準双対関係となるタイプ
はじめに
準双対関係とは、「不完全な双対」あるいは「欠陥のある双対」と呼ばれることのある関係です。
通常、意見は一致しやすく、友好的な関係です。互いに強い関心を示すことが多い関係で、特に相手に魅力を感じた場合はこの傾向が加速します。しかし残念なことに、準双対パートナーのどちらかが社会的、あるいはエチケットに反するような失敗をすると、この関係の調和はすぐに崩れてしまいます。
幸いなことに、準双対パートナー間では、話題に困ることがないくらい次々と話したいことが出てきます。そのため「会話に退屈する」とは無縁な関係です。また、相手に怒りを感じても、その怒りがあまり長くは続かないという利点もあります。
準双対関係のことを「蛾と炎」に例える有名専門家もいます。「互いに惹かれながら、何度も焼かれるような関係」という意味での例えです。第三者から見た場合、準双対関係は特に情熱的で愛情に満ちた関係に見えるかもしれません。
さまざまな著者による説明
Valentina Meged, Anatoly Ovcharov
準双対パートナーは互いの問題に気を配り、協力を求められたらそれに応じることが出来ます。しかし実際に共同作業をすると、協調性の欠如や、個人主義・頑固さが目立ってしまいます。
パートナーからアドバイスや要望、苦情を出されたら、それを正しい解釈で理解し、きちんと受け止めることが出来ます。また「アドバイスをきちんと考慮した方法」を十分とることができると感じる傾向もありますが、実際のところ「両者にとって受け入れられる方法」を取れるとは限りません。
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それぞれの準双対パートナーは、まず第一に自分の利益や都合を優先して考え、それから相手の快適さに関心を向けます。
両者は同じ物事に対して異なる見解を持っていますが、そのため相手に魅力を感じやすいです。準双対パートナーは「どことなく不思議で、予想が出来ず、理解しがたい人物」だと感じられます。相手の言っていることの一部しか聞き取れないため、まるで「言いたいことがあるのに我慢している」ように感じたり、「あえて全てを語らないようにしている」と感じたりするかもしれません。
世界観の違いから、距離が近いと口論になりやすいため、交流に疲れを感じるようになります。しかし一度距離を置くと、すぐに仲直りできます。
I.D. Vaisband
準双対関係は、多くの場合、魅力的に感じられる関係です。しかし定期的に突然、一見すると何の理由もなく理解の欠如が生じる関係でもあります。
この関係は、一度こじれても、すぐに修復する(つまりすぐに仲直りする)ことが多いです。計画段階では、双対関係と比較しても遜色ないくらい順調に話し合いが進んでいきます。しかし実行段階にうつると、両者ともに無力で、何をすべきかわからない領域 [1] があることに気付かされることになります。
このように、準双対関係は「双対関係であれば補完し合えていたはずの領域の半分」しかカバーできない関係であるため、完全な助け合いは不可能です。完全な補完ができないせいで、互いに失望を感じてしまうかもしれません。
O.B. Slinko
「The key to heart - Socionics」より
準双対関係では、パートナー間の「実行」機能 [2] が異なるため、行動の調整に難があります。そのため準双対関係は「双対の半分」の関係というより、それ以下の関係と言えます。とはいえ議論と言う意味では、準双対関係はかなり有用です。特に、議論が「理論だけ」に限定されていない場合は、互いの問題解決の役に立ちます。
その一方で、相手は思いがけない行動であなたを驚かせ、二人の関係に緊張とストレスをもたらすことがあります。関係の発展の過程を「相互理解を深める時期」と「実際の行動を調整する段階」に分けて考えると、前者の段階ではかなり親密さを深めることが出来ますが、後者の段階に入ると、この相互理解は崩れてしまいます。
R.K. Sedih
「Information psychoanalysis」より
準双対関係には常に助け合う機会があります。特に両者が共通に持つ機能に焦点を当てた場合、簡単に助け合いができます。こうした機能は準双対関係の親密化に寄与することになりますが、それ以外の面では荒っぽい関係になってしまうかもしれません。
状況が良ければ、互いを知り、慣れ、強い絆を築く余裕もあります。こうした場合は、このタイプ関係の落とし穴を避ける術も学べます。
準双対関係は非常に深く、申し分のない関係になる可能性を秘めた関係です。そのため一部の専門家は、悪い状態の双対関係よりは、良い状態の準双対関係ペアと一緒にいる方が有意義であると指摘しています。
Laima Stankevichyute
「Intertype relations」より
準双対関係というタイプ関係は非常に興味深い関係ですが、かなり唐突に、予測不可能な形で理解の欠如に直面することがあります。それまで全てが上手くいっているかのように見えていたのに、突然、これといった理由もなく関係が失速し、停滞してしまうことがあるのです。どうやって打開したらいいのか分からなくなってしまい、互いを責め合い始めることもあります。
準双対関係の場合、争いが起こっても、すぐに、簡単に解決できますが、次の争いがいつ起こるかは予想できないままです。
A.V. Bukalov, G. Boiko
「Why Saddam Hussein made a mistake, or what is Socionics」より
多くの場合、準双対関係は友情と仕事の両面で実りある協力ができる関係ですが、二人の間の距離を縮めると、アンバランスさや失望がうまれます。
こういう時、準双対パートナーは互いのことを「エゴイスティックな人だ」と感じるかもしれません。
例えば、「自分の物を触られるのが嫌」と感じやすいLSIについて、双対関係と準双対関係の例を比較してみると、LSIの双対であるEIEは、他の人の物を勝手に触ろうとはしないタイプですが、LSIの準双対であるESEは自分流にアレンジしようとします。これはLSIにとっては気に障る行為ですが、ESEはなぜLSIがそれほど怒っているのか理解できません。
Victor Gulenko
「Criteria of reciprocity」より
遠慮のある快適さ:
準双対関係は、今の関係の心地よさを失ってしまうのではないかと思って、互いの距離を縮めるのを恐れるという興味深い関係です。
しばらくの間、楽しいコミュニケーションをした後で、次にどう進めばいいのかわからなくなってしまいます。両パートナーは、互いの行動の中にある不快な一瞬に対して静かに注意を向けていますが、相手の行動の是非を大っぴらに指摘したり、議論したりして、相手にそれを気付かせようとすることはありません。
通常、当人たちの気質に従って義務や責任、仕事が分配されます。意見が異なる際は、妥協や譲歩という形で解決されることが多いです。
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パートナー間の違い:
準双対は、双対よりもはるかに関係の確立が難しいです。親密になるのは簡単なことではなく、長い時間がかかります。第三者の存在は混乱を招き、準双対パートナー間の感情的なバランスを乱してしまいます。
この関係には内向きな傾向がありますが、それは関係の安定化に寄与するものでもあります。
準双対関係において最も重視されることは、互いの快適さと利便性です。コミュニケーションをすると誤解が生じることがありますが、そのせいで定期的に関係がこじれます。
普通に考えると合理的とは言えないような原則に従って関係性が変化していく性質があるため、まるで運命のいたずらの関係のように感じることがあるかもしれません。
両者の身体的健康状態も、関係性の移り変わりと同様に変動することがあります。
感情の起伏の激しさは、この関係にとっては破壊的に作用します。協調精神、理性、相互利益を得られる事業の存在、外的脅威の存在(より細かく言えば、外的脅威に団結して立ち向かおうとする状況)が必要になります。
感情の爆発を抑え、生産的な仕事をすることによって、準双対関係に見られる「感情に左右されることのない快適さ」という魅力を提供したり、強化できます。
準双対関係は、体調の悪化を感じやすくなる関係です。双対関係と比べると、リラックスすることに難があります。
両者の物質的な幸福は、両者が共に努力することによって得られます。これは特に直観タイプ同士の組み合わせの場合に当てはまります。
準双対関係は、成功の可能性を現実的に評価し、すぐに利益を得ることができる事柄だけを取り上げることのできる関係です。
準双対関係のダイナミズムを、双方のパートナーは鋭敏に認識できます。余暇と仕事は明確に切り分けられます。
双対関係よりも、何か関係性を乱すような出来事があった際の混乱は大きいです。まるで、関係をよりダイナミックにしたい、相手が驚くようなことをしたいと願っているかのように感じられるかもしれません。
準双対関係は、両者が持つ個性の維持という意味では役に立つ関係です。この関係下では、それぞれが自分のスキルを自分で磨き、相談しながらも自分のことは自分で何とかしようとします。そのため上手く関係性を管理したり、自己修正できる傾向があります。
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付き合う上でのアドバイス:
忍耐強くなってください。また、イベントを相手に強要しないでください。
親密になるためには非常に時間がかかる関係であることを、常に忘れないでください。より多くの自由時間を一緒に過ごしてみてください。
この関係は身体的な感受性が高まる関係でもあります。そのため身体的接触を求める欲求も強くなりやすいです。
もっと思いやりをもって接することを心がけましょう。情緒不安定になりそうな物事は可能な限り避けてください。意見の相違には、なるべく早く対処してください。その際、より論理的な対処を心がけるといいでしょう。
第三者の存在は、この関係ではマイナスに作用しやすいため、仲介者を入れることはおすすめできません。直接話し合ってみてください。
敵対的な人々から与えられる悪い影響から、互いを守り合ってください。
準双対関係の性質上、「同じ出来事に対して、両者がそれぞれ別々に自分の感情を処理しようとした結果、関係が悪化してしまう」という状況に定期的に遭遇するかもしれません。このような場合は、それがポジティブな感情であれネガティブな感情であれ、どちらにせよあまり感情を前面に出さず、淡々と次のトピックに移るようにしたほうがいいです。
V.V. Gulenko, A.V. Molodtsev
「Introduction to socionics」より
準双対関係は、「不完全な双対関係」といえるような関係です。パートナー間の理解は非常に良好で、互いの動機も明確に理解できます。
外向タイプは内向タイプの話をほとんど聞かず、自分の話ばかりしてしまう傾向がありますが、内向タイプはこれに腹を立てることはあまりなく、それに適応することが多いです。常に話題が尽きることはなく、会話に退屈することも、ほとんどありません。
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恋愛という意味で言えば、両者が合理サブタイプ同士、または非合理サブタイプ同士(例えばTi-ILEとTe-SLIという場合や、Ne-ILEとSe-SLという場合)互いに魅力を感じて仲良くなろうとすることがあります。
その過程でどちらかが突然距離を縮めて、自分と相手の間にある境界を設定しなおすような行動をとります。一見簡単なことに感じるかもしれませんが、距離を縮める際には衝突が発生してしまうことが多いです。
しかし、それでもあまり落胆せずに、もっと距離を縮めようとすることが多いです。そうした状況を傍から見れば、真の情熱があり、愛の炎が燃え盛っているように見えるかもしれません。これは、窓の外から室内の明かりめがけて飛び続ける蛾に例えられるかもしれません。何度ガラスにぶつかっても、あきらめずに明かりに向かって飛び続けるのです。
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準双対関係は、互いを活性化させ、臨戦態勢に置くような性質のある関係です。この性質は、相手をリラックスさせないような定期的なショックによって生じています。ウトウトしている人に冷水をかける様子をイメージすればわかりやすいかもしれません。
準双対関係における幸福と快適さは反比例関係です。近くにいるほど幸福を感じるかもしれませんが、それと同時に当惑と混乱も増します。
Ekaterina Filatova
「Art of understanding yourself and others」より
双対関係と同じように、準双対パートナーは第1チャネル-第4チャネル間でサポートし合うことが出来ますが、双対関係と異なり、第2チャネル、第3チャネルの機能にはこのような補完関係がありません [3]。
これは具体的にはどういうことかというと、計画段階と実行段階で関係の進展の仕方の様相が変わることを意味しています。
計画を立てて、自分の問題について話し合うという段階における準双対関係は、双対関係と比べても遜色がないくらい良好な関係になります。しかしそこで話し合ったことを実行に移す段階になると、(第3チャネルの内向/外向が異なるため、やり方は違いますが)両者が同じような弱点を持っていることに気付かされることになります。
同じ弱点を持つもの同士であるため、準双対関係の場合は効果的な助け合いができません。双対関係のような完全な補完関係ではないため、かなり親密な距離で交流をすると、互いにある種の失望のようなものを感じてしまうかもしれません。
Eugene Gorenko, Vladimir Tolstikov
「Nature of self」より
非常に良好な関係ではありますが、双対関係とは違って互いを完全にサポートしたり、弱点を補い合うことはできません。
もしも共通のプロジェクトに携わらなければならない場合、同じ分野で同じような弱点が露になります。そのせいで、せっかく始めた仕事が上手くいかなくなってしまい、互いに恨みを抱いてしまうこともよくあります。
Sergei Ganin
これは不完全な双対関係といえるような関係です。準双対パートナーは、通常、少なくとも紙の上に書かれているだけの計画である場合は特にそうですが、互いの目的を問題なく理解しあうことができます。
しかしいざ共同計画を実行に移す段階になると、しばしば協力し合えなくなります。しかし内向タイプである側の準双対パートナーは、それに腹を立てることなく適応する方法を見つけ出します。通常、準双対関係は話題に尽きることがなく、会話が退屈に感じることもほとんどありません。
性別が異なる場合は、興味を惹きつけられやすいです。特に互いに魅力を感じれば、その傾向が加速することになります。しかしながら二人の関係は順調には進展しません。完全な理解へ至る過程で、もちろん故意ではありませんが、それまでに築き上げた調和を台無しにしてしまうようなことを起こしてしまい、振出しに戻ってしまいます。これが「不完全な双対関係」と言われる理由です。
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この関係では、怒りはあまり持続しません。相手が落ち着いたと感じると、再び距離を縮めようとすることが多いです。しかし残念ながら、それは別のつまづきに繋がってしまいます。傍目には、この関係は本当に情熱的で愛に満ちているように見えるかもしれません。準双対関係は、まるで炎に魅入られた蛾のような関係なのです。
そんな甘い夢のような性質がある関係ですが、真剣に付き合えない場合は、定期的に関係を乱すようなことが起こりがちです。そのせいで相手は「夢から覚めっぱなし」になってしまうかもしれません。
双対関係はコントラストに満ちています。再会を喜び合ったかと思えば、急に失望させられたり、困惑させられるようなことが起こります。
準双対関係の理論的特性
準双対関係は、合理/非合理が同じタイプ同士の関係であるため、その点に関する好みは共通しています。
合理タイプ同士であるペアの場合、論理/倫理の二分法が異なっています。そして非合理タイプ同士であるペアの場合、直観/感覚の二分法が異なっています。
また準双対関係は、必ず外向/内向が異なっています。