱えていた膨大な数の禁止事項がすぐに解消されました。どの宗教が最も正しいかについての論争は無用になりました。結局重要なポイントはただ一つだけです。シンプルですが非常に重要なことです。それは『どのような状況でも人生を楽しむ能力』です。
これは『自己実現と楽しみ』における楽しみとは別物です。人生には喜びがあるかもしれませんし、ないかもしれません。そして人はそれを受け入れなければなりません。言い換えれば、『人は現実を変えることは出来ないが、現実との向き合い方は変えることが出来る』ということです」
⇒ タイピングの際、上記の例のように「意味の理解が変化した様々な状況のバリエーション」について説明することがあるが、いずれも「柔軟性に欠ける、よく知られた仮定」である点から、常に規範の枠組み内に留まっていると判断することが出来る。
独創的で予想外の解決策を見せた場合
独創的で予想外の解決策を提示された場合、それをすぐ状況パラメータに結びつけてしまうのは、よくある間違いである。
これだけでは、以下の区別がつかないからである。
- 規範的な知識によるもの
- 特定の条件における最も適切な解決策の選択によるもの
- 過去の経験に基づくもの
この点を判別するためには、何に導かれて、どう考えて判断したのかを知る必要がある。
規範性の有無が不明
必要な時に規範通りの行動ができるかどうか、あるいは規範性を持つかをチェックせずに、「規範からの逸脱」を即「状況パラメータと結びつける」のは間違いである。
規範からの逸脱自体は1次元性機能でも起こるため、もしも「規範からの逸脱」を観察した場合、それが「状況の特殊性を考慮に入れた結果」なのか否かを明らかにする必要がある。
◆◆◆
具体例1
「あなたの『美しさについての理解』は、世間一般のものと、どの程度一致していますか?」
「全然わかりません。世間一般の理解なんてそもそも存在するんですか?私が見る限り、みんなそれぞれ独自の『美しさについての理解』を持っていると思うんですが。ネットでも私からすると美しいとは言えないようなものを大絶賛している人なんていっぱいいますし。どんな形が好きか、どんな色が好きかなんてみんな違うんですから、『世間一般の美しさについての理解はこれだ』と定義することなんてできないと思います」
⇒ この例では、一般的に受け入れられている理解の存在を否定し、自分自身の個人的な理解のみに依存している。その点から、規範性が欠如している、すなわち1次元性機能であると判断できる。
具体例2
「あなたの『美しさについての理解』は、世間一般のものと、どの程度一致していますか?」
「ほとんどの場合は、一般的に受け入れられている『美しい』からズレることはありませんが、たまに例外があります。
ただ、自分の感じる美しさをフレームワークに組み込むというのは難しいです。例えば女性の『美しい』体型はどうかと考えた場合、だいたい一般的に『美しい』とされる体型と私が『美しい』と感じる体型は一致していますが(例えば、背が高く、脚が長く、みずみずしい長い髪をしていて、ウエストが細く、ヒップとウエストが一定のバランスであるような女性は美しく感じます)、そこから外れるようなバランスの体型の人(例えば全体のバランスはそのままに、身長だけ155cmの人)であっても『美しい体型だ』と感じることはあります」
⇒ この例の場合、下記のポイントが観察できるため、状況パラメータの存在を推定できる。
- 規範との一致
- 規範の例を示すことが出来る
- 状況の特殊性を考慮したうえでの、規範からの逸脱(上の例の場合、身長155cmという特殊性を考慮したうえで、「身長が高い女性は美しい」という規範から逸脱している)
低次元性の特徴しか見られない場合
タイプ判定の際には、その人の高次元性機能に関する質問であるにもかかわらず、「どんな質問をしても、状況パラメータ由来の特徴らしきものを示さない人(しかも経験や規範に縛られているような回答しかしない人)」が存在することを留意しておく必要がある。
◆◆◆
次元性の判定時には、「時間パラメータや状況パラメータの存在を示す特徴が観察できた」ということから、「高次元性機能の可能性がある」という推測を立てていくべきである。
そして「高次元性の特徴が観察できない」「低次元性の特徴だけが観察できる」ということから「高次元性機能ではない」と考えるのはミスに繋がりやすいので避けるべきである。
その理由は、次元の高い機能は低次元のパラメータも持っているため、低次元パラメータに準拠した反応を示すこともあるからである。
例えば第1機能(4次元性機能)は、時間パラメータ・状況パラメータ・規範パラメータ・経験パラメータの4つを持つため、外部の規範に縛られた発言をしたり、個人的な成功体験を根拠にした話をすることもある。
よって次元性の判定時に低次元性の特徴しか観察できなかった場合、高次元性の特徴(時間パラメータや状況パラメータの特徴)を観察できそうな質問を追加で投げかけるのが得策である。
具体例1
最初の質問(Fe)
◆◆◆
追加の質問(規範から逸脱する可能性について探るための質問)
「適切ではない感情的な反応を見せることについてどう思いますか?それが許されるのはどのような場面だと思いますか?」
「一般に、不適切という概念自体が、『どんな状況において不適切であること』を意味するので、そのような感情は『どんな状況においても受け入れられない』と言うことが出来ます。
例えば葬式など、悲しむ必要がある状況で『楽しそうな感情』を見せることは不適切です(一応言っておくと、全ての葬式が『悲しまなければならない状況である』というわけではありません)。喜劇が演じられている劇場で悲しんだり、泣いたりするのも不適切です。悲劇が演じられている劇場では、もちろん泣くことが適切でしょう。
しかしもし、喜劇を見ている最中に泣くのが適切だという状況であれば、『適切ではない感情』を見せることが許されます。例えば何か悪い知らせを知った場合(誰かが亡くなったとか)は『適切ではない感情的な反応を見せることが許される場面』に該当するでしょう」
⇒ 追加の質問では、最初に感情の適切性の規範的な理解を見せ、次に状況性(特定の状況を考慮に入れた話)を見せている。最初の質問だけでは観察できなかった「状況パラメータ」の存在が推定できる。
◆◆◆
具体例2
比較として、具体例1と同一人物の別の機能(Te)による回答
「品質のグレードとは何だと思いますか?」
「低品質、中品質、高品質のグレードがあると思いますが、品質のグラデーションについてどのようなものがあるのかは正確にはググってみないとわからないです。国やその他の機関によって定められた品質の規格には色々な種類があると思いますが、そこには間違いなくこういう低品質、中品質、高品質というような品質のグラデーションがあるとは思います」
⇒ 冒頭で「低品質、中品質、高品質」というように3段階で品質を評価しているものの、何を基準に評価しているのかが不明であるため、この点から次元性について何かを推測することは出来ない。
また、単に「これまでにどんな品質のグレードを見たことがあるか」という知識について話しているだけであり、こうした自分の持つ知識について話すだけであれば、1次元性機能にも、他の次元の機能でも可能であるため、この点から見てもこの発言から次元性について何かを推測することは出来ない。
被タイプ判定者が「物事がどのように起こるか、どのように評価されるか」を列挙する場合、「その評価が何に基づいているか、どのように決定されるか」を明らかにできるような追加の質問を投げかける必要がある(また、この質問への回答が次元性の特定にとって重要な情報になりやすい)。
この手の質問に答える際、多くの人は① 経験(自分に起こったこと、遭遇した評価)、② 社会通念(世論、権威ある情報源)、③ 状況・条件の考慮、④時間的特徴のいずれかに言及することとなるためである。
この例の人の場合、「国やその他の機関によって定められた品質の規格」について言及している。言い換えると、信頼できる一般的に受け入れられている情報源、社会でそれを評価するのが慣習的である方法、この分野に存在する基準について言及しており、「一般的に受け入れられている考えに準拠して、それを評価の基礎にするよう努めている」というように見ることが出来る。
この点から少なくとも規範パラメータの存在は示唆されるものの、「この機能は2次元性機能なのか」「高次元性機能なのか」をさらに絞り込む必要がある。
「この機能は2次元性機能なのか」「高次元性機能なのか」を区別する重要なポイントは「規範の中に留まることが許される状況の時に、状況パラメータを持つ機能が規範の中に留まることが出来るかどうか」である。
具体的な状況を想定した質問を投げかけた際、状況パラメータを持つ機能は(つまり高次元性機能は)、「状況を考慮しないテンプレートで厳格、柔軟性のない規範」から離れることが多い。これは、そうした場合でもテンプレートな規範を持ち出そうとする2次元性機能とは対照的である。
◆◆◆
2次元性機能か、高次元性機能かを見極めるための追加質問
「特定の何かについて、適切な品質評価をしなければならない場合、どのように判断したらいいと思いますか?」
「品質のレベルは、一定の基準で定められています。
例えば論文の評価が『A』であると言うためには、対象の論文が『能力、トピックの網羅性、著者の視点、論文の規定通りの書き方ができているかなどといった、評価に関わるいくつかの条件やポイント』をクリアしている必要があります。この条件をどのように満たすかは、知識はもちろんのこと、その人の特性や能力によって異なります。
自分の論文の品質を客観的に評価しようという場合、こうした規定の条件やポイントと照らし合わせることで、適切な品質を判断することができます」
⇒ この質問は、特定の状況ごとの特殊性を考慮したうえで評価するにはどうしたらいいと思うかを語らせるための質問である。 これによって「この機能は2次元性機能なのか」「高次元性機能なのか」を絞り込むことが出来る。
この例の場合、「評価に関わるいくつかの条件やポイント」という規範的な基準を持ち出しており、それを遵守することの重要性について言及している。ここでのポイントは、普遍的な基準として「評価に関わるいくつかの条件やポイント」を持ち出している点である(つまり、状況に応じた規範的な基準からの逸脱が見られない)。
同様の状況で、高次元機能も信頼できる情報源を参照することはあるが、高次元性機能は既存の基準を盲目的に適用することは無く、評価時の状況・条件も考慮に入れようとする違いがある。
「能力、トピックの網羅性、著者の視点、論文の規定通りの書き方ができているかなどといった」
この部分は、様々な条件や状況を考えているように見えるかもしれないが、これを状況パラメータと紐づけて考えるのは間違いである。それは、能力にせよトピックの網羅性にせよ、全ては規範の枠内の規準であるためである。状況が変わろうと、この被タイプ判定者の場合、規範の枠内を逸脱するような条件や基準に基づいた評価を行うことは無いのである。
「こうした規定の条件やポイントと照らし合わせることで、適切な品質を判断することができます」
この部分から、評価が「既存の基準に準拠しているかどうか」に依存していることがわかる。
よってこの場合、「規範の中に留まることが許される状況の時に、状況パラメータを持つ機能が規範の中に留まることが出来るかどうか」という質問の結果、「規範の枠を超えることなく、規範の枠内に留まることを選んだ」と解釈することが出来る。
つまり、対象の機能(Te)が二次元性機能であると想定することが出来る。
第2機能と第7機能の見分け
3次元性機能とは、モデルAの第2機能と第7機能である。
この機能は「状況」「規範」「経験」3つのパラメータを持つ機能であるが、それぞれ下記の特徴がある。
第2機能(創造機能と呼ばれる)が規範から逸脱する際、以下の特徴がみられる。
- 規範やルールの存在は把握している。
- 規範やルールを単純に適用した場合よりも良い結果を作り出すために、意識的に規範を逸脱する(この時、第1機能が目標を設定し、それを叶えるために第2機能が働くことがある)。
第7機能(監視機能、無視機能、制限機能とも呼ばれる)が規範の逸脱を行う際、以下の特徴がみられる。
- 状況に対して都合良く働く。
- 自動応答的、無意識的(バイタルブロックの機能であるため)。
- 本人は第7機能の働きを意識していないため、記憶に残っていない場合が多い(そのため「これまでの人生の中で、どのような形で機能が働いたか」を答えなければならないテストの場合、回答が困難な場合も多い)