グレンコのロマンス・スタイルにおいて、自我ブロックに内向的直観 Niをもつ4タイプ、EIE、IEI、LIE、ILIは犠牲者タイプと呼ばれます。EIE、IEIはベータ・クアドラ、LIE、ILIはガンマ・クアドラです。
気質、先導機能、クアドラの尊重する機能に違いがあるにもかかわらず、肉体的な魅力、欲望、恋の戯れなどの分野における犠牲者タイプの行動には、自我ブロックの非合理性の情報要素 Niと、自分の恋愛パートナーがSeスタイルの行動をとることへの期待とが表れるようです。
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典型的な特徴
- 他の人に対して、自分が本当に関心を感じているのかどうか、最初はあまり確信を持てません。
- あまり自信を持って、自分が抱く「他者への関心」を明かせないほうです。
- 相手が「自分への関心」を返してくれるかどうかに焦点を当てる傾向があります。
- 相手の関心が時間の経過とともに変わってしまうのではないか疑う傾向があります。
- 力や物理的な存在感などで畏怖の感情を人に抱かせるようなパートナーを好む傾向があります。
- 上記のようなパートナーとの相互作用におけるパワープレイの感覚を高く評価し、実際にパートナーに「服従」することなく、パートナーがわずかに優越感を持つことを許容できます。
- 上記の傾向は、時々パートナーの「粗暴さ」を期待するという形をとります。
- 「粗暴さ」を期待するという点は、犠牲者タイプの男性が誰かとパートナーと付き合う場合、「プリンセスに尽くす騎士」という形で表れます。
- 自分ではなくパートナーが関係を終わらせた場合、それを率直に認める傾向があります。
このロマンススタイルは、現在の物理的現実から離れた内なるイメージの認識に関わる情報要素であり、動的、非合理的、内向的な情報要素でもあるNiに焦点を当てることによって定義されます [1]。
犠牲者タイプは、人が誰かに魅力を感じたり、感じられたりする関係性を「時間と共に変化し続けるのが当たり前の、動的なもの」だと認識しています。
このタイプの人は、互いの魅力、特に「彼ら(犠牲者タイプ)が相手に感じた魅力」の長期的な展望や意味に焦点を当てる傾向があります。
また、彼ら(犠牲者タイプの人)が本当にパートナーへ魅力を感じているかどうか確認するための行動を、パートナーが継続的にとってくるはずだという一定の期待も抱いています [2]。
もしもパートナーがこうした継続的行動を見せない場合、犠牲者タイプは「自分と相手の関係性は変わってしまった」と思い込むことになります。
また、犠牲者タイプの人々は、彼らが頭の中に没頭して地に足がつかなくなっているのを止めさせて、もっと目の前の現実に継続的に集中するよう、自分に強制してくれるようなパートナーを求めています。
他のロマンススタイルに対する認識
以下は恋愛関係、またはその後の関係におけるパートナーに対する認識を指します。
犠牲者⇒侵略者
犠牲者タイプは、侵略者タイプのことを「ストレートに、はっきりと自分の意図や関心を伝えることができる好ましい人であり、具体的な行動とイニシアチブを取って目標達成できる人」と認識しやすいです。
犠牲者タイプにとって、侵略者タイプが性的欲望を意識的に、明確に自覚している様子は魅力的に見えます。それが犠牲者タイプの恋愛への意欲に前向きな影響を及ぼすこともあります。
犠牲者⇒犠牲者
犠牲者タイプは、他の犠牲者タイプのことを、分かりにくくて、回りくどくて、不明瞭なサインしか出さない人だとか、思わせぶりな態度を取ったり、無駄に相手を待たせて様子を伺うような、関係の進展を遅らせるゲームを好む人だと感じる傾向があります。ただし、ある段階で、相手が自分に関心を抱いているという確信を得られれば、エキサイティングなパートナーだと感じることもあります。
犠牲者タイプ同士の間で行われるアプローチは、互いに相手に対して「侵略者タイプ」のような行動を取るよう仕向けたり、そうなることをじっと待っているような関係だと言えます。
犠牲者⇒保護者
犠牲者タイプは、保護者タイプのことを、安心できて、サポートをしてくれる、安定感のある人だと感じる一方で、単調で少しつまらない存在だとも感じます。
保護者タイプから、犠牲者タイプのニーズや発言に過度に注意を払われると、犠牲者タイプは戸惑ったり、イライラしてしまいがちです。
保護者タイプが、犠牲者タイプを生活の様々なトラブルから守り支えようとする様子を見て、犠牲者タイプは最初こそそれを高く評価しますが、最終的には押しつけがましいとか、そんなことしなくていいと感じるようになりやすいです。
犠牲者⇒子供
犠牲者タイプは、子供タイプのことを、知的な意味で興味深く、新鮮で魅力的な存在だと感じますが、最終的には、現実的なことをそっちのけにして、知的な冒険やおしゃべりに夢中になりすぎていると感じることが多いです。
日常生活では、子供タイプはあまりにも要求が多くて、気まぐれで、犠牲者タイプが疲れ果ててしまうほどのたくさんの世話を求める人だと感じるかもしれません。
犠牲者タイプの女性は、子供タイプの男性のことを「サポートしたり、具体的なイニシアチブをとったりできない人」だと感じやすく、少しイライラしてしまうことがあります。
グレンコによる説明
(グレンコ著、Life Scenariosより)
犠牲者タイプの男性
主導権を握って積極的に指揮を執りたがるような女性を理想とします。犠牲者タイプの男性は、相手の好みに自分を適応させ、相手の意志の強さを尊重します。
時々、自分の従順さや依存的な部分を強調することもあります。その強調は、時に制御できないほど激しくなることもあります。
女性との関係において、彼は無意識のうちに命令されること、束縛されること、罵倒されることを願っています。こうした反応を相手が見せてくれない場合、無意識的にその反応を引き出そうとすることもあります。
犠牲者タイプの女性
この女性が理想とする男性像は、アクション映画の主役になりそうな、肉体的強靭さを誇る男性です。このタイプの女性は、男性の力を自分自身で体感し、彼の圧力への抵抗を楽しみ、自分が「犠牲者」であることを味わいたいという欲求を持っています。恋の駆け引きでは、相手の情熱を掻き立てるような、様々な対立や対決を好みます。全員がこうした自分の傾向を意識的に認識しているわけではありませんが、生来マゾヒスティックな特性を持っていることはよくあります。
犠牲者タイプの女性は、自分の弱さ、脆さ、無秩序さを巧みに利用して、侵略者タイプの男性に、断固とした即座の行動を取らせようとします。恋の遊びにおいて、彼女が最も価値を感じるのは、男性の力強い抱擁と、男性らしい体力を感じることであり、それに従うという形で彼の意志への従順さを表現します。
犠牲者タイプの女性から見て、保護者タイプの男性は確かに心地よくはありますが、あまりにも地味すぎる人です。そして子供タイプの男性には、内心、十分な強さや果敢さに欠けている人だと思っています。
また自分と同じ犠牲者タイプの男性相手の場合、複雑で、非言語的な駆け引きの多い関係になりがちです。どちらのほうがより犠牲者的な態度を取れるかを競い合うようになり、犠牲者としての自分への特別な見返りを求めようとします。多くの場合、こうしたゲームは文字通り両者を疲弊させ、消耗させてしまいます。
補足
現段階で、この精神分析的グループは、詳細には追求されていないため、いくつかの微妙な違いが見落とされている可能性があります。特に犠牲者タイプの中で見落とされがちなのは「悲劇的な犠牲者」(IEI、EIE)と「喜劇的な犠牲者」(ILI、LIE)に分類できるという点です。