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MBTI、ソシオニクス、16Personalitiesその他16タイプ類型の違い

2022年1月23日日曜日

MBTI MBTI派生理論 ソシオニクス ビッグファイブ 影の機能モデル

Differences

はじめに

ソシオニクス、MBTI、エニアグラム、ユングの関係

下記のような説がある(諸説あり)。


ソシオ・エニア・MBTI・ユング
ソシオ MBTI エニア ユング
Fi FiSe ESI ISF_ 1 内向感情
FiNe EII INF_
Fe FeSi ESE ESFJ 2 外向感情
FeNi EIE ENFJ
Te TeSi LSE ESTJ 3 外向思考
TeNi LIE ENTJ
Ti TiSe LSI IST_ 5 内向思考
TiNe LII INT_
Ni NiFe IEI INF_ 4 内向直観
NiTe ILI INT_ 6
Ne NeTi ILE ENTP 7 外向直観
NeFi IEE ENFP
Se SeTi SLE ESTP 8 外向感覚
SeFi SEE ESFP
Si SiTe SLI IST_ 9 内向感覚
SiFe SEI ISF_


参考:

関連記事「エニアグラムとソシオニクスの関係

おそらく最も求められている情報なので冒頭に載せたものの、実際にはMBTIやソシオニクス、その他のタイプ類型論は「長さを測る物差しと、気温を測る温度計」くらい違う理論なので、こうした比較はあまり意味がないような気もする。


◆◆◆


MBTIにせよソシオニクスにせよ、これらのタイプ理論は直感的にわかりにくい理論である。

最初、「性格のタイプ」について知りたくて類型情報を探し始める人は結構いると思うが(当サイト管理人もそうだった)、実は日本で見かける多くのタイプ理論(MBTI、エニアグラム、ソシオニクス)は「性格のタイプ」の理論ではない

ここではMBTI、ソシオニクス、16Personalities、そしてMBTI派生理論の一部の違いを簡単にまとめておく。


MBTI

サイト管理人の所感としては、日本で見かける類型の中では、ぶっちぎりで難しい類型がMBTIなんじゃないかと思う。

公式のタイプ判定手順

公式のMBTI(Step I)は以下のような手順でタイプ(ベストフィットタイプ)を決める。

  1. 質問紙を使ったテスト(「報告された指向の明確さ」の判定)
  2. セッション
  3. 受講者本人によるベストフィットタイプの決定

MBTIの肝は、「最終的には自分でタイプを決める必要がある」という点。「MBTIのタイプは何のタイプであるのか」をきちんと理解しないと、自分のタイプを知ることが出来ないのである。


MBTIとは何のタイプなのか

MBTI公式サイトのこちらの記事「タイプ論と特性論の重要な違い(外部サイト・日本語)」を読んでほしい。

この記事にはMBTIが直面している問題について書かれている。特にこういう人にはオススメの記事である。

① MBTIタイプがわからない人
② 他人のMBTIタイプの判定をしたい人
③ WikipediaのMBTIのページにある「批判(外部サイト・日本語)」に興味がある人


MBTIのタイプとは、心理学的な選好(preference)のタイプである。公式では「利き手」に例えて説明されることがある。利き手側の極(内向/外向や直観/感覚などの極)は使いやすいとされている。

MBTIによって示される指向得点は、 特性の程度を測定するものではなく、受検した者がどちらの極のほうをもう一方より好んで用いているか(指向して いるか)についての個人の明確度を見積もるものといえる。
- タイプ論と特性論の重要な違い(外部サイト・日本語)より


つまり、MBTIは「どちらの極のほうをもう一方より好んで用いているか」を見ているのであって、性格特性(例えば「気難しい」「心配性」「協調的」「皮肉屋」「寂しがり屋」「人見知り」「おっとりしている」など)の傾向や能力(共感力や抽象的思考力や想像力)を見てタイプに分類しているわけではないのである。


◆◆◆


タイプとして考えると難しいが、「MBTIのタイプ」を「数学が好きか嫌いか」(あるいは「数学の勉強なら何時間でも疲れずにできる方か、それとも他の科目よりもかなり苦労しないと勉強できない方か」)のタイプに例えてみるとわかりやすい(「MBTIのタイプ」を「数学が好きか嫌いか」に置き換え、どれくらい気難しいか・心配性なほうか等の「性格特性」を「数学の成績が良いか悪いか」に置き換える)。

「数学が好きな人」には「数学の成績が良い人」が多い傾向はあるだろうが、「数学の成績が良い人=数学が好きな人」とは必ずしも言えないのもわかると思う(好きなこと、楽なこと以外を避けて大人になる人と、何らかの圧力を受けながら大人になる人、どちらが多いだろうか)。「MBTIのタイプ」と「タイプごとの典型的な性格特性」の関係も、ちょうどこの関係性に似ている。


◆◆◆


ある人が「典型的なINTPの特徴」にほとんど合致して、「典型的なINTJの特徴」にはほとんど当てはまらなかったとする。この人はINTPではなくINTJなのかというと、「これだけではわからない」というのが正しい。「典型的なINTPの特徴」や「典型的なINTJの特徴」というのは性格特性や能力である。数学の例でいうと、「成績が良いか悪いか」に相当するものである。

機能についても同様である。「典型的なTiユーザーの特徴」や「典型的なFeユーザーの特徴」あるいは「典型的な劣等Feの特徴」などといった情報を知っている人は多いかもしれないが、これもまた性格特性や能力である。


◆◆◆


「でもMBTIでは質問紙を使ったテストや、有資格者による判定(フィードバック)をやっているじゃないか」と思うかもしれないが、最初に書いた通り、これは「タイプ」を判定しているのではなく、受講者本人がベストフィットタイプについて考えるための材料を提供しているにすぎない。MBTIのタイプはあくまでも本人にしかわからないものである。

これは「典型的な数学好きな人の特徴にどれだけ合致しているか」は、本人以外であっても測定可能であり、数値化して他の人と比較できるのに対し、「実際にどれくらい数学が好きか、嫌いか」は、本人以外には測定不可能であり、数値化して他の人と比較できないのと同様である。


① MBTIタイプがわからない人

最初自認をINFPにしていたが、その後「INTPに多い傾向」を聞いて「自分はこの傾向に合致するからINTPかもしれない」と思うような人は多いかもしれない。

こうやって「〇タイプに多い傾向」を元にタイピングするのは不毛である。なぜならMBTIは性格特性の傾向や、能力の傾向のタイプではないからだ。どれだけ「典型的なINTPの特性の傾向」に合致していて、「典型的なINFPの特性の傾向」には合致していなかったとしても、「選好」がINFPならその人はINFPが正しい。


② 他人のMBTIタイプの判定をしたい人

これは「できない」ことである。資格を持っている講師にすらできない。倫理的な意味合いもあるだろうが、もし「タイプ判定」できるんだったら、「ベストフィットタイプ」なんて受講者任せのものじゃなくて、質問紙の結果なり、講師の判定結果なりを「タイプ」にできただろう。別にMBTIも責任逃れしたくて「ベストフィットタイプ」という考えに逃げているわけではなく、理論上、本人にしかわからないものだから本人に判定させているのである。確かに他人の推測とベストフィットが一致する可能性はゼロではないだろうが、少なくとも理論を理解した上で決定した本人のベストフィットタイプよりも他人の推測のほうが正しいということはない。ちなみに公式の質問紙であるForm Mは、資格者の「タイプ判定」のデータではなく、資格者のフィードバックを受けたテストユーザーそれぞれが下したベストフィットタイプのデータを元に作成されている(英語版MBTIマニュアル7章, p144 Best-Fit Type Studyより)。

他人の推測よりベストフィットタイプが正しい理由はこれまでに説明した通り、性格特性の傾向がMBTIのタイプになるわけではなく、本人にしかわからない選好のタイプがMBTIのタイプだからである。基本的に他人や質問紙に出来るのは、「Aさんは数学の成績が良いから(あるいは数学の成績が良いと自己報告しているから)、数学好きな可能性がある」程度の話だけである。


③ WikipediaのMBTIのページにある「批判」に興味がある人

まず最初に、MBTIは科学ではない。そして性格特性の傾向のタイプでもない。質問紙はあくまで「本人が自己理解を深める材料を提供するもの」であって、「タイプそのものを判定している」わけではない。

多くの論文の「MBTIに対する批判」は、質問紙(Form MやForm Gなど)の結果に対する批判であって、セッション後のベストフィットタイプに対する批判ではない。質問紙はタイプそのものを議論しているわけではないので、MBTIの理論通りにならないところがあっても当たり前である(だからこそ、質問紙のあとにわざわざセッションをやって、受講者本人の手でタイプ判定させている)。もしMBTIを批判したいのであれば、ベストフィットタイプを対象に議論すべきである。

そして選好そのものは、「実際にどれくらい数学が好きか、嫌いか」と同様に、客観的な(他者と比較できる形の)数値に置き換えることが出来ないものである。MBTIが提唱する理論(二分法やダイナミクス)を客観的指標で議論する術がない以上、MBTIには反証可能性がないと言わざるを得ない。つまり、批判・否定することができる理論ではないので、科学ではないのである。


参考:


ソシオニクス

ソシオニクス見出し

ソシオニクスはMBTIと別の意味で難しい。というのも、ある程度調べたことのある人ならわかると思うが、様々な見解や理論が乱立しているからである。

様々な学派

ソシオニクスには様々な学派があり、それぞれで理論やタイプ判定のやり方が異なっている。有名どころだけでも下記の5種類ある。ある学派では中心的な理論が、別の学派では採用されていないこともある。


  • Humantirain (Gulenko)
  • Systemic (Ermak & Eglit)
  • Associative (Tangemann)
  • Instrumental (Kalinauskas, Golichov, Reinin etc)
  • Physiognomic (Filimonov & Duchovskoi)


そういう意味では、「何が正しい情報か分からないとイライラしてくる。誰かハッキリ答えを教えてくれ」という人や、「少なくとも『公式はこう言っている』という情報がないと困る」という人は、ソシオニクス自体にあまり向いていないかもしれない(ソシオニクス的に言うと、こういう人は「二分法の客観主義に該当する人で、ガンマクアドラかデルタクアドラの可能性がある」と解釈されるかもしれないが)。


参考:


ソシオニクスとは何のタイプなのか

ソシオニクスとは「情報代謝のタイプ」である(情報代謝を補完するものとして、モデルGのようにエネルギー代謝という考え方を取り込んでいるものはあるが)。この情報代謝という考え方は、ユングにもMBTIにもないもので、ケピンスキーという人が提唱した情報代謝の理論を取り入れたものである。そして性格特性の傾向のタイプではない


MBTIとソシオニクス

ソシオニクスとMBTIは、どちらもユングの影響を受けてそれぞれ別々に作られた姉妹理論である。

たまに「ソシオニクスはMBTIの派生理論である」と言われることがあるがこれは間違い。そもそもソシオニクスの提唱者・作者であるオーシュラは、MBTIの存在自体を知らなかったほどである。


参考:


定義の差異

ユング・MBTI・ソシオニクス間で機能(ソシオニクスの場合、情報要素)の定義に違いがあることは有名だが、この違いの理由はソシオニクスは「ユングをモデル化すること」を目的に作ったわけではないからである。実際、上述したようにソシオニクスのコンセプトには、ユングだけではなく、ケピンスキーの影響が強く含まれる

ソシオニクスからは脱線するが、MBTIはこの点がやや曖昧である。MBTI作者のマイヤーズとブリッグスは一応「カール・ユングの人間の発達に関する理解、心理的タイプを含むユングの理論モデル、個性化のプロセスの概念、精神の構造に対する、最も有望なアプローチを提供すること」を目指していたとされるが(英語版MBTIマニュアル第三版の序文 p XVより)、それと同時に「最初の (1962年) マニュアルで、イザベル マイヤーズは母親であるキャサリン C. ブリッグス (MBTIの共著者) が、ユングの理論の発見よりも前に、タイプに関する彼女のオリジナルの理論を持っていたことを認めた」ともある(英語版MBTIマニュアル第三版の序文 p XVIIIより)。MBTIとユングの間で見られる差異は、ブリッグスのオリジナル理論とユングの理論間の違いと、マイヤーズおよびブリッグスが前者を優先したことから生じた可能性はある。


話はそれたが、ソシオニクスは(おそらく部分的にはMBTIも)、ユングのアイデアを取り入れていること自体は間違いないが、あくまでも「それぞれの理論の提唱者が、自分の中のアイデアを形にするために、ユングの理論の中から使えるものを部分的に拾い上げて取り入れた」というべきものである。その結果として、この3つの理論の間で様々な違いが生じているのである。


◆◆◆


このような違いがあるのに、なぜ表記法は似ているのかと思う人がいるかもしれない。

ソシオニクスの表記法がMBTIと似ているのは、旧ソ連系の言語から英語に翻訳されたときに、英語圏で馴染み深いMBTI風の表記で翻訳されたためである(本サイトも英語圏の表記ルールに合わせている)。

ソシオニクスの本場である旧ソ連系言語の文献では、タイプ表記は「ロベスピエール」「分析家」などのニックネーム表記が多く、ついで「LII」という3文字表記が多い。4文字表記はほぼないが、稀に「INTJ」と表記されることはある(すべて大文字、J/Pスイッチなし。英語圏の4文字表記では通常「INTj」と表記される)。

機能について言えば「関係性の論理」という表記法が多く、それを省略した表記法も多い(あえて日本語にするなら、関係性の論理→関論のような書き方)。また、シンボル表記「□」や、そこから派生した「白の論理」、「白論」という書き方をすることも多い。1文字表記はあまりみられず、「内向論理」という書き方もあまり見られない。「Ti」という書き方に至ってはかなり稀である。


参考:
  • MBTI Manual: A Guide to the Development and Use of the Myers-Briggs Type Indicator, 3rd Edition Paperback


能力的な側面の有無

ソシオニクスの情報代謝には能力的な側面がある(記事「機能の次元」参照)。この点でも、MBTIの「選好」という考え方とは全く異なっている

例えるならMBTIが「数学は好きか嫌いか」だけを議論するための類型だとしたら、ソシオニクスとは「数学は好きか嫌いか、数学の成績は良いか悪いか」を全部まとめて一気に議論しようとしている類型である。


MBTIとソシオニクスのタイプ分布

MBTI、ソシオニクス、共にタイプ分布の調査が行われている。

結論から言うと、MBTIではS型のほうが多く見られるが、ソシオニクスではN型がのほうが多く見られるという違いがある。


ソシオニクスのタイプ分布

Sociotype.comのタイプ分布。縦軸はパーセント。2022年2月にデータを取得したときの値。

最大のIEI (INFp)とEII (INFj)がそれぞれ7.4%、最小のESE (ESFj)とSLE (ESTp)がそれぞれ4.8%であった。

sociotype-population


出典:

◆◆◆

ソシオニクスの専門家 Filatovaによる調査結果(299名を調査)。

EIE (ENFj)が12.71%、ILI (INTp)が11.04%という順で頻度が高く、逆にEII (INFj)が3.01%、ESE (ESFj)が3.34%、SLI (ISTp)が3.34%という順で頻度が低かった。


Filatovaによる調査結果
タイプ 割合
1 EIE ENFj 12.71%
2 ILI INTp 11.04%
3 LII INTj 9.03%
4 IEI INFp 7.69%
5 LIE ENTj 7.02%
6 LSE ESTj 6.35%
6 LSI ISTj 6.35%
8 SEE ESFp 6.02%
8 SEI ISFp 6.02%
10 ILE ENTp 5.02%
11 SLE ESTp 4.35%
11 IEE ENFp 4.35%
11 ESI ISFj 4.35%
14 SLI ISTp 3.34%
15 ESE ESFj 3.34%
16 EII INFj 3.01%


出典:

◆◆◆

なお当サイトのタイプ別の記事閲覧数(全て同じ日に公開を開始した、Gulenkoによる説明の記事の閲覧数を比較)では、閲覧数1位がEII (INFj)、2位がILI (INTp)、3位がLII (INTj)、4位がIEI (INFp)であり、13位がLSE (ESTj)、14位がSLE (ESTp)、15位がSEE (ESFp)、16位がESE (ESFj)である(2022年2月)。


MBTIのタイプ分布


MBTI
世界 日本
1 ISFJ 13.8% ESFJ 12.15%
2 ESFJ 12.3% ESTJ 11.84%
3 ISTJ 11.6% ENFP 10.08%
4 ISFP 8.8% ISTJ 8.28%
5 ESTJ 8.7% ISFJ 8.08%
6 ESFP 8.5% ENTP 7.86%
7 ENFP 8.1% ESFP 6.90%
8 ISTP 5.4% ESTP 6.48%
9 INFP 4.4% ISFP 5.14%
10 ESTP 4.3% INFP 4.68%
11 INTP 3.3% INTP 4.09%
12 ENTP 3.2% ENFJ 3.66%
13 ENFJ 2.5% ISTP 3.60%
14 INTJ 2.1% ENTJ 3.22%
15 ENTJ 1.8% INFJ 2.07%
16 INFJ 1.5% INTJ 1.88%


出典:
  • "MBTI Manual" published by CPP
  • 日本版MBTIマニュアル P.80 2011.10.3 (株)PDS総合研究所


ソシオニクスのタイプ別に多いMBTIのタイプ

MBTIに対応するソシオニクスのタイプは何かという点はいくつか調査されている。

気になる人は記事「ソシオニクス x MBTI の分布」を参照

これらの調査結果を踏まえると、下記の点がわかる。

  • MBTIのタイプごとに、ある程度ソシオニクスのタイプにも偏りはある。
  • J/Pスイッチ通りにはならない可能性がある


注釈:J/Pスイッチとは、MBTIの内向型(INTPなど)のPとJを入れ替えたタイプ(INTj、すなわちLII)が、対応するソシオニクスのタイプであるとする考え。


16Personalities

16Personalities見だし

16Personalitiesとは何のタイプなのか

16Personalitiesは性格特性の理論であるビッグファイブを参考に作成された「性格のタイプ」の理論である。もし「性格のタイプ」について話したいのであれば、MBTIでもエニアグラムでもソシオニクスでもなく、16Personalitiesがオススメである(同様にビッグファイブを元に作成された類型にはグローバル5 SLOANがある)。


MBTIと16Personalitiesの違い

16Personalitiesは、一見するとMBTIっぽく見えるが、タイプの呼び方がMBTIに似ているだけで、MBTIではなくビッグファイブから作られた「16種類の性格特性のタイプ」である。

16Personalitiesで「典型的なINTPの特徴」にほとんど合致して、「典型的なINTJの性格の特徴」にはほとんど当てはまらなかった人がいた場合、タイプは「INTP」になる。つまりMBTIは選好の類型論であるのに対し、16Personalitiesは性格特性の類型論である。


なお、16Personalitiesの理論は「Myers-Briggsや他のユングモデルに基づく理論とは異なり、認知機能などのユング的概念やその優先順位付けは取り入れていない - 16Personalities公式サイト Our Framework(外部サイト・英語) Our Approachより」と説明されている通り、INTP-TやINTP-Aだったからといって、「その人の第1機能がTi、第2機能がNe、第3機能がSi、第4機能がFe」という話はしていない。つまり、16Personalitiesの結果からは「Tiがどうこう」とか「劣等機能がどうこう」などといった話は一切できないのである。


◆◆◆


16PersonalitiesはMBTIモドキ扱いされていたりするが、「ものさし」と「はかり」に優劣がつけられないように、16PersonalitiesとMBTIの優劣は単純に決められるものではない。もしも個人や集団の性格特性を分類したり、その傾向について調べたいのであれば、16Personalitiesのほうが向いている

一方で、内面の動きについて考えたいのであればMBTIのほうが向いている(他人の内面について考える場合、他人がMBTIについて理解した上でベストフィットタイプを判定し、それを公開していることが必要になるが)。


◆◆◆


ちなみに16Personalitiesが提供しているWorld Personality Map(外部サイト・英語)では、国別のタイプの傾向を見ることが出来たり、日本のタイプ分布を知ることも出来る。2022年2月のデータによれば、日本で最も多いタイプはINFP-T(12.91%)であり、最も少ないタイプはENTJ-T(1.01%)である。詳しい順位はJapan Personality Profile(外部サイト・英語)を参照。


16Personalitiesのフレームワーク

マインド
周囲とどのように相互作用するか。
I:内向。孤独な活動を好む。外部刺激に敏感。
E:外向。グループ活動を好む。熱狂的で興奮しやすい。


エネルギー
世界をどのように見て情報処理するか。
S:実用志向、今現在起こっている事象に目を向ける
N:想像力が強い、隠された意味と将来の可能性に目を向ける


ネイチャー
感情への接し方。
T:感情よりも理論重視。協調よりも効率重視。
F:感情的な表現力が豊か。共感的で協調に重点を置く。


戦術
仕事、計画、意思決定へのアプローチ方法。
J:決断力がある。自発性よりも計画を好む。
P:即興でチャンスを見つける。決断を下さず、選択の余地を残そうとする。


アイデンティティ
自分の能力と決定に自信を持っているかどうか。
-A:自信があり、情緒が安定していてストレスに強い。心配性ではない。自分を押しつけない。
-T:自意識過剰でストレスに敏感。成功志向が強く、完璧主義で向上心も強い。


参考:


デイビッド・カーシー

MBTIの派生理論。

日本ではMBTIと同じ文脈上で使用されていることもあるが、MBTIとは異なる理論である。

ヒポクラテスとプラトンによる古典的な四気質の理論を取り入れたもの。

詳しくは記事「カーシーの気質分類(MBTI派生理論)」参照。


ジョン・ビーブ

MBTIの派生理論。

影の機能」という、MBTIを8機能に拡張したバージョンの類型として知られているかもしれない。詳しくは記事「影の機能モデル(MBTI派生理論):はじめに」参照。

ソシオニクスとの関係

近年ではソシオニクスとは下記のような対応関係にあるのではないかと言う説がある(ジョン・ビーブの説ではない)。


相関関係
Beebeモデル(影の機能)
ソシオニクス(Model A, Model G)
Beebe Model A Model G Beebeの性質 ソシオニクスの性質
1.英雄 1.主導 1.管理 ポジティブ/自信家 
/自我親和的/背骨
自我ブロック/強い
/意識的/尊重/受容
2. 良い親 2.創造 5. 実証 ポジティブ/自信家 
/自我親和的/腕
自我ブロック/強い
/意識的/尊重/生成
3. 子供 6. 活性化 4. ランチャー ポジティブ/脆弱
/自我親和的/腕
超イドブロック/弱い
/無意識的/尊重/生成
4. アニマ 5. 暗示 6. 操作 ポジティブ/脆弱
/自我親和的/背骨
超イドブロック/弱い
/無意識的/尊重/受容
5. 敵対者 7. 監視 8. 統制 ネガティブ/自信家 
/自我異和的/背骨
イドブロック/強い
/無意識的/控え目/受容
6. 魔女 8. 実証 2. 創造 ネガティブ/自信家 
/自我異和的/腕
イドブロック/強い
/無意識的/控え目/生成
7. トリックスター 4. 脆弱 7. ブレーキ ネガティブ/脆弱
/自我異和的/腕
超自我ブロック/弱い
/意識的/控え目/生成
8. デーモン 3. 役割 3. 役割 ネガティブ/脆弱
/自我異和的/背骨
超自我ブロック/弱い
/意識的/控え目/受容

自我親和的(ego-syntonic):自我の不快感や違和感を伴わないもの。例えばネット中毒、アルコール中毒などの「本当はやめたほうがいいけど、ついやってしまうもの」のことを自我親和的という。

自我異和的(ego-dystonic):自我の不快感や違和感を伴うもの。例えば何度も鍵がかかっているか調べる、血が出るほど手を洗い続けてしまうなどの「やめたほうがいいし、本人も(自我も)不快なのでやめたいと思っているけどやめられないもの」は自我異和的である。

背骨はアイデンティティを定義する上で、我々が自分自身の中で、あるいは自分自身のために何ができるかということに関心を向け、は、自分の意識を使って他人に働きかける方法に焦点を当てている。

ソシオニクスの性質の用語は記事「モデルA」参照。


参考:


リンダ・ベレンズ

MBTIの派生理論。

ベレンズは、MBTI、カーシーの気質分類、インタラクション・スタイル、認知ダイナミクス(主にビーブの影の機能モデル)などを統合的に組み合わせながら、人間の行動とその行動の背後にあるものを理解するのに役立つモデルを構築しようとした。

インタラクション・スタイルとは、タイプ別のコミュニケーションスタイルのようなもの。

詳しくは記事「ベレンズ(MBTI派生理論)のインタラクション・スタイル」参照。

その他のMBTI派生理論

詳しくは省略するが、他にも派生理論はたくさんある(これはごく一部で、もっといっぱいある。英語圏だけではなく、別の言語圏でも独自の派生理論が作られていたりもする。例:jungus)。

  • William Harold Grant
  • Lenore Thomson
  • DaveSuperPower
  • CS Joseph
  • Erick tor
  • Michael N Pierce


カール・グスタフ・ユング

ここまでに、ユングから派生した様々な類型論について説明したが、そもそもユングのタイプとは何のタイプなのであろうか。

様々な意見があると思われるが、サイト管理人自身は「ユングのタイプとは、エナンチオドロミアのタイプである」というのが適切ではないかと解釈している。

詳しくは記事「影、ペルソナ、アニマについて - Joseph Campbell」をご覧いただきたい。この記事はユングのタイプとは何かという問題を主題にした記事ではないが、本問題に深く関わっている記事である。エナンチオドロミアという単語の意味も、こちらの記事で解説している。


おわりに

類型情報を見るうえで「それが何のタイプであるのか」というのは非常に重要な点だと思う(特にタイピングに興味がある場合)。

そうじゃないと「〇タイプの特徴」を見るたびに「ひょっとして自分は×タイプじゃなくて〇タイプなのでは」と迷う羽目になるし、「お前は本物の〇タイプじゃない」と言われた時に困ってしまうからだ。

ソシオニクス・タイプ診断

  カテゴリー
EIE (32) EII (38) ESE (31) ESI (36) IEE (38) IEI (32) ILE (31) ILI (36) LIE (36) LII (31) LSE (38) LSI (32) SEE (36) SEI (31) SLE (32) SLI (38) アマトリカ (3) クアドラ (35) サイコソフィア (32) タイピング指標 (4) タイプ関係 (24) テンポリスティック (1) トライタイプ (29) 機能 (11) 機能二分法 (7) 次元 (5) 情報要素 (13) 診断リンク (12) 二分法 (29) 認知スタイル (4)

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