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認知スタイル:弁証法的アルゴリズム的 SEI, EIE, ILI, LSE by Gulenko

2022年10月30日日曜日

EIE ILI LSE SEI ソシオニクス 認知スタイル

弁証法的 -アルゴリズム的 見出し

はじめに

下記のような認知スタイルを、弁証法的 -アルゴリズム的(Dialectical-Algorithmic Cognition, DA)と呼びます。

  • 合成的
  • 否定的
  • 演繹的

この認知形式は特に興味深いものです。この小グループに分類されるタイプは、以下の4タイプです。


二分法「動的」であり、これらのタイプは連想のイメージを合成します

二分法「エボリューション[1] であり、演繹的複雑性を高めます

二分法「否定主義」であり、矛盾やパラドックスにうまく対処します


知的領域

弁証法的スタイルの特徴は、正反対なもの同士が統合される中で生じる闘争という視点から万物を捉える点にあります [2]

開発プロセスの予測的な分岐として、「if-then-else」すなわち「条件が成立する場合はA、しない場合はB」という形式の発言が多い傾向が見られます。


◆◆◆


弁証法的スタイルは、制限を満たす範囲内で、対照的で両極端なものの間に「動的な平衡の中間点」を見つけようとします。

弁証法的認知は、「思考の流れ」と「その逆の流れ」「意識」と「無意識」のぶつかり合いから生まれます。

このスタイルの思想家には、「相反するものを統合し、矛盾を取り除くことを強く意識している」という特徴が明確に見られます。


◆◆◆


この認知スタイルの利点は明らかです。それは、 最も繊細で柔軟なスタイルだという点です。

逆方向への切り替えが容易で、予測能力もあり、有益な連想記憶も備えています。そのアルゴリズム的な思考から、複雑なパターンを認識する才能があるため、分類に関する問題を解決するのにも向いています。

問題の状況的な条件を超えて、それを解決するための基本的なアルゴリズムを認識します。


◆◆◆


アリストテレスによれば、弁証法的な予言的思考は、目的論的な原因に基づいて現実を説明するとされています。

アリストテレスの彫刻の例 [3] から言うと、これは「何の目的のためにあるのか」です。ここで中心となるのは、プログラム、すなわち彫刻家の意図です。


したがって、この認知スタイルはテレロジー的でありながら、それゆえに、その本質においては最も「宗教的」であると考えることができます。

この種の認知スタイルを持つ知的な人々の多くは、遅かれ早かれ信仰を持つようになります(これは、必ずしもキリスト教やその他の「宗教」的な信仰を意味するわけではありません)。


社会的領域

歴史的に見て、この弁証法的世界観の最初の代表者はヘラクレイトスだと考えられます。

ヘラクレイトスの「同じ川に2度入ることは出来ない [4]」は、動的な二分法を体現しています。


より近年でいえば、これはヘーゲルの合理的なシステムの包括的理論に発展しました。

弁証法的認知は、他の認知スタイルと比較して、創造的意図を最も指向しているため、常に創造者、絶対者、宇宙的知性などの考えにつながっていきます。


◆◆◆


この認知スタイルを持つタイプのうち、EIEとILIは、通常「最も知的なタイプ」として社会的に知られています。彼らは知的エリート・専門家クラブ・その他の深遠的・秘教的グループの中軸を担っています。


最高のコンピュータープログラマーであり、他のどのタイプよりも、動的な構造、すなわちアルゴリズムの扱い方に精通しています

アルゴリズム図とは、ブロックと矢印で構成される、遷移、分岐、ループサイクルの順序を示した図のことです。プログラムの要は、ブロックではなく、動的な構造体であるポインタ [5]のほうにあります。

if-then-else」という式は、本質的にあらゆるアルゴリズムの核心なのです。


◆◆◆


弁証法的アルゴリズム的認知の欠点は、不安定さ、不確実性です。

アルゴリズムには、選択を行い、曖昧さのない決定を受け入れることに難があります。この考え方は、明確に確立された命令セットのメカニズムというよりは、流れるように織り交ぜられたイメージのシンフォニーに近いものです。


また、批判性が度を越えてしまい、自己破壊を起こして、現実から完全に乖離してしまう危険性もあります。特に遺伝的なリスクがある場合、精神障害に繋がることさえあります。


心理的領域

弁証法的タイプの精神は、最も変化しやすい傾向があります。心理学的観点から言うと、不安定に揺れ動く精神は、暗示にかかりやすいと言えます。

時折、弁証法的認知者は、自分の頭の中で並行して動く思考の流れを制御できなくなることがあります。彼らはただ、選択の自由と運命論との間で生じる内面的な揺れを調整し、後者を強化することしか必要としていません。


医者は、ほんのささいなショックでも、特定のタイミングでそれが与えられさえすれば、心臓が細動状態に陥ってしまうことを知っています。同様に、特定のタイミングで与えられたシグナルが、弁証法的精神を混沌状態に突き落としてしまうこともあるのです。


EIEというタイプは、暗示的な影響に対して強く適合してしまう精神を持っています。

弁証法的アルゴリズム的認知者には、いわゆる「刷り込み」が起こる一瞬の脆弱性が見られます。この瞬間に、強力な暗示、刷り込みが引き起こされるのです。その前提条件となるのは、極度の恐怖・混乱・驚きという状態です。


アルゴリズム的精神に基づく人々は、感情が激しく揺さぶられた時に突然「出口などない」という直観に到達してしまい、自殺を決意することがあります


◆◆◆


弁証法的タイプのこのような性質を逆に活用すれば、有効性の高いショック療法を施すことも可能です。それによって人の核となってしまっている価値判断を含む「現実の概念」を、完全に書き替えることができるのです。

稀有な事例ではありますが、弁証法的認知者は、深いトランス状態・または昏睡状態に似た状態に陥った後で、唐突に悟りを得たり、秘教的と言えるような能力に目覚めることがあります。


◆◆◆


弁証法的アルゴリズム的認知者に影響を与えやすい暗示の形式には、「刷り込み」以外に「リズミカルな発声や音による同調、同じフレーズをバリエーション豊かに何度も繰り返すことを基礎とした、ゆっくりとした暗示」があります。この場合のバリエーションは特に重要です。それによって暗示がコーラスのような形を取り始めるからです。

こうした暗示を受けると、彼らは徐々にトランス状態に入ります。これは、外的には深いリラックス状態を保ちながら、自身の内面へと集中していくような状態です。単調さが強ければ強いほど、深いトランス状態に早く到達します。そのため、テレビの単調なノイズ音を聞いているうちに、リラックスして眠りに落ちてしまう人もいます。


科学的領域

弁証法的思考の世界観は、現代物理学の量子確率論的な世界観に最も近いものです。このパラダイムには不変の法則というものは存在しません。あるのはただ、傾向と確率だけです。


量子力学は、「光などの極小の粒子は、粒子としての性質と波としての性質の両方を持つ」という、反直感的な原理に基づいています。20世紀最大の物理学者のうちの2人であるアルベルト・アインシュタインニールス・ボーアは、この見解について論争しました。前者は宇宙の本質として因果的決定論を、後者は確率的存在論を唱え、結果的にはボーアがこの論争の勝者になりました。

この論争の歴史的価値を脇に置いて、この二つの認識形式はそもそも互いに重なり合って存在しているものであることを考えると、本質的にはこの論争はほとんど意味がないものだと言えます。

ユングの唱える「シンクロニシティ」の原則も、弁証法的パラダイムの中にあるものです。


◆◆◆


現代の英国の数学者ロジャー・ペンローズは、量子脳理論という「人間の脳で行われる直観的洞察には、量子力学が密接にかかわっている」という理論を提唱しています。

彼は数冊の著書 (「皇帝の新しい心」と「心の影」) の中で、「脳は量子コンピューターであり、アリストテレス的な論理的思考 [6] は、実際には人間にとって異質なものである」と規定しています。

もし彼が正しければ、人間の不可分の本質は、弁証法的-アルゴリズム的であるということになります。


◆◆◆


この思考の「二重性」のイメージが周期的に互いに交わる現実のモデルの簡単な例として、角錐台という立体図形を平面図で描き表したもの [7] が挙げられます。じっとこの画像を見ていると、図の上部が観察者側を向いている状態と、その逆の状態が交互に見え始めます。


もう一つ「弁証法的認識」の図解を紹介してみたいと思います。これはどのような画像 [8]に見えますか?「黒い背景と花瓶」でしょうか。それとも「白い背景に二人の人間の横顔」でしょうか。最初に前者が見えた後、後者に変わる人もいれば、その逆に最初に後者が見えた後、前者に変わる人もいることでしょう。

しかし、一度両方の画像が見えた人は、注意の変動が始まります。まるで花瓶と横顔の間で脈動しているように見えてくるのです。ここに、背景と前景の弁証法的交換があります。遠くのものや、暗い色のものが、近くのものよりも大きく見える「負の逆遠近法」が誘発されます。


出典:


訳注

  1. ^ 二分法「エボリューション」は、別名「プロセス」ともいう。
  2. ^ この点からいうと、概念の相反と統合の観点から世界を説明付けようとするユングの世界観は、この弁証法的・アルゴリズム的世界観に分類されるものであると解釈できるかもしれない。したがって、おそらくこの弁証法的アルゴリズム的認知スタイルを持つ人が、ユングとそこから派生した類型理論群に最も親和性が高い精神構造を有しているのではないかと思われる。
  3. ^ アリストテレスの四原因説。この場合の存在理由とは、物事が変化する原因という意味に近い。

    1つの現象について
    ① 物質的な原因「その彫刻の素材は何で出来ているか。ブロンズか、鉄か」
    ②「そのオブジェクトの変化または安定の原則の源は何か、言い換えると、その彫刻は誰がどのような道具を使って彫ったのか」
    ③「それがあるべき姿、本質、あるいはイデアはどのようなものか、作ろうとしているのはゼウスか、アポロンか」
    ④「何の目的のためにあるのか、宗教のためか、観光のためか」
    という4つの面から現象の原因を考察する。

    Gulenkoによると、
    ヴォーティカル・シナジェティクス的(ESE, SLI, LIE, IEI)
    因果的決定論的(ILE, LSI, SEE, EII)
    ホログラフィック・パノラマ的(LII, SLE, ESI, IEE)
    弁証法的アルゴリズム的(SEI, EIE, ILI, LSE)
    だとされる。

  4. ^ 一見すると同じように見えたとしても、川の水は常に流れ続けているため、ある瞬間と全く同じ状態の川に入ることはできないという意味。
  5. ^ プログラミング用語。「変数や配列が定義されているメモリアドレス」を格納する変数のこと。
  6. ^ アリストテレス的な論理的思考は、因果的決定論的認知(静的 x プロセス x 肯定主義のILE, LSI, SEE, EII)に分類される。因果的決定論的認知は「最も人為的・人工的であり、生命を機能させる法則から掛け離れたもの」だとされる。関連記事「認知スタイル:因果的決定論的 ILE, LSI, SEE, EII by Gulenko
  7. ^ 具体的には下記図の左図と右図のイメージが交互に見え始めてくる状態。左図では立方体の「上の面」が観察者側を向いているように見えるのに対して、右図では立方体の「下の面」が観察者側を向いているように見える。
    角錐台
  8. ^ 下図のようなルビンの壺と呼ばれる画像。
    ルビンの壺


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