協力関係となるタイプ
はじめに
協力関係(ビジネス関係、類似関係)はモデルAの偶数番号の機能が全て共通であるタイプ同士の関係です。機能の半分が共通しているという点では、同一関係や共鳴関係に似ています。このため手法やアプローチに一定の共通性があり、コミュニケーションスタイルもある程度似ています。
お互いを理解するにあたって深刻な問題を抱えることはほとんどありません。お互いを知り、共通点を見つける(あるいは相違点を明確にする)のにも、それほど多くの時間を必要としません。
それなりに距離感のある付き合いになることが多いため、お互いのことをあまり深く知ろうとはしません。むしろ比較的表面的な付き合いだけで満足してしまいます。生活環境や場所が変われば、そこで友情が途切れてしまうのが普通です。
協力パートナーは、お互いのことを「深刻な脅威」「競争相手」とは感じない傾向があります。また、互いの影響力の及ぶ範囲や、基本的な考え方、目的(これは第1機能を通して設定されることが多いです)が大きく異なるため、潜在的な競争相手にはなりにくいです [1]。
さらに、両者ともに脆弱機能(第4機能)が同じであるため、第4機能が刺激されるような事態はほとんど起こりません。そのため互いにリラックスして付き合うことができます。
しかしながら互いの第1機能と対応しているのが第3機能であるため、一緒に過ごすこと自体が一種の挑戦であったり、努力して取り組む物事のように感じられることはあります。
協力関係の交流では、互いに相手のことが少し好きになり、その逆にいつもの自分のことが少し嫌いになります。
さまざまな著者による説明
Valentina Meged, Anatoly Ovcharov
協力関係は、新しいプロジェクトを組織化する時や、困難を克服しようとする時、極限状態に対処する時、競争に勝ち抜こうとする時に適した関係です。
しかし上記のような実際の行動よりも議論や理論的な話が優先されるような状況になると、様子は少し変わってくるかもしれません [2]。こういった状況では、同じ問題に対して互いに異なるアプローチを好むため、サポートしあうのが難しくなります。
また、互いの仕事を正当に評価でき、理解しあうことができるにもかかわらず、自分の理解を相手に押し付けようとするところがあります。これが悪化して相手の粗探しをし始めるようになってしまい、関係が冷え込んでしまうかもしれません。その一方で、それぞれの世界観に違いがあるおかげで、互いに興味をもって交流できるという面もあります。
協力関係は、妥協点を見つけやすく、アドバイスを交換したり、互いの要望を話し合ったりしやすい関係です。共通の目標に対する積極的な姿勢があれば、この関係は大きく前進します。
I.D. Vaisband
協力関係は、スムーズに、穏やかに進行していくことが多い関係です。
創造機能(第2機能)を通して互いを理解しあい、誠実な交流が行われます。しかし互いの気分や士気を向上させるという意味では、この関係はあまり効果的ではありません。行動スタイルの違いから対立が始まることがあります。こうなると、あらゆる点で相手に譲ろうとせず、相手を出し抜くための情報を漁ったり、相手の弱点探しに夢中になります。
協力関係は、共通の敵や共通の問題に団結して立ち向かわなければならないような状況では、著しく改善します。その一方で、波風のない状況では、些細なことで揉めてしまい、関係が悪化しやすいです。
協力関係は、主に論理に基づいた関係です。そのため、この関係下にいると人々はより計算高くなり、現実的、実用的な観点から優先順位を決めて、評価するようになります。両者が自分にとっての論理的な計画に固執し、それを押し通そうとします。協力関係では、感情は成功のための論理に完全に従属させられることになります。この関係は、両者が持つ権力を行使する力を強化し、競争力を高め、パワーバランスを現実的に評価する能力を促進します。
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協力関係は、長期的なプロジェクトには向いていません。もっと短期的で、目に見える利益をもたらすような活動に向いています。この関係は力の均衡の上に成り立っていますが、超自我関係とは違って、協力関係の場合、この均衡を維持しようとするどころか、むしろ両者はもっと自分に有利なるようバランスを崩したがります。
時間がたつにつれて、絶え間なく続く権力やリーダーシップ、仕事の奪い合いに疲れてきます。そうする中で、真実を探るのではなく、互いの弱点探しばかりするようになるかもしれません。
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互いに同じような方法で行動しているように見えますが、その実、目的は全く異なっています。競争が熾烈になり、そのうち投げやりな付き合いになるかもしれません。
一歩前進したかと思うと一歩後退することも多く、その都度挫折を味わうことになります。最後のほうになってくると、出会い初めの頃に感じていた「自分と相手が似ていたら嬉しい」という気持ちも吹き飛んでしまいます。
O.B. Slinko
「The key to heart - Socionics」より
協力関係のパートナーは、同じ実行機能 [3]を持っているため、好む方法が似通っています。
コミュニケーションは常に活発で、会話は長く続きます。この関係は、ビジネス上の議論や協力関係にも似ています。互いの第3機能を発展させ、問題解決に向き合うような交流になりやすいため、有意義な付き合いになりやすいです。
注意点として、協力関係にあたる人に接する際は、自分の第1機能で相手に圧力をかけないよう気を付ける必要があります。そうでなければ、コミュニケーションが不快な言葉の応酬になってしまうことがあります。
R.K. Sedih
「Information psychoanalysis」より
協力関係は、同一関係と超自我関係を混ぜ合わせたような関係です。両者がより成熟しているほど、利害が一致しているほど、快適で有益な関係になります。
交流に不安を感じている場合、互いの第3機能を傷つけてしまうこともあります。ただしこれが深刻な事態にまで悪化することはほとんどありません。世界観が部分的に同じであるため、相手が望めば簡単に妥協することができます。
◆◆◆
通常、真面目な活動をする上での軽い摩擦が、関係性の親密化に寄与することは、あまりありません。協力関係は、一定の距離を保ちつつ、互いを思いやり、助け合える関係です。「もっと私の価値観に合わせてほしい」と相手に期待し始めると、関係性は悪化します。筆者の経験上、これは避けるべきです。
常に相手を上回ろうとすることで、自分を成長するための機会を得ることができます。また興味深い情報を提供しあうことができ、互いの名声や能力を高める役にも立つため、この関係は協力という点から見て非常に有益です。
Laima Stankevichyute
「Intertype relations」より
互いを理解しあい、誠実に付き合うことができる関係ではありますが、仕事で助け合うことはできません。交流が長期間になると疲れを感じてしまいます。
倫理タイプ同士のペアの場合、非日常的な感情に欠ける平凡な付き合いにウンザリしてしまい、論理タイプ同士のペアの場合、密すぎる会話や、なにかにつけて理由を求められる会話にウンザリしてしまいます。
倫理タイプは互いに表面的で軽薄だと非難しあい、論理タイプは互いに相手のことを「頑固だ」とか「コミュニケーション能力が足りない」「やる気がない」と感じやすいです。
A.V. Bukalov, G. Boiko
「Why Saddam Hussein made a mistake, or what is Socionics」より
お互いを理解しやすく、喜んで交流する関係です。しかしながら一般的に見て、両者はかなり異なる目標を持っています。
あまり互いを傷つけてしまうことはありませんが、時折、片方のペア第1機能の使用によって、もう片方のペアの第3機能に圧力がかかってしまい、不快感をもたらすことはあります。
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協力関係は、あまり親密な付き合いには向いていません。心理的距離が近いと、相手の目的や意図が原因でイライラしやすくなってしまいます。
また創造機能(第2機能)が同じですが、これは完全な相補性には繋がりません。例えばILE-SLEペアの場合、どちらも倫理的要素が欠けているため、非常に難しい関係になる可能性があります。
Victor Gulenko
「Criteria of reciprocity」より
慎重な単調さ:
それほど魅力を感じる関係ではありませんが、コミュニケーションの初期段階では、(形式的なものではありますが)パートナーに対する関心と尊敬があります。
しばらくすると、相手が自分を過小評価しているように感じるようになります。そして「自分をもっと正当に評価してほしい」「自分はそこまで低評価な人間ではない」と言いたくて仕方なくなってくるかもしれません。
長期間、接触していると疲れてしまいます。時間がたつにつれて、互恵関係や共通意識がさらに損なわれていくことになります。
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付き合う上でのアドバイス:
協力関係のパートナーの間では、競争や権力闘争が起こりやすい傾向があります。それを避けるためには、一方のパートナーがもう一方のパートナーのことを強者、あるいは経験豊富な人、リーダーとして認める必要があります。
今後の行動について論理的に話し合い、それぞれが考えたことを合意通りに実行してください。そうしないと、自分の行動様式を押し付けようとしたりして、大きな摩擦が生じることがあります。仕事の成果についてきちんと話し合って、今日一日がどうだったかを分析するようにしてください。そうでないと不信感や疑念が生じ、倫理的にどうなんだと批判されるかもしれません。
この関係では、相手の妨害をしたいという欲求が起こることがあるかもしれません。協力関係とは論理的・経営的な性質の関係です。利害の衝突は避けられないため、一人だけで解決してしまうのは特に避けるべきです。
もしも対立してしまった場合は、起こった出来事を切り離して理解するよう努めてください。また、違う活動に切り替えてみるのも手です。この場合、主導権を握っている側のパートナーは、もう一方のパートナーに対して意識して良好な態度で接するか、少なくとも対立なんて起きなかったというように振舞う必要があります。
V.V. Gulenko, A.V. Molodtsev
「Introduction to socionics」より
協力関係は、対等なパートナー関係です。「友情」というより「パートナーシップ」といった方が適当です。コミュニケーションの障害になるものはほとんどありません。互いに何でも話すことができます。この関係にはある種の安心感があります。お互いに相手を脅威には感じません。そしてこれは、特に敵対的な人間関係の多い環境に慣れている人にとっては、非常に喜ばしい感覚です。
協力関係には、それぞれが社会で果たす役割をより際立たせる性質があります [4]。会話中、意図的にプレシャーをかけたり、緩めたりすることが交互に行われます。会話のテーマやトピックごとに、どちらが優位に立つかがある程度固定化されます。
協力関係であることによって、仕事上の協力が上手くいくこともあります。しかしこれはサブタイプが一致している場合にだけいえる話です。もしもサブタイプが異なる場合、楽しいはずの会話が過度なプレッシャーになってしまうことがあります。このプレッシャーは常に相手の強い機能から与えられます。まるで青天の霹靂のように感じる圧力ですが、それでも意見や考え方が全く一致しないということは稀です。
一般的に、互いに助け合おうとする関係になります。お互いに、相手がどのような支援を求めているのかを正しく認識することができますが、集中的な支援が行われるわけではありません。
◆◆◆
これらの特徴をまとめると、協力関係は平均程度の快適さを持つ関係だといえます。相手に恨みを感じることも、相手の恨みを買うこともない関係です。
対等で退屈ではないコミュニケーションに対する満足感の表れとして、「とても付き合いやすいとまでは言えないものの、それなりにきちんとした付き合いができている」と感じるかもしれません。
Ekaterina Filatova
「Art of understanding yourself and others」より
2番目の機能と3番目の機能が同じです [5]。したがって、2番目の機能と3番目の機能が関係している場合は、円滑で平和的な付き合いが期待できます。
互いに相手の苦手な機能をターゲットにした手助けができます。2番目の機能や3番目の機能に関する共通の事柄がない場合は、誤解や緊張が生じます。
Eugene Gorenko, Vladimir Tolstikov
「Nature of self」より
利害が一致している場合は、かなり良好で安定した付き合いが出来ます。しかし目標が違いすぎる場合、混乱が生まれたり、互いを遠ざけ合ったりしがちです。親密な関係になるのは避けた方が無難です。
Sergei Ganin
協力関係は、内向性/外向性が同じで、片方のパートナーから見た場合の関係と、もう片方のパートナーから見た場合の関係が対照的な関係です。関係の進展の仕方にはリズム性があります。
この関係は友人と言うよりは知人といったほうがいいような、対等な関係です。目に見える形の障害なしに関係は進展していきます。相手からの危険を感じずに付き合ったり、ほとんどどんな話でも気軽に話したりできる関係です。
両者の得意分野は異なっており、二人の会話はほとんどいつも、どちらか片方のパートナーにとっての自信の領域に収まることになります。その一方で両者は同じような問題を抱えています。そのため、お互いの弱点を批判し合うよりは、むしろ同情的になることのほうが多いです。
◆◆◆
通常、互いに理解し合うことが出来ます。特に互いに魅力を感じている場合は、非常に実りのある共同活動が可能かもしれません。しかし怒りやその他の理由で共感を失った場合は、相手の弱点にプレッシャーをかけることがあります。これは両者にとって本当に予想外のことであり、不愉快なことです。
あまり言い争いは起きません。通常、互いに助け合おうとするか、少なくとも相手が何らかの援助を必要としていることは感じ取ります。しかし多くの場合、両者は同じような問題を抱えているため、十分に効果的な助け合いは出来ません。
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他のタイプ関係と比較した場合、協力関係の快適さは平均程度だと言えます。敵対的であったり、反発し合うような関係ではありません。「対等で退屈ではない人との交流」になりやすい関係であり、そこから満足感を得ることが出来ます。
協力関係の理論的特性
合理タイプ同士のペアの場合、論理/倫理の二分法が異なっています。非合理タイプ同士のペアの場合、感覚/直観の二分法が異なっています。
訳注
- ^ 諸説あり。Victor Gulenkoはむしろ競争が起こりやすいという説明をしているほか、I.D. Vaisbandも熾烈な競争が起こることがあるという説明をしている。
- ^ 実際の行動=第2機能が中心になる。議論や理論的な話=第1機能が中心になる。協力関係の場合、第2機能は一致しているのでお互いに理解しやすいが、第1機能は異なっているため、第2機能同士でやり取りしていた時よりも方向性の違いが顕著になる。
- ^ 実行機能:第2機能(創造機能)のこと。
- ^ 協力関係は第1機能と第3機能が一致し合う関係であるが、第3機能は役割機能と呼ばれる機能であり、他人の期待に応え、社会で何かを成し遂げるために「努力」しなければならない個人の弱点だと人が認識している領域である。相手の第1機能の影響で普段よりも第3機能が刺激されやすくなるため、それに伴って普段よりも第3機能の領域(つまり社会的役割)に目が向きやすくなる。
- ^ モデルA以外のモデルに基づく説明。具体的にどのモデルを参照しているのかは出典上に記載がないため不明であるものの、文脈から「カリナウスカスの輪」モデルに近いモデルではないかと思われる(カリナウスカスと同じ順序、かつ機能のプラスとマイナスがない4機能モデルだと仮定した場合、例えばILEとSLEの場合、ILE=1直観、2論理、3倫理、4感覚、SLE=1感覚、2論理、3倫理、4直観となる)。