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認知スタイル:ホログラフィック・パノラマ的 LII, SLE, ESI, IEE by Gulenko

2022年11月1日火曜日

ESI IEE LII SLE ソシオニクス 認知スタイル

ホログラフィック・パノラマ的

はじめに

下記のような認知スタイルを、暫定的にホログラフィック・パノラマ的(Holographical-Panoramic, HP)と呼びます。

  • 分析的
  • 否定的
  • 帰納的

これはもっとも未解明な部分の多い認知スタイルです。

「ホログラフ」は、古代ギリシャ語のホロス「全体」とグラフォ「書く」に由来します。 この名前は、ホログラフィック認知者が「これとこれは似ている」というアナロジー的手法によって、情報を高密度に詰め込む能力に由来しています。

この小グループに分類されるタイプは、以下の4タイプです。


二分法「静的」であり、思考の精緻さ・正確性に秀でています。

二分法「インボリューション [1]」であり、検討する角度や判断基準を不定期に変化させます

二分法「否定主義」であり、思考の対象を定期的に反対側へと向けます


知的領域

この認知スタイルは、物理学におけるホログラフィーの原理と共通するところが多いです。

ホログラム(光学)とは、1つの光源から透過・反射する2本の光線によって作られる、統計的に記録された干渉パターンのことです。ホログラフィック技術により、物体の3次元画像を作り出すことができます。ホログラム自体は、埋め込まれたオブジェクトに正確に似た点とストライプの集合体です。2本の光を重ね合わせることで、ホログラムのすべての部分が全体に関する情報を担うようになります。

ホログラフィック認知者は、同じオブジェクトの複数の投影を精神的に重ね合わせることで、全体像を把握します。これを行うために、彼らは画像を見て、適した検査角度を選択します。


ホログラフィック認知者は、相関接続詞(「AもしくはBまたはC」「AかBかのどちらか」「一方ではA、他方ではB」)を多用します。

また遠近法的な原理を積極的に活用し、視点を自由に動かします。ホログラフィック的アプローチとは、少しずつ視点を微調整しつつ、目的に近づきながら類似性を探したり、あるいはその逆に目的から遠ざかりながら類似性を探すアプローチです。ホログラフィック・プロセスは、あたかもフォーカス合わせをするようにして行われます。


◆◆◆


ホログラフィックな認知は、特徴的な貫通性、すなわち、骨格を見通すような「X線」の性質を持っています。細部やニュアンスを惜しげもなく削ぎ落とし、主題を大まかに一般化して表現します

例えば円筒形を縦方向に切断した場合と、横方向に切断した場合を想像してみてください。片方は「円」に見え、もう片方は「長方形」に見えるはずです。

ホログラフィックな認知は、この「円」と「長方形」という2つの異なる視点を頭の中で重ね合わせることによって、オブジェクトに対するより高いレベルの理解へ到達させるものです。


SLIは戦いながら、戦況を分析し、2つか3つの側面(正面・側面・背面)に単純化しますが、その後すぐに高いレベルの理解へと移行していきます。

LIIは問題を反対側から把握し、意味という軸を中心にして、状況を3次元的に回転させます(精神的にこうした操作を行います)。

ESIはまず人に近づき、その次に遠ざかってみて、相手を四方八方から探ります。まるで失望する可能性のある人を、あらかじめ走査して切り捨てているかのように見えます。

IEEは、人の心理的な「ホログラム」を構築するように、その人の隠された動機の可能性を検出します。


◆◆◆


ホログラフィック認知の主な利点には、次のようなものがあります。

まず様々な視点から物事を見ることができる点です。そのおかげで、これまでに説明したように、彼らは次元的に全体的で完全な描写を取得できます。

次に、枝葉末節をそぎ落とし、シンプルさや明瞭さを重視する点にも利点があります。このおかげで、時間に余裕のない危機的状況であっても、迅速な意思決定を下せるからです。


逆にホログラフィック認知の欠点は、プロセスがスムーズに流れている際に重要になる「細部への十分な配慮」を欠いている点です。そのせいで、あまりにも大雑把に見えることがあります。

また、あまりにも情報密度が高いホログラムを作り出してしまった場合、他の人からすると情報の繋がりがわかりずらくなってしまい、話が大幅に飛躍しているように見えることがあります。


◆◆◆


アリストテレスの彫刻家の例 [2] から考えた場合、このような「ホログラフィック認識」は、構造的・形成的な原因による説明と対応させることができます。

つまり、ホログラフィック認識者が構築するホログラムは、彫刻家が「余計」な大理石を削り取ることで解放しようとするイデアと同じものです。


社会的領域

ホログラフィックという概念の漠然としたアイデアは、ゴットフリート・ライプニッツの「モナドロジー」で言及されています。

ライプニッツの考えた「モナド [3] 」は、全世界秩序のミクロコスモス的な反映 [4] であり、ホログラムに類似しています。


生態学者たちは、自然界に安定性が存在する理由を解明するために、いつもこの考え方を利用しています。特定の地域で発生する生物と非生物の関係は、生物地理学的環境(または生態系)の形成を引き起こします。

生態系は、主に、対立するものが融合(合成)することなく長期的に共存する、時間経過に伴う自己相似性の平衡 [5] によって特徴付けられます。

したがってこのようなコミュニティでは静的な力のほうが、動的な力よりも優先される力学があると言えます。そこには生態系におけるホメオスタシス [6] の基本法則があります。


その後、これらの考えに基づいてオーストリアの生物学者ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィが「一般システム理論」を提唱しました。この理論では、環境と、物質・エネルギー・情報を交換することで、不安定化に抵抗するオープンシステムの概念が取り入れられています。

因果的決定論的認知がシステムの振る舞いを構成要素と相互関係によって説明しようとするのに対し、ホログラフィック認知は、システムの内部構造だけでは説明できない創発的特徴 [7] を示す新しい性質を見つけます。

したがって、ホログラフィック・パラダイムは、一般に生態学のシステム的な世界観と呼ぶことができます。


現代のグリーン・イデオロギー [8]は、この認知形態の縮図です。

これは、「このイデオロギーの支持者は、ホログラフィック認知者である」という意味ではありません。ある人が宣言する思想的立場と、その人の認知スタイルは必ずしも一致するものではありません。ある認知スタイルが、別の認知スタイルを通して生じることは、認知スタイルの働き方としては典型的に見られることです。


心理的領域

ホログラフィックな認知は、条件付け [9] に抵抗する安定した自我のある精神に対応しています。


LSI [10]と同じクアドラ・同じ感覚論理タイプであり、同時に二分法「エボリューション/インボリューション」が異なっているSLEを比較すると、ホログラフィック認知であるSLEのほうが、はるかに心理的な影響への抵抗力が高いことが観察されています。

この観察結果は、SLEが(LSIと比べて)耐久性の高い認知基盤を備えている点から説明できます。ホログラフィック認知は、定期的にオブジェクトを眺める視点を変えることができます。また、一次感覚器官 [11] と同じくらい、免疫系と神経系のバランスが良いです。


◆◆◆


NLP(神経言語プログラミング)では、この原理は「リフレーミング [12] 」と呼ばれる手法として利用されています。

リフレーミングとは、ある事象を文脈化する知覚の枠組みを変えるものです。見慣れたものを見慣れない文脈の中に置いてみると、その状況全体の意味が変わってくるのです。

例えば同じ「トラ」でも、「ジャングルにいる場合」「動物園の檻の中にいる場合」「あなたの部屋のベランダにいる場合」それぞれを想像してみてください。


多くのソシオニクスのタイプ説明では、そのタイプの人が「クラブ」に没頭している様子が描かれています。しかし、これを「クラブ」ではなくクアドラ」に置き換えたらどうなるでしょうか。または「クラブ」でも「クアドラ」でもなく「認知スタイル」に置き変えてみても面白いかもしれません。こうした置き換えは、無限に続けることができます。

人はリフレーミングによって、見慣れたものを新鮮な視点で観察できるようになります。当たり前のことですが、変化しているのは注目する対象との主観的な関係であって、リフレーミングしている人のソシオニクスのタイプがコロコロ変わったりするわけではありません。


この方法の利点は、新しい視点を用いることで、それまで過小評価されていた状況の「別の側面」に目を向けられるようになる点です。それによって成長の新しい道を発見し、既存の選択肢の幅を広げることができるかもしれません。


科学的領域

この多視点的な知性の現実的な物理モデルとして、「ホログラム」を挙げることができます。

これは、複数の映像を重ね合わせて、ある角度から見たときだけ、それぞれの映像を見ることができるようにしたものです。視点は断続的に変化しますが、システムそのものは変化せず、観察者に提示する映像の優先順位だけが変化します。ホログラムを使えば、複数の「スタンダード」を同時に実装できるため、複雑なシステムを、まるで単純なシーケンスのように操作できます。


ホログラフィック認知のもうひとつの現実的なプロトタイプは、1970年代に数学者ブノワ・マンデルブロが発見したフラクタル構造です。

フラクタルとは幾何学的に自己相似的な内部構造を持つ、輪郭の不鮮明な図形のことです。樹木、雪片、海岸線などはフラクタル構造をしています。まるでマトリョーシカのように、フラクタルのどの断片も、フラクタル全体に関する完全な情報を含んでいます。フラクタル構造において、部分は常に全体と構造的に類似しています。


◆◆◆


ソシオニクスのタイプもまた、フラクタルなオブジェクトのようなものです

それゆえ、私 [13]はパーソナリティについて、1つのタイプが別のタイプの中に入れ子になったシステム [14] であるというホログラフィックな概念を持っています。こうしたホログラフィックな考え方は、還元主義的思考 [15]を持つ人々によって提唱されたソシオニクスの一般的なフラットな視点には反した考え方です。


出典:


訳注

  1. ^ 二分法「インボリューション」は、別名「結果」ともいう。
  2. ^ アリストテレスの四原因説。この場合の存在理由とは、物事が変化する原因という意味に近い。

    1つの現象について
    ① 物質的な原因「その彫刻の素材は何で出来ているか。ブロンズか、鉄か」
    ②「そのオブジェクトの変化または安定の原則の源は何か、言い換えると、その彫刻は誰がどのような道具を使って彫ったのか」
    ③「それがあるべき姿、本質、あるいはイデアはどのようなものか、作ろうとしているのはゼウスか、アポロンか」
    ④「何の目的のためにあるのか、宗教のためか、観光のためか」
    という4つの面から現象の原因を考察する。

    Gulenkoによると、
    ヴォーティカル・シナジェティクス的(ESE, SLI, LIE, IEI)
    因果的決定論的(ILE, LSI, SEE, EII)
    ホログラフィック・パノラマ的(LII, SLE, ESI, IEE)
    弁証法的アルゴリズム的(SEI, EIE, ILI, LSE)
    だとされる。

  3. ^ モナド:これ以上分割できないところまで分割した形而上学的な概念。物理学の「原子」のような物体とは違い(原子はオングストロームなどの長さで表わすことが出来る。すなわち、それより小さい何かを想定することが出来る)、モナドは「長さ」などの空間的広がりをもたないと定義された形而上学的な概念である。
  4. ^ 全世界秩序のミクロコスモス的な反映:全世界秩序=宇宙=マクロコスモス、モナド=ミクロコスモス。極小の概念であるミクロコスモス(モナド)は、極大の概念である宇宙(マクロコスモス)の有様を鏡のように映しているという意味。極小の素粒子と極大の銀河団が似ているというような話。
  5. ^ 自己相似性とはフラクタル構造のこと。生物の進化の木では、枝同士が融合しあうことなく、延々と枝分かれし続けている((つまり種が分化し続けている)が、進化の木の「幹」から「枝」が分かれ、さらにその「枝」がわかれて新しい「枝」が出来て…という繰り返し構造=フラクタル構造が見られる

    「平衡」は「断続平衡説」の平衡のことではないかと思われる。断続平衡説とは、一定の速度で徐々に種が分化するのではなく、ほとんど変化しない時期が長く続いた後、あるタイミングで急激な変化が起こり、その後またほとんど変化しない時期が来るという進化生物学の学説。

  6. ^ ホメオスタシス:ギリシャ語で「同一の状態」という意味。何らかの変化があっても、一定の状態に保ち続ける性質のこと。

    ホメオスタシスというと一般的には生物の個体レベルの話(気温が下がったら脂肪を燃やすことで、体温を一定に維持するなど)に使われることが多いが、本稿では断続平衡説的な進化の「ほとんど変化しない時期」に働いている力学のことを指してホメオスタシスと言っているのではないかと思われる。このホメオスタシス=静的な力を凌駕するほどの動的な力が加わると、一気に均衡が崩れて爆発的な進化が起こる。

    生物学から離れてソシオニクスの話に戻るが、ソシオニクスではエボリューションとインボリューションという2つの概念が登場する。ソシオニクスのエボリューションは「ほとんど変化しない時期のゆるやかな変化」のほうを意味しており、インボリューションは「爆発的な進化」のほうを意味している。関連記事「社会的進歩リング」)

  7. ^ 部分の性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として現れること。
  8. ^ グリーン・イデオロギー:環境保護主義、非暴力、社会正義、草の根的民主主義に根差した、生態学的に持続可能な社会を促進することを目的とした政治的イデオロギーのこと。1970年代に興り、世界中に広がる。
  9. ^ 条件付けの例:たまたま電車の中で体調不良を起こすという経験をした時に、「電車は体調が悪くなる場所」というネガティブな条件付けが成立してしまい、その結果、肉体的には問題なくても電車に乗るたびに実際に体調が悪くなってしまう。
  10. ^ LSIは二分法「エボリューション(別名:プロセス)」であり、因果的決定論的認知に分類されるタイプ。
  11. ^ においを感じる鼻など、感覚神経の神経細胞そのものが、外部からの刺激の受容器として働いている器官のこと。
  12. ^ NLPのリフレーミングの例:「コップに水が半分しか入っていない」を「コップに水が半分入っている」に言い換える。
  13. ^ 「私」とはGulenkoのこと。GulenkoのタイプはLIIであるため、ホログラフィック・パノラマ的に分類される。
  14. ^ ソシオニクスには、一人の人間の中に複数のタイプを見立てて、そのタイプ間の関係性に基づいて情報代謝経路を解釈する考え方がある。参考記事:「モデルGの歴史とエネルギー代謝
  15. ^ 還元主義的思考は、因果的決定論的認知スタイルに分類される。


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