クアドラ・コンプレックスへの対処法・予防法の開発
弱みを暴露され、糾弾される危険性が、アルファ・クアドラの攻撃性に拍車をかけます。一度話し始めたら、彼らは大勢を自分の味方につけるまで話し止まりません。ほんの一瞬でも優位に立てればアルファ・クアドラには十分です。
「あなたが私に同意したのですよ、覚えていますか?あなた自身が、私の側に真実があることを認めたんですよ!」
一度でも優位に立てれば、こうやって言うことができるからです。
自分の立場を主張するには、一番大きな声で叫ぶ人、最も積極的に議論できる人が、議論での最後の言葉を言えます。誰からも反論されなければそれで正しいのです。
そして、最後の言葉を自分が言うための最良の方法は、論争の際に相手を「ノックアウト」することです。相手を落胆させ、混乱させ、愚かさと疑惑で気絶させ、頭にこん棒を叩きつけるように、冤罪で相手を「ノック」して、相手の思考、感情、気持ちを混乱させればいいのです。
「一体何が起こっているのか」を理解しようとして、相手が沈黙すればしめたものです。
「もしこの人が正しかったら、自分の正しさを証明して、自分の意見を擁護していたはずだ。
黙っていると言うことは、この人は間違っていた、罪を犯していたということだ!」
言葉を失うことは、アルファ・クアドラにとっては最悪のことです。
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冤罪で相手にショックを与え、驚きと憤りで相手の言葉を麻痺させるのは、アルファ・クアドラでは一般的な戦法であり、世界の誕生と同じくらい古くからあって、「世界の誕生」以来ずっと使い続けられている戦法です。そしてこの戦法は、人間社会の発展の初期段階で非常に成功した方法でした。
「自分が最後の言葉を言いたいのであれば、最も堂々とした、最も重みのある言葉を言うべきだ」
このクアドラに属する4つのタイプ(ILE、SEI、ESE、LII)を構成する主要な情報的側面と心理的特性は、あらゆる方法でこれを可能にし、促進します。
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アルファ・クアドラの直観タイプ(ILEとLII)はいずれも二分法が「静的」「論理」に分類されます。
ILEとLIIは、自分の権利(-Ti)や機会(+Ne)を逃したりはしません [1]。言葉に迷うことなく、自分の意見を非常に力強く、印象的に示すことができます。
彼らは他のどのタイプよりも自分の意見の不条理さや非論理さで他人を驚かせ、幻滅させることがあります(しかしながらILEとLIIは一見すると非常に説得力があり、筋が通っているように見えるタイプでもあります。ILEやLIIとの会話に慣れていない人は、彼らの非論理性を見抜くことはできません)。
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アルファ・クアドラの感覚タイプであるSEIとESEは、感情的な倫理(Fe)が優勢な、二分法「宣言」に分類されるタイプです。
SEIとESEは自分自身の正しさを固く信じ、感情を(自分から)最大限に絞り出すことができます。彼らと議論しようとすると、喉が枯れんばかりの叫び声で耳が聞こえなくなるほどです(アルファ・クアドラに対抗できるのは、逆のクアドラであるガンマ・クアドラだけです。しかもその成功率はまちまちです)。
アルファ・クアドラの「宣言的」「感知の感覚(Si)」という側面が極端に表現された場合、荒々しさ、残酷さ、卑しさという特徴が目立つようになります。そしてこれらの側面は、論争中に自己主張する力にもなります。
論争の際、彼らは恥ずかしがることなく感覚的、感情的な手段をとります。なぜなら、あまりにも多くのことが危機に瀕しているからです。物質的な資源、不足している権利や機会をめぐる争いは、生きるか死ぬかの戦いです。この勝敗は、冗談では済まされないものです。
アルファ・クアドラの中でも、プログラム機能(第1機能)が感覚タイプであるSEI(+Si / -Fe)は、何が何でも自分や自分の子供たちが生き残るために戦います。自分のためだけではそこまでしないという場合であっても、少なくとも自分の子供たちのためであれば、手段を選ばず勝利を狙います。
「頑固」「創造機能として使用される感覚機能」「プログラム機能として使用される倫理機能」という3つの組み合わせを持つタイプであるESE(-Fe / +Si)については、言うまでもありません。
大声で叫び始めたESEは、道徳的にも物理的にも敵を圧倒するまで止まりません。相手に恐怖を与え、自らの決意と執念で相手を打ち破り、最後まで断固として自分の権利を守り抜こうとします。
ESEの「アルファ・クアドラ」+「感知の感覚 Si」という組み合わせは、争いごとの際には強力な武器になります。また「感情の倫理 Fe」+「宣言」の組み合わせも同様です。こうした武器を手に、ESEは相手を圧倒します。最も激しく、最も陰惨なトーンで、相手の弱点をピンポイントに抉り抜くように打ちのめします。
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アルファ・クアドラは、「相手が自分の正しさを証明できないよう、執拗に妨害する」という形で「可能性の直観 Ne」を使用します。また、「過度に複雑な推論をジャグリングして相手を圧倒する」という形で「関係性の論理 Ti」を使用します。それらによって、彼らは真っ当な議論を捻じ曲げ、不正確さや欠陥といった粗探しをします。
アルファ・クアドラのNe+Tiは、「塞がれた口」コンプレックスの恐怖を解消するためにも働きます。これらは全て、アルファ・クアドラに言わせれば社会で当然認められるべき「個人の権利と保護の保証」です。
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アルファ・クアドラは、「全ての人は皆、自分のために立ち上がる権利、能力、可能性を持っており、その権利、能力、可能性は社会から保証されている」「したがって本人が望む限り、誰もその人を黙らせることは出来ない」という考えを持っています。そしてこの考えを根拠にして、彼らは次のような主張をします。
「もし誰かが自分自身を正当化できなかったとしたら、それはその人が自分の罪を否定したくなかったか、否定できなかったということです」
「自分自身を正当化できない人は、全ての責任を負う必要があります。なぜなら彼は、自分に投げかけられた疑念を晴らせないほどに重い罪の意識を感じているからです」
つまり、アルファ・クアドラのような「主観主義」のクアドラでは、人の主観的な能力が客観的な事実になってしまうのです。もしある人が、主観的に自分の意見や無実を守ることができない場合、その人は客観的に非難され、実際に罰を受けなくてはなりません。
「弁護人、代弁者、証人といった概念は、アルファ・クアドラにおいてどうなっているのですか」
読者はこのような疑問を感じるかもしれません。
ここにこそ、アルファ・クアドラが「多数の部外者の前で言い争いするのを好む」理由があります。多くの目撃者がいるということは、多くの証人がいることを意味するからです。
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ソシオニクスには、時代の移り変わりをクアドラの移り変わりによって解釈するという考え方があります。
この考えでは、まず最初にアルファ・クアドラ(主観主義・民主主義)が社会関係を秩序づけるメカニズムを生み出し、それがベータ・クアドラ(主観主義・貴族主義)に引き継がれるとされています。
アルファ・クアドラで見られる「主観的な意見が客観的な現実になる」「多数決に従う」という性質は、ベータ・クアドラに引き継がれると「ほとんどの人(特に権威者や社会的に信用がおけるとされている人)が『間違っている』と言ったら、問答無用で『間違っている』ことになる」という性質になります。
権威主義的なベータ・クアドラ社会(「果敢」「主観主義」「貴族主義」)では、「権利を持たない少数派」に属する人々は異端者として処断されます。「悔い改めて」罪を認めた異端者は重労働の場に送られ、そうでない異端者は火刑台に送られます。
仮に、この異端者が「非常に優秀で論理的な主張」をしていたとしても、ベータ・クアドラ社会では「なぜかすべての証拠が彼らに不利に働いてしまう」のです。
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異なる時代には、異なる社会的システム、すなわち異なる社会条件と異なる関係の在り方が優勢になります。
それはすなわち、異なるクアドラ、異なるパターンの情報代謝タイプ [2]、異なるコンプレックスが優勢になるということです。あるクアドラで受け入れられたものであっても、別のクアドラでは通じません。
クアドラ・コンプレックスは、恐怖や不安だけに関わっているわけではありません。
クアドラ・コンプレックスは、クアドラごとに異なる4つの支配的な情報代謝の記号 [3]によって形成されています。
そしてクアドラという4つの「省エネルギーな成功モデル」は、社会と一体となって生き、社会を自分に合わせて調整し、社会の中に自分の優先順位と優先的な資質と特性のすべてを反映し、育成するモデルなのです。
また、クアドラ・コンプレックスは社会における関係性を構造化し、組織化し、伝統と秩序を確立して、ある決定的瞬間に至るまで社会を発展させるものであり、その後それらを衰退、崩壊、消滅に導き、ある社会関係や支配的社会プログラムを別の情報代謝タイプグループ(別のクアドラ)のものに取って代わらざるを得なくするものでもあります。
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「クアドラ・コンプレックスによる衰退は避けられないものなのでしょうか」
このような疑問が思い浮かぶかもしれません。しかし、これは避けられない運命です。
結局のところ、あらゆる社会的つながり(横のつながり、上下のつながり)、あらゆる社会的関係(民主的な関係、階層的な関係)、それらに対応する全ての社会プログラムと全ての情報代謝タイプは、継続的かつ効果的に開発され、その後、他のものに置き換えられる必要があります。
この新陳代謝は社会的、対人的、タイプ間的な関係、および優勢なクアドラの入れ替えの法則によって生じます。
時代の変遷におけるクアドラの果たす役割は、決して小さいものではありません。
訳注
- ^ Stratiyevskayaはエボリューション的を「建築的・肯定的」、インボリューション的を「再構築的・否定的」という意味で使用している。関連記事「アルファ・クアドラ (1) by Stratiyevskaya」
- ^ ILEやSEIなどのタイプのことを「情報代謝タイプ」と呼ぶ。
- ^ ソシオニクスの機能のこと。アルファで支配的なのは-Fe, -Ti, +Ne, +Si。関連記事「アルファ・クアドラ (1) by Stratiyevskaya」