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二分法の直観と感覚の正しい理解について by Trehov and Tsypin

2022年7月3日日曜日

Trehov and Tsypin ソシオニクス 二分法

構造ソシオニクス学派のA. TrehovとP. Tsypinによる説明


定義と混乱のレビュー

この記事では、直観と感覚の二分法の定義について、いくつかの文献を参照しながら説明を行います。

直観とは、全体像やファンタジーの絵のような抽象的な世界の認識です [4, p 186.]

感覚、それは感覚を通じた世界の具体的な認識の機能のことです [4, p 187.]


この定義によれば、直観タイプは生まれつき感覚が「未発達」であるか、その使い方を知らないかのどちらかであることを意味してしまいます。特に、直観タイプの人が純粋に「抽象的な世界観」を持ち、「ファンタジーの絵」を描きがちであると言われている点を考慮すると、どちらの解釈でも直観タイプの人を明確に差別していることになります。

これらの定義から、直観タイプの人は五感からの信号が弱かったり歪んでいたり(見る、聞く、嗅ぐ、触るということが苦手)、それに加えて、根拠のない空想の連続によって、周囲の世界の認識をさらに曖昧にしている人であるように見えます。つまり、直観タイプの人は、身体的にも精神的にも障がいを負っていると言っているのと同義です。

「感覚タイプは世界を具体的に認識し、『今この瞬間』に生き、快適さを重視し、それを作り出す方法を知っており、実用的な活動に引き付けられ、自分の仕事から物質的な形で結果を得ることを好みます。

 直観タイプの特徴は、現実を全体的にとらえ、夢想家でロマンチスト、実験好きで、時には実現不可能なアイデアも数多く生み出すことです。時に散漫で、実利よりも不確実な機会を好みます」[5, p. 57]


この定義では、なんと人類の約半分が「快適さを重視していない」ことがわかります(そして、もちろんそんなことはありません)

直観的なタイプは感覚的なタイプと同じ「人間」であり、それぞれの方法で自分が受け入れられる快適さを味わい楽しみます。質素な生活を送り、過酷なトレッキングやハイキングなどの「試練」を好む感覚的なタイプの人に出会うこともあります。彼らは伝統的な「ブルジョワ」「ヨーロッパ的な快適さ」は、「ひよわ」で軟弱な人のためにあると考える傾向があります。


さらに、直観タイプが実行不可能なアイデアを生成する理由は不明ですか? 直観タイプの底なしの「バカさ」は一体どこから来ていると言うのでしょうか。これはまだ「直観タイプは、時間軸のコントロールを得意とするため、ある一定期間後に実現しようとする未来のアイデアを生み出しやすい」と言った方が分かりやすいかもしれません。

しかしそう言い換えたとしても、この直観タイプの説明は現実から乖離しています。直観タイプの人の発想は現実を見据えたものであることが多く、企業で直観タイプの人はマーケティング(や他の専門分野の管理職)として成功していることがよくあるからです。LIE、IEE、IEIは困難な状況に対して、瞬時にいくつもの解決策を提示することができます。彼らの生み出すアイデアと方法がなければ、いくつかの現代の企業や企業は成功するのに苦労していたことでしょう。


最後に、「現実の具体的な利益」よりも「漠然とした予測不可能な可能性」を好むこの人は、いったい何者なのでしょうか?実利や収入を自分から拒む人などいるでしょうか。こんな人は、感覚タイプ、直観タイプ問わず、どちらのタイプからであっても見つけることは非常に困難です。どんなに「残念な」な直観タイプでも、(多かれ少なかれ)自分の手に入る実利を手放したりはしません。

別の問題として、将来的な利益や可能性は通常、彼らにとって興味深いものです。彼らは常に自分の財務計画や希望について検討したり話し合ったりする準備ができています。しかし、これは直観的なタイプが現在お金を稼ぐことを妨げるものではありません。ただし、直観タイプは時間に対する基本的な志向性から、感覚タイプに比べて報酬を受け取るまで待つ忍耐力がある点に注意する必要があります。直観タイプは、その意味で戦略性が高いといえます。自分が費やしたコストを回収し、自分が始めた策が実現するまで待つ覚悟があるのです。


「実用と理論という活動の方向性に応じて、人は『感覚-直観』という尺度の極のどちらに属するかどうかで区別することができます」

感覚タイプ - 具体的な感覚を重視する人です。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚が発達しているため、空間認識能力が高いです。感覚タイプは非常に実用的です。身体活動なしでは耐えられず、自分の手でいろいろなことをします。彼らは外見、健康、快適さ、栄養にとても気を配っています。主に物質的なインセンティブによってモチベーションが高まります。考えたり、瞑想したりするより行動する人は感覚タイプです。

直観タイプ - 想像力と空想力に富んだ人です。彼らは今を生きるのではなく、未来の展望によって生きています。現実的な感覚に欠け、地に足が着いておらず、現実の状態よりも抽象的な問題に関心があります。彼らは、物質的な利益や目先の報酬よりも、興味深い取り組みや非凡な人物によってモチベーションが高まります。多くの場合、彼らは自分の健康と外見に十分な注意を払っていません。行動するよりも考える人は直観タイプです。[3, p. 20]


この定義は、かなり偏っていると私たちは考えています。

まず、直観タイプの人は、感覚タイプの人と同じように「具体的な感覚」を体験し、感覚からくる情報を処理することができます。

次に、(例えば都市における)空間的な方向性は、機能的には一連の要因、すなわち周囲の空間に対する感覚(「近い/遠い」など)-Se、地図や略図による方向づけ能力-Ti、視覚的印象や地図に基づく領域の表現能力-Ne、などに依存するものです。ESE、SEE、SLIなど、非常に異なるタイプの人々に「方向音痴な人」が見られる一方で、自我ブロックに感覚機能を持たない人にも、迷ったりせずに上手く目的地にたどり着く力を持っている人がいる点も注目すべき点です。



さらに、この説明によれば直観タイプは「体を動かさなくても大丈夫」な人々で、自分の外見や健康にあまり注意を払っていない人だということになります。直観タイプは自分の健康には関心がないのかというと、別にそんなことはありません

感覚タイプと同じくらい直観タイプは運動やスポーツに興味を持っています。直観タイプにとってそれらは自己啓発の場であり、健康を維持するための絶好の機会となっています。

「非格闘技」系のプロスポーツ選手には、直観タイプであるEIE、LIE、ILE、IEI、LIIが多く見られます


最後に、「考えるほうか/行動するほうか」という二分法は不正確ではないかと思われます。

そもそも「考えるだけ」、「行動するだけ」というのは可能なのでしょうか。そんなことはありません。このことから、どんな人でも特定の(生まれつきの)思考と活動のバランスを持っていることがわかります。熟考することで効果的な行動が可能になり、行動することでさらなる熟考が必要になります。熟考や行動にどれだけの時間が必要か計算するのは、もちろん無意味なことです。

この定義に従えば、感覚型は何も考えずに行動する傾向があるということになりますし、直観タイプは不毛な思考プロセスに溺れるただの怠け者、傍観者、カウチポテト(一人でポテトチップスをかじりながらテレビを見てダラダラしているような人)でしかありません。この妙な区別は、ソシオニクスの特徴に関係するのでしょうか?いいえ、全く関係ありません


私たちの定義


直観:時間内の客体に関する情報の知覚と処理に向けられた心の優勢な態度。

感覚:空間内の客体に関する情報の知覚と処理に向けられた心の優勢な態度。


したがって、この二分法は、意識の方向性、つまり現象を評価するアプローチを規定するものだと言えます。

感覚タイプのアプローチ:現象は基本的に変わらず、現状のまま(つまり時間的な要素を完全に、あるいは部分的に無視します)。

直観タイプのアプローチ:現象は様々な要因、主に時間の影響を受けて常に変化している(つまり直観タイプにとって周囲の世界は不安定で「信用できない」ように見える)。

どちらのアプローチが優れているということはなく、単に適用範囲が異なるだけです。感覚タイプは空間とその特性の管理を目的としており、直観タイプは時間的な現象の管理を目的としています。この2つは相克するものではありません。


この二分法は、「戦術」と「戦略」という言葉で十分に表現できます。「戦術」は当面の問題への対処を優先します。そして「戦略」は現状の可能性や潜在性を評価し、現在と将来の展望を常に相関させることを意味します。トピック「戦術/戦略」のより詳細な分析は、記事[7]に示されています。ここでは、ソシオニクスの開発者オーシュラ・オーガスタからひとつだけ引用するだけに留めておきたいと思います。

彼ら(直観タイプ)は、戦略的な能力と、起こっていること全てに対する冷静沈着さ、および鈍感さによって区別されます。

感覚タイプは戦術的な能力、すなわち「迅速な意思決定、テンポ、生活のリズム、忙しさ」によって区別されます。[1, str.236]


もし、与えられた二分法を原始的に考えるなら、次のような例が特徴的だと思われます。

ある「典型的な」感覚タイプが、ある「典型的な」直観タイプと言い争いをしました、そして物理的な力を使った感覚タイプが勝利しました。このような時、感覚タイプは、今後同じような状況が繰り返されても、また簡単に勝てる、相手は永遠に敗北するだろうと考える傾向があります。それに対して直観タイプは全く異なった結論を出すことでしょう。スポーツや護身術を習うかもしれません。そして再び同じような争いが起こった場合、感覚タイプは思いがけず激しい抵抗を受けるかもしれません。結論として、「今この瞬間」の視点で状況を考えると、感覚タイプが勝者になります。時間軸で考えると、直観タイプに軍配が上がる可能性が出てきます。感覚タイプは、誰かや何かが変化する可能性について真剣に考慮することはありません。彼らの視点では、弱い者は永遠に弱い者のままです。


直観と感覚の二分法を示す歴史上の典型的な例は、1812年の戦争です。敵国の広大な領土を占領し、その首都を占領した感覚タイプのナポレオン・ボナパルトは、自分の勝利を確信していました。しかし時間的要因が彼に逆らい、最終的には今起きていることのダイナミズムと、軍事戦略上の状況のさらなる展開の可能性を客観的に評価したミハイル・クトゥーゾフ(Ni、Te)が勝利しました。


「待つこと」と感覚/直観

感覚タイプは「待つ」ということが出来ません。待つことによって何かを得ることが事実上ありません。典型的な感覚タイプを待たせると、不安になったり攻撃的になったりします

直観タイプが「待つ」ことによって不安になるのは、待つことで他の可能性や具体的な能力の一部が「減少してしまう」場合だけです。もし待っていても特に害がないのであれば、彼らは落ち着いて待っていることでしょう。それどころか、直観タイプは時間が過ぎるに従って自動で自分の目標に近づいていく状況に、喜びさえ感じるかもしれません。直観タイプは「遅すぎる、早すぎる」という言葉をよく口にしますが、これは予期されるイベントは特定の時間にきちんと発生するから、心配する必要はないという意味です。


「不確実性」と感覚/直観

他の条件が同じなら(セテリスパリブス、他の事情が同じならば)、感覚タイプは直観タイプよりも情報の不確実性の条件下で、より多くの心配をすることになります

感覚タイプの「確実性」とは、状況のすべての具体的な側面、要因、状況について完全に知っている(明瞭である)ことと定義されます。直観タイプにとっての「確実性」とは、必要な情報を調査・入手し、そこから直観タイプ自身がさらに推測を行って、情報の欠落を補うことです。


他の特性との混同

直観は、その「非厳密的」な計画性から、非合理と間違えられることがあります

人は誰でも計画を立てますが、感覚タイプの計画は非常に具体的です。多くの具体的な側面を持ち、現在の実情に即しています。

これに対して直観タイプの計画は、「何が起こり得るか」「どこにつながるか」という可能性や潜在的な認識に基づいており、必ずしも「今」という具体的な状態と直接関係しているわけではありません。


環境要因

非常に多くの場合、感覚/直観の二分法は、人の日常における実用性に関連していると考えられています。感覚タイプは「常に実用的できちんとしている」、直観タイプは「非実用的でだらしがない」というようにです。

このことから、日常的あるいは家庭的な場面での実用性と、ソシオニクスの二分法との間に直接的な相関関係がないことが明らかになったかと思います。実用的なスキルやセンスの有無は、その人の生活環境と関係があることに注意しなければなりません。

例えば、現代の都市文明から離れた田舎に住む人々は、タイプに関係なく若い頃から農業、薪割り、牛の乳搾り、家事など、多くの実用的な家事技術を身につけていることが多いのは明らかです。それと同様に、現代の都市に住む多くの感覚タイプは、そのようなスキルを持っていません。彼らの感覚はしばしば美的センスやセルフケアに向けられています。文明社会から遠く離れた生活を送らなければならないと気が付いた時、直観タイプは自分が必要とする全てのスキルとノウハウを習得しようとすることでしょう。

直観タイプに「感覚能力」を発達させないようにする「病理学的」な何かがあるわけではありません。もしも彼らにそうしたスキルが欠けていたとしたら、それは単に発達させる気がない、あるいは発達させる必要がないというだけの話です。


下記はV. Gulenkoの引用です。

機能の状態は、年齢の結果として生じる決定論的なものである可能性があります。

特に、子供にとって最も充実した機能は感覚的な機能であり、それが青年では倫理的な機能、壮年では論理的な機能、高齢者では直観的な機能になります。しかし、このような発展は、個人の環境への適応や意識的な学習と実践の結果として、恣意的にもたらされることもあります。

このようなタイプのダイナミックな特性を考慮するならば、ソシオニクスのタイプ診断に、「人の機能の絶対的な表現でなく、相対的な表現を把握する」という要件を追加する必要があると思われます。

このことから、論理タイプよりも局所的な論理的問題を上手く解決できる倫理タイプであったり、直観タイプよりも想像力にあふれていて夢見がちな感覚タイプ、平均的な感覚タイプよりも実践的な洞察力を様々な状況で発揮できる直観タイプが存在する可能性があるということがわかります。


診断

外見や体格の特徴が参考になる可能性があります。関連情報は[6]に記載しています。ここでは、空間内客体を効果的に制御するにはより強い体質が必要であり、時間内客体を制御するにはより弱い体質で十分であることだけを記しておくのに留めます。


出典より、参考文献リスト:
  1. Augustinavichiute A. “Socionics: Introduction” / Comp. L. Filippov. M. - SPb., AST, 1998.

  2. Gulenko V. V. “Disappear in Order to Reappear Again” // Socionics, Mentology and Personality Psychology, 3, 1995.

  3. Meged V. V., Ovcharov A. A. “Learn to manage people effectively.” - Evenly: PPF “Volinski charms” 2000.

  4. Rumyantsev E. A. “On the Way to Understanding: Socionics for Teachers and Parents.” - M .: Armada-press, 2002.

  5. Filatova E. S. “Socionics for all. Science of communication, understanding and consent.” - SPb .: B & K 1999.

  6. Tsypin P. E. “Techniques of Successful Typing.” - M .: Good Keyword: black squirrels, 2005.

  7. Tsypin P. E. “Jung Foundations and the True Basis of Socionics or Partial Reprogramming of Socionic Functions” //, Socionics, Mentology, and Psychology of Personality, 3, 2005.


出典:


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