より簡単な説明はこちら:ソシオニクスのタイプ、DCNHサブタイプ、アクセント
アクセントの歴史
アクセントという概念は、ソシオニクス独自の概念ではなく、元々は一般的な心理学からソシオニクスに取り入れられたものです。「アクセント(強調された性格特性)」という言葉は、ドイツの精神科医カール・レオンハルトが提唱したものです。1976年、彼は自身の著書「accentuated personalities」の中で、アクセントとは一体どのようなものなのかを、実在の人物や古典文学の登場人物を引用しながら説明しました。
アクセントとは、強調され、時に悪目立ちすることもあるような人格的特徴のことです。これは他の人との違いとして表面的な行動上にはっきりと表われる特徴です。アクセントそのものは病的なものであったり、生活を送るうえで困難を引き起こすものではありません。ただ、客観的に見ると、確かに好ましくない条件下では病的な状態に変化する可能性があることは留意しておく必要があります。
ソシオニクスの生みの親であるオーシュラは、ソシオニクスを展開する際にアクセントの概念を利用しました。特に「人間の二重の性質について(О дуальной природе человека; The Dual Nature of Man)」という著書でカール・レオンハルトや、アンドレイ・リッチコのアクセントとソシオニクスの16のタイプと比較しています [1]。ただ、アクセントの種類よりもソシオニクスのタイプの数の方が多いため、オーシュラの著書ではいくつかのタイプに該当するアクセントが空白になっています(オーシュラによるタイプとアクセントの対応は、こちらの記事の後半に出てくる表を参照:ソシオニクス 合理と非合理(by A. Augusta))。
ソシオニクスにおけるアクセント
Humanitarian Socionicsではアクセントとタイプ、あるいはサブタイプに相関関係にあるという考えは採用していません。我々は、ある人のタイプ・サブタイプがなんであれ、全ての機能がアクセントとして働く可能性があると考えています。
これまでの実践に基づき、私は強調された機能(アクセント)とは、次のような特徴を必ず備えているものだと考えています。
- 行動面に表われる時は、はっきりとした形で表われる。
- エネルギー的なムラがある。
- (もしも表れる場合ははっきりした形で表れるが)同じ状況下で、アクセントがはっきり表われる時もあれば、全く表われないことがあるなど、一貫性がない。
アクセント、すなわち痛々しいほどに研ぎ澄まされた機能は、たいていの場合、不安や、コンプレックスを伴います。つまり、貴方が執着しているもの、貴方を苦しめているもの、貴方が一生懸命考えているもの、貴方の行動の中で無作為に実行しようとしているもの、それが貴方のアクセントです。
例えば、お金のことを体系的に一生懸命考えたり、儲からない商売に手を出したりするのは「Te」の強調(Teアクセント)だと考えられますし、どうにも抑えきれない、それでいて実際には実行に移せないような攻撃性に延々悩まされるのは「Se」の強調(Seアクセント)だと考えられます。
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一部の研究者は、特定の物事について考え続けた結果アクセントができると考えていますが、それは誤りであると私は考えています。むしろ、先にアクセントがあって、そのアクセントのせいで強迫観念が生まれるのだと考えられます。
抽象性の高い科学技術に関連した分野に関係する人々(数学者やプログラマー)の多くは、強いNiアクセントを持っています(自閉症的な傾向、外部の現実を無視して自分の思考やイメージに没頭するという形で表現されています)。ポアンカレ予想を証明してアメリカにあるクレイ数学研究所からミレニアム賞授賞を受賞したロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンもまた、Niアクセントの持ち主であると考えられます。
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もしアクセントが天才につながるようなものであるとすれば、人はアクセントと戦う必要はあるのでしょうか。私は必ずしもアクセントを修正する必要はないと考えています。
しかし、「自分の性格のせいでコミュニティに居辛くなってしまった、それでもまだコミュニティに所属していたい」というような場合などであれば、アクセントの表れ方を変えたり、手を加えたりすることに意味があるとも思います。
例えば強い「Ni」には、それと同じくらい強い「Si」が必要になります。抽象的な数学的調和と、具体的な美的調和のバランスをとるにはどうすればよいのでしょうか。これは服装のだらしなさや不摂生といったものを避けるよう気を遣えばいいだけの話です。
もう一つの方法は、自分の問題のあるエネルギーを外に向かって放出することです。例えば、現代の若者がネット上の様々なコミュニティで見せる特徴的な行動について考えてみてください。
彼らは「等身大の彼ら自身」から掛け離れた、もはや風刺画といえるくらい誇張されたイメージで自分を演出しようとしています。彼らのこうした行動は、強調された機能(アクセント)のエネルギーを放出するための行動のひとつであると言えます。そうすることによって、彼らは一時的にストレスを発散しているのです。
訳注
- ^ アンドレイ・リッチコ、ソビエト精神科医、精神神経研究所の副所長。アクセントの研究者。正常 - 強調 - 精神病質の三段階に分けて性格特性の説明をした。「病理特性診断質問票」と「MMPI(性格質問票)」を基に分類する。分類はレオンハルト、リッチコ、その他研究者ごとに異なるものの「スキゾイド的」や「情緒不安定的」など10~14種類程度ある。