鏡像関係となるタイプ
アルファ・ベータ・ガンマ・デルタとはクアドラのこと。NT, SF, ST, NFとはクラブのこと。
はじめに
鏡像関係は、知的刺激と相互修正の関係です。このペアは共通の関心を持ちますが、思考過程や好む方法に若干の違いがあります。
出会った初期段階で、鏡像関係ペアは数多くのことを話し合うことができます。基本的には全ての問題について、互いの持つ哲学を簡単に理解します(そして、通常それに同意できるとも感じます)。それと同時に、相手が自分とは微妙に異なる視点から考えていて、自分では見落としがちな貴重な事柄を認識する力に優れていることに驚きを感じます。
しかし関係性が深まるにつれて、この違いが障害になっていきます。
すべてが終わってしまった後になってから、もう一方のパートナーが未解決に感じるポイントを指摘します。通常もう一方のパートナーにとって、その指摘は取るに足らないものでしかなく、本筋から外れているようにしか見えないので当惑してしまいます。
場合によっては「この人は私の努力の邪魔をしている」とさえ感じるかもしれません。
このような「わかりそうで、わからない」状態が続くと、一般的には良好といえるような関係であったとしても、何らかのフラストレーションが生じてしまいます。それに伴う緊張は、距離を置けば解消されます。対立しあうことはほとんどない関係で、仮にそうなったとしてもすぐに水に流すことができます。
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おそらく他のどの関係よりも、鏡像関係は互いの創造性を刺激し、同じプロジェクトに共同で取り組むことを可能にさせる関係です。しかしこの交流は知的なもの(つまり仕事に関するもの)が中心であり、本能的なレベルでの親近感や、相手を欲する感覚に繋がるわけではありません。
最初は話し合いに面白さを感じるかもしれませんが、それを過ぎると関係性に虚無感や失望感を抱くようになっていきます。互いに自分の得意分野を補い合いますが、情報世界の半分は本質的に無視されたままになってしまいます。
互いの超イド(第5機能と第6機能)を補完しようとする試みは、たいてい中途半端に終わってしまい、結局快適な自我の世界(第1機能と第2機能)に戻ってしまうのです。
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鏡像関係には知的刺激と驚きが伴うため、友好的で安定した関係が長く続きやすいです。そのため友人として、よく見られる関係です。
さまざまな著者による説明
Valentina Meged, Anatoly Ovcharov
鏡像関係のパートナーは、互いの創造的な仕事ぶり、成果、懸念や疑問を積極的に評価します。この関係は、互いの発言の正確性をチェックするという意味では良い関係です。お互いから学ぼうとする意欲があります。
しかし鏡像関係には感情的な暖かさが欠けています。お互いに、相手に自分の考えを教え込もうとしたり、自分の意見を押し付けようとすることがあります。
似た者同士でありながら、あまりにも違う部分があるため、どうにかしてこの違いを無くそうと躍起になるかもしれません。しかしそれは不可能なことです。
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普通、話し合いは平和的に行われるため、それが関係性を悪化させることはありません。より親密な関係になった場合、自分の意見を相手に十分に納得させることができないため、苛立ちを感じてしまうことがあります。
とはいえ鏡像関係は、基本的には互いに十分に理解しあい、常に互いに関心を持ち続けやすい関係です。共感しあったり、助け合おうと手を差し伸べることができますが、お互いの弱い部分を十分に補い合うことはできないため、この助け合いは必ずしも効果的なものとはいえません。
鏡像関係は、共通の話題や解決可能な問題について有意義な議論ができる関係です。しかし両者ともに、自分の意見をそのまま持ち続けようとする傾向があります。
I.D. Vaisband
自分の考えを押し付け、相手を作り変えようとしがちなせいで、一緒にいられなくなることがあります。
鏡像関係はクアドラが同じ関係ですが、双対関係・活性化関係(いずれも鏡像関係と同じく、クアドラが同じ関係です)となるタイプの人々もコミュニケーションの場に存在する場合、鏡像関係間の相互作用はより快適なものになります。
鏡像関係は互いに非常によく似ています。両方とも論理タイプか、両方とも倫理タイプであり、またそれと同時に両方とも感覚タイプか、両方とも直観タイプです。しかし内向と外向は必ず異なっています。
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鏡像関係間で交換される情報の多くは、互いの強い機能の間で行われます。一方のパートナーが考えていることを、もう一方のパートナーがすでに実現しています。鏡像パートナーはお互いに学び合うことができますが、これは時に「相手に教えたい」という誘惑に繋がります。
通常、このペアで深刻な衝突が起こることは、ほとんどありません。
O.B. Slinko
「The key to heart - Socionics」より
鏡像関係の場合、1機能と第2機能に配置されている情報要素が逆です。そのため片方のパートナーについて単に考えていることを、もう片方のパートナーは常に実行に移しています。
鏡像関係の特殊性は、毒にも薬にもなります。多くの場合、自分とは違う角度から問題を理解する上で、鏡像パートナーの存在が役に立ちます。共同でプロジェクトに取り組む場合、責任を分担してそれに臨むことが多いです。
その一方で、この関係は時に互いを苛立たせたり、深い怒りを感じさせることもあります。これは自我ブロックだけではなく、超自我ブロックの構造によって加速されます。片方の役割機能(第3機能)が、もう片方の脆弱機能(第4機能)と一致するため、互いの脆弱な部分に刺激を与えたり、与えられたりしてしまうのです。
R.K. Sedih
「Information psychoanalysis」より
自我ブロックや超自我ブロックなどといった、ブロック単位での相互作用を見た場合、鏡像関係は同一関係と同じ相互作用をします。しかし鏡像関係と同一関係では機能の順序が異なっています。そのため、相互作用にやや混乱が生じやすい傾向はありますが、同一関係よりも相手に魅力を感じます。
鏡像関係では、助け合いと傷つけあいの両方が起こり得ます。鏡像ペア間での助け合いは難しいですが、それでも前者が起こることのほうが普通です。
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この組み合わせは、同じ分野で働いている場合、専門的かつ創造的な性質の問題を解決するのに特に適しています。全て関係の中で、最も多くのことを学び合える関係でこそありませんが、それでも二番目くらいには多くのことを学び合える関係だといえるかもしれません。
しかし結婚には向いていません。なぜなら互いのケアが難しいからです。このパートナー間の衝突は、普通、何らかの直接的な原因によって引き起こされます。非合理タイプのパートナーによって衝突が引き起こされることが最も多いです。
Laima Stankevichyute
「Intertype relations」より
同じクアドラのタイプ間の関係ですが、特に結婚には難しい関係です。
鏡像関係では、互いに教え、再教育しようとすることがあります。
倫理タイプ同士のペアの場合、互いに不安を感じて距離を置くかもしれません。論理タイプ同士のペアの場合、言い争いが始まったり、気まずい沈黙が続くかもしれません。
この関係は、一方のペアから見て双対タイプ、もう一方のペアから見て活性化タイプという人も同じグループ内に存在する場合、より快適なものになります。
A.V. Bukalov, G. Boiko
「Why Saddam Hussein made a mistake, or what is Socionics」より
鏡像関係をモデルAの構造からみた場合、左側の機能と右側の機能に配置される情報要素がそっくりそのまま反転していることがわかります。したがって、あたかも自分自身の精神の鏡の反射を見ているような関係だといえます。しかしこの鏡は歪んで見えるため、お互いに相手を修正したくなります。
この関係では、サブタイプの相性が良いことが重要になります。片方のペアが「主導機能が強調されているサブタイプ」であり、もう片方のペアが「創造機能が強調されているサブタイプ」である場合、関係性はより良好です。また、両方が「主導機能が強調されているサブタイプ」の場合、それぞれが自分の創造機能を通して相手に譲歩するため、互いを正そうとする気持ちが和らぎ、衝突の可能性が低くなります。
この関係では、片方のパートナーが見ている世界の残り半分を、もう片方のペアが見ているという意味で価値があります。鏡像ペアとは別に、同一クアドラとなる第三者(片方から見て活性化関係になるか、双対関係になるタイプの人)がいる場合、鏡像関係は著しく改善されます。また、同一クアドラの全てのタイプ(つまり二組の双対ペア、あるいは言い換えると二組の活性化ペア)がいる場合は、さらに改善されます。
Victor Gulenko
「Criteria of reciprocity」より
迷走する議論:
鏡像関係の相手とは、興味深く互いの意見を交換できることが多いです。
しかし知的競争が激化した末に、一方のパートナーが離れて行ってしまうこともあります。特に議論が長引くと、論争を引き起こすような内容にばかり焦点が当たりやすくなる傾向があるため、議論がおかしな方向に迷走し始めることもあります。それでも互いの意見への興味が消えることはないため、最後は元の鞘に収まることが多いです。
共同作業に適した関係で、そういった活動を行う場合は、より多くの恩恵を得ることができます。
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パートナー間の違い:
互いに一つの問題を反対側から定性的に分析するため、鏡像ペアの見解を聞けば、根本的な問題への深い洞察を得ることができます。したがって鏡像関係での1対1の議論は有益です。しかし第三者が多くいる場では、むしろ不健全な競争が誘発されてしまう傾向もあります。
鏡像関係の場合、両者は関係性の正確さと明確さを求めて、全てを分析しようとし始めます。また、お互いを合理的に分析し、得た情報を整理しようとする傾向もあります。お互いについて多くの興味深い発見をし、多くの新しい能力を花開かせることができます。
このような関係は、内省と深い考察を促進するものです。
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常にお互いに「コインの裏側」、つまり相手が注意を向けていなかった問題の側面を強調しあいます。そうすることで部分的な絵が埋められていき、完全な絵を得ることができます。したがって鏡像関係が持つこの性質は、共同作業や知的作業においてプラスに作用します。
各パートナーは、自分の意見を主張しながら、相手が提示した(自分とは)反対側の主張も考慮します。しかしあくまで「反対の主張を取り入れる」だけに留まるものであり、「意見をすり合わせて融合する」というわけではないので、時間がたつにつれて鏡像関係間で生まれる主張はますます多様化します。鏡像関係で得られる現実的な「報酬」は通常、かなり低くなります。
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この関係は、しばしば情熱に欠けています。鏡像関係は、ある種の確立された秩序やシステムに従って進む傾向があります。この秩序やシステムは時間とともにより強化されていき、周囲のすべての物事に適用されていきます。そのため付き合いが長くなると、互いに相手がどのような筋道をたてて反論してくるか、簡単に予測できるようになっていきます。
また、この関係は、一度確立された生活リズムの変化を必要とする急激な状況変化に弱いです。熟考を重ねた結果として新しい状態へ移行することもありますが、これはあまり頻繁に起こることではありません。こういった場合、古いシステムは捨て去られて、その代わりに新しいシステムが受け入れられることになります。古いシステムと新しいシステムが混在している状況は、鏡像関係の基本的な性質である「分析」を混乱させてしまうため、この関係にとってはマイナスに作用します。
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付き合う上でのアドバイス:
鏡像関係にとって最善なことは、家事や雑用のためのスケジュールを決めておくといった「何らかの合意や秩序を用意すること」です。一度決めたことはあまり変えないほうがいいでしょう。そうでないと混乱が起こりやすいからです。
1体1のコミュニケーションのほうが適した関係です。重要に感じる出来事は、すべて論理的に分析するよう心がけましょう。そのような出来事で、全体的な合意を得ることも非常に重要です。細かい部分では意見が対立することもありますが、これはそれほど問題にはならないでしょう。
感情や力に任せて問題を解決しようとはしないでください。お互いに、自分とは違う視点を持つ権利を認め合いましょう。優しい言葉や褒め言葉、ちょっとした好意を示すことで、自分のポジティブなところを表現してください。
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鏡像関係に必要なのは自立です。自分の面倒は自分で見てください。借金は避けましょう。鏡像ペアと一緒に暮らすのであれば、自分の給料の許す範囲で、質素な家具を揃えるのが一番です。
この関係は、クロスワードパズルを解いたり、教育番組を一緒に見たりするような、知的な共同作業によって強化されます。
V.V. Gulenko, A.V. Molodtsev
「Introduction to socionics」より
鏡像関係は、共通の興味や趣味の基づく友情に適した関係です。一緒に楽しい時間を過ごせる面白い友人だと感じることが多いです。しかしそれと同時に、鏡像関係のコミュニケーションには、開放性や暖かさが欠けていることも多いです。
鏡像関係ペアには、直観タイプ同士のペアと、感覚タイプ同士のペアのどちらかがあります。片方が直観タイプならもう片方も必ず直観タイプであり、片方が感覚タイプならもう片方は必ず感覚タイプです。それゆえ鏡像関係というのは、非常に共通の話題を見つけやすい組み合わせです。
鏡像関係ペアに加えて、あともう一人、鏡像ペアの片方から見て双対タイプであり、もう片方の鏡像ペアから見て活性化タイプとなるような第三者がいれば、より暖かい交流ができます。
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この関係が「鏡の関係」と言われるのは、一方のパートナーの言葉が、他方のパートナーの行動に反映されることが多いからです。つまり、一方のパートナーが受動的に考えていることを、もう一方のパートナーは能動的に実現しているということです。
しかしこの実現は決して完全なものではありません。鏡像関係の鏡はまるで歪んだ鏡のようなものです。そのため「完全とはいえない」パートナーの行動を修正しようとします。そのせいで混乱が生じたり、批判や叱責を受けることもあります。互いに相手の行動を自分にとって正しい像になるよう修正しようとしますが、その試みが上手くいくことはほとんどないでしょう。
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鏡像関係で行われるコミュニケーションを言語的側面から見た場合、建設的な批判の関係といえるかもしれません。それぞれが同じ問題の片割れをみているような関係であるため、「問題に対する考え方」を互いに興味深く受け止めます。
共同作業をした場合、お互いに修正しあったり、相手の曖昧な部分を明確化したがる傾向が見られます。しかしこのような批判は納得できるものであることが多く建設的なものだと受け止められることが多いです。
鏡像関係にはサブタイプが強く影響します。一方のパートナーが合理サブタイプであり、もう一方が非合理サブタイプという組み合わせが関係性の安定化にとっては最も良い組み合わせです。両方が合理サブタイプ、または両方が非合理サブタイプの場合、温度感の違いからチームワークに困難が生じやすいです。
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鏡像関係には、家庭生活には向かない関係です。細々とした目標は一致することが多いですが、グローバルで遠大な、長期的な目標は一致しないことが多いからです。また目標達成のための方法にも違いがあります。これは第1機能に配置されている情報要素が合理性か非合理性かという違いのせいで生じるものです。
Ekaterina Filatova
「Art of understanding yourself and others」より
鏡像関係のパートナーは非常によく似ています。論理/倫理が同じ、かつ、感覚/直観が同じですが、外向/内向と、合理/非合理が異なります。
お互いの強い機能を通して活発な情報交換が行われます。一方が話したり考えたりしていることを、もう一方がそのまま実行に移します。相手を指導したい、何かを教えたいという誘惑に駆られやすい関係ですが、相手に教えるよりも、むしろお互いに相手から学ぶべきことが多い関係です。
Eugene Gorenko, Vladimir Tolstikov
「Nature of self」より
両者の機能の構成を見ると、興味や価値観の類似性に気が付きます。このペアは強い機能を介して、良好な情報交換を行います。
相手の秀でている点を簡単に見つけ出し、サポートしたり、相手の優れた考えを実行に移したり、実生活の中に取り入れる手助けをすることができます。
Sergei Ganin
鏡像関係は、内向/外向が異なるものの、感覚/直観、論理/倫理が同じタイプ関係です。関係の進展の仕方は非リズム的です。
この関係は、互いに修正しあう関係です。同じような興味や考えを持っていますが、同じ問題に対して少し異なった見解を持っています。
それぞれのパートナーは、一つの問題の半分しか見ることができないため、自分が見ることのできない残り半分を見ているパートナーの考えに興味深さを感じます。通常、鏡像関係のパートナーたちは、すぐに自分たちが似た者同士であることに気が付きます。
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片方のパートナーにとって最も自信を持っている領域(第1機能)は、常にもう一方のパートナーにとっての創造的な領域(第2機能)です。一方のパートナーにとっては強固で最終的に見える者であっても、もう一方のパートナーにとっては不完全で変更可能なものに見えます。この違いは、特にお互いの計画を実現する際に、パートナーを困らせてしまうことがあります。お互いに相手がメインコンセプトを誤解しているように見えてしまうのです。
パートナーは互いを修正しようとしますが、それぞれのパートナーは自分の自信のある機能で行動しているため、その試みはたいてい失敗します。非常に激しい言い争いになることもあります。時には自分の意見の正しさを認めさせるために殴り合うことさえあります。
◆◆◆
しかし鏡像パートナーは非常に良い友人関係であることが多いです。
同じプロジェクトで一緒に働く場合、たいてい互いの指摘や批判を「建設的で有益なもの」として受け入れ合うことができます。
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鏡像関係で生じる不快感の多くは、判断と知覚の違いに起因しています。一般的に、近い将来の目標設定にはすんなり同意できますが、遠大な目標設定となるとそうはいきません。
通常、鏡像関係には感情的な暖かさが欠けています。しかしこれは「一方の鏡像パートナーから見て双対であり、もう一方のパートナーから見て活性化」である第三者がいると改善します。
鏡像関係の理論的特性
ユング二分法のうち、論理/倫理と直観/感覚が同じです。合理/非合理と外向/内向は異なっています。