現代心理学における外向性、内向性という言葉は、ソシオニクスの外向性、内向性や、この言葉を広めたカール・ユングの外向性・内向性とはやや異なる意味を持っています。
この原因は、現代の心理学が定量的な外的行動を重視しているのに対して、ソシオニクスが定性的な内的差異を重視しているためだと考えられます。
心理学的な外向性・内向性の意味をソシオニクスのタイプ診断に適用すると、多くの間違いが生じてしまい、タイプ間関係が現実から乖離したものになってしまいます。
ソシオニクスにおいては、現代心理学的な意味では外向(つまり社交的)となるソシオニクス内向タイプや、内向(つまり引っ込み思案で内気で集中力高)であるソシオニクス外向タイプがいることも想定しています。
ユングの外向性と内向性
カール・ユングによれば、内向と外向は精神的なエネルギーの向きのことを意味しています。エネルギーが通常外向きに流れている場合は外向型、内向きに流れている場合は内向型だとされます。
外向的な人は、大勢の人と接するとエネルギーが増大し、一人になるとエネルギーが減少すると感じます。逆に内向的な人は、一人でいるとエネルギーが増加し、大勢の人に囲まれているとエネルギーが減少すると感じます。
現代の心理学者の多くは、精神的なエネルギーに関する理論は時代遅れだと考えています。
まず第一に、精神的な「エネルギー」を科学的に測定・検証できるような形で扱うことが困難なためです。そして第二に、「外向性と脳についてのより詳細な説明」が、ユングによる「どちらかといえば推測的な理論」に取って代わったからです。
それでも精神的なエネルギーという概念は、特定の状況下で「活力を感じる」という一般的な意味で、今でもよく使われています。ユングがこの分野で残した第一の遺産は、内向型と外向型という言葉を、性格の特定の側面を指す言葉として一般化させたことでしょう。
つまり、ユングの外向性/内向性の理解は、現代心理学の外向性/内向性と関係があるものの、現在ではこの用語の解釈が実務上異なっていると言えます。
心理学の外向性と内向性
現代心理学では、外向的な人(「外向型」とも呼ばれます)は、社交的で自己主張が強く、一般に刺激を求めるとされています。
これに対し、内向的な人は控えめで、あまり外向的でなく、社交的ではないとされています。彼らは必ずしも非社交的というわけではありませんが、交友関係が狭く、新しい人脈を作ることにあまり積極的でない傾向があります。
ビッグファイブでは、外向性はエネルギー、ポジティブな感情、積極性、刺激を求める傾向、他人や仲間との付き合いを求める傾向を示しています。
つまり、現代心理学における外向性の特徴は、外界との関わりが顕著であるということです。外向的は人と一緒にいることを楽しみ、エネルギーに満ちあふれ、ポジティブな感情を経験することが多いです。熱狂的で行動的な人が多く、興奮するようなチャンスに出会うと、「やった!」「行こう!」と言いがちです。集団の中では、おしゃべりをし、自己主張をし、注目を集めるのが好きです。
現代心理学の意味で内向的な人は、外向的な人が持つような高揚感やエネルギーが欠けており、活動レベルが低めです。彼らは静かで控えめで、慎重で社会的な世界にあまり依存しない傾向があります。内向的な人は、外向的な人ほど刺激を必要としていません。その代わり充電のために、より多くの一人の時間を必要としています。
- パーティが好き。
- 注目の的になるのが嫌ではない。
- 人と一緒にいると落ち着く。
- 会話をし始めるほう。
- (低外向性の場合)よく知らない人の前では静か。
- (低外向性の場合)注目を浴びるのは好きではない。
- (低外向性の場合)あまり話さない。
- (低外向性の場合)寡黙である。
- (低外向性の場合)前面に出るのではなく、背景に溶け込む。
現代心理学における外向性は、潜在的な報酬刺激に対する中脳辺縁系ドーパミンシステムの高い感度と関連しています(Depue & Collins, 1999)。
この影響で、外向的な人は潜在的な報酬の興奮をより強く感じるため、それが高レベルの肯定的な感情を持つ一因になっていると言われています。
外向的な人は報酬そのものをより大きく感じるので、ポジティブな面を強化するために必要な条件を、より簡単に学習することができます。
ソシオニクスの外向性と内向性
ソシオニクスの外向性/内向性の理解は、現代心理学よりはユングのものに近いです。
ソシオニクスの外向性は、外界のオブジェクトに対して主に知覚を向けます。 [1]
ソシオニクスの内向性は、主にこれらのオブジェクトが互いに関係し合う様子や、自分の精神がオブジェクトに共鳴する様子に知覚を向けるとされます。
人の心理機能の半分は(ソシオニクス的な意味での)外向性であり、もう半分は内向性であるため、ソシオニクスにおいて外向性と内向性は絶対的な性質ではありません。
人の知覚は、外向的な機能と内向的な機能の間を行き来しています。しかし、その中で最も支配的なのは先導機能であり、この機能が人の外向性、または内向性を定義します。
心理学的な意味での外向性と、ソシオニクスの外向性の間にはある程度の相関関係はありますが、この相関関係は実際にはソシオニクスの理論には含まれていません。
仮に同じソシオニクスのタイプであっても、現代心理学的な意味での外向性/内向性は異なる場合があります。
一部のソシオニクス内向性は、一部のソシオニクス外向性よりも「現代心理学的な意味では外向的」(つまり、集団的、社交的)です。
また、Feが「控え目な機能」に配置されるガンマ・クアドラとデルタ・クアドラは、平均してアルファ・クアドラやベータ・クアドラよりも現代心理学的な意味で外向的ではない可能性があります。
訳注
- ^ 関連記事「情報要素(by A. Augusta)- 補足:物理学のアイデアを踏まえた説明」:こちらはソシオニクス開発者による定義を紹介している記事。本記事のこの部分の内容は、オーシュラの定義のイメージがないとイマイチ理解しにくいかもしれない。