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ソシオニクス モデルGの歴史とエネルギー代謝

2022年2月19日土曜日

ソシオニクス モデルG

ソシオニクス モデルGの歴史とエネルギー代謝

はじめに

モデルGとはモデルAが情報代謝に焦点を当てているのに対して、モデルGはエネルギー代謝に焦点を当てた「エネルギー代謝モデル」である。

モデルGは1995年にウクライナの心理学者であるビクター・グレンコ(Victor Gulenko; Виктором Гуленко)が提唱したモデルである。ここではモデルGの歴史を紹介すると共に、モデルAとモデルGでは何が違うのか、なぜモデルGが作られたのかについて紹介する。


モデルA

モデルAの歴史

モデルGについて説明する前に、前提としてモデルAとは何か説明したい。

モデルAとはリトアニアの経済学者、社会学者であり、ソシオニクスの創立者でもあるオーシュラ・オゥグスティナヴィチュティエ(Aushra AugustinavichiuteまたはAushra August; Aušra Augustinavičiūtė)によって提唱されたモデルであり、4つの強い機能と4つの弱い機能、計8つの機能から構成される人間の情報処理モデルである。なお、次元の概念は1989年にブカロフ(A. V. Bukalov; Букалов Александр Валентинович)によって導入されたものである。

Fig.1 モデルA

エネルギー代謝の概念自体は、情報代謝と同等、かつ補完的なものとしてオーシュラによって導入されたものだが、オーシュラ自身はモデルAの情報代謝に集中し、エネルギー的な側面の詳細な展開は行わなかった。


モデルAの代謝

モデルAの情報代謝は監督関係(改訂リング)、エネルギー代謝は要求関係(恩恵リング)に基づいている。

Model A:Information metabolism
Fig.2 モデルAの情報・エネルギー代謝(ILE)

なぜこのような代謝経路になるのか、ここではFig.2で示したILE(ENTp)を例に考えてみたい。

ILEと監督関係にあるタイプ同士を繋げると、次のような繋がりが存在する(ILEはLSIを監督し、LSIはSEEを監督し、SEEはEIIを監督し、EIIはILEを監督する)。

  • ILE → LSI → SEE → EII → ILE
Relations of supervision
Fig.3 監督関係と改訂リング

それぞれのタイプの第1機能(先導機能)に置き換えると、次のような繋がりになる。

  • ILE(Ne) → LSI(Ti) → SEE(Se) → EII(Fi) → ILE(Ne)

Ne→Ti→Se→Fiというフローは、ちょうどモデルAの第1機能→第2機能→第3機能→第4機能と一致するのである。つまりILEという一人の人間の中で、第1~第4機能がまるで監督関係のように相互作用しあっているのである。

この第1~第4機能までのフローをメンタルリングと呼ぶ。メンタルリングには、社会活動を担う機能が含まれており、意識的に現れまるものだとされている。


◆◆◆


ILEの下半分(第5~第8機能)について見てみると、上述した第1~第4機能と同様に監督関係に基づく繋がりがあることがわかる。

  • SEI(Si) → EIE (Fe) → ILI(Ni) → LSE(Te) → SEI(Si)

第5機能→第6機能→第7機能→第8機能のフローをバイタルリングと呼ぶ。バイタルリングは、人の個々のニーズに対応する機能で構成されており、通常、無意識のうちに現れるものだとされている。


◆◆◆


監督関係だけではなく、要求関係についても同様に、一人の人間の中での機能フローを説明することができるが(Fig.2の黒線で示した恩恵リング)、オーシュラが重視したのはメンタルリングとバイタルリング、すなわち監督関係に基づくタイプの繋がり(改訂リング)である


モデルAの問題点

グレンコは、モデルAのメンタルリングとバイタルリングという代謝をエネルギー代謝として見た場合、エネルギーのロスが大きいのではないかと考えた。外向機能と内向機能の間で交互にやりとりしなければならないからである。

そこでグレンコは最も効率的にエネルギーの伝達を行う経路として要求関係に焦点をあてた新しいモデル「モデルG」を提唱した。


モデルGのエネルギー代謝

「右」タイプの場合

二分法「右(別名:プロセス、エボリューション)」タイプ:
ILE, SEI, EIE, LSI, SEE, ILI, LSE, EII


右タイプであるILEと要求関係にあるタイプ同士を繋げると、次のような繋がりが存在する(ILEはEIEに要求し、EIEはSEEに要求し、SEEはLSEに要求し、LSEはILEに要求する)。

  • ILE → EIE → SEE → LSE → ILE
Ring of benefit
Fig.4 要求関係と恩恵リング


それぞれのタイプの第1機能(先導機能)に置き換えると、次のような繋がりになる。

  • ILE(Ne) → EIE(Fe) → SEE(Se) → LSE(Te) → ILE(Ne)

また、ILEの残りの4機能についても同様に要求関係の繋がりがある

  • LSI(Ti) → ILI(Ni) → EII(Fi) → SEI(Si) → LSI(Ti)

◆◆◆


要求関係では、外向機能のみのグループ、内向機能のみのグループという風にきれいに分かれる

エネルギーはより効率のいい形で代謝されているであろうという仮説に則り、グレンコはここからモデルGを考え出した。

ここでキーとなっているのは、ILEのような右タイプの場合、要求するタイプ→要求されるタイプとは逆方向(降順)にエネルギー代謝が進行する点である。

逆方向(降順)である理由は、情報は要求するタイプから、要求されるタイプに受け渡されるが、この時、エネルギーは要求されるタイプから要求するタイプ側に受け渡されているからである。ソシオニクスとは無関係に一般論として想像してほしい。何かを要求される側のほうが、要求する側よりもエネルギーを消耗してしまう様子はイメージがつきやすいのではないだろうか。


◆◆◆


ILEは、モデルGでは下記Fig.5-1のように図示される(Fig.5-1下側のモデルAの図は、モデルGとの比較を容易にするために一般的な描き方とは異なる描き方で図示している)。

ModelG in the case of Right Ring
Fig.5-1 モデルGとモデルA(右リング)

用語の意味:
右進歩=二分法「右(別名:プロセス、エボリューション)」タイプのこと
恩恵=要求関係のこと
改訂=監督関係のこと
遠距離、近距離=長くなるため詳細は「モデルGの機能の位置の性質」参照。


「左」タイプの場合

二分法「左(別名:結果、インボリューション)」タイプ:
ESE, LII, SLE, IEI, LIE, ESI, IEE, SLI


左タイプであるESEと要求関係にあるタイプ同士を繋げると、次のような繋がりが存在する(ESEはIEEに要求し、IEEはLIEに要求し、LIEはSLEに要求し、SLEはESEに要求する)。

  • ESE(Fe) → IEE(Ne) → LIE(Te) → SLE(Se) → ESE(Fe)

また、ESEの残りの4機能についても同様に要求関係の繋がりがある

  • SLI(Si) → ESI(Fi) → IEI(Ni) → LII(Ti) → SLI(Si)

◆◆◆


左タイプの例として、ESEの場合は下記 Fig.5-2のように図示できる。

ModelG in the case of Left Ring
Fig.5-2 モデルGとモデルA(左リング)

右タイプのILEと同様、要求する側→される側の逆方向の向きになっている点には注意。


「右」タイプと「左」タイプの違い

ソシオニクスの二分法である「右/左」には、様々なソシオニクス的な特徴が紐づけられているが、特に社会がどのように進歩・発展していくかを、ソシオニクスによって説明する際に、この右/左という二分法は重要になる。社会の進歩とは何なのかという話は非常に長くなるのでここでは割愛するが、興味がある場合は記事「クアドラ」および「社会的進歩リング」に目を通してほしい。本記事では右タイプと左タイプとの間で、エネルギー代謝という意味で何が異なっているのかという説明だけにとどめておきたい。

ILEのような右リングタイプ(Fig.5-1)と、ESEのような左リングタイプ(Fig.5-2)を、クアドラという観点から比較してみたい。

「右」タイプ(ILE)の場合

要求するタイプ→されるタイプで並べた場合

  • ILE(Ne):アルファ → EIE(Fe) :ベータ→ SEE(Se):ガンマ → LSE(Te):デルタ
  • LSI(Ti) :ベータ→ ILI(Ni):ガンマ → EII(Fi):デルタ → SEI(Si):アルファ

エネルギー代謝として考えた場合(上記の逆方向:要求される側→される側の流れを考えた場合)

  • LSE:デルタ → SEE:ガンマ → EIE:ベータ → ILE:アルファ
  • SEI:アルファ → EII:デルタ → ILI:ガンマ → LSI:ベータ

アルファデルタ→ガンマ→ベータ→アルファ…の順番になっている。


「左」タイプ(ESE)の場合

要求するタイプ→されるタイプで並べた場合

  • ESE(Fe):アルファ→ IEE(Ne):デルタ → LIE(Te):ガンマ → SLE(Se):ベータ
  • SLI(Si):デルタ → ESI(Fi):ガンマ → IEI(Ni):ベータ → LII(Ti):アルファ

エネルギー代謝として考えた場合(上記の逆方向:要求される側→される側の流れを考えた場合)

  • SLE:ベータ → LIE:ガンマ → IEE:デルタ → ESE:アルファ
  • LII:アルファ → IEI:ベータ → ESI:ガンマ → SLI:デルタ

アルファベータ→ガンマ→デルタ→アルファ…の順番になっている。


◆◆◆


つまり、クアドラに置き換えてみた場合、右タイプ(ILEなど)と、左タイプ(ESEなど)では、エネルギー代謝の向きが真逆であると考えられるのである。

そして、この代謝が真逆であるという点から、右タイプと左タイプの様々なソシオニクス的特性の違いが生まれているのではないかと推測されている(より具体的な話は記事「社会的進歩リング」参照)。


参考:


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