カリナウスカスの輪
Grigory Reininは、現在のソシオニクスで一般的なモデルAではなく、カリナウスカスの輪というモデルを使用している。そのため機能の配置がモデルAとは異なっている。
機能 #1 – 客観的直観(Ne)
第1機能は自信の領域です。そしてIEEの自信の領域にはNe、すなわち外的状況の完全性が配置されています。
このタイプの人々は、調和的だと感じる状態の幅が非常に広いです。過酷な外的状況下でさえ、調和がとれていて、自然で、うまくいっている状態だと認識するかもしれません。
「私の住む世界は調和がとれている。だからこそ私は存在する」
これがIEEの存在原理です。
機能 #-1 – 主観的直観(Ni)
IEEはしばしば内面世界の完全性を無視します。EIEにとって、この領域は娯楽的であり、創造性を発揮する領域ですが、IEEにとっては無視の領域なのです。
IEEはどうにかして自分の状態や気分を分析にかけたうえで、「こうあるはずだ」という状態や感情をそこに上書きする傾向があります。
自分の気分を上手くコントロールできない場合、彼らはそれを「戦うことができず、なんとか妥協して共存せざるを得ない悪」と同じようなものだと認識します。
機能 #2 – 主観的倫理(Fi)
これは創造性の領域です。
「気が向いたら恋をして、気が向かなくても恋をして、後でもっと恋をする」
これはあまり安定しているとは言えない関係です。彼らの恋愛感情は決して確かなものではなく、安定したものでもありません。今日あなたのことを愛していたとしても、明日どうなっているかはわかりません。
IEEの感情の幅は広く、「愛」から「憎しみ」まで、さまざまな色合いの感情を持っています。一度憎しみを感じるとそれが決定打になって関係が破綻するタイプというのはありますが、IEEはそうではありません。
「月の下に永遠はありません。今日の愛の行方がどうなっているのかは、明日だけが知っています」
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IEEは感情表現や人に対する態度の示し方という意味でも不注意な面があります。
平然とした顔で「お前バカなの?」と言ってしまうようなタイプです。IEEとしては他愛のない冗談であり、じゃれ合いのようなものでしかありませんが、アルファ・クアドラの観点からすると、この手のジョークは完全に不適切です。
筆者 [1] にはIEEである友人がいますが、彼が何か冗談を言うたびに、私は内心ギョッとしています。しかしそれに対して私が出来ることは、基本的には何もありません。
IEEの創造性は、感情表現や人に対する態度の示し方という方面に発揮されます。そして彼らはそれができるポジションとチャンスを探し求めています。
そのため、このタイプの人は、自分の創造性を存分に発揮できる、社会的リーダーポジションにいることがよくあります(それは職場の部署かもしれませんし、それ以外の場かもしれません)。
機能 #-2 – 客観的倫理(Fe)
IEEは二分法「貴族主義」に分類されるタイプであるため、相手が自分と同じサークルに所属しているかどうかに大きく依存しています。
このタイプの人は、社会的結びつきをある程度フォーマルで標準化された形にしようとする傾向を持っています。そのため、IEEが社会的な場で対話する場合、双方の立場を考慮しながら、形式に則ったフォーマルな形で行おうとします。
IEEは親しい人との関係でも、しばしば距離を置いています。
機能 #3 – 客観的論理(Te)
IEEの自己肯定感は外的な秩序の安定性に基づいています。IEEの自己肯定感の原則は「私が住んでいる世界に秩序があるなら、私は良い人間だ」です。
IEEには、ステージでギターを演奏したりするような活動が良く似合います。このタイプの人々は、ある種の理想的なイメージを自分で体現しようとします。
第3機能は一般的に単純化と言う形で働きます。そしてIEEの場合、ここにTeが配置されているため、客観的な論理(Te)の単純化が行われます。言い換えると、これは現実世界のロジックを単純化し、理想化することを意味します。
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多くの場合、IEEはパートナーが抽象的な理想に従うことを期待しています。しかしそれは、現実の人間には不可能なことであるため、IEEは配偶者探しに苦労することになります。さらにいえば、自分のすぐそばにいる人は、そもそものIEEの理想の定義からして「理想的ではない人」です。
IEEはドン・ファン的だと言われることがあります。これはなぜかというと、既存の人間を理想化する道を選ぶでもない限り、彼らは常に「自分の理想の愛を捧げるに相応しい相手」を探し続けてしまうからです。
とある非常に知的なIEEの女性が、このサイクルをどうやって断ち切ったのかについて話してくれました。
「一連の上手くいかなかった関係の後、私は人生のある時点で、ただ一人の男性だけを愛することに決めました。この男性とは、私の息子のことです。それ以降、自分の理想という観点から異性を見たことはありません」
いずれにせよ、彼女は自分の力で自分の理想にまつわる問題を解決しました。
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以下はロシアの詩人アレクサンダー・ブロックの知り合いの話です。
彼(ブロックの知り合い)は1918年のある日、詩人ブロックのアパートを訪ねました。そこでブロックの机が完璧に整頓されていることに気づいた彼は、「なぜこんなにきちんと整頓しているのか」とブロックに尋ねました。するとブロックは「これが周囲の混沌に抵抗する唯一の方法だからだ」と答えました。
これがIEEにおける第3機能による自己防衛の方法です。IEEは、自分のテリトリーに理想的な秩序を求めます。こうした自己防衛は、たとえ意識して行っていることであっても、大幅に第3機能の働きを強化することになります。
IEEは外界のことをよく感じ取り、見事に計算しています。まるでコンピューターのようにカウントし、様々な測定値を比較します。
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一般的に人は自分の第3機能に非常に注意を払い、第3機能の状況を明確化しようとします。IEEの場合、自分の理想、自分の世界観を最後まで守ろうとします。そのためであれば、いつでも議論に受けて立つ準備も出来ています。
このような人が、特定の流派や競技の信奉者になることはよくあることです。ある種の世界像を一度受け入れて、「世界はこうだ」と思うと、彼らはその教義を積極的に広め、大衆に伝えようとし始めます。
この典型的な例が、「種の起源」説を唱えたダーウィンと、IEEのニックネームの由来にもなった王立協会会長ハクスリーの交流です。実際ハクスリーのおかげで、ダーウィンの進化論は一般に広がり、現代科学の重要な位置に置かれました。ダーウィンはもっぱら理論家であったため、ハクスリーがいなければ、ダーウィンの進化論がここまで日の目を見ることは無かったかもしれません。ハクスリーは熟練した実践者であり、素晴らしい普及者でした。
機能 #-3 –主観的論理(Ti)
これは問題解決の領域です。
このタイプの人は、客観的な現実に関する情報をなるべく構造化しようとします。つまり、超越的な概念(言い換えると自分たちの世界観では表現できないようなもの)が入り込む余地のない、理想的な世界の記述を構築しようと試みます。
IEEは、未知が存在することは許容しますが、検証不可能なものが存在することは許しません。
機能 #4 – 主観的感覚(Si)
IEEにとっての良い場所とは、心地の良い感覚を得られて、気分が良くなる場所です。
軽く撫でて、おいしい食事を与えれば、IEEはすっかりあなたに懐くことでしょう。彼らの完璧な世界がそこにあるからです。快適さの条件が満たされていればIEEは気分が良くなり、軽いトランス状態に入ります。さらにそれを続けた場合、トランス状態が深まり、眠りに落ちてします。
IEEは感覚からの暗示を受けやすいタイプです。
誰かの健康について一言話をするだけで十分です。それを聞いたIEEは自分の健康について過敏になり、考え込んでしまうかもしれません。自分とは何の関係もない突発的な情報に触れるだけで、IEEは自分の意志に反してそれに没頭してしまうことがあります。
このタイプの人は心気症的な傾向 [2] が強いですが、最も扱いやすい人だとも言えます。
IEEは医者を信頼しています。では霊能力者が相手の場合はどうでしょうか。
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「膝のあたりに熱を感じますか?」
「はい、感じます」「膝に痛みは感じますか?」
「はい、痛いです」「あなたはだんだん、膝の熱が強まっているのを感じます。だんだん、だんだん熱が強くなっていきます。これから私はあなたの膝の熱を吸い出していきます。あなたは膝の熱が吸い出されているのを感じますか?」
「はい、だんだん熱が引いていく感じがします」「あなたの熱を全て吸い出してしまいました。どうですか?気持ち良くなりましたか?」
「はい、スッキリしました」「今、膝は痛いですか?」
「いいえ、全然痛くないです!」
このタイプの人は、どんな方法でも治療できますが、最も簡単な方法は、こういった穏やかな暗示をかけることです。
この場合、心身医学のメカニズムは双方向に作用しています。人は自分の気持ちから病気を生み出してしまうことがあります。こういった病気を治癒するためには、同じく自分の気持ちに基づいて、病気を取り除く方法を考え出す必要があります。
大切なことは、治療を受ける人が何かを感じるという点です。そしてそれは、その人が持っている信念体系に依存しています。この信念は何だってかまいません。バイオエネルギー神話でも何でもいいのです。
機能 #-4 – 客観的感覚 (Se)
これは完成への恐怖や、行動への恐怖を意味しています。
もしもIEEがフェンスを作ろうとしたら、10年間くらい建築し続けているかもしれません(そして、そのフェンスに最後の釘が打たれることはありません)。論文を書こうとしたら、15年くらい費やす可能性もあります(しかし15年経っても「不完全」であり、未完成のままです)。
IEEはしばしば不完全な形・物体の世界に住んでいます。そして(ILEとは違って)IEEはこの不完全さと絶えず格闘しています。
もしもIEEに何かを依頼するのであれば、かなり厳しい納期を設定する必要があります。そうでなければ、IEEは理想に近づけるために何度も修正と手直しを繰り返して、際限なく時間を費やしてしまうでしょう。
彼らの考える「完璧」に限界などないことを、きちんと考慮に入れておくべきです。さもなくば、永遠に完成品は出来上がりません。
自分自身のこういう面を理解しているIEEは、あえて締め切りを決めようとしなくても、最初からそれが決まっているような仕事(例えば人に何かを教える仕事)を選ぼうとすることが、よくあります。
有名人
- トマス・ヘンリー・ハクスリー
- ドン・ファン
- セオドア・ルーズベルト
- フレデリック・ショパン
- マーク・トウェイン
- トム・ソーヤ
訳注
- ^ 本出典の著者であるGrigory Reininは、自分自身をアルファ・クアドラのILEだと考えている。参考:Wikisocion: Reinin, Grigoriy(外部リンク)
- ^ 心気症とは、肉体的には病変が確認されないにも関わらず、ささいな身体的不調が原因で「自分は重い病気にかかっているに違いない」と強く思い込んでしまう精神疾患のこと。