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表記ゆれ
この二分法は、下記のように呼ばれることもあります。
プロセス、右、エボリューション
結果、左、インボリューション
V. Gulenkoによる改名について
V. Gulenkoがこの二分法を「改名」した結果、混乱が生じました。
A. Augustinavichjuteと G. Reininは、この二分法を「左-右」と呼んでおりました。
(左:ILE、SEI、EIE、LSI、SEE、ILI、LSE、EII、
右:ESE、LII、SLE、IEI、LIE、ESI、IEE、SLI )
しかし本稿では、V. Gulenko と T. Prokofieva の、より現代的な「反対」の呼称を使用しております。[1]
(左/結果タイプ:ESE、LII、SLE、IEI、LIE、ESI、IEE、SLI
右/プロセス:ILE、SEI、EIE、LSI、SEE、ILI、LSE、EII)
二分法の名前は、その中身を決定するものではないので名称変更自体は重要な問題ではありませんが、もしも読者がソシオニクスの文献を探していて、V. Gulenkoとは異なる分類方法に遭遇した場合に備えて記載しておきます。
分類
右、プロセス、エボリューション
ILE, SEI, EIE, LSI, SEE, ILI, LSE, EII
(xNTp、xSFp、xNFj、xSTj) [2]
左、結果、インボリューション
ESE, LII, SLE, IEI, LIE, ESI, IEE, SLI
(xSFj、xNTj、xSTp、xNFp)
α | β | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ILE | SEI | ESE | LII | EIE | LSI | SLE | IEI | |
プロセス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
結果 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
γ | Δ | |||||||
SEE | ILI | LIE | ESI | LSE | EII | IEE | SLI | |
プロセス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
結果 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
典型的な特徴
右・プロセス
- 最初から最後まで、順番に物事を進めます。
- プロセスに没頭しており、シングルタスクの傾向があります。
- プロセスの始まりと終わりの間に焦点を当てます。
- 本やパソコンで文章を読む場合、最初から最後まで読み通す傾向があります。
- 「正しい手順を踏んだのだから、答えは正しいに決まっている」
左・結果
- ランダムに物事に着手しているように見えます。
- プロセスから切り離されており、マルチタスクの傾向があります。
- プロセスの始まりと終わりに焦点を当てます。
- 本やパソコンで文章を読む場合、ランダムに読むことが多いです。段落や章をランダムに読むことも多いかもしれません。
- 「正しい答えが出たのだから、正しい手順を踏んだのだ」
典型的な特徴(拡張版)
2003 年のレーニンの特徴の研究から取得。
右・プロセス
- プロセスタイプは、自分自身を「プロセスの中にいる」と認識し、プロセスに「没頭」し、その一部となります。そのため、複数のプロセスを同時に管理することは非常に困難です。
- プロセスタイプは、プロセスを全体的、統合的、不可分なものとして認識します。また、一度始めたプロセスを中断して後戻りすることは難しいため、複数のプロセスを切り替えずに、それぞれのプロセスを進める傾向があります。プロセスタイプにとって、一度「中断していた」プロセスに再着手するということは、「途中から続きをやる」のではなく「全く新しいことを始める」のに等しいことです。
- 語彙:「プロセス」という言葉を多用します。
左・結果
- 結果タイプは、自分を「プロセスの外」に置き、プロセスから離れます。結果タイプにとって、状況やプロセス(自分がやっていること)は、自分の外側にあるものであり、外から管理するものです。そのため、結果タイプは、複数の仕事・事柄を同時に処理し、それぞれの始まりと終わりを追うことができます(プロセスタイプよりも簡単に複数のプロセスを並行して管理できます)。
- 結果タイプは、結果やアウトプットを総括するために、中間見積もりや最終見積もりを試算したがる傾向があります。結果、つまりプロセスの終着ポイントを志向しています。結果タイプは、自分が関与する事柄の結果が明確に定義されていないと、不快感を覚えます。これは、結果タイプの場合プロセスの外側に身を置いているため、プロセスの進行状況を(プロセスタイプほど簡単には)監視できないからです。結果タイプは、中間段階や最終段階で試算した「結果」の見積もりを使って、プロセスの自然な流れをトレースしようとします。
- 語彙:会話では「始まり」「終わり」「段階」「間隔」「結果」という言葉を多用します。
備考
プロセスタイプと結果タイプの基本的な違いは、状況やプロセスに対して「内」からアプローチするか、「外」からアプローチするかという部分にあります。「プロセス」や「結果」への志向は、あくまでも二次的なものにすぎません。
結果タイプにとって、見積もり(プロセスの集計)は、プロセスの流れを感じるために使わざるを得ないツールです。
一方プロセスタイプは、完了前に「スイッチがオフ」になってしまい、何かの結果が出た際にプロセスと接続できなくなってしまうことを避けるために、なるべくプロセスに接続し続けたままでいようとします。
今回の検証では、プロセスタイプの完璧主義に関する仮説は確認されませんでした。おそらく完璧主義というのは、この二分法とは関係のない個人的な特徴だろうと推測されます。
仮説
この二分法は、精神機能としての「注意をどこに向けるか」、「注意をどの程度向けるか」という特徴に基づいています。
プロセスタイプは、注意の安定性と集中性(仮に気が散るようなことがあっても、1つのトピックに長時間集中する能力)が高い可能性があります。
結果タイプは、注意を「分散」させ(同時に複数のトピックに注意を向けること)、あるトピックや活動から別のトピックや活動に注意を「移動」させる能力を示しています。
例
右・プロセス
- 「何かを終わらせることも、始めることも、簡単ではありません。でも最も難しいのは、ずっと前に放棄していた何かの途中まで戻ることです」
- 「本の章を終わりまで読み、次の章の数ページに入る…何かが終わると思うと、怖くなる時があります」
- 「ゲームを禁止されても、ずっとゲームのことが気になり続けてしまいます」
- 「新しい仕事を引き受けるにはエネルギーが必要ですし、引き受ける時には困難さを感じますが、実際に動き始めると勝手に前へ進んでいくような感じがします」
左・結果
- 「身近な物事がどうなっているか、ちゃんと把握しておかないと落ち着きません。最終的な試算が必要だというわけではありませんが、少なくとも中間での試算はほしいです」
- 「ある物事を始めたり、完成させたりすることは、私にとってとても面白さを感じることです。自分が完成させたプロジェクトやタスクを視覚化すると気分がよくなります」
- 「最も恐ろしいことは、何かが終わらない時です」
- 「私はいつも、複数のプロジェクトを両手でジャグリングして回しています。まるで曲芸師のような気分です。私は2つのポイント、つまり始まりと終わりを意識しています」
- 「なぜ食べながら話を聞けないのか」
グレンコ著「認知形態」からの解説
筆者は、この二分法を「プロセス/結果」あるは「右/左」という名称で理解しています。より正確には、これらはラテン語の「エボリューション」(外に向かって発展する)と「インボリューション」(内に向かって融合する)に由来しています。
知的レベル
このレベルでエボリューションとインボリューションを記述する場合、まず演繹的思考と帰納的思考が対比させられます。
残念ながら、演繹的思考と帰納的思考という言葉は、認知的な面から見た場合、少なくとも2つの異なる意味でこれを扱っています。
第一の意味としては、演繹は単に思考の厳密な形式的順序または説明的進行として理解され(これは言い換えるとソシオニクスの合理性です)、一方で帰納は実践的経験から生じる結論として理解されています(これはソシオニクスの非合理性です)。
しかしここでは、この二分法を第二の意味、すなわち思考構造の単純化と複雑化の対比としてとらえることにします。
つまり、演繹的思考では、単純で明白な記述(公理、仮定)があれば、その結果は必然的に導かれます(定理)。推論は単純なものから複雑なものへという方向で流れていきます。そのため、エボリューションタイプは心理的な意味で状況を複雑化させます。
帰納的思考では、逆の形で推論が進んでいくことになります。複雑な現象を観察し、理解すると、帰納的思考はそれを一般化した図や、細部を取り除いたモデルに落とし込みます。インボリューションタイプは、状況を理解するために、状況を分解し、単純化します。推論は、複雑なものから単純なものへと逆順に流れていくことになります。
エボリューションとインボリューションという二分法は、問題における検討のスケールが異なることを意味します。
エボリューションタイプは小さいものから大きいものを見ます。細部が明確で、スケールは地理的な地図のように具体的で正確です。一方、インボリューションタイプは、大きいものから小さいものを見ます。細部は曖昧で、スケールは一般化されていて広いです。
否定主義 [3] の場合、交互に考えようとするため、このスケールもまた交互に代わることにはなりますが、優先順位は上述の通りです。注目すべきは、社会では常に演繹的思考が帰納的思考より優先される点にあります。ある現象を説明するために演繹的に一貫性のある理論を構築することは、常に研究者によるとどめの一撃とみなされてきました。
社会的レベル
社会的なレベルにおいて、これらのアプローチの違いは、自然性/人工性 [4] として対比することができます。
自然性とは、自然界に内在する原始的な行動を指し、人工性とは、社会的に受け入れられている行動を指します。例えば自然界では適者生存が原則ですが、社会では弱者の保護や配慮が培われています。
このことから、近距離の人々(親しい人々)と、遠距離の人々(親しくない人々)に対する態度の違いが生じます。
エボリューションタイプの人生では、社会的評価がより大きな役割を果たします。エボリューションタイプの場合、友人や親類の意見よりも、対外的な他人の意見の方が重要視される傾向があります。
インボリューションタイプは、社会的評価にあまり依存しません。インボリューションタイプの場合、内輪の人々に対して、より親身になります。彼らは世間からの評価よりも、内輪の人々の意見を高く評価します。
インボリューションタイプは、突然会話を打ち切る癖があります。コミュニケーションを単に断ち切るのではなく、具体的に話を締めにかかったり、話を要約しようとします。また、いきなり話が脱線したり、急に本題に戻ったりすることもあります。
エボリューションタイプは、そんなインボリューションタイプの行動を「マナー違反」「粋の無さ」「無関心さ」「激しい怒りの表れ」だと感じる可能性があります。
心理的レベル
エボリューションとインボリューションという二分法は、他の二分法と同様に、心理的ストレスの重要なパラメータである、神経系の興奮性/抑制性プロセスの非対称性制御に影響を与えます。
エボリューションタイプは、インボリューションタイプよりもストレスからの回復が遅いです。
エボリューションタイプにとって、(神経系の興奮プロセスの意識的なコントロールに比べると)、抑制プロセスの意識的なコントロールは難しいです。
そのため個人的な問題について考えこみやすい傾向があります。
エボリューションタイプは、それがどんなプロセスであれ、一度引き込まれてしまうと簡単には抜け出せなくなることが多いです。これはギャンブル、薬物使用、アルコール依存症、その他の悪癖、さらにはインターネット依存症につながる可能性があります。
この結果として、条件付けに対する感受性は、エボリューションタイプのほうが(インボリューションタイプよりも)高くなります。条件づけされた反応は一本の道に沿って動くことを要求します。引き返したり、課された道から外れたりする可能性はありません。
条件付けの抑制メカニズムのひとつにフォビア(強迫性恐怖症)があります。これは、滑りやすい道で「絶対に転ぶ」という考えが頭にこびりついて離れない状況を想像すればわかりやすいかもしれません。これはフォビアの一例ですが、こんな時、人はたとえ登山靴を履いていても、実際に転んでしまうのです。
筆者の観察によると、インボリューションタイプはこのような恐怖症に、深刻に悩まされることはありません。
このように、インボリューションタイプは、幻想、押しつけられた意見、暗示された考え、狂信的な状態などを、より迅速に、より苦痛なく取り除くことができます。
エボリューションとインボリューションの違いがあるからこそ、クアドラが分かたれ、社会的進歩の輪が形成されるのです。
身体的レベル
エボリューションとインボリューションという二分法は、プロセスか結果のどちらかを志向することにより、低次元のコミュニケーションに表れます。
エボリューションタイプは、手順に傾倒しており、細部を入念に研究する必要があります。最初から最後へ、上流から下流への動きを前提とした開発プロセスのロジックに従います。
インボリューションタイプは、結果を急ぐあまりプロセスの細部をおろそかにしがちです。そのせいで全体的な品質が低下します。このような行動パターンが、返品や修正に寛容な姿勢につながります。最適とは言えないものの、活用はできる解決策を受け入れるのに抵抗はありません。また、「終わりから始まりへ」「下流から上流へ」という逆方向の動きが特徴的です。
読書を例にすると、ページの終わりや下をすぐに見てしまうのは、インボリューションタイプに特有の特徴です。逆から読むことは、新しさの楽しみを奪うものではなく、逆に情報を吸収する活動を活性化させることです。インボリューションおを、単に先を急いで読み飛ばし、その後はスムーズに読み進めることと混同しないでください。
ある活動から別の活動への散発的な移行とともに、インボリューションタイプでは動きのシャープさが観察されます。
このような動作の突然さは、エボリューションタイプの滑らかさとは明らかに対照的です。
従来のソシオニクスの考え方では、シャープな動きは合理性に起因するとされてきました。しかし筆者は、この性質はむしろインボリューションによって決定されるものだと考えています。
例えば、エボリューションかつ合理タイプであるLSIやEIIの動きは、柔らかく滑らかだという特徴があります。しかしインボリューションかつ合理タイプであるSLEやIEEの動作は非常にシャープであり、訓練して滑らかな動作を身につけることは事実上不可能です。
インボリューションとエボリューションの根本的な違いを明確にするには、次のようなアナロジーが役に立つでしょう。
生物学では、有機物の代謝に異化と同化という2つの側面があります。
異化作用とは、複雑な化合物を分解してエネルギーを放出し、分解生成物を生物体から排除することです。これはインボリューションタイプがグループダイナミクスにおいて果たす役割に対応します。
同化作用とは、生命維持に必要な物質を外界から吸収し、より複雑な化合物に変換することです。これはエボリューションタイプが果たすコミュニケーション的な役割に対応します。
その他の解説と注意事項
プロセス/結果という特性は、時にその人の知能レベルや、短絡的・冗長的な傾向を示すと誤解されることがあります。
Victor Gulenkoはプロセスタイプを 「心理的な意味で状況を複雑化」する傾向のあるタイプと表現しました。タイプ判定者の中には、このGulenkoの推論にしたがって、複雑な推論能力、複雑なテーマで議論する傾向、高い言語知能、言葉巧みさをプロセス特性に、そして逆に短絡的で、単純で、知的に低レベルな推論を結果特性に直接関連づけようとする者もいます。
人の思考の複雑さや、言葉巧みさは、このプロセス/結果というソシオニクスの特性と直接関係があるわけではないため、そこを間違えないように注意する必要があります。
結果タイプは最初に全体像を把握します。このビジョンは、先天的に知的さに秀でている場合は非常に豊かで複雑になり、平均以下の場合は粗野で浅くなります。しかしいずれの場合も、全体像の把握には長い時間が必要です。
一度、学ぶべきことをすべて学ぶと、特にTiが「尊重する機能」に分類されるタイプの場合 [5]、まるで「システムの上」に立ち、遥か上から全体を見渡し、その後ズームインして細部や詳細を点検することになると言えるでしょう。
一方プロセスタイプは、内部プロセスに関連づけ、システムの内側に入り込み、さまざまな方向に分岐する経路やラインを見ることになります。
結果タイプは、「結論を簡潔に話す」傾向があり、拡大解釈することに抵抗を感じます。これは時に、知性の低さを示すサインとして受け取られます。
しかし、要求されれば、あるいは促されれば、完全な理由付けとそれを支える例や証拠を提供することはできます。
ただ、それには時間がかかってしまうため、彼らは必要な場合を除いてエネルギーを節約することを好んでいるのです。
文章からプロセスタイプと結果タイプを区別する方法のひとつとして、文章中の帰納的推論と演繹的推論の兆候に着目する方法があります。
理論的特性
プロセスタイプは、直観-論理(ILx)、論理-感覚(LSx)、感覚-倫理(SEx)、または倫理-直観(EIx)のいずれかです(括弧内はタイプ3文字表記)。
結果タイプは、倫理-感覚(ESx)、感覚-論理(SLx)、論理-直観(LIx)、直観-倫理(IEx)のいずれかです。
注意:すべての専門家が、プラスとマイナスの情報代謝要素の使用を支持しているわけではありません。多くの専門家は、論理的に余分なものだと考えています。
プロセスタイプは、モデルAの第1機能にプラスの情報要素があります。
結果タイプは、モデルAの第1機能にマイナスの情報要素があります。
訳注
- ^ 本サイトもV. Gulenkoのほうに合わせている。
- ^ プロセス/結果という二分法についていえば、双対同士は必ず同じ側になる(例えばILE-SEIペアはどちらもプロセスであり、SEI-LIIペアはどちらも結果である)。なおかつ、各クアドラには必ずプロセスの双対ペアと結果の双対ペアが含まれる。このプロセス/結果という二分法のグルーピングは恩恵リング(要求関係のリング)に基づいている。なぜこのようなグルーピングになるのか気になる場合は記事「社会的進歩リング」参照。
- ^ 二分法「否定主義」のこと。否定主義になるのは、アルファとガンマの内向タイプと、ベータとデルタの外向タイプ。具体的にはSEI, LII, EIE, SLE, ILI, ESI, LSE, IEE。
- ^ 関連記事「社会的進歩リング」。自然/人工についてもう少し詳しく説明している。
- ^ ここでいうアルファとベータの結果タイプ。具体的にはESE, LII, SLE, IEI。尊重する機能については記事「クアドラ」参照。