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ソシオン(書籍)2(by A. Augusta)

2024年7月13日土曜日

ソシオニクス


情報代謝要素

世界への対立と世界の反映

我々は生物と非生物が存在する世界に住んでいます。生物は非生物よりも複雑です。さらに、生物は、全ての他のものに対して自己を対立させる閉じたシステムを形成しています。したがって、それぞれの生物は、ある意味では世界の特性を反映していると言えます。つまり肉体と精神を通して、複雑な周囲の世界全体を反映することができ、また、実際に反映しているのです。生物は周囲の世界から切り離され、非生物は周囲の世界に溶け込んでいます。

物体(body)間の直接的な相互作用(衝突)は滅多に起こりません。宇宙で「災害」が滅多に起きない主な理由は、天体が「遠くから」フィールドを通して相互作用をするからです。生物もフィールドを通して相互作用します。観察者の視点から見ると、生物のフィールドとは、ある物体と他の物体の関係の総和です。個人の精神は、この相互作用をあらゆる種類の感情(feelings)として知覚します。

筆者らの観察によれば、生物は環境から二種類の情報を受け取ります。

  1. 知覚(perceptions)として形成され、物体の性質や状態についての情報をもたらす感覚(sensations)
  2. 感情(feelings)として形成され、場についての情報をもたらす感覚(sensations)

人間の精神が受け取る情報の量と質は、刺激信号を提供する環境と、それを受け取るシステムの質、強さ、発達度、訓練度によって決まります。視覚、聴覚、嗅覚が鋭い人は、周囲の現実についてより多くのことを学びます。同じ環境であっても、強い繊細な感情(feelings)も持つ人は、そうでない人と比べてはるかに豊富な情報を環境から取得できます。これは創造的な人物(作家、作曲家、科学者)になるのに役立つでしょう。

物理学では、フィールドを持たない物体は存在しないとされていますが、生物の生活におけるフィールドの重要性は、物理学ほどには考慮されていません。まるで生物が物理学の法則に従って生きていないかのように、「物理学の外側」にあるものとして扱われているようです。人間の感情(feelings)(心理学の研究対象)が、同じフィールドの現れにすぎないことに気づいていません。また、人類の半数を占める内向的な人は皆、オブジェクトそのものよりも、オブジェクトに対する自分の感情(feelings)や態度に焦点を当てていることにも気づいていません。

人間の感情(feelings)の物理的性質に対する理解が欠如しているため、感情(чувств、feelings)と感情(эмоций、emotions)は常に混同されています。しかしながら、感情(emotions)は、内分泌系の興奮や抑制の現れに過ぎないものです


反映の8つの側面

様々な人々の知覚(perception)を研究した結果、人の知覚には8つの側面があることが明らかになりました。このうちの4つの側面は、物体(body)の状態に関するものであり、残る4つの側面は、フィールドの状態に関するものです。人の精神において、これらは明確に区別されており、意識の程度にも個人差があります。人はそれぞれの側面を異なる方法で利用します。外向タイプの場合「物体の知覚の側面」の一つが主導的な役割を果たし、内向タイプの場合「フィールドの知覚の側面」の一つが主導的な役割を果たします。これはC. G. ユングの言うところの「第1機能(別名:優越機能・優勢機能)」の役割を果たしています。

物体の知覚の4つの側面 (オブジェクトの外向性に対する知覚)

  • Se オブジェクトの外観や形状の知覚
  • Ne オブジェクトの内部内容や構造の知覚
  • Te オブジェクトの外部ダイナミクス、空間内での移動の知覚
  • Fe オブジェクトの内部ダイナミクス、内部で起こる変化の知覚

関係の知覚の4つの側面 (オブジェクトの内向性に対する知覚)

  • Si オブジェクトの内部状況の知覚
  • Ni 時間の知覚
  • Ti オブジェクトの空間内における位置の知覚
  • Fi オブジェクトの引力と反発力の知覚

これら(関係の知覚の4つの側面)は、あるオブジェクトと他のオブジェクトの関係における4つの要素です。または、それらを相関させるための4つの質的に異なる方法とも言えます。オブジェクトは、これら4つの関係を通じて他のオブジェクトの環境に適合します。

要約すると、Ni(時間)とSi(内部状態)は、プロセス間の相互作用の2つの形態(プロセス内のオブジェクト)であり、Fi(オブジェクトの引力)とTi(空間におけるオブジェクトの位置の知覚)は、静的な状態(静止状態)のオブジェクト間の相互作用の2つの形態です。最初の2つ(NiとSi)はC.G.ユングに従って非合理的要素と呼び、残り(FiとTi)を合理的要素と呼びます。

これらの知覚の各側面について、より詳しく検討してみましょう。つまり、それぞれの側面が人間にどのような情報をもたらし、対応する側面が人間の心において主導的である人を区別する特別な特性は何かを列挙してみたいと思います。強調すべきは、主導的な知覚の側面(第1機能)が、その人の知性のタイプを決定するということです。これは、この側面を通じて、人は今までに学んだすべてのことを再構成できるからです。

筆者らは、世界の反映の各側面にシンボルと慣習的な名前を割り当てました。これらの名前は、C.G. ユングが使用した用語に、いくつかの変更を加えた後に作られました。

  • Ne — 外向的直観
  • Ni — 内向的直観
  • Fe — 外向的倫理
  • Fi — 内向的倫理
  • Se — 外向的感覚
  • Si — 内向的感覚
  • Te — 外向的論理
  • Ti — 内向的論理

Ne — 外向的直観

オブジェクトのポテンシャルエネルギー(潜在的な力)に関する情報、たとえば人の身体的および精神的能力や可能性に関する情報を知覚します。この知覚のおかげで、人はオブジェクトや現象の構造を理解し、その内的な内容を把握する力を獲得できます。人が環境内に含まれるポテンシャルエネルギーをどの程度識別できるかという点は、このNeに影響されます。この知覚の側面が主導的な位置にある人は(つまり第1機能がNeである人は)、顕著な認知的関心を持っています。いつも深遠な現象の研究に夢中で、複雑なものを単純化することで、人に上手く説明することができます

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、自分が理解したことを他者に伝えることが好きです。良好な環境では、学者や作家になれる可能性があります。また、オブジェクトのポテンシャルエネルギーを増やすための最適な方法を見つけ出す能力があります。周囲のオブジェクトの可能性を理解し、それによって他者を「充電」します。


Fe — 外向的倫理

オブジェクト内に生じるプロセスに関する情報、主に人の感情(emotional)プロセス、人の興奮状態、抑制状態、気分などに関わる情報を知覚します。この知覚の側面は、何が人を刺激し、興奮させるのか、あるいは何が人を抑制させるのかを理解する力を左右します。自分自身の感情(emotional)状態だけではなく、他者の感情(emotional)状態をコントロールする力にも関わります。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、自分の気分(moods)を他者に伝えたり、他者に自分の気分(moods)を誘発したり、自分の感情(emotions)を他者に伝染させる力があります。彼らは他者の精神的生活や行動に対する感情的(emotional)な準備を活性化させることができます。自分の気分(moods)を他者に伝染させる能力があり、自分の特定の感情(emotional)が他者にとって有益だと思った場合には、その感情(emotional)を他者に押し付ける傾向があります。

通常、感情(emotions)や感情表現(emotional displays)と呼ばれるものは、この内なる興奮がほとんど筋肉の活動に利用されることなく、直接的に外に放出される形式にすぎません。陽気に笑う人は、顔や身体の筋肉の特定の動きを通じて感情的(emotional)な興奮を放出しています。この放出は、予定していた活動に対して不適切なほどの緊張を感じたときに、それを和らげる手段として機能することがあります。また、意識的に自分の興奮を他者に伝える手段としても使われることがあります。例えば、怒りも過剰な興奮を和らげる手段ですが、それは通常、他者を感情的(emotionally)に興奮させるのではなく、他者を感情的(emotionally)に抑圧し、消耗させ、活動を減少させるか、特定の方向に導くために用いられます。


Se — 外向的感覚

オブジェクトの「運動エネルギー」と呼べるものに関する情報を知覚します。例えば、人の外見や外面的な特徴、身体的およびエネルギー的な資質、自分の意志を行使する能力、公的な地位を利用する能力などが該当します。この知覚の側面は、特定の人物がどれだけの「運動エネルギー」を持っているか、その運動エネルギーが行動にどれだけ役立つかを見抜く力に関わります。また、自分の意志とエネルギーを他人の意志とエネルギーに対抗させる能力にも関わります。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、強い意志を持ち、あらゆる新しい事業において優れた組織化力を発揮します。目標達成のために人々を動員し、生物や非生物を使いこなし、管理することが得意です。物(physical things)を扱うのが得意で、既存のサンプルに基づいてほとんどすべてのオブジェクトを再現できます。こうした人は物質を組織化する力を持ち、自分の意志、エネルギー、力を行使して、他者を自分の意志に従わせる傾向があります。


Te — 外向的論理

身体活動(physical activity)や行動、生物的および非生物的オブジェクトの活動に関する情報を知覚します。この知覚は、現在進行している状況を評価する能力に関わっています。Teは、行動方法に関する知識や、自分なりの行動方法を考え出す能力を左右します。また、他者の仕事 [1]を指導したり、合理的な行動と非合理的な行動を区別する能力にも関わっています。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、自分や他人の仕事を計画し、プロセスの論理性と非論理性を理解し、その理解に基づいて他者の作業活動を調整し、最も合理的な行動方法を選択して他者に伝える力を持っています。


Ni — 内向的直観

すべてのプロセスは時間の中で起こります。つまり、すべてのプロセスは過去に根ざし、未来へと続いています。時間とは、連続して発生するイベント間の関係です。この知覚の側面は、イベントの順序と人々の行動、それらの因果関係、およびこの因果関係によって引き起こされる人々の感情(feelings)に関する情報を提供します。

第一信号系 [2]を通して得られる外部情報を、過去、現在、未来に関連する感情(feelings)として知覚します。ここでいう感情とは、例えば、焦り、落ち着き、熱狂の感覚(sense)、適時性の感覚(sense)、あるいは時期が不適切だという感覚(sense)、生活リズムが適切か不適切かの感覚(sense)、将来への危機感(sense)または安泰感(sense)、期待の感覚(sense)、遅刻の恐れの感覚(sense)、将来何が起こるかを知っているという感情(feeling)、これから起こることに対する不安などが挙げられます。

人生のあらゆる瞬間において、人は必ず何らかの時間感覚(sense)を持っています。時間の外で生きたり、時間に対して何の感情(feeling)も持たなかったりすることは不可能です。したがって時間感覚というものは、人の精神状態において、常に欠かすことのできない要素だといえます。

Niの側面は、将来を予測して計画を立てる能力や、起こりうるトラブルや誤った行動を回避する能力、過去の経験から学習する能力を左右します。この知覚の側面が主導的である場合、戦略的能力に優れ、特定の行動を起こすのに最適なタイミングを見極める力に長けています。つまり必要な時に戦いを挑み、それよりも良い選択肢があるときは戦いを避ける力があるということです。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、例えばミハイル・クトゥーゾフがそうだったように、一生涯を通じてそのように行動します。時間の中での相互作用は、オブジェクトとの衝突を回避し、それによってオブジェクトが自分に跳ね返るのを回避する能力だといえるでしょう。


Fi — 内向的倫理

これはポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)、または運動エネルギーを持つ、2つのオブジェクト、あるいはサブジェクト間の主観的な関係であり、あるオブジェクトやサブジェクトが、他のオブジェクトやサブジェクトを誘引する(あるいは反発する)度合いを示しています。この情報要素のおかげで、人はどのオブジェクトが自分を誘引し、どのオブジェクトが自分と反発するかを感じ取る(feels)ことができます。

この知覚の側面は、あるオブジェクトが別のオブジェクトを必要とするかどうか、相互的ニーズ、または一方的ニーズの存在または不在に関する情報を提供します。人は、客観的世界のこの側面に関する直接的な情報を、第一信号系システムを通じて取得し、それを自分自身、あるいは他者が抱く、物質的欲望や文化的・精神的な欲望(desires)を満たす特定のオブジェクトに対するニーズとして知覚します。つまりこの側面は、生物および非生物に向けられた人の欲望と関心に関わる情報の側面だといえます。これには好感と嫌悪、愛と憎しみ、何かを手に入れたいという欲望、強欲さと欲望の欠如などが含まれます。この種の高次の感情(feelings)は「倫理」と呼ばれます。なぜなら人々のニーズの関係性は、主に倫理的な規範によって規制されるという事実があるからです。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、その人は自分自身や他者の欲望を見極め、評価し、形成し、変化させる能力に長けています。彼らは常に、誰が、誰に対して、何を望んでいるのかを理解しています。自分自身の主観的な世界の知覚を、他人の知覚と対立させ、自分の欲求を他人の欲求と対比させることができます。また、彼らは自分自身の欲望だけでなく、他者の欲望を形成し、変化させる能力によっても他の情報代謝タイプからは区別されます。自分が必要とする関係性を確保する力と、他者に影響を与える力への自信の両方を持っています。人のニーズを正確に評価することで、危険な衝突を回避しながら自分のニーズを満たすことができます。これはまた、他者から自分への愛着や、他者の倫理的感情(feelings)を操作し、他者の感情(feelings)を社会的理想に向かわせようとする能力と努力を生み出します。


Si — 内向的感覚

筆者らは、オブジェクトの内部状態を、「互いに影響しあうイベント間の関係性」として捉えています。そしてSiという要素は、プロセスが内部状態(人の感情(feelings)や身体的・精神的健全性)にどのように反映されるのかについての情報を提供するものです。空間における相互作用とは、あるオブジェクトが別のオブジェクトに反映されることに他なりません。オブジェクトは互いに反映し合い、互いに特定の感情(feelings)を呼び起こします。個人は外部からの直接的な情報を、起こっている出来事に対する感情(feelings)として知覚します。例えば痛覚(feeling of pain)とは、ある身体組織と、その身体組織の正常な機能を妨げる何らかのプロセスとの関係性を、人間の脳が反映したものに他なりません。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、その人は周囲の環境の特性と、その環境内の人々の肉体的・精神的健全性(environment feel; самочувствие)を変化させる力に長けています。身体的な不快感(physical discomfort)を避け、他者をそうした不快感から保護する力を持ちます。これは、一度経験した美的感覚(aesthetic feelings)を再現する能力によって決定されます。ルーベンスは、その素晴らしい実例でしょう。ルーベンスは実物を見て描いたのではなく、自身が経験した美的感覚(aesthetic feelings)の記憶を元に絵画を描きました。彼は絵画を通して、鑑賞者に自身の美的体験を追体験させようとしたのです。Siが主導的な位置にある人々の創造性とは、作者が指定した美的感覚(aesthetic feelings)を鑑賞者に与えることを可能とするオブジェクトを再現することだと言えます。このタイプの人々が料理する場合、作る料理の味を想像するところから始まります。彼らは一度経験した美的感覚(aesthetic feelings)と、新しい感覚とを区別し、収集して記憶することが得意です。どうやら、サイキック・ダイアグノスティシャン(超能力をつかって診断を行う人々)の中にはこの知覚を持つ人が多いようです。

この情報代謝タイプの人々は、自分の感覚的な美的ニーズ(sensory aesthetic needs)を、他の人々の感覚的な美的ニーズと対比させる能力を持っています。彼らは自分のそうしたニーズを満たすために戦うにはどうすればいいかという点に精通しており、自分自身の美的嗜好と習慣だけでなく、他者の美的嗜好と習慣も形成し、洗練させることができます。このタイプの人々は、美的嗜好や快適な生活についての理解を他者に押し付ける能力によって、他のタイプの人々と区別されます。


Ti — 内向的論理

二つのオブジェクトを、ある客観的な特性(例:距離、重さ、体積、価格、強度、品質など)に基づいて比較する際に生じる論理的な感情(feelings)がここに分類されます。これは客観的な評価の感情(feelings)であり、場合によってはその感情(feelings)を経験する人の活性化または受動化に影響を与えます。

直接的な外部情報、つまり第一信号系を通して得られる情報を、人はオブジェクトの均衡または不均衡の感覚(sense)、オブジェクト間のバランスまたはアンバランスの感覚(sense)、一方のオブジェクトが他方のオブジェクトと比較して優れているという理解、または不理解の感覚の感覚(sense)として知覚します。これには、オブジェクトや現象が既知、または未知であることから生じる全ての感情(feelings)、例えば好奇心、尊敬、恐怖、論理性と非論理性の感覚(sense)、さらには特定のオブジェクトを前にした時の無力感あるいは自己効力感(sense of power or powerlessness)が含まれます。

これらすべての感情(feelings)は「論理的」という言葉で呼ばれます。これが一体となって、人の論理的感覚(sense of logic)を形成しています。論理的感覚(sense of logic)の発達度合いは人によって異なります。

論理的感情(Logical feelings)は、オブジェクトが既知か否か、オブジェクト間が比較可能か否か、オブジェクト間にバランスはあるか否かの情報を与えます。また、空間とその中のオブジェクトの位置に関する情報も同様です。論理的感情(Logical feelings)は客観的なものです。なぜなら個人の利益やニーズを考慮せず、客観的特性の相関関係だけを考慮するものだからです。この知覚の側面は、人がオブジェクトまたはその構成要素間の客観的で論理的な関係を知覚できるかどうかを決定します。

この知覚の側面が主導的な位置にある場合、客観的で静的な世界、つまりオブジェクトの相互関係の評価における論理性に優れています。また、異なるオブジェクトの特性間の関係を望ましい方向に変えることで、それらの特性を持つオブジェクトに影響を与えることができます。自分自身と他のオブジェクトの関係を正確に評価することで、どのオブジェクトを避けるべきか、どのオブジェクトが「狙い目」かがわかります。

この情報代謝タイプを持つ人々は、自分の論理を他者の知識と対比させる力を持ち、客観的世界についての独自の認識を形成するだけでなく、他者の認識も形成し、改善する能力があります。このタイプの人々は、他者の論理性や非論理性に直面した時、自分の強みを感じることが多いです。


セットと表象

人が特定の感情(feelings)を抱くのは、多少なりとも知っていたり、なじみ深いオブジェクトや現象に対してだけです。全く馴染みのないものや、未知のものに対して人は感情(feel)を抱くことができません。あらゆる感情(feeling)の基礎には、経験や他人から伝えられた情報に基づくセット(Set; 態度、習慣)が存在します。筆者の意見では、感情(feelings)が生じるときのセットは、オブジェクトを知覚する際のオブジェクトの表象(オブジェクトを知覚した結果として形成される心の中のイメージや概念)と同じ役割を果たします。

知覚は表象に対して基本的なものであるにもかかわらず、日常生活で人が既存の表象を使用しなかった場合、オブジェクトの知覚と評価には非常に多くの時間がかかるでしょう。おそらく人はオブジェクトやプロセスに関する表象や、それらの間の関係に対するセットを過去の経験として利用していると考えられます。そのため、過去の経験がないと、ほとんどの場合は機能が妨げられることになります

ただし、Dimitri Uznadzeの研究によると、全ての人が重さの感覚(sense of weight)に関するセットを持っているわけではありません。筆者らは、一部の人々が行動や習慣を非常に簡単に形成することに気が付きました。こうした人々は繰り返される状況で、思考せずセットに従って行動するのです。例えば特定の場所で左折することに慣れていて、その後、状況が変わって同じ場所で右折しなければならなくなった場合でも、以前のセットをなかなか止めることができないという人がいます。この例はNeTi(主導Ne)の場合によく見られる現象ですが、TeSiの場合には全くこのようなセットは見られません。


人の健全性

人の健全性について話す場合、それを肉体的な意味に限定するか、あるいはせいぜい肉体的な意味と精神的な意味だけに限定する傾向があります。しかし、これはもっと別の観点から考えることも可能です。より広い意味では、人の健全性は4つの独立した形式や状態から構成されており、これは4つのフェーズに対応します(図2, 図3参照)。

オブジェクトの知覚の4つの側面を内燃機関の4つのサイクルに当てはめた場合、図2に示すように、生物のエネルギー代謝には4つのフェーズ、つまり4つのボディフェーズ [3]があるといえます。

Fig.2
図2

Ne:ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)
内燃機関の4つのサイクルでは下死点 [4]に相当。 物体の質量と内部像、その構造。

Fe:励起(興奮)
内燃機関の4つのサイクルでは圧縮 [5]に相当。ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換するプロセス - フラクチュエーション [6]を含む、オブジェクト内部の微細な構造変化。

Se:運動エネルギー
内燃機関の4つのサイクルでは上死点 - 点火 [7]に相当。内部で動員されたオブジェクト、その微細構造と外部形状。

Te:仕事
内燃機関の4つのサイクルでは作業ストローク [8]に相当。オブジェクトの運動エネルギーの消費、座標の変化と内部微細構造の逆変化によるエントロピーの増加、動員解除、静止状態への復帰。


生物は常に4つのボディフェーズのいずれかの状態にあります。そうでなければ生命を維持することは出来ません。このサイクルは常に存在するものであるため、ボディフェーズは生物の安定したパラメータと見なすことができます。

身体の状態のあらゆる変化は、フィールドの変化に繋がるため、各ボディフェーズには特定のフィールドフェーズが対応します。エネルギー代謝(EM)の完全なサイクルは、1つのボディフェーズと1つのフィールドフェーズで構成されます。私が知る限り、各フィールドフェーズの基礎には、重力場や電磁場、重力波や電磁波といった基礎的な自然現象があるようです。そして位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)は重力場に、運動エネルギーは電磁場に、励起は電磁波に、仕事 [9]は重力波に対応しているように見受けられます。

ボディの位置エネルギー Ne Ni 重力フィールド
ボディの内部ダイナミクス Fe Fi 電磁波
ボディの運動エネルギー Se Si 電磁フィールド
ボディの外部ダイナミクス Te Ti 重力波
Fig.3
図3

Ni 重力フィールド:空間を歪め、他のオブジェクトの軌道や、連続するプロセスとしての時間に相互作用するフィールド。

Ti 重力波。

Si 電磁フィールド:他のオブジェクトが反発したり引き寄せられる場、または同時に進行するプロセス間の相互作用としての空間。

Fi 電磁波:他のオブジェクトの引力と反発力が交互に発生する。


エネルギー代謝の4フェーズと情報代謝の4フェーズ

全ての生物は、視野内にあるオブジェクトに起こっていることに注意を払っています。これらのオブジェクトが静止状態(死点 – 位置エネルギー)であろうと、活動の準備中(圧縮)であろうと、活動の準備が完了している状態(死点 - 点火)であろうと、動いている状態(作動ストローク)であろうと、同じことが言えます。生物自体やその位置(ポテンシャル)のあらゆる変化は、エネルギー代謝の行為であるだけでなく、他の生物への情報信号でもあります。エネルギー代謝は情報代謝でもあります。エネルギー代謝の4つのフェーズは、情報代謝の4つのフェーズに対応しています。一方がなければ、もう一方も存在できません。

フィードバックがなければ、つまり、エネルギー代謝を続けるために好都合な外部および内部条件に関する情報が得られなければ、環境に適応するプロセスが環境から拒絶されるプロセスに変わる危険があります。そのため、活動中の生物は、他の生物や非生物からの全てのエネルギーおよび情報のフィードバック信号を観察しています。


ボディフェーズ

前述したように、人体のあらゆる身体活動は4つのエネルギー代謝フェーズから構成されています。そのうちの2つは静的であり、2つは動的であることに注意してください。

Ne Fe
Te Se
Ne: 位置エネルギー(静的運動量)
Fe: 位置エネルギーから運動エネルギーへの変換(動的運動量)
Se: 運動エネルギー(静的運動量)
Te: 運動エネルギー消費(動的運動量)

身体活動の各フェーズは、精神、つまり情報代謝のメカニズムによって反映されます。このため、情報代謝のメカニズムには4つの黒いシンボルの要素 [10]があり、これらが身体に起こっていることを反映します。

情報代謝はエネルギー代謝の単なる反映であるため、エネルギー代謝と情報代謝のボディフェーズには同じ記号が割り当てられます:Ne Te Se Fe

8つの情報代謝のうちの半分、つまり4つの黒いシンボルで描かれる情報代謝は、自分自身のエネルギー代謝の4つの異なる側面またはフェーズに関する情報を知覚します。精神の観点から見た場合、自分の身体もまた外部オブジェクトであることを思い出してください。また、現時点では、人は第1信号系を通じて受け取る情報代謝のシグナルにのみ関心を持つことを強調しておきます。これらのシグナルは、生体の感覚システムを(organism’s sensory systems)通して具体的な感覚(concrete sensations)として精神に到達します。


フィールドフェーズ

フィールドにおけるあらゆる身体活動もまた、4つのフェーズに分けられます。このうち2つは静的で、2つは動的です。

Ni Fi
Ti Si
Ni: 時間(動的運動量)
Fi: 引力(静的運動量)
Si: バランス(動的運動量)
Ti: 空間(静的運動量)

全てのフィールドフェーズは、意識、つまり情報代謝のメカニズムにも反映されます。情報代謝のメカニズムには、フィールドのエネルギー代謝に関する4つの異なる側面(段階)の情報を知覚する4つの白いシンボルの要素 [11]があります。エネルギー代謝と情報代謝のフィールドのフェーズには、同じシンボルを割り当てます:Ni Ti Si Fi


均質な要素

物質世界(Material world)は物質的な物体(material bodies)とフィールドから構成されています。これらは客観的世界と客観的物質(objective world and matter)の構成要素です。各要素に対して、人の精神は4つのフェーズを割り当てます。ボディフェーズとフィールドフェーズが均質なペアを形成することは、初期から(C.G.ユングの研究時点から)知られていました。これを踏まえ、筆者らの理論に登場するシンボルもペアになっています。また、筆者らはこれがペアであることの証拠を持っています。例えば、FiはFeのモーメント、TiはTeのモーメントと呼ぶことができます。なぜなら、FeとTeは動的であり、つまりプロセスであるのに対して、FiとTiは静的だからです。

各ボディフェーズには、それと均質なフィールドフェーズがあります。これは同じ現実の別サイド、または別の反映です:Ne Ni Te Ti Se Si Fe Fi


2つの順序

上記のボディフェーズの順序は、唯一の論理的な順序ではないかと思います。つまり、ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)、その励起、運動エネルギーへの変換、仕事です。人間の関心とその活動は、この一方向性しか持ち得ないように思えます。まず、オブジェクトの潜在的な特性が研究され、そのオブジェクトが必要か不必要かが判断されます。それが必要な場合、サブジェクト(主体;ここではオブジェクトの特性を研究し、必要か不必要かを判断した人間のこと)はそのオブジェクトに関心を寄せ、それを手に入れるため、またはそれから離れるためにエネルギーを動員します。

ただしこれとは逆の順序も可能です:Te → Se → Fe → Ne

この場合、未知のオブジェクトを手に入れるところから始まり、次にその内部特性を調べ、手に入れたオブジェクトが必要か否か判断することで終わります。この二つの行動と考え方の順序のうち、前者はある種の情報代謝タイプにとってよりなじみ深く、後者は別の情報代謝タイプによりなじみ深いものかもしれません。


出典:


訳注

  1. ^ 仕事:原文ではработе。これは物理学の用語である「仕事」にも使用する単語。本書籍「ソシオン」より過去に執筆された「人間の双対性」ではTeの仕事を説明する際、物理学用語の仕事とは異なる単語の仕事「труд」が用いられていたが、本書籍では情報要素Teの文脈における仕事は「работе」が使用されている(P – активности объекта и субъекта, их способности трудиться.)。途中で物理学の仕事を意識した用語に統一した可能性あり。
  2. ^ 第一信号系:感覚的な刺激に対する自律神経のバランスや気分の変化といった無意識的な反応のシステム。生理学者パブロフが条件反射について説明する際に使用した概念。
  3. ^ ボディフェーズ; body phases. bodyは「身体」以外に物理学での「物体」を意味する。
  4. ^ 下死点:機械工学やエンジン技術において使用される用語で、ピストンがシリンダ内を動く際に到達する最下部の位置のこと。
  5. ^ 圧縮:ピストンが上昇し、吸気バルブと排気バルブが閉じ、混合物が圧縮されること。
  6. ^ フラクチュエーション:温度や圧力の変動、物質のエネルギー状態の揺らぎなど、特定の量や状態が時間や条件に応じて変動することを指す用語。物理学や統計学で用いられる。
  7. ^ 上死点:ピストンがシリンダ内を動く際に到達する最上部の位置のこと。点火:圧縮された混合物に点火し、爆発的に燃焼させる工程。
  8. ^ 作業ストローク:ピストンが燃焼ガスの膨張力を受けてシリンダ内で下方向に動く行程。
  9. ^ 仕事:原文ではработе。これは物理学用語「仕事」としても使用されている単語。
  10. ^ ソシオニクスではNe, Fe, Se, Teの4種類の情報要素を黒いシンボルで描く。つまり外向性の情報要素のことであるが、特に本出典のような古典的ソシオニクスの情報要素は、「ユング的な外向性」特性を持つ概念として考えるとむしろわかりにくい部分があるため、翻訳ではロシア語の原文を参照して「黒」という表現で翻訳した。
  11. ^ ソシオニクスではNi, Fi, Si, Tiの4種類の情報要素を白いシンボルで描く。

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