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はじめに
ソシオニクスとサイコソフィアの記述には似通っている点が多いため、両者にあまり詳しくない初心者は、よくサイコソフィアをソシオニクスの簡易版だと誤解してしまうことがあります。
しかし、実際にはそうではありません。
この二種類の類型論の何が違うのかを理解するためには、ソシオニクスが「情報代謝理論」であること、つまり、「周囲の世界に関する情報を8種類の異なる側面からサンプリングし、処理し、保存し、処理結果を出力するプロセスであること」を覚えておく必要があります。
一方、サイコソフィアは、意志(V)、論理(L)、感情(E)、物質(F)の4つの領域に対する態度についての達成度を、その人自身がどのように評価するかという観点から分析します。
ここでいう達成度とは、それぞれの領域での成果を主観的にどのように評価しているか、フィードバックをどのように受け取るか、その領域に対するモチベーションや自尊心はどの程度あるか、その人の主観的な意義や優先順位などを意味します。
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こうした点から、サイコソフィアが扱う範囲は、ソシオニクスが扱う範囲を超えており、人の価値観や行動、意思決定の範囲を扱う類型論であると言うことができます。
しかし一方で、外界からの情報がなければ、何かを決断したり、何かを実行することはできません。そして情報の入手と処理(つまり情報の流れの中から身近なイメージ・知覚・感情を抽出すること)の効率性を担っているのがソシオニクスのタイプなのです。
ソシオニクスとサイコソフィアの対応関係
サイコソフィアの4つの領域それぞれに関する情報は、ソシオニクスの8つのアスペクト全てに伝達されます [1]。しかしその分布は非常に不均一です。
サイコソフィアの4つの領域のいずれにも、情報のほとんど (半分以上) が伝達される2つの主要なアスペクトがあります。そしてソシオニクスの残り6つのアスペクトはサポート役に回ることになります。
筆者が考える限り、サイコソフィアとソシオニクスの対応関係は以下の通りです。
- サイコソフィアの論理(L)
- ソシオニクスのTi(推論の形式的な正しさの評価)
- ソシオニクスのNe(アイデアを探し、その可能性を評価すること)
- サイコソフィアの感情(E)
- ソシオニクスのFe(人の感情状態の評価)
- ソシオニクスのNi(感情表現の妥当性、適時性、調和の評価)
- サイコソフィアの意志(V)
- ソシオニクスのSe(視覚的な順位付けによって他人に影響を与える能力、自分の重要さを見せつける能力)
- ソシオニクスのFi(目標に向かって進むのに役立つように、人間関係を構築すること)
- サイコソフィアの物質(F)
- ソシオニクスのTe(周囲の物質世界の変化のプロセスを知覚すること)
- ソシオニクスのSi(自分の体と周囲の空間を感覚的に把握すること)
このように、サイコソフィアの機能の有効性は、それに関連する主要なアスペクトがモデルAのどの位置に存在していて、どれだけの質的情報を提供できるかに依存しているのです。
一方で、弱いソシオニクスの機能 [3]であっても、その内容を工夫することで(経験の蓄積、すなわち認識できるイメージ・知覚・感情の数の蓄積)、提供できる情報の質を高めることは可能です。
サイコソフィアの機能が、その人にとって重要なものであればあるほどに、それに対応するソシオニクスのアスペクトの精緻化が、より集中的に行われることになります。
ソシオニクスとサイコソフィアの組み合わせ
ソシオニクスとサイコソフィアの強弱の組み合わせとしては、次の4つのパターンが考えられます。
① ソシオニクス機能(強)+サイコソフィア機能(強)
この場合、人は情報を効果的に認識し、その情報に基づいて自分の行動を効率よく組み立てます。プロセスを重視しすぎたり、結果を重視しすぎたりといったアンバランスさはありません。
ソシオニクスの機能が強い機能(多次元性の機能)であるため、多くの労力をかけたり、苦痛を伴う経験をしなくても、常に情報で満たすことができます。また、他人の経験を取り入れ、それが役に立つ場合とそうでない場合を見極める能力を持っています。
この組み合わせになる人をタイピングする場合、サイコソフィアの機能とソシオニクスの機能の両方が、極めて明確に決定されます。
② ソシオニクス機能(強)+サイコソフィア機能(弱)
この組み合わせは、サイコソフィアの弱い機能が3番目の場合(例:LVEFのEなど、I- You-)と、4番目の場合(例:LVEFのFなど、I- You+)とで大きく異なります。
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前者の場合、人は積極的にサイコソフィアの弱い機能の領域で行動しようとします。
そうして得た情報は、ソシオニクスの強い機能で効果的に処理できるため、そのサイコソフィア機能が司る領域での危険性が高い行動を回避したり、大きな失敗を避けることに繋がります。
つまり、この組み合わせは、弱いサイコソフィア機能がもたらす「痛み」を和らげることができるため、非常にバランスがいい組み合わせだと言えます。
このパターンの人をタイプ判定した場合、ソシオニクスの強い機能はどれかという点は簡単にわかりますが、サイコソフィアのタイピングは難しくなります。
◆◆◆
後者の場合、すなわちサイコソフィアの機能が4番目の場合、全く逆のことが発生します。
サイコソフィアの4番目の領域に対するモチベーションは低いため、その領域に関連するソシオニクスの機能が日常ではほとんど使用されず、宝の持ち腐れ状態になってしまいます。
しかし、何か困難な状況に遭遇して、普段使っていなかったその領域に関する能力を発揮しなければならないような状況になった場合、ソシオニクス側の機能の真価を発揮して、思いがけない解決策を生み出すことができます。
この組み合わせにおけるソシオニクスの機能は「隠し財産」のようなものです。
このパターンの人をタイプ判定した場合、サイコソフィアの弱い機能はどれかという点は簡単にわかりますが、ソシオニクスのタイピングは難しくなります。
③ ソシオニクス機能(弱)+サイコソフィア機能(強)
サイコソフィアの機能が1番目の場合(例:LVEFのLなど、I+ You-)、人は定期的にこの領域に関する行動をしようとしますが、情報の不足と歪んだ受け取り方のために、よくエラーを起こしてしまいます。
ソシオニクスの機能が弱い場合、人は経験から学ぶしかなくなるので、あらゆる部分で失敗してしまい、壁にぶつかることになります。
しかし、そうやって失敗を幾度も繰り返すうちに、特定の段階で量から質への移行、すなわち経験が十分に蓄積されて、この領域における日常的なタスクのほとんどに対処できるようになり、自信を持てるようになります。
◆◆◆
サイコソフィアの機能が2番目の場合も同様のことが起こりますが(例:LVEFのVなど、I+ You+)、1番目の場合と違う点は情報の充填がかなり遅いという点です。
これらのパターンの人をタイプ判定した場合、サイコソフィアの強い機能はどれかという点は非常に簡単にわかりますが、ソシオニクスのタイピングは難しくなります。例えばこの場合、ソシオニクスの脆弱機能(第4機能)は、ほとんどソシオニクスの創造機能(第2機能)のように見える可能性さえあります。
④ ソシオニクス機能(弱)+サイコソフィア機能(弱)
基本的に、この組み合わせでは、関連する領域で自分自身を適切に評価できなくなります。
この場合最もよく見られるのは、この領域での行動を避けようとする傾向ですが、サイコソフィアの機能が3番目の場合(例:LVEFのEなど、I- You-)この領域に対する否定的な立場を積極的にデモンストレーション [4] するようになったります。
情報の入力側に対する態度はこのような形になりますが、その逆の情報を処理して出力する側についても難を抱えることになります。
この組み合わせの場合、そもそも情報の出力自体を避けようとするか、非常に不十分な形でしか出力できなくなります [5]。
タイプ判定者側も、被タイプ判定者と同じソシオニクスの機能が弱い(1次元性の機能4,5)場合以外は、こうしたことが起こっているとすぐに看破できます。
考察
組み合わせ①と④は、ソシオニクスのタイプとサイコソフィアのタイプが互いの性質を強化し合う関係になるため「補完的」と呼ばれます。
それに対して組み合わせ②と③は「矛盾的」と呼ばれます。
こうしたソシオニクスとサイコソフィアの組み合わせに関する知識を知っていれば、特定の条件下で機能が強まったり弱まったりすることに伴うタイプミスを避けることができます。また、サイコソフィアとソシオニクスには、ここまでに説明したような特徴があるため、もしタイピングする際は両方の類型論のタイプを同時に判定するか、先にサイコソフィアのタイプを判定し、次にソシオニクスのタイプを判定するという順番でタイピングするのが望ましいと言えます。
◆◆◆
①の強い機能同士の補完的な組み合わせを持つ人の場合、必然的に④の弱い機能同士の補完的な組み合わせを持つことになります。その結果、機能の発達はかなりアンバランスなものになります。
もしパートナーがソシオニクスの双対タイプであるか、またはサイコソフィアのアガペーにあたる関係のタイプである場合は、こうしたアンバランスさは利点にさえなります。弱い機能をパートナーに任せてしまうことで、自分の強みだけに完全に集中し、非常に大きな成果を得ることができるためです。
しかし、もしもこのようなパートナーがおらず、しかも弱い機能に関する領域の問題に取り組まなければならなくなった場合、非常に大きな苦しみを経験することになります。
◆◆◆
一方、②③の矛盾した組み合わせになる人の場合は少し違うことが起こります。
この組み合わせの人々は、弱いソシオニクス機能を積極的に鍛える必要性に駆られるため、人生のある段階では大きな苦労を強いられることになります。
◆◆◆
しかし経験を積んで機能を充填させることができれば、人生のほとんどの課題に対処できるようになるため、最終的には調和のとれた自給自足の生活を謳歌できます。
本稿で説明した上記の特徴を知ることで、「強い機能を最大限に発揮するための自己開発」と「すべての領域の調和を目指す自己開発」のどちらが自分に合っているかを判断することができるでしょう。
訳注
- ^ アスペクト(側面と訳される場合もある)とは、だいたいソシオニクスのSi, Se, Ni. Ne, Ti, Te, Fi, Feといった「機能」とだいたい同じ意味の言葉である(厳密にいうと少し違うが、ややこしいので本記事では省略する)。
- ^ ソシオニクスとサイコソフィアの対応関係には、これ以外にも様々な仮説がある。例えばこちらの記事では、本記事とは異なる対応関係が想定されている。
^ この記事での機能の強弱は下記を意味する。ソシオニクスの強弱(機能の番号はモデルAのもの。次元性と言う言葉の意味は記事「機能の次元」参照)
機能1, 8(4次元性) = 強い機能
機能2, 7(3次元性) = 強い機能
機能3, 6(2次元性) = 弱い機能
機能4, 5(1次元性) = 弱い機能サイコソフィアの強弱
機能1(I+ You-) = 強い機能
機能2(I+ You+) = 強い機能
機能3(I- You-) = 弱い機能
機能4(I- You+) = 弱い機能- ^ 例えばサイコソフィアが3E、かつソシオニクスが論理型の場合「感情なんて邪魔」が口癖になったり、その他「感情」に関する様々な物事に関して、事あるごとに軽視したり見下したりするデモンストレーションじみた行動をとってしまうのではないかと思われる。
- ^ 例えばサイコソフィアが3Eか4E、かつソシオニクスが論理型の場合、今の気持ちについて聞かれてもなんて答えたらいいのかわからなくて、「今どう感じている?」と聞かれてもストレートな回答ができないのではないかと思われる。
補足資料:ソシオニクス x サイコソフィアの分布
ソシオニクス双対関係 x サイコソフィアの相性
記事「サイコソフィアのタイプ間の関係表」の情報を元に、最も出現頻度が高いタイプ間におけるサイコソフィアの相性を書き出した。
関係の初期ではサイコソフィアの影響が支配的であり、関係性が深まった後ではソシオニクスの影響が支配的になるという説があるが、これらのデータを踏まえると、双対関係といえどもあらゆる面で初対面から馬が合うと感じるわけではなく、むしろ点数が低い分野では、互いのスタンスに不満を抱く可能性さえあることが示唆された。
ILE:VLEF - SEI:FELV
VLEF - FELV
- V; +13
- L; +15
- E; +15
- F; +13
どの分野でも相性がいい関係。初対面からあらゆる話で馬が合い、関係性が深まってからも良好であり続ける可能性の高い組み合わせ。
LII:LVEF - ESE:EVFL
LVEF - EVFL
- L; +13
- V; +9
- E; -4
- F; +1
LとVでは相性がいいが、EやFでは最初、あまり惹かれない関係性。特に最初、Eでのコミュニケーションの仕方にすれ違いや不快感を感じる可能性のある関係。
SLE:VFLE - IEI:FELV
VFLE - FELV
- V; +13
- F; +7
- L; +11
- E; -2
V、F、Lでは相性がいいが、Eでは最初、すれ違いや不快感を感じる可能性のある関係。
LSI:LVFE - EIE:ELVF
LVFE - ELVF
- L; +7
- V; +15
- F; +1
- E; +13
VやEでは特に初対面から馬が合いやすく、Lでもおおむね相性がいいが、Fでは少しギャップを感じる可能性がある関係。
SEE:VEFL - ILI:FLEV
VEFL - FLEV
- V; +13
- E; +15
- F; -4
- V; -2
VやEでは特に初対面から馬が合いやすい一方で、FやVではすれ違いや不快感が生じる可能性のある関係。
ESI:FVEL - LIE:VLEF
FVEL - VLEF
- F; +13
- V; +7
- E; +11
- L; -2
F、V、Eでは相性がいいが、Lでは少しギャップを感じる可能性がある関係。
IEE:EVLF - SLI:LFVE
EVLF - LFVE
- E; +13
- V; +15
- L; -4
- F; -2
EやVでは相性がいいが、LやFでは少しギャップを感じる可能性がある関係。
EII:LEVF - LSE:VFEL
LEVF - VFEL
- L; +13
- E; +15
- V; -4
- F; -2
LやEでは相性がいいが、VやFでは少しギャップを感じる可能性がある関係。