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タイプの分類
肯定主義
ENTx, ESFx, ISTx, INFx
否定主義
ISFx, INTx, ENFx, ESTx
α | β | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ILE | SEI | ESE | LII | EIE | LSI | SLE | IEI | |
肯定 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
否定 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
γ | Δ | |||||||
SEE | ILI | LIE | ESI | LSE | EII | IEE | SLI | |
肯定 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
否定 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
典型的な特徴
肯定主義
- 既存の物事、システム、またはプロセスを最適化し、磨き上げ、より改善する傾向があります。
- 社会的、知的な情報に触れた際、まず信頼し、その後、より批判的になり、無関心になります。
- 最初は叱るよりも褒めることのほうが多いです。
- 批判する時であっても肯定的で断定的な表現を使うことが多いです。
- (非合理タイプの場合)物事がなんであるか、(合理タイプの場合)物事がどうあるべきかを説明します。
- 「グラスには水が半分残っています」「このプロジェクトのために438,000ドルをすでに集めました」
否定主義
- 物事、システム、またはプロセスにおける問題を発見し、解決しようとする傾向があります。
- 社会的、知的な情報に触れた際、最初は不信感を抱いて関心を持ちません。その後、より信頼し、関心を持つようになります。
- 最初は褒めるよりも叱ることのほうが多いです。
- 否定語を多用する傾向が見られます。
- (非合理タイプの場合)物事が何でないか、(合理タイプの場合)何であってはならないかを説明します。
- 「グラスには水が半分しか残っていません」「このプロジェクトには、あと62,000ドル必要です」
典型的な特徴(拡張版)
2003 年のレーニンの特徴の研究から取得。
肯定主義
- 肯定主義は、まず最初に、ある状況に「すでにあるもの、存在するもの」、現実的に起こりうるもの、周囲の世界、状況、可能性、見通しを明確な形で表現していると解釈できるものに注目します。
- 肯定主義は、ある状況や人々との接触に伴って潜在的に失われる可能性があるものではなく、潜在的に得られる可能性があるものを志向しています(例えば引っ越しをする場合、既存の友人や知人が失われる可能性よりも、新しい知人や友人を得る可能性に目を向けます)。失敗の回避よりも、成功を志向するという特徴があります。
- 肯定的な体験を吸収するのが得意です。否定的な経験を肯定的な経験に「変換」する傾向があります(「明るい兆し」を見つけようとします)。
- ポジティブな内容を話したがる傾向や、ネガティブな内容を話す際に、ポジティブな形で表現したがる傾向があります(例:「確かにこれは問題ですが…」といった後、ポジティブな内容を続ける)。他の人がネガティブな内容を強調すると(例:他人の欠点や不可能であることを強調される場合)、肯定主義は苛立たしく感じる可能性があります。
- 肯定主義は、会話中、肯定的な構文やイントネーションを多用する傾向が見られる。「できない」「してはいけない」ことよりも「できること」「すべきこと」という表現を使いたがります(例えば「この時間以外は電話しないでください」よりも「この時間にだけ電話すればいいです」という表現を好みます)。
否定主義
- 否定主義は、状況の不十分な側面や、不足している部分に注目します。様々な状況のネガティブな見通しを捉えていると解釈できます。
- 否定主義は、ある状況や人々との接触に伴って潜在的に得られる可能性があるものではなく、潜在的に失われる可能性があるものを志向しています(例えば引っ越しをする場合、新しい知人や友人を得る可能性よりも、既存の友人や知人が失われる可能性に目を向けます)。否定主義は失敗を避けることに重点を置きます(否定主義にとって、ある状況の「肯定的」な展開とは、「これまで否定的なことが何も起こらなかった」という事実を意味します)。
- 否定的な体験を吸収するのが得意です。物事の否定的な側面の概要をつかもうとする傾向があります。
- 否定主義は、否定的な瞬間について話す傾向や、ポジティブな内容を話す際に、ネガティブな形で表現する傾向があります(例:「まあ、これはいいんだけど…」といった後で、何が足りないか、何が正しくないかを言及します)。否定主義は、「過剰にポジティブ」な態度(例:他人がネガティブな側面を持ち出すことを「忘れている」場合や、「考慮すらしていない」場合)に苛立ちを感じます。
- 否定主義は、否定的な表現(「ではない」「できない」など)を多用する傾向が見られます(例えば「ネガティブな経験は、必ずしも私にとっては必要ではない」「何もする機会がない」「これが真実ではないと言うことはできない」など)。人に指示を出す場合、否定主義はまず、避けるべきこと、やってはいけないことについて話します(例:「この時間に電話しないでください」)」
注釈
この二分法は、当初「日常的な意味での」ポジティブ/ネガティブの測定に終始していましたが、私たちの考えでは、この二分法はそれよりも深いメカニズムの結果です。
何かを認識したり、説明したりする際に、肯定主義は特定の物事に関連する性質に焦点を当てることで何かを認識したり説明するのに対し、否定主義は、それに関連しない性質に焦点を当てます。肯定主義は、オブジェクト(客体)に内在する特性によってサブジェクト(主体)、個人、現象を説明しますが、否定主義はオブジェクト(客体)に関係しない特性に注目します。
肯定主義/否定主義の大雑把なイメージが楽観主義/悲観主義になる理由は、このせいです。実際には、肯定主義/否定主義どちらのグループにも楽観主義者と悲観主義者の両方がいますし、どちらも同じように「良いこと(good)」「悪いこと(bad)」について話します。
肯定主義/否定主義の違いはプレゼンテーションの形式にあります。例えば欠点について話す際に、否定主義は「あなたには欠点がないとは言えません」と話し、肯定主義は「あなたにはいくつかの欠点があります」と話す傾向があります。
仮説
肯定主義/否定主義の違いは、次の点かもしれません。
肯定主義は(起こらなかったイベントよりも)起こったイベントをよく覚えているのに対し、否定主義は起こらなかったイベント、つまり「欠落していたイベント」をよく覚えているために、肯定主義/否定主義の違いが生まれる可能性があります。否定主義は、欠落自体を一種のイベントとして捉えおり、そのため欠落についてよく覚えていて、その観点からの結論を出すのかもしれません。
具体例
肯定主義
- 「まず人を信用します。不信感は、それを抱くだけの理由が必要です」
- 「私はいつもポジティブな結果を信じています。肯定的な話をすることが多いです。失敗の可能性を警告したりはしません」
- 「他人の性格的な欠点や、至らない点ばかりを話す人にはイライラします」
- 「何かを避けろという指示を出したり、障害が起きた場合の指示をあえて出したりはしません」
- 「『〇〇するな!』『〇〇に行くな!』という命令はしないようにしています」
- 「マイナスの経験であっても、人のプラスになります」
- 「まず最初に人を信用し、そこから仕事を始めます」
否定主義
- 「すべてに対する私の最初の反応は、それが何であれ『No』です」
- 「ポジティブなことは言いません」
- 「ネガティブな面も全て考慮しなければなりません。口先だけでは何とでも言えるからです」
- 「順調すぎると、何かが間違っているのではないかと思えてきます」
- 「人に指示を出すときは、常にマイナスの可能性を考慮しています。私はできる限りネガティブな兆候を見逃さずに、備えるようにしています」
- 「基本的に、人間とは良い存在だとは思いますが、近づきすぎるのはよくないと思います」
- 「矛盾に着目することで、新しい証明を行いました」
- 「新しく何かを証明する際は、矛盾に着目するというアプローチ法をとります」
- 「私が他者に何かを伝える場合、『悪い知らせ』であることがほとんどです」
- 「『調子はどう?』と人に聞かれたら、『良くはない』と答えます」
- 「どこに遊びに行こう。レストランやカジノには行かないとして、どこか自然の中で…」
- 「そこにビルがありますが、それはあなたが探している建物ではありません。その先に道がありますが、その道には入らないでください。建物を回り込んで、最初にある2つの入り口は使わないでください [1] 」
グレンコ著「認知形態」からの解説
私は「ポジティブを最大化する傾向」を肯定主義、「ネガティブを最小化する傾向」を否定主義だと理解しています。
肯定主義は、あらゆる現象のポジティブな側面を主に認識し、ネガティブな側面には目をつぶることが多いです。それに対して否定主義は、問題を見過ごさないのと同時に、利害がからむ状況のポジティブな側面を控え目に認識します。
知的レベル
このレベルにおける肯定主義/否定主義は、オブジェクトの比較における類似点または相違点の識別として現れます。
否定主義の思考プロセスは「相違点」に着目した対比が優勢なのに対して、肯定主義は「類似点」に着目した比較が優勢です。つまり肯定主義はオブジェクト(客体)に内在する差異を考慮せず、全体的な見方をする傾向があるのに対して、否定主義はオブジェクトに含まれる顕著な分離や対立が目に入りやすい傾向があるといえます。
◆◆◆
これに直接関係しているのが、J.P.Guilfordによって発見された、拡散的思考/収束的思考として知られている認知心理学の二分法です。
Guilfordの考えによれば、拡散的思考は単純な初期データから、同じ問題に対していくつかの異なる解決策を生み出すとされていますが、これはソシオニクスの否定主義にみられる水平思考 [2] に特徴的な特性です。
それに対して収束的思考は、単一の有効な包括的解決策を探そうとします。これはソシオニクスの肯定主義の思考に特徴的なものです。彼らは、ある解決策が、他の解決策よりも有効であることが証明されるまで、問題を解決せずにそのままにしておきます。
社会的レベル
肯定主義/否定主義は、グループメンバー間の引力/斥力に関わっており、グループ内部のまとまりの度合いに影響を与えます。
個人が持つ「集団に同化する力」の強さは、タイプから予測できます。
否定主義はリモートタイプです。彼らは、たとえ自分のものだと考えるグループであっても常に安全を求めるため、完全にグループと一心同体になるのは難しいです。
一方肯定主義は近距離でのコミュニケーションを好む傾向があります。彼らは集団内の差や違いを際立たせるのではなく、むしろ何らかの方法でそれを和らげようとします。そのため肯定主義はグループの単極化と、目的の一致を促進します。
一方の否定主義には、中心が複数ある集団構造を助長するという分極化の性質が見られます。
◆◆◆
否定主義でありながら、かなり気さくなタイプであるSEIを例にして考えてみることにしましょう。彼らには否定主義に見られるとされる「リモート」を好む行動傾向はみられるのでしょうか。はい、見られます。それによって、SEIは自分のサブグループと、それ以外のサブグループを「対比(違いを強調することによる比較)」させます。それによって、SEI本人が意図していなくても、グループ全体の意思統一は乱されることになります。
◆◆◆
グループ内部の結束のバランスをとるプロセスとは、どのようなものなのでしょうか。
肯定主義は、自分とは反対側に引き寄せられる性質があります。その性質から彼らはグループ内に役割分担をもたらすのも得意です。これらの点(特に役割分担をもたらすという点)を通して、肯定主義はグループ全体の結束を強化していることが観察されています。
一方、否定主義は「自分と似たもの」に惹かれるという逆説的な性質を持っています。しかし磁石の同じ極同士が近づけば近づくほど反発しあうのと同様に、惹かれた相手に近づくほど、相互作用が難しくなっていきます。最初、惹かれた相手に接近するというプロセスが生じた後、急に反発力が生まれることから、集団の結束が崩れるのです。
◆◆◆
グループ行動の単極化/分極化、どちらの傾向がみられるかという点は、肯定主義と否定主義の傾向を測定するための信頼性の高い指標となります。
否定主義はグループ内の関係に緊張をもたらし、メンバー間の心理的距離を遠ざける一方で、発破をかけてグループ内の勢いを活性化させます。対照的に、肯定主義は心理的距離を縮め、グループ内の結束を高めますが、現状維持、不注意さ、グループとしての味気無さをもたらすこともあります。
心理的レベル
心理的な意味では、この二分法はおおよそ信頼/不信として解釈できます。
◆◆◆
「人の本性は本質的に善か悪か」という問いに対する答えの違いが、生活の中での振舞いの差として表れます。肯定主義の場合、人間の本質は善であると考え、人を信頼する傾向があります。これは自分自身が善だと考えているという意味ではなく、他人の本質がそうだと考えているという意味です。
一方で否定主義は、たとえ好条件下であっても、最悪の事態を考える傾向があります。そのため他人を信頼する度合いも低いのです。
◆◆◆
肯定主義と否定主義の関係は、電気に例えるとよくわかります。電子を多く持ち、マイナスに帯電している状態を否定主義、その逆に電子を持たずにプラスに帯電している状態を肯定主義だと考えてみてください。否定主義から肯定主義へと電子が受け渡されるのがイメージできるかと思います。この例と同じように、否定主義は肯定主義を刺激します。
こうしたことは全て、ほとんど自動的に、無意識のうちに起こっています。ある物体から別の物体へと電流が閃き、電子が受け渡されるのに伴って電荷のバランスが取れるのと同じように、ある人から別の人へと感情のフラッシュが生じることで、心理的なバランスが生まれます。こうした心理的に有益な感情のフラッシュのことを、アリストテレスは『詩学』の中で「カタルシス(強烈な経験による心理的な浄化)」と呼んでいます。
身体的レベル
会話をする際の空間的位置(会話相手の正面にいるか、横にいるか)は、コミュニケーションにとって重要な要素です。この重要性は、Harry S.Sullivanによって強調されました。
否定主義は相手と向き合う位置からコミュニケーションをとることで、自分の影響力をより高めようとします。一方、肯定主義は相手の横に並ぶか、または視線がぶつからない角度の位置からコミュニケーションをとりたがります。
横に座るほうが、対立の頻度は減少します。実際、これはカップル間の問題を取り扱う心理学者が一般的によく使う手法です。横に並んで座り、架空の第三者に話しかけることで、カップルは徐々に対立の激しさを和らげていくことができます。
◆◆◆
非言語的コミュニケーションを研究している臨床心理学者が、非難的な態度を意味するジェスチャーの分類を行っています。典型的な批判的ジェスチャーは、「closed(閉鎖的)」なジェスチャーです。具体的には「口元に手をやる」などがこれに相当します。
ソシオニクスの立場からいえば、閉鎖的な態度は、内向性ではなく否定主義によってよりよく説明されるものです。
否定主義は、目に見えるレベルの身体的緊張を引き起こします。否定主義(特に否定主義かつ動的であるタイプ [3] )は、過剰な電子を蓄積して帯電するように、過剰な興奮状態に容易に陥りやすい傾向があります。
そのため否定主義には、過剰な内的緊張状態を和らげるような種類の運動が推奨されています。それに対して肯定主義には、生理的プロセスを興奮させ、強化するような種類の運動が推奨されています。
その他の解説と注意事項
肯定主義/否定主義は、しばしば楽観主義/悲観主義と混同されています。肯定主義が楽観主義と、否定主義が悲観主義と混同されてしまうのです。
また、エニアグラムでポジティブな見通しを立てる傾向のあるトライアド(エニアグラムのタイプ2,7,9)に属する人は、可能な限り「ポジティブ(前向き)な姿勢」で物事に対処し、失敗をより明るい形で解釈しなおそうとする生来の傾向から、ソシオニクスでは肯定主義であると間違えられることがあります。一方でエニアグラムのタイプ6の人は、不安な態度や問題・脅威に頭を悩まされやすい傾向から、ソシオニクスでは否定主義であると間違えられることもあります。
<原文太字>ここで重要なのは、肯定主義/否定主義と楽観主義/悲観主義の間には直接的な関係がない点です。この肯定主義/否定主義という二分法は文字通りに解釈されるべきではありません。
肯定主義は、本質的にはポジティブ(肯定的)な人生の見通しをしていません。そして否定主義とネガティブな人生の見通しにも同じことが言えます。<原文太字ここまで>
肯定主義/否定主義という二分法は、「人生の見通しや態度、一般的な感情状態がポジティブかネガティブか」ではなく、認知や精神活動のある種の側面について説明している二分法です。楽観主義/悲観主義は個人の経験から生じる性質です。楽観主義/悲観主義は、ソシオニクスのタイプや二分法、その他ソシオニクス固有の要因とは無関係に生じるものです。
◆◆◆
肯定主義と否定主義の違いは、類似性に基づく比較を好むか(肯定主義)、差異に基づく対比を好むか(否定主義)という点にあります。
肯定主義は、類似点を見つけ、そこから類推する傾向があります(「彼らはとても似ている」「yはxに似ている」など)。一方、否定主義は差異に焦点を当てる傾向があります(「彼らは全然似ていない」)。例えるなら、肯定主義は表側を見せられれば表側を見ようとし、否定主義は裏側を見ようとするのです。もしも裏側がなかなか見えない場合は、もっとよく探そうとします。
したがって「否定主義=否定的・悲観的なものの見方をする」という解釈は正しくありません。そうではなく、否定主義はむしろ「代わりになるもの」を提供しようとします。ILIのような否定主義タイプが、楽観的な予測を聞いたときに悲観的な予測を口にしがちなのは、まさにそうした「代替案を提示したい」という心理的指向から生じている傾向です。否定主義は、気を滅入らせようとしているのではなく、提示されたものとは逆の可能性を指摘することで、バランスを取ろうとしているのです。
否定主義は「裏側」「逆側」に焦点を当てる傾向があるため、最初に悲観的な情報を提示された場合は、むしろその逆側、すなわち楽観的な解釈を探し始めます。「お先真っ暗だ」「なんの希望もない」と言われたILIは、提示された情報の逆側に焦点をあてて、状況が本当は暗くない証拠を探し始めます。
こうした点から、ソシオニクスの二分法としての否定主義の特性と、悲観主義・抑うつ傾向・破滅にばかり目を向ける傾向といった特性は区別されるべきであることがわかります。
-
例:LII(否定主義)
「これはまさに私が情報を処理する方法です。論理的にあり得ないものを比較することで、論理的にあり得るものは何であるのかを考察することができます。私はいつも『そこにある』という結論に到達するために、『そこにない』ものを探しているような気がします」
否定主義が何に対しても代替案を探し回るのとは対照的に、肯定主義は時として「ひとつの道」「ひとつの方法」「ひとつの意見」に集中しすぎてそれに囚われてしまったり、代替案に目が向かないせいで、ひとつ何かに失敗すると憤慨してしまうこともあります。これは同じ肯定主義タイプの中でも、ヴォーティカル・シナジェティクス的認知タイプ(ESE, IEI, LIE, SLI)より、因果的決定論的認知タイプ(ILE, LSI, SEE, EII)により強く表れます。これは、ヴォーティカル・シナジェティクス的認知タイプには、ループバックしながら最初の間違った態度・意見を修正しようとする傾向があるためです。
◆◆◆
肯定主義/否定主義に見られるもう一つの混乱のポイントは、批判性と肯定主義/否定主義の関係です。
誤った解釈に基づいて、「肯定主義タイプは常に受容的で、何事にも批判的ではない」という描写をされることがあります。もちろん実際の肯定主義タイプの発言を調査しても、そのような傾向はみられません。
肯定主義は情報(特に自我ブロックに伝達される情報)を多かれ少なかれ批判的に扱うことができますし、実際にそうしています。ただし批判の仕方が否定主義とは異なっています。肯定主義は皮肉的な罵倒によって、特定の主張の正しさを強調し、肯定語を用いて自分の不信感を示す傾向があります(例えばソシオニクスのタイプの説明を読んで、自分には当てはまらない説明を見つけた時に、それに対して「この説明がどれだけ私に当てはまるかが、よくわかったよ!」という形で皮肉を言うような場合がそうです)。
◆◆◆
それとは対照的に、否定主義の批判は、通常、もっと直接的な否定が見られます。否定主義は、怪しいと思った情報(あるいは人)をバッサリ切り捨てます。
一般的に、肯定主義は最初は新しい情報(あるいは人)をよりオープンに受け入れますが、後になるともっと批判的に検討した後に拒否することがあります。一方、否定主義は新しい情報(あるいは人)の「参入」を許す障壁は大きいですが、一度受け入れたものを取り除くことが(肯定主義よりも)難しいです。
例
単一の発言だけに注目して肯定主義/否定主義を判別することは不可能だという点には注意してください。重要なのは、その人の語彙に占める両者の割合です。否定主義の発言には、肯定主義の発言よりも高い頻度で否定語が見られます。以下はその例です。
◆◆◆
肯定主義/否定主義の表現(肯定主義が楽観的ではなく、否定主義が悲観的ではない場合の例)
- 肯定主義「そうだ、人生はくだらないものなのだ」⇒ 肯定語が用いられていますが、メッセージの内容は悲観的(ネガティブ)です。
- 否定主義「いや、人生はくだらないものではない」⇒ 否定語が用いられていますが、メッセージの内容は楽観的(ポジティブ)です。
- 肯定主義「そうだ、人生は素晴らしい」⇒ 肯定語が用いられており、かつメッセージの内容が楽観的(ポジティブ)です。
- 否定主義「いや、人生は素晴らしいものではない」⇒ 否定語が用いられており、かつメッセージの内容が悲観的(ネガティブ)です。
◆◆◆
- LII(否定主義)「これはまさに私が情報を処理する方法です。論理的にあり得ないものを比較することで、論理的にあり得るものは何であるのかを考察することができます。私はいつも『そこにある』という結論に到達するために、『そこにない』ものを探しているような気がします」
- IEE(否定主義)「私は『彼女は良い人だ』と言う代わりに『彼女は意地悪な人ではない』と良い、『私は幸せだ』と言う代わりに『私は悲しくはない』と言いがちかもしれません。その方がよりリアルだと感じられるからです。否定主義は別にネガティブなものではありませんし、ポジティブなことを言う際はなるべくニュートラルな形で言うほうがいいと、少なくとも私は感じます」
- IEE(否定主義、Fi)「ここには嫌いな人はほとんどいないけど、あなたはそのうちの一人ではないです。OP からの質問については、私がFiの否定主義タイプだからかもしれませんが、『これ以上仲良くなりたくはない人』しか思い浮かばないです。ほんの数人だけですが」
- IEE(否定主義)「プレイしていないゲームでは勝つことはできない」
- LSE(否定主義)「悪くないんじゃない?(誉め言葉として)」
- IEE(否定主義)「私はバラクはEIIではないと思います。彼はあまり倫理的・直観的ではありません。私は自分の鏡像関係にあたる人がどのような感じなのかを実際に知っています。ミシェルはLSIだとは思いません。十分に知的実用性があるとは思えませんし、内向的だとも思えません」
- ESI(否定主義、Fi)「私は、人の態度の悪さをかなり敏感に感じ取ってしまいます。それが自分に向けられたものでもそうですし、他の人に向けられたものでもそうです。この点で間違ったことはありません。私には、人間関係が良くなるほど、悪い部分はないか見つけ出そうとする癖があります。例えば二日前、私の女友達であるAさんを、私の恋人の男友達であるBさんに紹介しました。私はその晩ずっとそのカップル(AさんとBさんカップル)を見ていましたが、BさんがAさんのことを好きなのかどうかは判別できませんでした。確かに否定的な態度は見られなかったのですが、どれくらい良好なのかも推測できませんでした」(否定主義由来の特徴:親和性を見抜くのが難しく、ポジティブの「逆側」を探すことで、関係性を評価します)
◆◆◆
- SLI(肯定主義)「Yahooコメントの知性の高さと言ったら!情報収集していてこれほど楽しい場所はないと思います」(皮肉としての発言。この発言にはYahooコメントの情報源の不十分さを示す意図がありますが、否定語を使って直接否定的な発言をするのではなく、肯定語を使って皮肉を通して自分の意図を示そうとする点に、肯定主義の表れが見られます)
- IEI(肯定主義)「Tiは難解だね~」(皮肉としての発言。上記のSLIの例と同様に、肯定語を用いた皮肉として、他の投稿者の文章の不条理さを指摘しています。この例の場合、他の投稿者の長文を一言でまとめてしまう皮肉を言っているという意味で、肯定主義だけではなくインボリューション [4] の表れも見られます)
- SLI(肯定主義)「それにしても、あなたが他人のソシオニクスの機能を貶そうとして頑張っている様子を眺めていると嬉しくなってきますね。なんと崇高な努力!なんと価値ある活動なのでしょう!」(肯定語を使って他の投稿者を批判している)
- EII(肯定主義)「言われたことのほとんどに共感してしまいます。タイプの説明のこの記述は、私に当てはまります」(実証主義タイプとして、タイプの説明文の中にある「自分に当てはまる部分」を強調し、肯定しています。 タイプの説明文に記載されていないことについて話し合うのではなく、自分のことを話します)
- EII(肯定主義)「私は、言われたことは何でも批判的に参考にし、分析しようとします。これは私にとって自然なことです。何かを手に取って詳しく調べ、磨きあげ、ほこりを取り除き、納得がいくまで取り組みます。他の人との議論を通して、わからないことが明確になります [5] 」
理論的特性
注意:多くの専門家は、情報要素のプラス/マイナスという概念を受け入れていません。
肯定主義は第1機能に「静的かつプラスの情報要素」か「動的かつマイナスの情報要素」を持っています。
否定主義は第1機能に「動的かつプラスの情報要素」か「静的かつマイナスの情報要素」を持っています。
訳注
- ^ 否定語を多用しているという意味では否定主義の特徴といえそうだが、ここでの例にあるような「回りくどい道の説明」をすると言われがちなタイプとして「IEE(Stratiyevskayaによる説明)」および「ホログラフィック・パノラマ認知」タイプがあげられることがある。
- ^ 水平思考:視点を変えながら、問題解決のためのアイデアを多角的に生み出す思考法のこと。
- ^ 否定主義かつ動的:認知スタイルだと「弁証法的アルゴリズム的認知」に分類される。SEI, EIE, ILI, LSEの4タイプがこれに該当する。
- ^ インボシューションはソシオニクスの二分法のひとつ。別名「結果」とも呼ばれる。この二分法の解説記事「プロセスと結果」の出典によると、二分法インボリューションには「突然会話を打ち切る癖があります。コミュニケーションを単に断ち切るのではなく、具体的に話を締めにかかったり、話を要約しようとします。また、いきなり話が脱線したり、急に本題に戻ったりすることもあります。」という特徴があるとされる。
- ^ 「批判的に分析しよう」「わからないことを明確にしよう」という目標に則って、ストレートに「批判的に分析し」「わからないことを探す」のは肯定主義の表われ。その逆に、典型的な否定主義は、同じ目標を持った際に「逆に肯定的な面から分析してみよう」「逆に自分がわかっている部分はどこなのか」をまず整理しようとするのではないかと思われる。
その他の二分法
こちらの記事「二分法」を参照。