双対関係となるタイプ
はじめに
双対関係は、モデルAにおける相互補完という原則という点から見た場合、理想的に適合しあう関係にあるタイプ同士の関係のことです。
双対関係はソシオニクスの基本概念であり、ソシオニクスの最初の開発者であるオーシュラによって導入されました。
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双対関係は様々なレベル、様々な方法で相互作用でき、それが関係性に充実感や多様性を生み出します。ほとんどの場合、相手にとって予想外のことをもたらし、予想外の形で相手に影響を与えます。なぜ予想外の形になるかと言うと、互いに相手の能力・問題・特徴を十分に認識していないからです。
双対関係は相互補完ができるポテンシャルのある関係ではありますが、完全に互いの期待に応えるためには、心理的な障壁を取り除く必要があります。それが出来ない場合、満足できる関係にはならないでしょう。
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双対関係では、一方のパートナーの自我ブロック(第1機能と第2機能)が、相手の超イドブロック(第5機能と第6機能)の期待を満たします。
同様に、個人の人生にとってはそれほど重要ではないと感じられるブロックではあるものの、超自我ブロック(第3機能と第4機能)とイドブロック(第7機能と第8機能)もまた、互いに補完的な作用をしあっています。通常、双対タイプは間接的かつ健全な方法で、相手が超自我ブロックの問題に向き合う手助けをします。
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双対関係に関する説明には、恋愛関係や性的関係を想定したものが多いです。しかしながら双対関係自体は、恋愛関係に限らず、友情や仕事などといった様々な場面で、様々なバックグラウンドを持つ人々の間で成立する関係である点を忘れないでください。
友情
双対パートナー間の問題は、不思議ともいえるような方法で解決されます。
双対パートナーが行う、第三者から見れば残酷なことや意地悪なことも、もう一方のパートナーは特に何も感じずに、そのまま流してしまうことがよくあります。
同時に共通の活動はしばしば美化され、二人にとって非常に意味深いものだと認識されます。
仕事
仕事関係では、なかなか相手が双対であることに気が付かない場合が多いです。しかしながら一度気が付けば、すぐに他の人よりもずっと楽しく仕事ができる間柄になります。
付き合い始めると、「なんでこの人のことを今まで見逃していたんだろう」と不思議に思うことがよくあります。
仕事仲間が双対関係である場合、生活がずっと楽になり、ストレスが軽減されます。なぜなら他の同僚の些細な口論から互いに守り合い、仕事の基本的で平凡な仕事を手助けし合えるからです。
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双対とのコミュニケーションに夢中になってしまい、仕事がそっちのけになることがあります。こういう時、監督者(監督関係における、「監督する側」のタイプの人)が彼らを離して「現実」に引き戻すことがよくあります。
関係が適切に発展し、お互いに興味を持てれば、双対ペアのうち外向タイプ側のパートナーは、率先してもっと親密な関係(友情関係か恋愛関係)に移行しようと試みるかもしれません。
恋愛
双対関係は、人の機能の最も親密な領域に影響を与えます。そのため、双対関係の存在は人生にも最大の影響を与えます。
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恋愛の初期段階は、他のタイプ関係の場合と似ているように見えるかもしれませんが、双対関係の場合は、パートナー間の心理的な距離が他の関係とは異なっています。
双対関係では自然と距離が近くなります。そのため内面的にリラックスしやすく、他の多くのタイプ関係の場合よりも自発的な行動が増える傾向があります。
双対関係にある場合、相手があまり自分の弱点を気にせず、痛い所を責めてこないことにすぐ気が付きます。
恋愛では、型にはまった恋愛観的な行動から、自分たちにとって本当に自然で誠実な行動へと素早く移行できます。
人は双対関係を通じて「自分自身を発見する」ことに気が付くかもしれません。社会的に期待されていることではなく、自分が本当にやりたいこと、自分にとって本当に自然な傾向を追求することで、相手を喜ばせ、双対関係の絆をより深めることが出来ます。
人生初の双対関係間の恋愛は、その人の変革のきっかけになるかもしれません。
双対である人との共同生活の初期段階で、人は一定期間社会から離脱し、新しい関係や自分探しのエキサイティングなプロセスにエネルギーを注ぐようになることが多いです。
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恋愛感情が薄れた場合、安定した恋愛関係から、遊び心あふれた優しい友人関係に発展するのが一般的です。
双対関係では、何歳になっても遊び心で相手の暗示機能(第5機能)をくすぐり、相手の「ボタン」を押し続けることが出来ます。これは人の主導機能(第1機能)の働きで生じる作用であるため、自然と、というより、放っておいても勝手にそうなります。
多くの場合、相手の暗示機能(第5機能)に関連する、かなり典型的な行動を見せるだけで、相手は微笑んだり、声を上げて笑ったりします。
長期的に見ると、双対関係となる恋人同士が共同生活をした場合、世間一般的な男女の役割分担とは全く違う形であることはありますが、自分たちの自我ブロックの機能に沿って、生活の様々な分野の責任を二人で適切に分担することが多いです。それによって精神的な負担が軽減され、エネルギーが解放されます。
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双対関係間での恋愛は、両者の個性を伸ばす作用があります。そのため、一言で双対関係と言っても、その様相はタイプペアによって様変わりします。
例えば一部の双対カップルは、しょっちゅう喧嘩しているように見えるかもしれません。しかしこれは本気の喧嘩ではなく「じゃれあい」のようなものであり、遊び心あふれる「ゲーム」である可能性があります。また別の双対カップルは、あまり彼らと深い関係にない第三者から見ると、「ビジネスライクで無関心にさえ見える関係」だと感じるかもしれません。
いずれにせよ、これらの双対カップルの行動は、彼らの自我ブロックの機能の要素、特に基本機能(第1機能)の要素が中心になって形作られたものです。
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双対関係間の恋愛と言えども、他のタイプ関係間の恋愛と同じように、イライラすることや、ストレスがたまること、あるいは外的なストレスに晒される状況下に置かれることは有り得ます。
双対関係と、他の関係の重要な違いは、双対関係において自然に生じる精神的な快適さ、そして障害からの解放です。仮に問題が起きても、双対関係の場合は慎重にそれを解決し(解決方法は、どのタイプから構成される双対ペアであるかによって異なります)、最終的には関係性を進展させ、自分たちの個性を伸ばすのが普通です。
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双対関係は「閉鎖系(スタンドアローンなシステム)」といえる関係です。成功した双対関係(次章の「免責事項」参照)の場合、二人だけで互いの心理的欲求のほとんどを満たすことができる自給自足的な関係になります。
一部の部外者からすると、彼らの関係は「閉鎖的で、第三者がなかなか入り込めない関係」だと感じるかもしれません。しかし実際のところ、双対関係がシャットアウトしているのは、生活の中の不要な刺激であったりストレスになるものだけです。彼らは相互にサポートし合う中で、自分たちと接触する外部の物事を、より厳密に選別しているのです。
こうした選別は、本当に自分たちが必要としていることだけにエネルギーをそそぐ助けになるため、人の自己実現を促進します。
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ほとんどの時間を共に過ごしている双対カップルの場合、アイデンティティが「ぼやける」ような体験をすることがあります。
その結果、二人を区別する感覚がほとんど失われ、2つの別々の部品としてではなく、2人あわせて1つであるかのように機能することがあります。
これは、パートナーの実際の概念から、個人の肉体的な自己や名前といった概念が乖離する状態を伴うこともあります。これが続くと、相手のことを想像することも、外見的なイメージを思い浮かべることも難しくなります。まるで相手のイメージや名前が「しばらく会っていない第三者の旧友」を指しているかのように感じられてしまうのです。
このような双対関係は、自分とは異なる人間であるパートナーの存在なくして、自分のアイデンティティを完全に定義することができなくなるため、「統合」と呼ぶにふさわしいものであるかもしれません。
免責事項
ここでの記述は全て、他の多くの双対関係に関する資料と同様に、「互いに偽りのない深い関心を持ち、純粋に恋に落ちた場合」を前提にしたものです。
多くの場合、双対関係は恋愛には発展しません。なぜなら彼らは互いに無関心であるか、そもそも恋愛関係を考える妨げになるような大きな違いがあるからです。
ソシオニクスの双対関係とは、「特定の密接な心理的距離と相互作用の容易さ」を意味するだけの関係です。
双対関係のタイプ同士が、他の面では相性が悪かったとしても [1]、とにかく恋愛関係になった場合、心理的な快適さはあるにも関わらず、どうしても解決できない対立が生じることになります。こうした関係では、完全に満たされることは無く、一体感を感じることもありません。
また、たとえ双対関係のタイプ同士の人間が結ばれ、上記のような体験をしたとしても、(他のタイプ間の恋愛の場合に比べれば可能性は小さいかもしれませんが)、ソシオニクスとは関係ない何らかの要因が原因となって、別れてしまう可能性がないとは言い切れません。
出会い
socionics.comによれば、「自然は私たちにちょっとしたイタズラを仕掛けた」のだそうです。様々なタイプの人の中から、自分の双対タイプを見つけ出すのは難しい事であり、見逃してしまうことの方がずっと多いです。
双対関係間は必ず外向/内向が異なりますが、通常、外向タイプ側のペアは、自分の双対(内向タイプ)に出会ったとしても「平凡で単純な人」だと思い、特別な注意を払う価値のない存在だと感じます。そして内向タイプ側のペアは、自分の双対(外向タイプ)に出会うと「自分にはもったいない人だ」「高嶺の花だ」と感じてしまいがちです。子供時代に双対関係の相互作用が不足していた場合は、特にこの傾向が加速します。
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また、初対面の人を相手にする場合、人は超自我ブロックの機能で行動することが多いです。
超自我ブロックの機能を前面に出している場合、それを見た双対タイプは「退屈だ」と感じてしまうため、それ以上関係性が深まらない可能性もあります [2]。
背景
オーシュラ自身は不幸な結婚生活を送っていたため、人間の生活における双対関係の役割を大げさに捉えていた可能性があります。
双対は相互に『特別にデザインされている』という暗黙の前提がありました。実際、オーシュラはある著書の中で「モデルAからは、人が双対タイプなしでどのように機能するのかはわかりません」と述べています。
これは「人は親しい人からの情報だけではなく、もっと様々な情報源から、断片的に様々な情報を拾っている」ということを意味するのかもしれません。
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「人という動物は、双対と結ばれるようにデザインされた動物なのか否か」という問題は、「人の本質は一夫一妻制か、一夫多妻制か」という問題と同じようなものです。つまり、どちらの立場についても「もっともらしい説明」が可能で、どこまで議論しても「どちらが真であるか」を決定できない命題だと言えます。
ほとんどのソシオニクスの専門家は、双対関係が人の生活において特別な役割を果たすとは考えているものの、オーシュラが示唆しているような「双対関係とは、ありとあらゆる心理的・社会的病を癒す関係である」とは考えていません。
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双対関係を含めて、ソシオニクスのタイプ間関係を簡略化して説明すると、「どのタイプペアであっても同じ」であるかのような印象を読者に与えたり、双対ペアが互いの弱点を中和したり、リバランスしたりして、結局タイプに関係なく全ての組み合わせのペアが同じような様相を呈するかのように感じられてしまうことがあります。
しかし、これは誤解です。
ソシオニクスの16タイプがそれぞれ違うのと同じように、8つの双対ペアは全て異なるものです。これは、それぞれのペアごとに、相手に期待するものが異なっているからです。
双対関係の理論的特性
ユング二分法のうち、外向/内向、直観/感覚、論理/倫理が異なりますが、合理/非合理は同じです。彼らは現実の反対側の側面の責任を担いながら、共通のリズムを有しています。
訳注
- ^ 社会的地位、イデオロギー、裕福さ、所属しているグループの違いなど、様々な要因が原因の「相性の悪さ」が考えられる。また、類型論の観点から補足すると、ソシオニクスとは異なる観点からの類型である「サイコソフィア」では「ソシオニクスが双対関係でも、サイコソフィアの相性が悪い」というパターンについて考えられている。関連記事「サイコソフィア ソシオニクスの関係とサイコソフィアの関係の優先度」
- ^ 自分の超自我ブロック(第3機能、第4機能)は、双対タイプのイドブロック(第7機能、第8機能)に合致する。イドブロックは強い機能でありながら、控え目な機能であるため、双対タイプ目線で見た場合、「ただでさえあまり興味がないのに、低次元で魅力を感じられない」という感想に繋がってしまう。