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ソシオニクス 連想モデルと音楽

2021年5月23日日曜日

ソシオニクス 連想モデル


連想モデルと音楽

音楽心理療法モデルとの類似性

ソシオニクスとは無関係だが、音楽心理療法のモデルとして、ペトルーシン(Валентин Иванович Петрушин)の音楽心理療法モデルというものがある。これは、アイゼンクの気質論やユングの元型論、M.ルッシャー(Max Lüscher)の色の心理的意味(リュッシャー・カラーテストと呼ばれる、色に対する主観的な反応、つまり「この色は好きか嫌いか」によって精神物理学的状態を計測するテスト)などを参考にして作成されているものだが、音楽および色と心理的意味を結び付けたという意味で、音楽心理療法と連想モデルの親和性は高い。

タンジェマンはこのような親和性を踏まえて、連想モデルの目標として、より素早く確実なタイピング手法を確立することの他に、実践心理学者や心理療法士がクライアント一人一人に適した、より効果的なアプローチ方法を開発する手助けになるような理論体系を構築することを挙げている。

連想モデルでは、人の精神的エネルギーのタイプ(TPE)には4種類のタイプ(自我、イド、超自我、超イド)があるとしているが、これらのタイプとペトルーシンの音楽心理療法モデルとの関係性は次のようになる。

自我

自我TPEとペントーシンのモデルと以下の共通点がある。

  • 元型「英雄」
  • 気質「黄胆汁質」
  • 速い(Presto急速に)短三和音(マイナー・コード、※暗めの曲調)の音楽(行進曲)

  • 超自我

    超自我TPEとペントーシンのモデルと以下の共通点がある。

  • 元型「老賢者」
  • 気質「粘液質」
  • ゆっくりした(Adagio緩やかに)、長三和音(メジャー・コード、※明るい曲調)の音楽(祈り)

  • イド

    イドTPEとペントーシンのモデルと以下の共通点がある。

  • 元型「子供」
  • 気質「多血質」
  • 速い(Presto急速に)長三和音(メジャー・コード、※明るい曲調)の音楽(ダンス)

  • 超イド

    超イドTPEとペントーシンのモデルと以下の共通点がある。

  • 元型「グレートマザー」
  • 気質「黒胆汁質(メランコリック)」
  • ゆっくりした(Adagio緩やかに)、短三和音(マイナー・コード、※暗めの曲調)の音楽(歌)

  • 連想モデルから見た音楽

    ここでは各TPEごとの音楽を紹介する。ただし、人はエネルギーを補給するために自分のタイプとは異なるタイプの音楽を聞くこともあるため、自分のタイプの音楽だけを好むというわけではない。

    補足として、TPE以外の観点から音楽とソシオニクスの関連性を見た場合、典型的な感覚型の音楽はダンス曲のようにリズムがはっきりしていて低音の曲であるとされるのに対して、典型的な直観型の音楽には高音の曲が多いとされる。


    自我の音楽

    相関する二分法:外向、合理、動的
    関連するタイプ:LIE, EIE, LSE, ESE

    自我TPEは、目的意識を持ち、制御された強いエネルギーの流れに対応している。

    自我TPEが前面に表現されている音楽には、激しく感情的なエネルギーのバースト、鮮烈なダイナミックさ、リズムの急激な変化や音圧のコントラストなどの特徴が見られる。エネルギーや明るさを感じさせ、行動の原動力になるような曲を想像すればわかりやすい。

    自我TPEの音楽のテーマは、決断力を持つ強さ、外部の状況(自然災害や他人の意志など様々な状況)に抗う力、対決、挑戦、自信、勝利への確信に関するものが多い。

    自我の音楽には、外向的思考(Te)のエネルギーに支えられた、明確で決まったリズムが存在する曲が多い。イメージとしては感情を爆発させる時と、さざ波一つ立たないような冷静さを持って影響を与える対象から離れる時を交互に繰り返すような曲がこれに該当する。人の精神により強力な影響を与えるために、あえて緩急をつけている様子が見て取れる。こうした穏やかなリズムから爆発的な音の増幅へと急激に移行する手法は、ダイナミックな音楽をダイナミックたらしめている重要な要素だといえる。


    音楽の例


    ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi 4 March 1678 – 28 July 1741)
    - Storm


    ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi 4 March 1678 – 28 July 1741)
    - Vivaldi, La Cetra: Concerto Op. 9 No. 11 in C minor RV 198a


    超自我の音楽

    相関する二分法:内向、合理、静的
    関連するタイプ:LII, EII, LSI, ESI

    目的意識を持ち、制御された弱いエネルギーの流れに対応している。

    自我の音楽には明るさや力強い音圧、リズムの変化などの特徴があったが、超自我の音楽にはこういった特徴、つまりダイナミックな激しさや明るさがみられない傾向がある。

    超自我の音楽と相関する二分法は内向、合理、静的だとされている。この場合、内向性は音量の弱さ、合理性はリズムが予測可能である点(リズムが急変しない点)として表現される。そして、この内向性と合理性の表現が組み合わされた結果として、静的な表現、すなわち音楽のイメージの安定感と規則的な繰り返しが生み出されることになる。

    超自我の音楽は、教会で演奏されるような音楽をイメージすればわかりやすい。穏やかで、真剣さや真面目さの下に、自分の魂や個人的な価値観を明らかにし、深い信念を表現し、それに基づいて自分の人生を築き、自分の行動を導いていこうとする力を感じるものが多く、また、外部の環境との戦いにおいて、何が何でも自分の意志を押し通したいという欲求が無い点も、超自我の音楽がもつ特徴だといえる。それだけではなく、超自我の音楽には闘争や対立の原動力(自我)、無限の快楽や喜びを、感じるがままに素直に表現したいという渇望(イド)、空想や幻想の世界に没入したいという願望(超イド)もみられないことが多い。超自我の音楽は、人に内省を促し、人と人との関係や、崇高で普遍的な心と秩序の象徴としての神との関係において、愛と善という永遠の価値観に自身の行動と動機を関連づけるように導くような、深遠で精神的な音楽だとされている。

    困難を乗り越えるというテーマは、自我の音楽だけでなく、超自我の音楽にも特徴的だが、超自我の音楽における困難との闘いは、外部環境との激しい闘いではなく、精神的な強さや地道な努力といった自分自身との闘いに関連していることが多い。

    超自我の音楽の曲調は、人が一日一日、ゆっくりと、しかし確実にゴールに向かって進んでいく様子に似ている。人の精神は、「根気強い努力」「自分で選んだ道や原則を貫き通すこと」「合理的な自律」「意識して、物質的価値があるものよりも精神的価値があるものを選ぶこと」によって強化される。スピリチュアリティとは必ずしも宗教的なものではなく、道徳的で知的な価値観でもあると言えるが、超自我の音楽の元では、内的・外的な緊張を伴わずに、自然にこういった普遍的な価値について思いを巡らせることができる。問題に集中して思考を紡ぐ状態と、法悦を伴う瞑想状態を繰り返しながら、自己犠牲の精神を育み、自分の内面世界をより高い精神的価値に従わせ、普遍的な価値との調和、融合を果たすような音楽である。


    音楽の例


    シューベルト(Franz Peter Schubert 31 January 1797 – 19 November 1828)
    - Serenade


    シューベルト(Franz Peter Schubert 31 January 1797 – 19 November 1828)
    - Ave Maria


    ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi 9 or 10 October 1813 – 27 January 1901)
    - オペラ「ナブッコ」より 「Va, pensiero, sull'ali dorate (行け、我が想いよ、金色の翼に乗って)」


    イドの音楽

    相関する二分法:外向、非合理、静的
    関連するタイプ:ILE, IEE, SLE, SEE

    多様な方向性を持ち、制御されていない、強いエネルギーの流れに対応している。

    非合理的なイドのエネルギーは、私たちを取り巻くほとんどすべてのものを楽しむ能力に現れる。すべての物体は、多かれ少なかれ、私たちの喜びの源となることができるが、これは、フロイトがリビドーという性的エネルギーの概念に込めた意味そのものだといえる。イドの音楽とは、フロイトが既述した人格構造の構成要素としてのイドが持つ精神的エネルギーを最良の形で反映したものである。イドは人格の本能的な部分を表しており、身体が必要としている栄養を摂取するために食べ物を得ること、暖かさを求めること、性的欲求を満たすことなど、身体的な欲求を満たす役割を担っている。イドは快楽の原則に導かれており、イドの唯一の目的は、欲望から生じる緊張状態を和らげ、なるべく早く満足を得ることだとされている。人格のこの部分は、混沌とした情熱に支配されており、論理的思考や時間の流れの認識は存在しない領域である。イドの衝動は、人格の構造全体にエネルギーを供給する巨大なエネルギー源になる。フロイトはイドを、今この瞬間の自分の欲望を満たそうとする、我儘で甘やかされた子供に例えている。

    星が一定の距離に近づいたものを重力で引き付けるように、人の周りには感覚的な刺激を引き寄せ、吸収する一定のスペースがある。こうしたスペースは人だけが持っているものではなく、人の周りにある様々な物体にもこうした重力のように人を引き付けるスペースが存在する。そしてイドのエネルギーは、この感覚的なスペースを広げることを目的としている。人と物体の間で生じる引き付け合いは、まるで空間同士の無限の相互作用が織りなすゲームのように見えることがある。空間の中で常に動いていると、快楽の無限の連鎖が生まれ、まるでその中に溶け込んでいくかのようになる。しかし、無制限に快楽を追求し続けることは、イドエネルギーの担い手本人にとっても周囲の人々にとっても、理不尽で制御不能な危険な行為であると言えるため、このような危険から生物を保護するためのある種の本能も存在する。例えば、満腹になった動物は、獲物を食べずに遊ぶようになるが、それはこの本能から生じている行動だと言える。

    人生には、遊びと喜びの観点から、周囲の空間にある様々な対象物と積極的に相互作用する機会が無限に存在する。イドTPEの音楽には、こうした人生の側面がよく反映されている。イドの音楽はにぎやかだが(外向性)、闘争や対立といった内的な緊張感はない。イドの音楽の役割は陽気な気分を引き立たせ、屈託のない喜びと将来への希望を生み出すことだとされている。イドの音楽には、人を楽観的な気分にさせ、悩み事や日常や様々な問題から解放し、今ここにあるものを楽しませるための力がある。あらゆる場所、あらゆるものにポジティブな始まりを見出し、明るく感動的な喜びを感じることができるように人を導く音楽だと言える。イドの音楽は自我の音楽とは異なり、何かに集中して注意力を発揮したり、外部の障害を克服するために力を蓄えるような要素はほとんど見られない。イドの音楽の世界観の元では、人生の困難は、むしろゲームや競争のように受け止められる傾向がある。


    音楽の例


    モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart 27 January 1756 – 5 December 1791)
    - "Eine kleine Nachtmusik" I. Allegro


    モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart 27 January 1756 – 5 December 1791)
    - Rondo Alla Turca


    超イドの音楽

    相関する二分法:内向、非合理、動的
    関連するタイプ:ILI, IEI, SLI, SEI

    多様な方向性を持ち、制御されていない、弱いエネルギーの流れに対応している。

    自我の音楽と比較すると、超イドの音楽はエネルギーが著しく弱く(内向的)、主観的な想像力と感覚の世界である内的世界への没入度合いが深く、柔軟性と多様性があり、コンセプトは流動的で複雑だという特徴がある。

    超イドの音楽は、その非合理性のためにやや退屈なメロディである場合もあれば、逆に合理性の不在を現わすかのようにリズムやメロディが急速に変化する場合もある。ただし超イドは内向的なタイプのエネルギーであるため、感情の力はそれほど明確・鮮明には現れません。平穏な曲調を乱すほどの激しい感情が表現されることはほとんど見られない。

    憂鬱さ、魂の重苦しさ、悲しみや絶望感に彩られた超イドのエネルギーには、自我のエネルギーを補完し、自我のコントラストを高めることに繋がる力がある。超イドのエネルギーの本質は、周囲の現実と積極的に相互作用することではなく、闘争を拒否し、あるがままの状況を受け入れることにあるとされている。そこには、自分の意志を他人に押し付けたり、社会に反発したりする気持ちはなく、それどころか、外界の状況に適応する能力や、外界で起こるすべてのことを反映しながら無限に変化し、調和的に溶け込んで生きていたいという願望が見られるほどである。超イドの音楽のイメージの中には、時には信じられないほどの心地よさがあったり、逆に架空の現実に対する誇張された違和感があったりする。

    超イドは動的に分類されるタイプであるが、超イドの音楽の場合、この動的としての特徴が内的な緊張感や不安として表現される傾向がある。超イドを気質で分類すると「黒胆汁質(メランコリック・憂鬱)」になるが、超イドの音楽が、静かでほとんど聞こえない音から、作品全体のクライマックスを表現するような、ドラマチックで鮮烈なエネルギーに満ちた音へと段階的に発展していく様子からは、メラコリックな要素よりも、典型的なダイナミック(動的)な要素を感じられる。これは、周囲の現実の変化に合わせて感情が変化していくという人間の心の内面に着目しながら、身の回りの現実を細部まで見つめ、繊細に映し出すアーティストの能力を表現したものだと言える。

    超イドの音楽はダイナミックに変化・発展するものであるため、芸術的、音楽的なイメージは十分に明確に描かれないことが多く、絶え間ない形の変化や流れそのものに注意が向きやすい音楽であることが多い。また、超イドの音楽は、ゆっくりとした静かで内向的なメロディーをベースにして、ゆっくりとしたテンポ(フェード)から思いがけない急激なテンポの加速とリズムの変化があるという特徴がみられることもある。


    音楽の例


    ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 17 December 1770 – 26 March 1827)
    - Moonlight Sonata


    ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 17 December 1770 – 26 March 1827)
    - Symphony No.3 E-flat major, Op.55 “Eroica


    ドビュッシー(Claude Debussy 22 August 1862 – 25 March 1918)
    - La Mer – Second Movement


    モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart 27 January 1756 – 5 December 1791)
    - Recviem


    参考:

    ソシオニクス・タイプ診断

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