ソシオニクスの機能の定義が抱える問題点
ソシオニクスには8つの機能(情報要素)が存在するが、これには下記の問題点がある。
- 専門家によって定義がバラバラ。
- ある機能の説明に、別の機能の説明が混ざっていることが多い。
そこでIvan Popovは動物行動学的観点をもとにして、機能の再定義を行った。
本記事を読む上での注意点
Popovの理論は、主に下記の経緯で生まれたものである。
そのためAushraや、Aushraから派生した別の専門家(例:モデルGの作者Gulenko)が想定しているモデルや定義とは異なる点が多い(ただしGulenkoや他の専門家の考察を取り入れている部分も多数ある)。
本記事を読む際は、「これまでに聞いたことがあるソシオニクスの話、言い換えるとモデルAの話とは違う部分がある」ということを強く念頭に置いたうえで読むことをお勧めする。Popovに関する情報は、日本語はもとより英語の情報もほとんどないため、そこそこソシオニクスについて知っている人ほど既存の情報との整合性が取れずに混乱する恐れがある。
混乱しやすいポイント1:ブロックという用語
Popovの「ブロック」という用語が指す意味は、簡単にいうと単に任意の機能が2つ1組で接続し合い、働いている状態のことを意味する。モデルAの「自我ブロック」や「超自我ブロック」などを省略して「ブロック」と言っているわけではない。
混乱しやすいポイント2:次元という用語
ソシオニクスの次元の提唱者であるBukalovやYermakは、モデルAの位置と次元を紐づけている(例:モデルAの第1機能と第8機能は4次元性)。
一方のPopovは、機能単体ではなくブロックを次元と紐づけている。
PopovはILIだが、彼は自身の次元性について「4次元性ブロックが直観論理、3次元性ブロックが感覚論理、2次元性ブロックが感覚倫理、1次元ブロックが直観倫理」だと説明している。
なお、Popovは4次元性を「経験」「規範」「状況」「時間」、3次元性を「経験」「規範」「状況」、2次元性を「経験」「規範」、1次元性を「経験」とするBukalovやYermakの理論はそのまま取り入れている。
混乱しやすいポイント3:機能の符号(+/-)
NiやTeなどは馴染み深い人も多いかもしれないが、Popovはこれらの機能にさらに+/-の符号をつけて区別している。+Ni, -Ni, +Ne, -Ne, +Si, -Si, +Se, -Se, +Ti, -Ti, +Te, -Te, +Fi, -Fi, +Fe, -Feの合計16種類の機能がある。
符号(+/-)自体はPopovのオリジナルのアイデアではなく、他の専門家もよく使用するものである。
例えばモデルAの記事や、モデルGでも機能の符号(+/-)について触れられている。しかし、Popovの符号の定義はこれらとは異なる部分がある。
特にモデルG(Gulenko)の+/-とは全く意味が違うので、注意してほしい。
モデルGのタイプ一覧表に登場する符号(+/-)は肯定主義 / 否定主義という意味だが、Popovの符号(+/-)は肯定主義 / 否定主義という意味は持たない。Popovの場合、+は詳細化、-は単純化に近い意味を持つ。
また、モデルAでタイプ別の機能の符号の一覧表を記載しているが、Popovの定義はこの一覧表とも異なっている。彼は、働き方の強弱こそあるものの、全タイプが16種類全ての符号付き記号を持つ可能性を想定している。
ソシオニクスの機能が持つ二つの側面
機能には①「情報を処理するプロセスとしての側面」と、②「動機付けの根拠としての側面」の2つの側面がある。
脳科学的にいうと①「情報は主に大脳皮質で処理される」が、②「基本的な動機は大脳皮質を活性化する大脳皮質下構造によって形成される」。そのためソシオニクスの機能について考察する場合も、①と②を区別して考える必要がある。
大脳皮質(①)は、大脳皮質下(②)からの活性が無ければ情報を処理することが出来ない。
機能単体の定義
機能の二分法
+:知覚的な詳細さ、信号の複雑さ、意味の狭さ(意味の特異性)、クローズアップ
-:知覚における詳細の無視、信号の単純さ、意味の広さ(意味の普遍性)、俯瞰的
肯定主義的:情報発信者が受信者に対して、発信者と同じ状態を伝染させること(例えば発信者が怒る⇒受信者も怒る、発信者がお世辞を言う⇒受信者もお世辞を返すというように、受信者が自分と同じ反応を見せることを期待して情報発信されるもの)
否定主義的:情報発信者が受信者に対して、発信者とは逆の状態を強制させること(例えば発信者が怒る⇒受信者は怯える、発信者が自慢する⇒受信者が嫉妬するというように、受信者が自分とは逆の反応を見せることを期待して情報発信されるもの)
(感情や行動の質が世間一般的な意味での「ポジティブ・前向き」か「ネガティブ・後ろ向き」かという意味ではない)
静的 / 動的、質問 / 宣言の意味合いは、こちらの二分法の記事を参照。こちらの記事はタイプの二分法の記事だが、各二分法の特徴自体は機能の場合も同様である。
機能一覧
各機能の二分法一覧。
「動機付けの根拠としての側面」から見た場合の定義。
+Fe
否定主義的、動的、質問的(離散性)
人々の行動に影響を与える手段として感情を扱うこと。
コミュニケーション参加者の社会的ポジションを強調して分割する。
複雑で遊び心のある感情表現(主にスピーチと視線による)
動機付け:デモンストレーション(感情表現)によって、グループの他のメンバーから自分自身を区別することで、「自分の存在」をグループに認識させたいという欲求。
-Fe
肯定主義的、静的、宣言的(継続性)
人々の行動に影響を与える手段として感情を扱うこと。
コミュニケーションの参加者の立場をまとめる。
動機付け:自分の感情状態に他者を巻き込みたいという欲求。自分の感情状態を他の人に伝え、自分の活動や自分にとって有益な計画に参加させたいという欲求。
+Fi
肯定主義的、静的、宣言的(継続性)
コミュニケーション参加者の立場をまとめる。
動機付け:グループ全体の倫理的評価と制約を維持する。
-Fi
否定主義的、動的、質問的(離散性)
コミュニケーション参加者ごとの立場を強調して分割する。
動機付け:(個人の立場の独自性の強調に繋がる)倫理的評価の適用。
◆◆◆
+Te
否定主義的、動的、質問的(離散性)
デモンストレーション行動(縄張りの誇示や集団内での力関係、求愛を示すために行われる、儀式化された複雑な行動パターン。例:サルのマウンティングや鳥の求婚ダンスなど)。
高度な資格を必要とする複雑な活動。高い品質とスキルの追求。(これらは人間社会ではデモンストレーションとして機能するため、ここに分類される。「あなたにはこんな凄いこと出来ないでしょうが、私なら出来ます」)
複雑な身体的動作(例:ダンスや体操など)の制御。
動機付け:デモンストレーション(活動や計画。人によっては「仕事をしてみせる」という活動も含む)によって、グループの他のメンバーから自分自身を区別することで、「自分の存在」をグループに認識させたいという欲求。自分自身の行動(この場合の行動は、労働および専門分野での活動であることが多い。人の場合、「自分の労働」「自分の専門分野の活動」が他者に対するデモンストレーションになるため)を管理したいという欲求。
−Te
肯定主義的、静的、宣言的(継続性)
単純な非熟練労働。指示。
単純な身体的動作の制御(実際の神経や筋肉の働きが単純と言う意味ではなく、人に生来備わっている動作という意味で「シンプル」な動作、例えば歩いたり、走ったりなどの動作)
動機付け:「自分の活動や自分にとって有益な計画」に他者を巻き込みたいという欲求。
+Ti
肯定主義的、静的、宣言的(継続性)
静止状態の肉体や姿勢の調整(段階的な細かい調整が必要なもの。例えば胸を張って前を向き、きちんとした姿勢で立つ際の調整)。社会的地位。
活動を制限し集団の秩序(階層の維持を含む)を維持するために働く機能。
動機付け:グループにおける一般的に有効な行動規則の維持、論理的評価(法廷での権利の擁護を含む)。
−Ti
否定主義的、動的、質問的(探究性・離散性)
活動の抑制(「〇〇という活動は許されない・許可されていない」という形の抑制)、過活動の抑制。
静止状態の肉体や姿勢の調整(例えば身じろぎせずに隠れて敵を狙撃する際などに行う姿勢の維持、身体的動作の抑制)
動機付け:(個人の立場の独自性の強調に繋がる)社会的なステータス、制限、論理的ルールを区別し、個人を集団から分離したいという欲求。
◆◆◆
+Ne
肯定主義的、静的、質問的(離散性)
狭義に定義された意味を持つ記号の解釈と関連付け(「赤信号」という言葉と、その言葉が示す意味の関連付け)
変化を離散的かつ簡略的に記述すること(変化を「フェーズ」や「サイクル」の変化として記述すること)。
動機付け:関連性の自発的な探索、すなわち記号と、それらの連想によって示唆される新しい行動パターンやモデルの自発的な適用。
−Ne
否定主義的、動的、宣言的(継続性)
指し示す意味が曖昧な記号の解釈と関連付け(例えば「魂」「生きがい」といった言葉と、その言葉が示す意味の関連付け)。
変化を連続的に記述すること。
動機付け:(過去を考慮に入れて)今後起こりうる脅威を特定し、積極的な防衛をしたいという欲求
+Ni
否定主義的、動的、宣言的(継続性)
指し示す意味が曖昧な記号や概念の解釈と関連付け(漠然とした「なんとなくそういう気がする」というような勘)。
変化を連続的に記述すること。
動機付け:(過去を考慮に入れて)危険の兆候を見逃さずに積極的な防衛をしたいという欲求。
-Ni
肯定主義的、静的、質問的(探究性・離散性)
「指し示す意味の幅が狭い」連想・記号(言語的な記号を含む)。
変化を離散的かつ簡略的に記述すること(変化を「フェーズ」や「サイクル」の変化として記述すること)。
動機付け:将来起こりうる変化の兆候を探りたいという欲求。
◆◆◆
+Se
肯定主義的、静的、質問的(探究性・離散性)
オブジェクトの配置・動き・単純な特徴の違いに関する情報を提供する。
「視覚と聴覚経由で得られるイベント」に見られる時間的なシーケンスのパターンを記述する。
社会的地位とは関係がなく、自発的な行動に関わる。
動機付け:特定の運動行動、自発的(遊びを含む)活動への欲求、新しい物体の探索と捕獲(およびそれらの操作)。ルールや制限を破ることを目的とすることも十分にあり得る(例えば上位者の地位を「下げて」自分がその地位を奪うなど)。
-Se
否定主義的、動的、宣言的(継続性)
個々のオブジェクトの形状の詳細で正確な識別。
オブジェクトの全体としての動き、形状の変化、異なるオブジェクト・事象の音像の識別。物体の特性。
目標を迅速に達成するために力を動員する「直接行動」の能動的な機能。
動機付け:「闘争と逃走」の枠組みに置ける「力」の一般的な動員、(生命への脅威全てに対する)積極的な闘争、おそらく性的動作もここに含まれる。ルールや制限を破ることを目的とすることも十分にあり得る(例えば上位者の地位を「下げて」自分がその地位を奪うなど)。
+Si
否定主義的、動的、宣言的(継続性)
個々のオブジェクトの形状の詳細で正確な識別。
オブジェクトの全体としての動き、形状の変化、異なるオブジェクト・事象の音像の識別。
動機付け:身体の特定の生物学的ニーズ(空腹、喉の渇き、生活条件としての温度・湿度、刺激性の物理的影響の排除など)を満たすための努力。
-Si
肯定主義的、静的、質問的(探究性・離散性)
オブジェクトの配置、相互の動き、単純な特徴の違いに関する情報を提供する。
視覚と聴覚経由で得られるイベントに見られる時間的なシーケンスのパターンを記述する。
動機付け:成功した活動形態の強化(成功した行動パターンを強化するために必要)、報酬系(reward system)に関する一般的なメカニズム、行動に失敗した際の不満感。
備考
進化という観点から見た場合
最も原初から存在する機能は感覚機能であり、その後、論理機能と倫理機能が生じた。そして最後に直観機能が生まれたとPopovは考察している。
さらに、そこから文化を形成していく過程で機能間の接続(ブロック)が発展したと彼は考察している。
機能と脳領域の対応関係
Talanovらによる脳領域とソシオニクスの機能の対応の研究を踏まえて、Popovは身体活動や運動の制御を論理機能に紐づけている(ブローカ野)。
下記はPopovの想定する脳領域と機能の標準的な対応関係(右利きの人の場合。脳内の機能の局在化には個人差がかなりあるため、これとは分布が異なる人もいる)。
機能ブロック
表記法:
-Se → +Tiという表記をした場合、下記を意味する。
動機付けのベース機能-Se → 従属機能-Seに従属する+Ti
TiSe (SeTi)
-Se+Ti
+Ti → -Se
人々の活動、秩序を脅かす行為に対して懲戒的な態度で接する傾向が生まれることに繋がる。
逆にSeとの繋がりが弱い場合、+Tiが働いても懲戒的な行動が生まれないどころか、障害に気付いても、それを是正するために何もせず、権利を行使しない(義務を果たさない)こともある。または、仮に懲戒的な態度をとろうとしても、権力を乱用すると言ったように不適切な形で-Seが働いてしまうこともある。
-Se → +Ti
ライバルの「社会的ステータスと相容れない行動や、規範に違反する行動」に対して、激しい攻撃を加えようとする傾向に繋がる。この場合、ライバルの行動の評価自体はかなり適切に行われる。また、攻撃自体も、相手側の勢力を適切に判断した上で、合法的に、可能であれば組織化された形態で実行される傾向がある。
逆に+Tiとの繋がりが弱い場合、ライバルのTi上での失態に反応しないことがよくあるが、仮に感応する場合は「気分」で動きがちになってしまう。この際、ライバルの評価も勢力も十分に考慮しないまま、法的な規定に則らず、残忍な攻撃を加えようとすることもある。
+Se-Ti
この組み合わせは動機付けブロックにはならない組み合わせ。
+Se → -Ti(+Seが動機付けのベース機能)である場合、+Seのポジティブな自発的活動を(仮にそれが狭義の攻撃性とは無関係であり、社会秩序を脅かさず、潜在的に有益な活動であったとしても)、-Tiが「その活動は許可されていない」という抑制的な形で働いてしまうため。
-Ti → +Seの場合も同様である。社会的なステータス、制限、論理的ルールに関する欲求に関わる-Tiが、社会的地位とは関係がなく、自発的な行動に関わる機能である+Seの動機付けになる可能性も低い。
◆◆◆
TiNe (NeTi)
+Ne –Ti
-Ti → +Ne
記号的なコミュニケーションの規律を維持しようとすること。最も狭い意味では「自然言語の文法」を意味しており、それより広い意味では、「文章(古典的論理学を含む)、数学的構文、科学的理論などの正しさと真実性をチェックすること」を意味する。
ここでの-Tiは、記号と象徴を操作するNeの過活動を制限する方向に働いている。
+Ne → -Ti
ルールや基準に従って、行動/表現に関わる新しい意味、関連性、可能性を検索すること。狭義にはこのブロックも自然言語機能を司っているといえる。
ゲームやルールごとにカードの意味が変わるトランプ遊びのような、意味・サインの修正を伴うゲーム。科学理論の開発、新しい公理の導入、結果の導出などを行う際に関与している可能性がある。
従属する機能である-Tiが真偽チェック、属性による分類などを行った上で、課された制限を回避するモデルを作成する(つまり発明に関わる)。
–Ne +Ti
「不明瞭な意味」を使って「社会的なヒエラルキー」を強調しようとするが、これは有益な結果にはつながらない組み合わせである。
◆◆◆
FiSe (SeFi)
+Se –Fi
+Se → -Fi
人間関係を構築する目的でエネルギーを自発的活動に費やすこと。
「人間関係を念頭に置きながら」、+Seを活用して問題を解決すること。身体的な活動(例えばデートやコミュニケーションにおける遊び心や浮気的な行動)だけでなく、物質的な世界(様々な種類の贈り物、服、インテリア選びなど)もこの範疇に入る。
この動機付けブロックの結びつきが強い場合、特定の人々を自分自身に引き付け、喜ばせ、また、特定の人に対する自分の態度を示すデモンストレーション的な行動に繋がる(+Seの肯定主義的な面が表れる)。
この動機付けブロックは人間関係の構築に繋がるような遊びや服選びなどといった活動自体に喜びを感じ、それらの活動自体が目的になる(「人間関係の構築やサポートが目的で、遊びや服選びはそのための手段」ではなく、「遊びや服選びが目的」になる)。
この+Se → -Fiという組み合わせの-Fiは、(+Ne → -Fiの-Fiとは違って)対人関係に有益な婉曲的表現という方向には働かない(+Seが自由奔放に機能するため)。
-Fi → +Se
既存の人間関係を考慮して自発的活動を強く制限すること。
行動、服装の選択、贈り物に表現される態度から、「相手が自分にどのような態度を示しているか」、または「相手が反抗的すぎる行動をしていないか」といった倫理的評価を行うこと(-Fiは否定主義的であり、策略やトリックがないかどうか警戒する傾向が生じる)。また、自分自身の行動や外見も同様の方法で評価する(そして相手から見て自分の行動や外見が不適切だと判断した場合は、適切なものに修正する)。
-Fiの性質上、+Seの活性化に釣られて活性化するわけではないので、+Seが奔放すぎる活動をした場合、-Fiで制御しきれなくなるということになりやすい。
+Seと-Fiの接続(ブロック)が弱い場合:
相手と自分の行動評価がうまく行えずに不適切な選択や行動をしてしまうことに繋がる。あるいは逆にそういった点が気になりすぎてしまい、「問題のない選択・行動(社会規範や人間関係に悪影響を及ぼさない選択・行動)」すら過剰に制限してしまうといったことに繋がる。
–Se +Fi
攻撃的な倫理機能と攻撃的な感覚機能の組み合わせであるため、あまり有益な結果をもたらさない。
対人関係における婉曲的なニュアンスに関する問題を解決するためにを頻繁に-Se使用することは、非生産的なだけではなく危険でさえある。
◆◆◆
FiNe (NeFi)
–Ne +Fi
-Ne → +Fi
意味と連想によって、「関係性」に関するタスクを解決すること。コミュニケーションにおける意味的なニュアンスの制御(この制御のおかげで、「直接的な表現」や「素直な発言」よりもはるかに婉曲的な方法で態度を表現することができるようになる)。
もしこの-Ne → +Fiが優勢である場合は、「議論に勝つこと」よりも「個人的な関係」に焦点があてられる(もしもこのNeFiブロックよりも、NeTiブロックのほうが動機付けとして優勢な場合、自分の正しさを認めさせること、すなわち「議論に勝つこと」のほうが優先される傾向がある)。
外部の情報の流れから抽出された倫理-感情的な人間関係に関する情報がNe本来の機能によって処理され、その結果、「人間関係を有利にするためのモデル」を作り出すような連想が生じる。さらにNeは一般論からの状況分析に留まらず、関係を深めたい交流相手に合わせた分析を行うこともできる。
このブロックの接続が弱い場合、「関係性」の問題解決に対して「直観」が部分的にしか関与できなくなってしまう。
+Fi → -Ne
コミュニケーションの際、きつい表現をやわらげて相互に不快感を与えないようにすること。+Fiが-Neのアイデアを倫理面から評価し、抑制する。この動機付けブロックが強い場合、-Neのタスクを処理する際、たとえ必要性がなくても+Fiが誘発される傾向がある。
このブロックの接続が弱い場合、言葉やアイデアの倫理的なニュアンスを「リアルタイムで」考慮することが難しくなり、判断や発言に倫理的なアンバランスさが生じる。
+Ne -Fi
参考文献上での既述なし。
◆◆◆
TeSi (SiTe)
+Te -Si
+Te → -Si
自分の社会的な競争力(性的な魅力も含む)を高めたいという欲求に関わる組み合わせ。最高の品質を追求するという方向に働く(そのためにかかるコストは二の次になる)。
-Se的なパフォーマンスの質(物質的快楽など。文化的背景に大きく依存するが、現代社会だと「車やブランド品」など)を高めることによって、自分の活動(動物行動学的なデモンストレーション行動)をより強力なもの(他者のデモンストレーションよりも優れたもの)にしようとする。
この場合、+Teは「何かが不足している・不満を感じる」という感覚として、-Seの質を評価する。これは実際の生物学的ニーズ(例えば空腹感)とは無関係に生じる感覚である。
-Si → +Te
他者の社会的な競争力を正確に見積もることで、負けそうな相手を避け、効率よく、現実的に可能な限りの「最高の結果・勝利」を得ようとする(手ごわいライバルを避けることで、社会的競争における勝率を追求しようとする)。
このブロックは、他者の+Te的な活動(デモンストレーション)を見た際に、「主観的な美意識(他人の活動・デモンストレーションが適切か、美しいか、快適か、醜いかどうかという感覚)」の形として表れる。
しかしこのブロックの目的は評価そのものではなく、より優れたデモンストレーター(自分より優れたライバル)との勝負を避けることを目的としている。
-Te +Si
参考文献上での既述なし。
◆◆◆
TeNi (NiTe)
+Ni -Te
このブロックの動物行動学的な面から見た目的は、「行動の暗黙的な結果をシミュレートすること」である。より広義には、「適用された力・影響力に応じて、状況がどう変化していくかを『予測』すること」を意味する。
ここで重要なのは「暗黙性」がこのブロックの要となる要因であるという点である。例えば「釘を打ったらどうなるか」などといった、「道具を使用した単純な結果の予測」はここには含まれない。純粋に視覚的な「行動の結果」の予測に「直観」は不要である。このような予測(シミュレーション)は「感覚と論理」の力でモデル化される領域である。
-Teは、個人の意図を記号ではなく定量的な形式で表現する信号であると定義されている。動物行動学を踏まえて例えると、 近くにいる他の個体を自分の行動に巻き込んだり、直接の力を行使することなく、近くの個体集団を分散させるような働きがこうしたシグナルに相当すると言われている。
これらの信号の有効性は、そのシグナルの強度、シグナルが発せられたタイミング、受信者の状態(ヒエラルキー、および受信者がどの程度シグナルを検知する能力を持っているか)に依存していることは明らかである。自分が発するシグナルの有効性を事前に評価し、自分が実施しようとする行動に「実施するだけの価値」があるかどうか、あるいは「エネルギーの無駄にしかならないからやめたほうがいい」か判断するためには、直観によってこうした諸条件を知覚し、モデル化する必要がある。
+Ni → -Te
望み薄な行動を抑制するように働く。
他人の行動や自分の行動から予想される「成功の可能性・設定された目標を達成するためのコスト」などを推定しようという欲求。この推定を行う際には、利用可能な既存モデル(予想される結果、予想される状況、想定されるパワーバランス)が活用される。
推定の結果「コストがかかりすぎる」と思われた行動は破棄される(仮にそれがデモンストレーションとして有益な行動であったり、他者から『これをしろ』と押しつけられていた行動であっても破棄される)。
この組み合わせでは、+Niが-Teの制御権を奪う傾向がある。つまり、+Niは「-Teが今現在の状況に集中する」のを阻害する可能性がある。その結果、-Teは過去と未来をいったりきたりするようになってしまい、仕事のペースに悪影響を及ぼすことがある。
-Te → +Ni
有望な行動を実行するよう動機付ける。
有望な行動シナリオ(+Niから見て有望に感じられる行動シナリオ)を把握し、はっきり「これは成功する・上手くいく」とわかる前の時点から、「積極的かつ一貫して、有望な行動シナリオを推進する」よう人を動機づける。
働き方は異なるが、「+Ni → -Te」も「-Te → +Ni」も、どちらも最終的には「行動を最適化し、労力を節約する」ために機能する。
これは「+Te → –Si」と「-Si → +Te」が「最高を追求する」ために機能するのとは異なっている。
-Ni +Te
この組み合わせは、-Niが+Teに対して抑制的に働く組み合わせであるが、あまり有益な結果をもたらさない可能性がある。
+Teは、社会的競争のためのデモンストレーション行動の機能である。また、複雑な身体的動作の制御を司る機能でもある。身体活動を伴うデモンストレーションの領域では、「いかに正確な推測を行うか」ではなく「いかに正確な運動を行うか(運動に関わる情報処理を行うか)」のほうがよほど重要になる。直観が活性化することは、それと引き換えに感覚機能が抑制されてしまうことを意味するため、パフォーマンスの質の低下を招いてしまい、有害でさえある。
◆◆◆
FeSi (SiFe)
-Fe +Si
生物学的に必須となる要因を検知する機能(空腹・満腹、生活条件など )を司るブロック。動物行動学のレベルでは、霊長類の間でしばしば見られる「他者に食べ物を与える」という行動がこのブロックによって引き起こされる行動である。
人間の場合は単なる「食べ物を与える」行動だけに留まらない。例えば「歓迎会」はこのブロックに起因する行動である。
このブロックのFe的価値観は、祭りの飾り付け、プレゼント、特別な衣装(クリスマスのサンタの衣装やカーニバルの衣装)など、特定の物として反映されることもある。これらはすべて、このブロックに由来する文化的な物事だといえる。
-Fe → +Si
純粋に感覚的な刺激によって、他者の感情を誘発しようとする。
+Siは「個人的快楽」を司っている機能であるが、動機付けのベース機能-Feによって活性化される場合は、「他の人と一緒に行うお祝い・セレモニー」といった快楽に変わる。
この種の快楽はコミュニティに感情的な結束をもたらす。そのため動物行動学的に見た場合、これは生存にとって有益なブロックだと言える。
ベース機能-Feは肯定主義的、従属機能+Siは否定主義的な機能である。-Fe → +Siの場合、ベース機能自体は肯定主義的であるため、ポジティブな感覚刺激(おいしい食べ物、明るい色)によって感情が活性化されることになる。
この接続の弱さは、感覚刺激によって感情が効果的に引き起こされないということに繋がる。社会で一般的に受け入れられているイベントや休日の雰囲気に馴染めず、「こんなイベントは間違っている・やめたほうがいい」と感じてしまう傾向が生じる。
+Si → -Fe
(本人または他人の発する)感情への反応という形で活性化される。このブロックは「発せられる感情を調整する」という役割を担っている。
他者から投げかけられた感情(「撫でてほしい」「抱きしめてほしい」などの感情)に反応する形で、Si的な欲望(「人を養いたい」「人に愛を与えたい」という欲望)が生じるのは、このブロックが働いたからである。
+Siは否定主義的な機能だが、この場合の「人を養いたい」「愛を与えたい」という願望は「ネガティブな面に焦点を当てた上で、それを払拭したい」という否定性払拭願望だと解釈できる。
ベース機能+Si は否定主義的、従属機能-Feは肯定主義的な機能である。+Si → -Feの場合、ベース機能自体は否定主義的であるため、ネガティブな感情刺激(人肌恋しい、口寂しいなどの「欠乏・不足」に関わる感情)によって感覚的欲求が引き起こされることになる。
この接続が弱い場合、文化圏ごとに異なる「他者の感情をコントロールするために、どのような行動をとるべきか」という暗黙知を重視しない傾向が生じる。「悲しんでいる人やイライラしている人に、美味しい食べ物を与えて癒す」ような行動が上手く取れなくなってしまう。
+Fe -Si
参考文献上での既述なし。
◆◆◆
FeNi (NiFe)
+Fe –Ni
+Fe → -Niにせよ-Ni → +Feにせよ、ここでは「感情」が重要なイベントの予兆として認識される。その予兆に対して「人はどう向き合うべきか」という点には、文化ごとに固有の考えや規範が存在する。
例えば現代のヨーロッパでは、マヤ暦による星占いまたは「世界の終わり」の予言は、「一般的に」感情を煽るだけの厄介な迷信だと見なされる一方で、地球温暖化という予測によって始まった「地球温暖化対策に関する教育」「二酸化炭素5%削減」は「一般的に」進歩的な人の神聖な義務であると受け取られる。
また、動機付けブロックである+Fe → -Niや-Ni → +Feが情報代謝を行う場合、+Fe、-Fiと-Ni、+Neが同時に使用されることになるが(これをクロスブロックという)、このクロスブロックは「概念」に感情的な意味を与えたり、「ささいなスタイルの違いや言葉遊び」の中に「自身の感情」を織り込む機能としても働くとPopovらは考察している(例:詩を作る際は、このクロスブロックが働いている可能性がある)。
+Fe → -Ni
予想はできるものの、まだ現実化してはいないイベントに対する「ネガティブな感情的反応」を引き起こす。
動機付けのベース機能+Feは否定主義的である。この+Feによって-Niが活性化されることで「嫌な予感」が引き起こされる。そして次に、活性化した-Niがネガティブな感情を制御しつつ、周囲の人々に対する期待感を引き起こす(-Niは肯定主義的であるが、この肯定主義は「期待感」として表れる)。この期待感は、多くの場合、自己成就的予言になる可能性がある。
逆にこの接続が弱い場合、感情的な反応が薄くなる傾向が見られる。仮に「何らかの予感」を感じても、周囲の人々にあまり期待感を抱かなくなる。
-Ni → +Fe
感情的な信号によって、肯定主義的な機能である-Niの「将来起こりうる変化の可能性を探ろうとする性質」が活性化される。そして-Niから生じた予感(ポジティブな未来予想)は、主に前向きな方向で感情を制御し始める(この場合、動機付けのベース機能-Niの影響で、本来否定主義である+Feが肯定主義的な性質を帯びることになる)。
逆にこの接続が弱い場合、+Feがなんらかの感情的な信号を受け取っても、-Niの「将来起こりうる変化の可能性を探ろうとする性質」があまり引き起こされなくなる。その結果、「自身が抱く感情的評価」が「一般的に社会から期待される感情的評価(より正確には、文化ごとに好ましいとされている評価)」から乖離してしまったりする。また、「自身の発言に、複雑な感情的情報を(文化ごとに適した形態で)織り込む」ことがあまり上手く出来なくなる。
-Fe +Ni
参考文献上での既述なし。
補足
ブロックにおける情報交換
動機付けという観点から見た場合、上記の説明のような形で行われるが、情報交換として見た場合、単一のブロック内だけで情報交換が行われるのではなく、複数の機能の間で情報交換が行われる(例えば+Ne → -Tiというブロックが動機付けとして働いた場合、情報交換自体は+Ne -Ni / -Ti +Teの全ての機能間で行われる)。これをクロスブロックと呼ぶ。
ブロックの強弱と機能の強弱
ブロックと機能の強弱の組み合わせを考えた場合、下記のパターンが考えられる。
① ブロック全体が強い場合
② ブロック全体が弱い場合
③ ブロックとしては弱いが機能単独でみると強い場合
機能が強く、ブロックも強い場合は、機能単体としての性質よりもブロックとしての性質の方が強くなる。
動物的な機能・文化的なブロック
機能単体による動機付けは、比較的原始的・動物的であるのに対して、ブロックによる動機付けは一般的に社会的・文化的な行動に繋がるものである。
例えばFe本来「感情をぶつけて他人に影響を与える」という行動や、Te本来の「他者にマウンティングするためのデモンストレーション」は、現代社会では「やや下品なこと」だと認識される一方で、これらが他の機能とブロックされると文化的な活動(芸術など)に繋がる。
この意味で、「① ブロック全体が強い場合」と「③ ブロックとしては弱いが機能単独でみると強い場合」を比較すると、一般的には③よりも①のほうが「文化的・社会的だ」と認識されやすい。
しかしながら③の精神傾向を持つ人々は、機能の働きが他の機能と複雑に絡み合っていないが故に、動機付けで優勢になる機能を「その時々の状況に応じて切り替える能力」に優れている。刺激とタスクに応じて「思考の流れ」をスムーズに切り替える能力もまた、現代社会においては重要な能力であるといえる。
東洋の心身医学では、スムーズな思考の切り替えを行うにはどうしたらいいか様々な考察が成されているが、こうした試みは、「情報代謝をいかにして抑制するか」を意味しているといえる。
情報代謝の抑制の結果、個々の機能がより「明晰に」に機能するという効果も期待できる(特にこうした方法で思考の流れを制御することによって、単純な知覚能力だけではなく、自由な連想を行う機能としての直観の働きや、感情が生じた背景に対する認識力、身体的な動作制御の調整能力の向上が期待できる)。
情報代謝タイプと機能の強弱
人の動機付けを行う機能の強さ(つまり動機付けに働く機能の強弱)は、今現在適応しようとしているタスクに応じて、かなり広い範囲で変動する。
特に中長期的な動機付けの強さ(モチベーションの強さ)を見た場合、論理 / 倫理、感覚 / 直観、外向 / 内向といった対立構造は観察できなくなることがわかっている。中長期的な動機付けの強さという意味での論理と倫理の方は、ユングの構造よりもサイコソフィアの構造に似た形で働く。具体的には、論理と倫理(感情)は対立するのではなく、感情のある論理として機能するのである。
ソシオニクスとサイコソフィアの対応関係(Popovによる仮説)
原理的には、動機付けという用語でのソシオニクスの機能、サイコソフィアの機能を結びつける方法を模索することが可能であるとPopovは考察している。
特にサイコソフィアはその定義上、動機付けを反映している類型であるため、動機付けに関する用語と結びつけるのは可能であると考えられる。この場合、サイコソフィアのV(意志)は(通常考えられているように、ソシオニクスのSeと似ているとは言えないものの)ソシオニクスの合理性、特に合理的倫理(Fe, Fi)に近いものであるとV. Talanovは指摘している。
Popovによると、サイコソフィアのL(論理)は、ソシオニクスの論理ではなく、ソシオニクスの直観機能(または少なくとも論理機能とブロックを形成している直観機能)に対応しているとのことである。
同様にPopovによる考察であるが、大脳辺縁系の働きから考えてサイコソフィアのE(感情)はソシオの倫理機能に近いものであり、サイコソフィアのF(物理)は、本質的にソシオニクスの感覚機能の行動学的基礎と一致しているとしている。(ただし、これらのサイコソイアとソシオニクスの紐づけは、あくまでも仮説であるとPoopovは述べている)
したがって「ILIの最も強力な動機付けの機能は『Ni』である」ということにはならない。状況次第で、ILIであってもTeが動機付けとして最も強力に働く時もあれば、Seブロックが最も強力に働いている時もある。+Seによる自発的な活動欲求が、自分の権利+Tiを強調したいという欲求に繋がり、さらにそれが感情的圧力Feを掛けたいという欲求に繋がったり、そうした自分の行動に対して予想される社会的評価Niを踏まえた調整・反省をしたいという欲求に繋がるというように、刻一刻と変化していくものである。
「動機付けという点から見た機能の強さ」と「モデルA」と厳密に結び付けることはできない。唯一言えることは、情報代謝タイプの第1機能の動機付けは、少なくとも平均的な強さで働いているということである(ただし必ずしも最強であるとは限らない)。
もちろん、いくつかの状態は他の状態よりも好まれ、より明確に現れることがある。そして、これがパーソナリティの重要な特徴になっているとも考えられる。機能の活動のバランスを長期的に見た場合、完全に一貫性があるとは言えないものの、多少なりとも一貫性がある可能性はある。そして、この一貫性を生み出すのが「機能間の接続(ブロック)」であると考えられる。
ブロックの優先度には「好み」が影響する
時には2つの異なるブロックを動機付けに使用することもあるが、こういった場合、その人の好みによってどちらのブロックを重視するかが決まる。
例えば「職場で科学的な論争をする」という状況を想像してほしい。
この状況では、論理的および事実的な詳細だけでなく、上司の意見(議論の対象となっている問題に全く詳しくない上司による「X、Y、Zの説には反対だ!」という意見)が重視される場合がある。
ここで自身の社会的な地位を考慮して上司の意見を重視する場合、NeTiブロックよりSeTiブロックのほうが強く働いていると予想される(この状況の本質的課題は、真実を明らかにすることではなく社会的地位を考慮できるかどうかだと捉えている状態)。
逆にもしSeTiブロックよりもNeTiブロックのほうが強く働く人の場合、「あなたは私の上司ですが、それよりも真実の方が大切です」と考え、上司に異議を唱えることになるかもしれない(これはNeTiブロックの視点からすると「論理的」な行動だが、SeTiブロックの視点からすると「非論理的」だとみなされる行動だといえる)。
前者のタイプ(例のような状況で上司の意見を尊重するタイプ)の行動は感覚論理タイプにとってより一般的な行動であり、後者のタイプ(例のような状況で上司に異議を唱えるタイプ)の行動は直観論理タイプにとってより一般的な行動だと考えられる。
ブロックと次元性はどこから生じるか
ブロックは、側頭葉および頭頂葉の三次連合野レベルで、すでに存在しており、前頭前野は「個々の機能」と接続しているのではなく、「ブロック」と接続している可能性がある。
高次元性ブロックと低次元性ブロックの違いは、ブロックを構成している機能を担う領域と、前頭前野の実行中枢との間にある繋がり、具体的には「前頭前野 - 視床 - (機能を担う様々な)皮質領域」のうち「視床-皮質接続」の接続の強弱によって生じている可能性がある。
IT用語を使って説明すると、前頭前野には配列情報があり、実際のデータは様々な皮質領域に偏在しているイメージである。
前頭前野で定義されている配列[i]の要素数iは機能の次元性に依存しない。例えばILIで直観論理ブロック[100]、感覚論理ブロック[110]のようになることもありえる(後天的な学習によって要素数が増加する)。
しかし、情報を処理する場合、前頭前野と(機能を担う様々な)皮質領域の間で通信が必要になる。このリアルタイムアクセス性能(参照先情報を検索する速度とメモリバンド幅(参照先の脳領域に格納されている情報を前頭前野まで一度に移動できる量))が次元性と関係しているとPopovは考察している。このリアルタイムアクセス性能の強弱が「後天的にほとんど変化しないもの」であるが故に、情報代謝タイプもまた、後天的にコロコロ変化することがないのである。
タイプ別・次元性とブロック一覧表
注意点として、これは参考文献からサイト管理人が推測してまとめたものである。Popov自身が直接、下記の対応関係を説明しているわけではない。今後もしも下記の情報に誤りがあるとわかった場合は、修正する可能性がある。
① Popov(ILI)自身のブロックと次元の紐づけ、② 参考文献「Нейрофизиологическая природа размерности функций 」にて、「Вернемся, однако, к проблеме реализации размерностей функций (точнее, как мы уже предположили, блоков).」というように、機能の次元を「より正確にはブロック」と説明している箇所がある点、③ タイプ判定にブロックを活用することを推奨している点、この3点から推測した。
ILIの場合、4次元性ブロックが直観論理ブロックであったり、2次元性ブロックが感覚倫理ブロックとなっているが、実際には+Ni → -Teや-Fi → +Seなどの形で働くことになる。
タイプ | 4次元 | 3次元 | 2次元 | 1次元 |
---|---|---|---|---|
アルファ | ||||
ILE | 直観・論理 | 感覚・論理 | 感覚・倫理 | 直観・倫理 |
SEI | 感覚・倫理 | 直観・倫理 | 直観・論理 | 感覚・論理 |
ESE | 倫理・感覚 | 論理・感覚 | 論理・直観 | 倫理・直観 |
LII | 論理・直観 | 倫理・直観 | 倫理・感覚 | 論理・感覚 |
ベータ | ||||
SLE | 感覚・論理 | 直観・論理 | 直観・倫理 | 感覚・論理 |
IEI | 直観・倫理 | 感覚・倫理 | 感覚・論理 | 直観・論理 |
EIE | 倫理・直観 | 論理・直観 | 論理・感覚 | 倫理・感覚 |
LSI | 論理・感覚 | 倫理・感覚 | 倫理・直観 | 論理・直観 |
ガンマ | ||||
SEE | 感覚・倫理 | 直観・倫理 | 直観・論理 | 感覚・論理 |
LIE | 論理・直観 | 倫理・直観 | 倫理・感覚 | 論理・感覚 |
ILI | 直観・論理 | 感覚・論理 | 感覚・倫理 | 直観・倫理 |
ESI | 倫理・感覚 | 論理・感覚 | 論理・直観 | 倫理・直観 |
デルタ | ||||
IEE | 直観・倫理 | 感覚・倫理 | 感覚・論理 | 直観・論理 |
SLI | 感覚・論理 | 直観・論理 | 直観・倫理 | 感覚・倫理 |
LSE | 論理・感覚 | 倫理・感覚 | 倫理・直観 | 論理・直観 |
EII | 倫理・直観 | 論理・直観 | 論理・感覚 | 倫理・感覚 |
ポポフ(ILI)が語る自分自身の機能とブロックの働き方は、下記のようになっている。
…筆者(Popovのこと。タイプはILI)の動機付けブロックについて考えてみます。この場合、最も強いブロックは間違いなく+Ni→ –Teです。
+Ne → –Tiと-Ti → +Neは中程度の強度で機能し、–Fi → + Seは感覚倫理ブロックから表現されます。そしてその他のブロックには論理的で感覚的なものと直観的で倫理的なものが考えられます。この2種類のブロックは、実際には、私の動機付けにあまり関わっていません(ただし感覚と論理の情報的相互作用は十分に確立されています)。
モデルAに特徴的なリング(サイト管理人注釈:メンタルリング、バイタルリング)は見えませんが、-Teが明らかに優勢です。 (+Ne → –Tiと-Ti → +Neの結合は、実際には最強の+Ni→ –Teの誘導効果であると想定していますが、これはこれまでのところ1つの可能な説明にすぎません)。
「純粋な」機能の動機付けという観点から、著者はまず、+ Niおよび+Si(GulenkoによるサブタイプH(ハーモナイザー)の機能)を、–Ne、–Fi、–Tiよりもいくらか弱いと表現しました。私自身の動機付けとして最も弱い機能は、符合がプラスである全ての外向性機能(+ Fe、+ Te、+ Ne、+ Se)です。強力な+Ni→ –Teブロックが強力な基本機能と組み合わされているため、ILIモードが優勢であり、情報代謝が適切に表現されていることがわかります。
しかし「機能としての働きは強い+Si」は「中程度未満の強さしかないブロック」に含まれています。逆に「機能としての働きが弱い+Se」は「中程度以上の強さをもつブロック」に含まれています。…
何をタイプ判定の根拠にすべきか
ここでは、「何を根拠にしてソシオニクスの情報代謝タイプを判定すべきか」という問題に対するPopovの考察を紹介する。
後天的な影響を受けにくい要素は何か
強力なブロック(高次元性のブロック)は、強力な機能よりも不変性が高いものであるため。Popovは強力なブロック(高次元性のブロック)からタイプを類推すべきだと説明している。例えば最も強力なブロックが+Ni -> Teの場合、そこに着目して情報代謝タイプをILIだと類推することは可能である。
また、ブロックとしての特性から生じる二分法として、彼は下記の4つの二分法をあげている。これらの二分法に着目することは、すなわち「ブロックに着目してタイピングしている」のと同義であるため、より正確なタイピングに繋がると考えられる。これらの二分法の特性は、15種類あるレーニン二分法の中でも後天的な訓練によって変化しにくいものだとされている(TsypineおよびPopov)。
面白いことに、古典的なユングの二分法(外向/内向、直観/感覚、論理/倫理、合理/非合理)は後天的に訓練可能で柔軟性が高いため、タイプ判定の根拠としては弱いという指摘がある(TsypineおよびPopov)。
ブロックと比較すると、機能はその時々の状況に応じて表れ方の強弱が変化しやすい。そのため、「機能の強弱」は「情報代謝タイプ」そのものではなく「DCNHサブタイプ」などのサブタイプに関連させるべき要因ではないかともPopovは考察している。つまり「機能の表れ方」に着目して情報代謝タイプの判定を行った場合、誤判定に繋がりやすいと言うことである。
GulenkoはDCNHサブタイプの気質の特徴をいくつか説明したが、それだけではなく彼は「気質と態度」が「情報代謝タイプから直接現れている」という考えを否定し、そのかわりに認知スタイル、言い換えると静的/動的やプロセス/結果のほうに焦点を当てている。
ただし、Gulenkoは戦術/戦略のタイプ分類を二転三転させているが(例えば一般的なレーニン二分法ではILIが戦術になるが、Gulenkoは典型的なILIの傾向を根拠に「ILIは戦略タイプだ」と唱えている)、このように特徴どころかタイプ分類自体があいまいな戦術 / 戦略に着目するのは避けた方がいい可能性がある。
α | β | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ILE | SEI | ESE | LII | EIE | LSI | SLE | IEI | |
静的 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
動的 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
γ | Δ | |||||||
SEE | ILI | LIE | ESI | LSE | EII | IEE | SLI | |
静的 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
動的 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
α | β | |||||||
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ILE | SEI | ESE | LII | EIE | LSI | SLE | IEI | |
プロセス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
結果 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
γ | Δ | |||||||
SEE | ILI | LIE | ESI | LSE | EII | IEE | SLI | |
プロセス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
結果 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |