ソシオニクスの要求関係に基づくタイプの連鎖のことを「恩恵リング」と呼ぶ。
表記ゆれ
恩恵関係(Relations of benefit)は、要求関係(Relations of request)、社会的秩序(Social order)とも呼ばれる。
要求する側(要求者、ILE-EIEの関係で言うとILE側)は「後援者、恩恵を与える人(Benefactor)」「要求送信者(Request transmitter)」、「送信者(Transmitter)」、「顧客(Customer)」という呼び方をすることがある。
そして要求される側(被要求者、ILE-EIEの関係で言うとEIE側)のことを「受益者(Beneficiary)」「要求受信者(request receiver)」または単に「受信者(Receiver)」とも呼ばれる。
(表記ゆれが非常に激しいが、BenefactorとBeneficiaryが最もポピュラーな印象を受ける)
恩恵リング(Ring of benefit)はオーダーリング(Order ring)、カスタムリング(Custom ring)と呼ばれることがある。
要求関係と恩恵リングは監督関係に基づく改訂リングとは別物なので注意。
恩恵リングとは何か
下記はソシオニクスの関係表である。例としてILEを使って説明したいと思う。
まず、下記の表から、ILEの要+(要求+、ILEが要求する側)の関係を順に追って行ってもらいたい。
ILE | SEI | ESE | LII | EIE | LSI | SLE | IEI | SEE | ILI | LIE | ESI | LSE | EII | IEE | SLI | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ILE | 同 | 双 | 活 | 鏡 | 要+ | 監+ | 協 | 幻 | 超 | 消 | 似 | 衝 | 要- | 監- | 共 | 準 |
SEI | 双 | 同 | 鏡 | 活 | 監+ | 要+ | 幻 | 協 | 消 | 超 | 衝 | 似 | 監- | 要- | 準 | 共 |
ESE | 活 | 鏡 | 同 | 双 | 共 | 準 | 要- | 監- | 似 | 衝 | 超 | 消 | 協 | 幻 | 要+ | 監+ |
LII | 鏡 | 活 | 双 | 同 | 準 | 共 | 監- | 要- | 衝 | 似 | 消 | 超 | 幻 | 協 | 監+ | 要+ |
EIE | 要- | 監- | 共 | 準 | 同 | 双 | 活 | 鏡 | 要+ | 監+ | 協 | 幻 | 超 | 消 | 似 | 衝 |
LSI | 監- | 要- | 準 | 共 | 双 | 同 | 鏡 | 活 | 監+ | 要+ | 幻 | 協 | 消 | 超 | 衝 | 似 |
SLE | 協 | 幻 | 要+ | 監+ | 活 | 鏡 | 同 | 双 | 共 | 準 | 要- | 監- | 似 | 衝 | 超 | 消 |
IEI | 幻 | 協 | 監+ | 要+ | 鏡 | 活 | 双 | 同 | 準 | 共 | 監- | 要- | 衝 | 似 | 消 | 超 |
SEE | 超 | 消 | 似 | 衝 | 要- | 監- | 共 | 準 | 同 | 双 | 活 | 鏡 | 要+ | 監+ | 協 | 幻 |
ILI | 消 | 超 | 衝 | 似 | 監- | 要- | 準 | 共 | 双 | 同 | 鏡 | 活 | 監+ | 要+ | 幻 | 協 |
LIE | 似 | 衝 | 超 | 消 | 協 | 幻 | 要+ | 監+ | 活 | 鏡 | 同 | 双 | 共 | 準 | 要- | 監- |
ESI | 衝 | 似 | 消 | 超 | 幻 | 協 | 監+ | 要+ | 鏡 | 活 | 双 | 同 | 準 | 共 | 監- | 要- |
LSE | 要+ | 監+ | 協 | 幻 | 超 | 消 | 似 | 衝 | 要- | 監- | 共 | 準 | 同 | 双 | 活 | 鏡 |
EII | 監+ | 要+ | 幻 | 協 | 消 | 超 | 衝 | 似 | 監- | 要- | 準 | 共 | 双 | 同 | 鏡 | 活 |
IEE | 共 | 準 | 要- | 監- | 似 | 衝 | 超 | 消 | 協 | 幻 | 要+ | 監+ | 活 | 鏡 | 同 | 双 |
SLI | 準 | 共 | 監- | 要- | 衝 | 似 | 消 | 超 | 幻 | 協 | 監+ | 要+ | 鏡 | 活 | 双 | 同 |
- ILEが要求+になるのは、相手がEIEの場合
- EIEが要求+になるのは、相手がSEEの場合
- SEEが要求+になるのは、相手がLSEの場合
- LSEが要求+になるのは、相手がILEの場合
つまり要求関係は4タイプで一周するのである。このようにタイプが繋がり合って一周する状態のことをソシオニクスではリングと呼ぶ。これは恩恵関係から成るリングなので「恩恵リング」と呼ばれる。
こうした恩恵リングは、ILE, EIE, SEE, LSE以外にも3種類のリングが存在する。つまり恩恵リングには合計4種類のリングがある。具体的には下記の通り。
恩恵リング (要求する側→される側で並べた場合)
ILE → EIE → SEE → LSE → ILE
SEI → LSI → ILI → EII → SEI
LII → SLI → ESI → IEI → LII
ESE → IEE → LIE → SLE → ESE
右リングと左リング
ここで要求関係とはどのような関係だったかを思い出してもらいたい(下記はモデルAにそって説明した場合の話)。
- 要求者の第2機能(創造機能)と、被要求者の第5機能(暗示機能)が一致
- 要求者の第5機能(暗示機能)と、被要求者の第4機能(脆弱機能)が一致
恩恵関係の繋がりを図で示すと、下記のような図が描ける(図が複雑になりすぎるので第2機能→第5機能側のみ図示している)。
ILEとSEIなど、二つに並んでいるタイプ同士は双対ペア。ILEとSEIの背景の色はクアドラを示す(青がアルファ、赤がベータ、緑がガンマ、黄がデルタ)。
矢印で結ばれた一連のタイプ(例:赤い矢印で結ばれているILE→EIE→SEE→LSE→ILE)が、先ほど説明した恩恵リングである。
図の左側は左回り(クアドラはギリシャ文字の逆順、すなわちアルファ→デルタ→ガンマ→ベータ→アルファ)となる。
一方、図の右側は右回り(クアドラはギリシャ文字の正順、すなわちアルファ→ベータ→ガンマ→デルタ→アルファ)になる。
つまり、4種類の改訂リングには左回りのリングと右回りのリングの2種類のリングが存在するのである。
リングが右回りか左回りかが、二分法「右/左」に相当している。右は別名「プロセス」、左は別名「結果」とも呼ばれる。
恩恵リング (要求する側→される側で並べた場合)
right(右、プロセス)
ILE → EIE → SEE → LSE → ILE
SEI → LSI → ILI → EII → SEI
left(左、結果)
LII → SLI → ESI → IEI → LII
ESE → IEE → LIE → SLE → ESE
ソシオニクスにおいて、この恩恵リングは、クアドラの二分法(αΔ/βγで分ける「周辺性/中心性」)と共に、社会の進歩に深くかかわっているとされている(社会的進歩リング)。