デルタ・クアドラが恐れること
ストレス、フラストレーション、恨み、失望。
こういったものをデルタ・クアドラは恐れています。彼らは社会にネガティブな何かが蔓延することを恐れています。
彼らは黙示録じみた現象を、「世界の終わり」を恐れています。
人の持つ欠点が優勢になり、美徳を押しつぶしてしまうことを、過ちが増殖し、成果を棄損してしまうことを、酷寒の闇があたたかな光を遮り、社会の発展のプロセスが停滞してしまうことを、明るい未来が失われてしまうことを恐れています。
ある意味で、デルタ・クアドラの社会は、全てのクアドラのコンプレックスを解消した後の人類の未来として想像することができます。それは、アルファ、ベータ、ガンマ、そしてデルタという全てのクアドラにそれぞれ特徴的な形で現れる、他者の成功への妬みや、成功したライバルに恥をかかせ、破壊し、けり落としたいという欲求を解消した世界です。
- 他人の自由な発言を封じる。
- 妬ましい上司や同僚をトラブルに巻き込み、ダメージを与える。
- 妬ましい他人の個人的、創造的、職業的な成功を妨害するために、わざと仲間になろうとしたり、共同執筆者にするよう持ちかける(そして仲間としての立場から妨害する)。
- ライバルの創造的活動を妨害するために、ライバルが今まさに大空へ飛び立とうとしている瞬間を狙って、ライバルの成果を批判し、地面にたたき落とす。
◆◆◆
ここで読者は「自分の中のクアドラ・コンプレックスを根絶し、クアドラの支配的な側面が生み出す利益だけを残すことは可能なのだろうか」という疑問を抱くかもしれません。
これは結論から言うと可能です。
精力的に創造的な活動を行い、実績を積み重ねるにつれて、(ただの空想ではなく)崇高な真のプライドが構築されます。そして、人が努力を欠かすことなく潜在能力を開拓している限り、このプライドは十分に高いレベルで維持され続けます。
高度でプロフェッショナルなレベルで自己実現を果たしている場合、人はひとまずクアドラ・コンプレックスから解放されるのです。
クアドラ・コンプレックスは、自分の成功(あるいは野心)を抑圧するような他者と関わる場合を除けば、そこまで深刻になるものではありません。しかし、自分と他人を比較する時にはすぐに問題化します。
「私にはコンプレックスなどありません」と口で言うのはもちろん簡単なことです。そして、それよりさらに簡単なことは、「私は人を妬んだりしません」と宣言し、他の人たちにもそれを求めることです。つまり「人に嫉妬しない人の社会」を作り、「自分がいち早く、その明るい未来に至る」ことです。
しかし、これは絵空事のような解決策でしかありません。
これは結局のところ、デルタ・クアドラ・コンプレックスを刺激されたデルタ・クアドラが見せる反応、すなわち「自分が秘めている創造的な可能性を実現できないかもしれない」という恐れに対する心理的な防衛反応と同じようなものでしかありません。
「私が星を掴み取ろうとしないのは、私は星なんて要らないからです。もっと別の何かであれば、たぶん掴み取っています」
これはただの自己欺瞞であり、自分の中にある創造性への渇望に対する裏切りでしかありません。
「あのブドウは酸っぱいから要らない」と言うキツネと同じです。
モデルのあらゆる情報的側面で、比較と関わりがある限り [1] 、新しい成功と、新しいマイルストーンに向かう競争と進歩があります(これは特に関係性の論理の側面 [2] で頻発します)。
成功の裏側には失敗もあります。その失敗のまわりには、成功者への羨望と妬みのコンプレックスも形成されることでしょう。
クアドラ・コンプレックスは、そのクアドラが支配的な社会で生き残り、自己実現を果たすための武器にもなるため、人の役に立つことさえあります。
今日、手足を縛られている人が、明日にはロープどころか鎖を引き裂く力を獲得するかもしれません [3]。
優位性を見失い、劣勢に立たされる者がいなければ、優位性を見つけ出して、優位に立つ者もまた存在しません。
コンプレックスがなければ恩恵もありません。影のないところに光はないのです。
訳注
- ^ モデルAの第1機能~第8機能のすべての側面で、人が物事が関わり合い、情報代謝を行う限り、という意味。
- ^ 関係性の論理(Ti)という情報要素の定義を、オーシュラ(ソシオニクスを作り出したソシオニクスの作者)は「オブジェクト間の客体的な関係性(重量、サイズ、価値など、つまり測定可能なあらゆるパラメータ)に関する情報」としている。関連記事「ソシオニクスの機能の説明(by A. Augusta)」
- ^ ガンマ・クアドラ・コンプレックスは、別名「縛られた手」コンプレックスといわれる。この出典の作者であるStratiyevskayaはガンマクアドラのESIなので、ガンマ視点の表現がたびたび入る。
Stratiyevskayaについて:https://wikisocion.github.io/content/vera.html