クアドラ・コンプレックスに対する防衛策としての「嘘」
幻想や希望、自己欺瞞。自らの輝かしい生き方を守るために用いられるこれらの嘘は、デルタ・クアドラ(特にデルタ直観型)によく見られる現象です。
「薔薇色の光の中で生きる」ことを彼らは望んでいますが、クアドラ・コンプレックスはそこから生まれる影のようなものです。うんざりするような日常世界の現実に対する幻滅、居心地のいい理想郷から過酷な現実へと引き戻される恐怖、こういった脅威から自分を守るために、彼らは嘘を利用します。
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灰色の日常生活も、印象深い空想の出来事と好ましい物事で装飾し、「自分の正しさ」という個人的確信を加えて、「私のすべての行動は善意からのものだ」とするだけで、明るい輝きと希望に満ちた世界に変わります。現実世界と空想世界の境界はぼやけ、空想の果実は芸術的創造の果実となります。何も悪いところのない世界です。
経験不足や単純さゆえに現実と虚構を区別できない人間は、自分や他人が作り出した欺瞞の犠牲者になるものですが、少なくとも明るい輝きに満ちた世界の創造者である彼らだけは、「自分が間違っている」とは考えたりしません。
彼らの仕事は、現実の境界を押し広げて、別のものに書き換えることです。自分が成功するために事実を歪曲したり、今後の見通しを実際よりも暗く見せたり明るく見せることは、決して「間違ったこと」ではありません(少なくとも彼らはそう考えます)。
彼らは嘘も方便だと考えます。より新しく、より有望な人間関係を築くにあたって、嘘は便利な道具であり、心理的な操作のための常套手段でもあります。彼らの個人的で野心的な計画と目標を達成するために必要となる多くのチャンスは、この新しい「空想上の」現実の中で広がっていきます。
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下記は一例です。
ある若い女性看護師(IEE、デルタ・クアドラ)が、ある男性(SLE、ベータ・クアドラ)と離婚しました。このSLEは素朴で優しく、悪い習慣もありませんでしたが、これといって高い志や目標も持たない「つまらない普通の男」だったからです。彼は自分の家族を養うために、大学での勉強を諦めてパッとしない会社に就職してしまったほど「つまらない男」でした。
とにかく彼女はこういった理由から、彼を家から追い出し、子供の親権を奪い、人生と記憶の中から抹消しました。ちなみにこの子供は再婚相手である別の男性(LSI、ベータ・クアドラ)の養子になりました。
再婚相手であるLSIは名家の出の人でしたが、(彼にとっては幸いなことに)二度目の結婚生活もまた短命のうちに終わりました。
この一連の出来事の結果として、この子供(IEI、ベータ・クアドラ)は、自分の父親に関する確かな情報を得ることができず、自分の家系図もよくわからないという状況に陥ってしまいます。
そんな彼(子供)をなだめるためにIEEがしたことは、伝説のでっち上げです。
「あなたのお父さんは試験飛行中に亡くなった」
それを聞いた子供は、英雄的な自分の父親の跡を継ぐことを決意したほどです(もっとも親戚の必死の説得によって、飛行学校に入学することはありませんでした)。
それでも彼は高等軍事技術学校に入学し、優秀な成績で卒業し、輝かしい軍歴を重ねるという人生を歩むことになります。その後、家庭を持ち、子宝にも恵まれました。
そして彼が中佐に昇進した時のことです。遠い親戚の一人が、彼の父親に関する秘密を暴露してしまったのです。
「君のお父さんは健在で、この町のすぐ近くに住んでいて、靴の修理屋をしているんだよ」
これを聞いて彼は唖然としました。
結局、彼は自分の母親の行為を、決して許すことはできませんでした。