カリナウスカスの輪
Grigory Reininは、現在のソシオニクスで一般的なモデルAではなく、カリナウスカスの輪というモデルを使用している。そのため機能の配置がモデルAとは異なっている。
機能 #1 – 客観的倫理 (Fe)
「人間とは、人と人との関係の領域です。他者との関係性があって初めて、私は存在します」
このタイプの人にとって、人間関係は自然な要素です。決して故意に相手を煽ったりはしませんが、人と人との関係や、自分に対する人の態度 [1] は完璧に感じ取っています。
その点は誰よりもよく知っているので、ESEはわざわざ自分のことをどう思うのか、人に聞いたりはしません。一般的に、第1機能はその人にとって自信がある領域だからです。
自分の人間関係、そして他人の人間関係の安定が、ESE個人の安定に繋がります。もし誰かが現状を変えようとしたら、ESEは難しい感情を抱くかもしれません。
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ESEは(EIEと比べて)人との信頼関係が強いタイプだと言えます。これは、ほとんど境界線のない「水平」な関係です。
相手がどんな社会的サークルに属しているかは、ESEにとって重要ではありません。人間関係と縁は無限のつながりだからです。
インターネットはそのようなものです。今度試しにESEの家の回線を切ってみてください。ESEから大きな不安や、ひょっとしたら攻撃性さえ引き起こすかもしれません。もし通信料金を払いそびれて、回線が切れたらどうしようと考えるだけでESEにはストレスです。
ESEにはいつもたくさんの友人がいます。パーティをしたり、人と集まっておしゃべりするのが大好きです。たくさんの友人の中で、彼らは自分自身を見出します。
「人間関係がなければ、私は存在しません。もし私が必要とされないなら、もう私は存在しません。人間関係があって初めて、私は存在するのです」
機能 #-1 – 主観的倫理 (Fi)
ESEは、人に対する自分の態度 [2] を無視しています。
彼らにとって大切なのは、対外的な関係です。彼ら自身の示す態度は二の次です。確かにESEは自分の状態や気持ちを正しく理解していますし、やろうと思えば、それについて話すことは出来ます。しかし自分自身の態度(気持ち)について話すのは、ESEにとっては難しく感じることです。
もし「あなたはどう感じるか」と聞かれても、はぐらかすことさえあるかもしれません。そんなことは大事なこととは思えないので、答える必要はないと感じるからです。
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このタイプの人々にとって重要なことは、外部の現実の世界で人間関係がどのように展開するかです。
またESEは「自分の望み通りに展開を操作しよう」とするのではなく、「流れにうまく乗ろう」とするタイプです。彼らの態度 [3] は内面的なものであり、一人でそっと感じるものです。
ESEにとっては「私の行動を見るだけで察することが出来るだろう」と思えるものであり、わざわざ表現する必要があるとは感じないのです(また、言葉にするのが難しいわりには重要ではないものだという感覚もあります)。
ESEの双対であるLIIは、「ESEがどう感じているか」を聞きたがったりはしません。LIIにとって、これは恐怖の領域であるため、別の心理面でのコミュニケーションを好みます。
機能 #2 – 主観的感覚 (Si)
様々な感覚の領域です。ここでは多数の選択肢が許容されています。
ESEは、新しい食べ物や飲み物を味わうといった、様々な感覚を体験したいというニーズを抱えています(ESEが酒を飲む場合、酔うために飲むのではなく、味わうために飲みます)。味だけではありません。香りも音も同じです。
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また、自分が体験した様々な感覚を人と「共有」するのも好きです。
「これは試しましたか?熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びたことはありますか?とても気持ちいいので、ぜひ試してください!」
ESEは優れた舌をもっている料理愛好家であり、料理人でもあります。
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薬に関する知識や、何をどう治療すればいいのかという知識が豊富なESEも多いです。
愛の芸術は彼らの義務であり、宿命であり、そこに罪はありません。
あらゆる種類の芸術を喜びの源として賛美しています。科学でさえも、ESEからすれば、妙なる快感の源に見えるかもしれません。
ESEの創造性は、世界に調和を生み出します。
機能 #-2 – 客観的感覚(Se)
私が知る限りで言えば、ESEは自分の服装には気を配っていますが、最大の関心事ではないようです [4]。
贅沢は「禁止」の領域にあります。ESEは自分の社会的環境の慣習に従って、普通の服装を心掛けています。これはインテリアの好みにも言えることです。
自分の意志や自分のやり方を、人に押しつけたりはしません。
機能 #3 – 客観的直観 (Ne)
外部環境の整合性 [5] や、外界の調和に強い興味を寄せます。
時間管理、時間に間に合うか、遅れるかという問題 [6] は、この領域に関係しています。ESEにとってこれは苦しい問題です。彼らはここでは防衛的になり、遅刻を謝ってばかりいます。遅刻しないように気を付けても、しばしば遅刻してしまいます。
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ESEに限らず一般的な話ですが、第3機能は人の自尊心に関係しています。人は通常、このタイプの構造のチャンネルを通じて、社会からエネルギーを受け取るため、このチャンネルを保護する必要性があります。
そしてこの「保護」のために、ここにあるすべての物事を単純化する必要があります。ESEの場合、明確さが保証され、可能な限り状況が最初から最後までわかっているようにする必要があるのです。
そうやって初めてプロセスの流れを理解し、感じることが出来るようになります(まず最初にこれがあって、次にこれがあって、さらにその次には…といった流れです)。ESEは安らかな気持ちで、自分の人生が順風満帆であると感じられるようになります。
防衛にはポジティブな手段とネガティブな手段、2種類の手段があります。中には遅刻しないESEもいます。
「時間を守れたら、自分は『いい人』だ、守れなかったら『悪い人』だ」
といった調子です。他の人の時間は意識していません。
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このタイプの人々は、深い瞑想のプロセスに入り込んで、時間の感覚を失ってしまいがちです。瞑想の中の世界は平和と調和に満ちています。
ESEは保守的で、少なくとも自分が先頭に立って、積極的に現在の流れややり方を変えようとはしません。
たとえ本人が現状を好ましく思っていなかったとしても、安定していること自体がESEにとっては強いポジティブフィードバックになるのです。
機能 #-3 – 主観的直観 (Ni)
内面を変えることで問題が解決します。これは、イメージチェンジ、瞑想、アルコールなど、さまざまな方法で可能です。
しかし多くの場合、ESEは問題を解決する代わりに問題から逃げることを選択します。
現実から逃げるために、自分のイメージを根本から変えて、自分が既存の問題から解放された別人であるかのように想像することがあります。
機能 #4 – 主観的論理 (Ti)
「私は全てを理解したいです。わからないと面白くありません。私にもっと説明してください。全てを理解できる場所こそ良い場所です」
おそらくESEとEIEは、最も頻繁に、あらゆる種類の講義や会議、ディスカッションや討論会に参加するタイプです。
彼らにとって重要なのは、イベントがきちんと構成されていること、講師がすべてを丁寧に説明し、明確にしてくれることです。大勢の聴衆の中で、ある種の軽いトランス状態(陶酔状態)にある人々を見かけることがあるかもしれません。
なぜ彼らがトランス状態になっているのかというと、「自分はすべてを完璧に理解した」と感じているからです。
誰かに正しい方法や順序を説明してほしいのです。説明があり、全てが理解できれば、そこには安心感があります。
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もし既存の理解とは別の理解が生じた場合、ESEは矛盾に苦しむことになります。ESEは、一度何かを明確に理解すると、相反する概念を理解しにくくなってしまいます。
しかし、このようなタイプの人々は、原則として自分の理解の根拠に注意を払わないので、この矛盾はそれほど深刻に感じるものではありません。
ESEのロジックは、科学的と言うより芸術的です。第4の機能の領域では、何であれ素早く変更することが出来ません。この領域は、創造的な領域ではありません。
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普通、人が集まれば、いくつかの「プログラム」が存在することになります。
私たち自身のプログラム、他の人のプログラム、教師のプログラム、親のプログラムといった感じです。そして、これらのプログラムは突然、衝突しあうことがあります。
ESEの場合、彼ら自身のロジックはかならずしも明確ではありません。そのため他の誰かのロジックについて、何かを言うことも困難です。他のタイプのロジックを、通常ほとんど認識していないからです。
ESEとEIEは、一般にその説明が恣意的な前提に基づくことがあります。つまり任意の(恣意的な)出発点を選び、そこから論理展開をして、何らかの結果を導き出すのです。
ESEは、かなり頻繁にこれをします。とはいえESEは、形式に則ったロジックを合理的に感じるタイプでもあるため、人からそういった形のロジックを用いて説明された場合、それまでのESE自身の考えとは異なる説明であっても受け入れるかもしれません。
ESEは、自分のこういった特性を自覚しておく必要があります。そして、人から説明を受ける際は、細心の注意を払ってそれを見極める必要があります。
機能 #-4 – 客観的論理 (Te)
第4機能は恐れの領域です。ここではESEは自分自身で意識して、懸命に努力しなければなりません。
例えば、何かを作ったり、家の中を片づけたり、飾ったりする活動は、彼らに恐れを与えます。それについて考えるだけでESEは落ち着きを失くしてイライラします。
この恐れは、先延ばしにすればするほど増大していきます。
簡単なプロジェクトでも、大きな努力が必要になります。
筆者は、高い天井まで本が山積みになっている部屋に住んでいるESEに出会ったことがあります。彼は本が本棚にきちんと整理された部屋に憧れをもっていました。しかし実際の彼の部屋は足の踏み場がなく、物を探すのも一苦労です。たくさんの本があっても、これでは読みたい本を読むこともできません。これこそがESEです。
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彼らは一歩踏み出すこと、現実に直面することへの恐れに苦しんでいます。このタイプの女性はしばしば孤独です。彼女たちは決して男と付き合い続けようとはしません。例えばこんな話があります。
「17年間も付き合ってるんだから、そろそろ結婚しようよメアリー」
「バカなことを言わないで。誰もそんなこと望んでないでしょ」
ESEは、アイデアが現実のものになることに、しばしば恐怖を感じます。
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物を修理をしたり、整理したり、少なくとも本を元の場所に置いたりする必要があることはわかっていますが、どういうわけかうまくいきません。
こうなってしまうのは、怠け者だからではありません。こういったことをするためのエネルギーが乏しいことが原因です。
なぜエネルギーが乏しいのでしょうか。なぜ、やるべきことをきっちりやるエネルギーや意志の力がないのでしょうか。
ESEは客観的な世界の論理に立ち向かおうとしません。例えば、壁を塗るために誰かを雇うというような、客観的なことをしようとしないのです。
「別に今やる必要なくない?後でやるから今は大丈夫だって。多分。来年にはやるつもりだから…」
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ESEは、いつ、どれくらいの金額が自分の手元に来るのか、はっきり把握していません。「自分の今後の収入がどうなるか、わからない」という漠然とした不安から、極端な節約に励みがちです。しかしそれと同時に、唐突な思い付きで散財することもあります。
すでに説明した通り、このタイプの人々のお金に対する考え方は様々です。お金がないことを恐れている場合もあれば、金銭に関わる活動全般を恐れている場合もあります。
有名人
- ヴィクトル・ユーゴー
- ジョージ・ワシントン
- フィデル・カストロ
訳注
- ^ ここでの「人の態度」とは「人が自分のことや他の誰かのことをどう感じているか、好きだと思っているか、嫌いだと思っているか」を意味する。
- ^ 自分の気持ち、相手をどう思うかという気持ち。
- ^ 自分の状態、自分の感情。
- ^ この点でESEと同様のタイプとして、LSEが挙げられる。
- ^ Grigory Reininの定義では、Neという情報要素は「外部環境との整合性・完全性」を司るとされている。外部環境との整合性・完全性とは、「自分が想定している通りに、外部の物事が噛み合って進行している状態」を意味する。
- ^ Grigory Reininの定義ではNeの説明で時間感覚の話が登場するが、これは一般的にはNeではなくNiのほうに関係すると定義されることが多い。関連記事「情報要素」「情報要素(by A. Augusta)」A. Augustaとは、ソシオニクスの最初の開発者の名前である。