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ソシオニクス 機能の符号とタイピング時の注意点

2023年7月11日火曜日

ソシオニクス タイピング指標

Signs-of-Functions-socionics

はじめに

キーワード:精神の情報代謝モデル(TIMモデル)、機能、機能の符号、機能の符号の概念、情報フローの側面

要約:本稿では、機能の符号に関する問題の歴史と理論的背景、その表れ方の特徴の説明をします。また、実際にソシオニクスのタイプ判定の際に観察された機能の符号の表れ方を考察します。タイピングに符号を導入するにあたって役立つ、実践的なアドバイスを紹介します。

機能の符号は、ソシオニクスの情報代謝タイプモデルの重要な要素です。当初、機能の符号というものは、異なる情報代謝タイプの人々の機能の観察を、理論的なモデルと一致させるために導入された概念でした [参考文献1]。例えるなら、機能はある種の仮想的なプロセッサーであり、機能の符号はこれらのプロセッサーのOSに相当するものです。OSにも例えられる機能の符号は、特定の情報アスペクト [1]に関する情報を処理するワーキングプログラムを提供する役割を担っていると言えます [2]。重要なことは、情報フローの構成要素としての情報アスペクトそれ自体は、後述するような意味での符号を持たないという点です [参考文献4]。

機能の符号が実際にはどのようなものであるのかを明確にするのは困難なことです。これは、タイプ間ので非対称性リング(4, Sec.8.3参照) [3]の相互作用と符号が結びついているためです [4]。現時点(2007年)で、符号の明確な理論的根拠は存在しません。それにもかかわらず、機能の符号の概念自体は定着しています。なぜ定着したのかというと、符号の導入には「他の方法では説明しきれないような情報処理の現象を、説明できるようになる」という実益があるからです。

しかし、全てのソシオニクスの学派が同じ定義で機能の符号を理解し、同じ基準でこれを適用しているわけではありません。学派によって符号の解釈が異なっているため、特定の学派の理解に縛られずにこのテーマに取り組むのは非常に難しいことです。

本稿の目的のひとつは、システムソシオニクス学派(通称SSS、サイト:socionicasys.org [5])における理解にそって、タイピングの実践の場で観察された機能の符号の表れ方をレビューすることです。V. D. Ermakが開発した方法を用いてシステムソシオニクス学派のタイピストたちが実際にタイピングを行った際の様子を通して、レビューを進めます。V. V. Gulenkoによって提案され [参考文献1] 、V. D. Ermakによってさらに明確化させられた機能の符号によって与えられた特性 [参考文献4] に基づいて情報代謝タイプの評価を行います。本稿のもうひとつの目的は、実践の場で得られた結果を、様々な符号の概念の解釈と比較することです。本稿は、実際のタイピングから得られた数々の事例を用いて機能の符号を識別する方法や、専門家であっても判定が割れるような事例に遭遇した際に注意すべき事柄についても取り上げます。こうした情報の数々は、実際のタイピングの現場で有益なものになることでしょう。


問題の背景と理論的背景

機能の符号という概念は、1989年、キーウのソシオニストであるV.V.Gulenkoによって提唱されました[参考文献1]。V.V.Gulenkoの解釈では、符号は社会的進歩リングの情報フローの向きによって定義されます。V.V.Gulenkoは次のように説明しています。「社会的進歩リングが左リングである全てのタイプ(否定主義・インボリューション・非連続的)の主導機能はマイナス(-)の符号を持ち、右リングである全てのタイプ(肯定主義・エボリューション・連続的)はプラス(+)の符号を持っていると考えることは、理にかなっています」 [参考文献1] 左リングとなるタイプはESE、LII、SLE、IEI、LIE、ESI、EEI、SLI(二分法「結果・左」タイプ)、右リングとなるタイプはILE、SEI、EIE、LSI、SEE、ILI、LSE、EII(二分法「プロセス・右」タイプ)です。

機能の符号の意味、言い換えれば機能の符号によって生じる特性を、V.V.Gulenkoは次のように定義づけています。「機能の符号には次のような特性があることが分かりました。まず第一に、符号は「機能の品質(quality)」を表します。「+」は品質の肯定的な評価、「−」は否定的な評価を表します。第二に、「機能の規模(scale)」を表します。「+」は詳細的、具体的であり、「−」は概略的、全体的、グローバル的な計画、検討を意味します。第三に、「機能の効果の距離(distance)」を表します。「+」は基準点から近い距離で機能が表れることを意味し、「−」はその逆に遠い距離で表れることを意味します。第四に、「機能の方向(orientation)」を表します。「+」は追加、受け入れ、自分自身に向かう動きを意味し、「−」は分離、リターン、自分自身から遠ざかる動きを意味します」 ここでV.V.Gulenkoが使用した「側面」という用語は、「機能の特性の文脈的要素」という意味合いを含んでいます。

V.V.Gulenkoは、下記のように説明しています。

私たちの見解では、ソシオニクスの符号は次のような意味内容を持っています:

+ Fe - ポジティブな感情、喜び、陽気さ、感情的な高揚、興奮、笑顔、笑い、熱意、楽観性、良い気分、幸せな経験;

− Fe - ネガティブな感情、悲嘆、悲しみ、感情的な後退、うつ状態、泣くこと、涙、不満、悲観性、不快な気分、不幸な経験;

+ Fi - 良好な関係、愛、友情、愛情、魅力、人間関係の温かさ、社交性、心理的な親密さ、善意、思いやり;

− Fi - 険悪な関係、憎しみ、敵意、嫌悪感、反感、関係性に対する無関心さ、疎外感、非社交性、疎遠さ、邪悪さ、無慈悲さ;

+ Te - 有用性、利益、経済性、技術、事実、獲得、備蓄、購入、貯蓄、整理すること、実用性;

− Te - 無用さ、不採算、無駄、活用、劣化、消耗、コスト、経費、リスクを冒すこと、実験、販売、取引、混沌とした中での行動、創意工夫;

+ Ti - 具体性、項目化、詳細な調査、徹底性、正確性、厳密性、階層構造における位置、規則、指示、最良の選択肢の選択、機能の精密さ、組織の論理、指標、報告;

− Ti - 抽象性、一般性、普遍性、システム、分類、分類法、類型論、一般的な規則性、客観性、真実、公正性、包括的なレビュー、分析、解剖、科学の論理、基準;

+ Ne - 展望、機会、ポジティブな可能性、中心的な意味、本質、原則、新しいアイデア、進展する仮説、理論、洞察、興味、独創性、物珍しさ、空想的、希望に満ちた状態;

− Ne - 絶望、代替案、ネガティブな可能性、無意味さ、不条理さ、パラドックス、忘れられたもの、古いもの、洞察、凡庸さ、平凡さ、普通さ、抑圧された可能性、現実、不信感、センセーション;

+ Ni - 未来、時間の経過による状況の変化、予測、予感、緩やかな発展、進化、ゆるやかな上昇、変化のダイナミクス、時間の流れ、創造力、調和のとれた描写、微小で段階的な変化、収束、融合;

− Ni - 過去、間違いの原因、危険の回避、不安、憂慮すべき予感、警告、危機の到来、革命、時間の飛躍、トラブルを回避する力、急激な変化、ちぐはぐな描写、決定的な行動の瞬間、発散、逸脱;

+ Se - 権力を手放さないこと、反抗、防御、援護、対抗、反撃、堅固さ、自分の利益を守ること、下から上への強い意志の圧力、力、意志、所有;

− Se - 権力を掌握すること、征服、攻撃、イニシアチブ、忍耐、決意、要求、上から下への意志の強い圧力、他人を犠牲にして自分の利益を追求すること、打倒、割り当て、弱さ、受動性;

+ Si - 心地よい感覚、快適さ、便利さ、調和、美しさ、魅力、余暇、健康、リラクゼーション、幸福、喜び、楽しみ、感性;

− Si - 不快な刺激、不快感、不便さ、不調和、醜さ、魅力のなさ、仕事、疲労、ストレス、病気、苦しみ、痛み[参考文献1];

機能の符号によって与えられるとされる特性の意味内容は上記のとおりであるとするV.V.Gulenkoの解釈には同意できません。ESE(第1機能が−Fe)の人が、常に「ネガティブな感情、悲しみ、感情的後退、涙、不満、悲観性、不幸な経験…」という状態にあるわけではありません。当たり前ですが、ESEもポジティブな気分や幸福感を感じます。またLIE(第1機能が−Te)の人の描く展望が「無用さ、不採算、活用、消耗、コスト、リスクを冒すこと…」だけに支配されるわけでもありません。観察力のある専門家であれば誰でも、このような記述が間違いであることを、実戦的な経験から知っていることでしょう。タイピングの実際の結果を分析すると、機能の符号によって生じる特性というものは、これほど単純なものではないことがわかります。

当初V.V.Gulenkoは第1機能(主導機能)の符号のみを表記していましたが、それ以外の機能の符号がどのように割り当てられるのかには言及していませんでした。その後、第1機能から交互にプラスとマイナスが切り替わること、同じE/I指向の機能同士で、プラスとマイナスはすべて一致すると提言しました。

A.V.Bukalovは、V.V.Gulenkoが学会で発表した上記の内容のうち、メンタルリング側のスーパーブロック [6]のプラス、マイナスの割り当てには同意しましたが、バイタルリング側 [7]の機能の符号は、メンタルリング側の対応機能の符号とは反対を割り当てて、双対タイプの機能の符号と一致させるべきだというコメントをしています。A.V.Bukalovはこの概念について、それ以上の説明はしませんでした。

その後、V.V.Gulenkoはレーニン特性の「肯定主義/否定主義」と「静的/動的」に由来する新しい符号システムを導入し、次のような説明を行いました。

プラス(+)の符号は、通常、持続性や静止性の特性と関連付けられます。マイナス(−)の符号は、一時性、可動性の特性に関連付けられます。物理学に例えるのならば [8]、プラスに帯電した原子核の周りを、マイナスに帯電した電子が運動しているようなものだと言えます。静的特性がプラス、動的特性がマイナスです。本稿(Structural and functional model – Kiev, 1997 / / "Socionics, mentology and psychology of personality" 1998, № 4)では、どのソシオタイプかに関わらず、モデルAの上部のリングを静的、下部のリングを動的として考えています。つまり安定化のリング(上部のリング)はプラスの電荷をもち、発展のリング(下部のリング)はマイナスの電荷をもっているというわけです。安定化のリングは機能的であり、発展のリングは逆機能的(逆機能:既存のシステムに障害と解体をもたらす機能)だと考えることができます。

「肯定主義/否定主義」という特性に関して、V.V.Gulenkoは「…肯定主義タイプのコミュニケーション機能は、プラス符号で表すのが最も適切であり、否定主義タイプの機能はマイナス符号で表すのが最も適切だと言えます。機能の符号は、モデルAの上下のリングに同様に適用されます[参考文献2]」と書いています。

V.V.Gulenkoは、符号の意味に対する立場も変更しています。V.V.Gulenkoに師事していたV.Ledinは、次のように書いています。

符号の解釈の最初のバージョンで、V.V.Gulenkoは、距離、品質、規模、方向という4種類の特性を提案しました。これらの特性は、出版当時においては左(結果・インボリューション)/右(プロセス・エボリューション)の中核だったからです。しかしレーニン特性のさらなる研究が進んだ結果、「左/右」の特性と関係があるのは、距離と規模(本質的に同じもの)だけであり、品質と方向は「肯定主義/否定主義」の特性と関係することが分かりました。V.V.Gulenkoの学派とは別に、E.Filatovaもまた実戦的経験に基づいてGulenkoと同じ結論に達していることは注目に値します [参考文献3](E.S.Filatova "Reconsidering "the signs of Socionics functions" V.Gulenko", SMiPL number 3, 1998 [参考文献6] 参照)

V.D.Ermakは、V.V.Gulenkoが提唱した符号理論[参考文献1]を補完し、タイプの機能に「能力領域(自信のある理解と方向付け)」と「無力領域(自信のない理解と方向付け)」という概念を導入しました [参考文献4]。V.D.Ermakによれば、能力領域は「ゼロ以上」のプラスの領域であり、対する無力領域はマイナスの領域です(Fig.1 参照)。

図:機能の符号:能力領域と無力領域

Fig.1 符号によって決定される「品質」特性 - 機能の「能力領域(自信のある理解と方向付け)」と「無力領域(自信のない理解と方向付け)」(出典:V.D.Ermakの著書である[参考文献4]より)

符号によって付与される機能の特性について、V. D. Ermakは次のように説明しています(V. V. Gulenkoによる定義の明確化)[参考文献44]。

品質:
+:「ポジティブ」、ポジティブな領域における有能さと、ネガティブな領域における無能さ
−:「ネガティブ」からの離脱、ネガティブな性質をポジティブな性質に置き換えること、ポジティブな領域とネガティブな領域の両方で能力を発揮する

規模:
+:局所性、"クローズアップ"、特異性、機能の「サークル」内での詳細性;
−:グローバル性、「全体的な計画」、機能の普遍性;

方向:
+:機能の責任範囲内への集中(「自分のサークル」の保護に関心を持つ);
−:機能の責任範囲を超えて影響を及ぼすこと(他の「局所性」に「圧力」をかけることに注力すること);

距離:
+:心理的距離が「近い」;
−:心理的距離が「遠い」;

V.D.Ermakによる「能力領域」という概念の導入において、プラスやマイナスという符号は、二分法や極性を示しているのではなく、「マーカー(標識)」であることを明確に示している点には注意が必要です。符号は分類的な属性ではなく、機能の属性(情報処理を特徴づける本質的で固有の特性)です。符号の構造は、二分法的な概念とは違って非対称なものです。つまり「マイナス符号をもつ機能は、ポジティブな領域に向けられることはない」と結論づけるべきではありません [9]この間違いは、初めて符号の理論に触れた人がよく犯すものです

プラス符号を持つ機能は、プラス(ポジティブ)領域への方向性(指向性)を持ち、マイナス(ネガティブ)領域には方向性(指向性)を持ちません。一方、マイナス符号を持つ機能は、マイナス(ネガティブ)領域とプラス(ポジティブ)領域の両方への方向性(指向性)を持ちます。

また、符号は機能の属性であって、情報フローの側面の属性ではないこと点には注意が必要です:「情報フローの側面には符号がありません [参考文献4]」


実践

Gulenko-Ermakの理論的概念に基づき、様々な機能における符号の表れ方を実践的に観察することで、符号の特性をさらに明確にできます。School of System Socionics(SSS)では、タイピング分析プロセスの結果を記録することで、機能の符号に関する研究を行っております。SSSでタイピングされた人々のタイプは、タイプモデルとの相関だけではなく、タイピング後の観察によっても確認済みです。モデルAの機能の符号に関する研究の実践的な結果について考察してみましょう。


「品質」特性

「品質」特性は、プラス(+)符号を持つ機能に関連付けられる場合、「ポジティブ」として説明されます。つまり、ポジティブ側の領域が能力領域、ネガティブ側の領域では無力領域という形で表れます。マイナス(−)符号を持つ機能に関連付けられる場合、「ネガティブ」からの離脱、ネガティブな性質をポジティブな性質に置き換えという形で表現されます。マイナス符号の機能は、ポジティブな領域とネガティブな領域の両方で能力を発揮します

「品質」特性は、次の要素を持つ機能で、明確に観察できます:Fi、Fe、Ti、Te、Ni、Ne、Si、Se


プラス符号の機能

「ネガティブ」からの離脱と表現されるマイナス符号の「品質」の特性について、さらなる説明が必要でしょう。観察によると、この「ネガティブからの離脱」という特徴を持つのはマイナス符号の機能に限られるというわけではなく、プラス符号の機能でも確認されています。しかしながら「離脱」の理由がプラス機能とマイナス機能では異なっていることも明らかになっています。プラスの機能はネガティブの領域では無力であるため、「ネガティブの領域には絶対に陥りたくない」という理由から離脱が生じます。この時の離脱は逃避・逃走に似ています。プラスの機能はネガティブな領域にいると方向性を見失ってしまい、どう反応していいか分からなくなってしまい、適切な反応ができなくなることがあります。

プラス符号を持つ機能は、ネガティブな領域での能力が低いため、「品質」の特性に関する「ネガティブさ」を避けます。

可能な限り速やかに、あらゆる手段を駆使して『ネガティブな領域』から逃れたいという欲求が生じることになります。この自然な欲求は、まるで「私は何も目にしていないし、何も聞こえていない」というような形で表現されるかもしれません。


ネガティブな領域におけるプラス機能の無力性の例:

+Si : EII [10]

Q「センスが悪いとはどのようなものを意味しますか?例をあげて説明してみてください」
A「私にはできません。私はだれに対しても『センスが悪い』なんて言うことはできません」

+Se : EII
Q「誰かがあなたにネガティブな態度(否定的な態度)を取りました。あなたはどのように反応しますか?あなたは自分のネガティブな態度を簡単に他者に見せたり、示したりすることができますか?もしそうなら、どのように表現しますか?誰かに対して長期間、否定的な感情を抱き続けることはできますか?もしも自分が軽んじられた場合、相手を許しますか?」
A「あからさまにネガティブな態度を取られたことは、今までに一度だけあります。私はその人に友好的に接しようとしましたが、様々なニュアンスのコミュニケーションを通して、その人は私に対する反感を示しました。最終的にはその人と付き合うのをやめたのですが、それでもその人のことを『嫌いだ』と感じたわけではありません。私側からネガティブな態度を見せることは非常に少ないです。そうすると自分の気分が悪くなってしまうからです。仮にネガティブな対応をするとしても、同時に『調和を維持したい』という気持ちを感じてしまいます。不思議に聞こえるかもしれないのですが、私にとってはそうなのです。仮に侮辱されても、私は許してしまうでしょう。質問に答えようとして、『自分が侮辱されたり、軽んじられたりした経験』を思い出そうとしましたが、それ自体がそもそも出来ませんでした。これは多分、仮にそういう経験があったとしても、私の中ではすでに『許してしまった』出来事なんだろうと思います」

+Fe : EIE
「人が泣いているのを見た場合、かなりプライベートな場面を目撃してしまった気分になります。公共の場で誰かが泣いていても、それに気付かないふりをします。後からその人自身が泣いたことを後悔するかもしれませんし、私がそこでわざわざ何かを心配してみせる必要性も感じもしないからです。泣きたかったら別に泣いてもいいと思います。私にはどうせ関係のないことです。それとは別に、ヒステリックな人が、自分に注目を集めるための手段として涙を使っている場面に遭遇すると、非常に腹が立ちますね。一般的にいえば、私は『涙を流す女性は美しくない』と感じます。特に泣き虫な年配の女性が大泣きしている様子といったら。まるでアルコール中毒のようにしか見えませんね」

+Fe : EIE
Q「不適切な感情表現の例をいくつか挙げてください」
A「私は乱暴な感情表現が好きではありません。ネガティブな感情でもそうですが、ポジティブな感情でもそうです。あとは、様々なヒステリックな感情も嫌いです。不適切な表現…うーん。例えば、泣きながら何かを嘆くようなことがあったとして、それがとっくに過ぎ去ってしまった後になっても、まだそれを思い出して泣いているような場合ですかね。論理的に考えて、とっくに解決済みのことなんだから、感情の嵐も静まっていて然るべきだと思ってしまうんですよね」

+Ne : IEI
「私はむしろ人の良い面だけを見ていたいと思っています。確かに人のネガティブな面を目にすることはありますが、それが自分に向けられることはないだろうとも思いますし、自分に向けられる可能性があることを理解したくもありません。人に良くしてあげれば、きっと人はそれに応えてくれると信じています。仮にそうではない人がいたとして、それも特に驚くようなことではありません。そうなったとして、起こることは単に私の理想が崩れる程度のことです。そうなったとしても、私の『騙されやすさ』は特に変わりはしないでしょう。今までと同じように、私は良い面だけを見たいと思いますし、実際そうし続けるだけです

+Te : LSE
「ただ『作業する』だけではダメなのです。私の手元には、すべての設計書と図面が集まるため、自分の直接の作業とは関係のないミスを目にすることもあります。こういう時、人によってはミスに気付いても『自分には関係ない』と知らん顔してしまうかもしれません。しかし、私にはそれはできません。こういう時、私は設計書と図面を送り返して、間違いを指摘します。ミスを放っておくという行為は、『不良品を作る』ことと同じだと私は感じるからです。正直なところ、私がそうやって指摘すべきことなのかどうか、わからなくなることもあります。でも、私にはどうしても『粗悪な仕事』はできません。これは良心の問題なのです。不適切な何かを目撃したにも関わらず、スルーするなんて私の良心が許さないのです」

+Ni : LIE
Q「『何かが起こったとして、それは結局は良い方向に向かうことになる』と考えているのはなぜですか?」
A「何かが起こるということ自体が、関心を生み出すきっかけになります。最初に何かが起こります。どのように、なぜ、なんのために???そして、それから初めて、すべてが必然的であり、他のようになることはなかったことが分かります。だから結局、今現在も、これからも、すべてはより良い方向に進んでいくことになるのです」

Q「具体的な例をあげて説明してみてください」
A「アメリカでは昔、大恐慌が起こりました。そしてその後、銀行や金融システムの規制のために、いくつかの法律が制定されました。確かに大恐慌という混乱の時代に、家を失う人々も数多くいたことでしょう。しかし、あの時あのような大恐慌が起こったおかげで、現代では同じことは起こりません。過去の大恐慌では、債権者が大きな物的損失の可能性を恐れて、債務者側の都合などお構いなしに一方的に融資を打ち切ってしまうという暴挙が平然と行われていたそうですよ。これは過去と現在の話ですが、現在と未来の話でも同じです。今この時代の苦しみは、物事をより良いものへと変えるきっかけでもあるのです。だからこそ、私はこれから何が起こったとしても、結局は良い方向に向かうことになると考えています」


マイナス符号の機能

マイナス(−)の機能は、ネガティブな領域で適切に機能し、ネガティブさへの方向性を持つことができますが、人間にとって「ネガティブな領域に留まること」自体は満足できる状態ではないため、「ネガティブな領域」に留まり続けるのは好まない可能性もあります。プラス(+)機能の場合、「ネガティブな領域」から離れることは「逃避・離脱」という意味合いがありましたが、マイナス(−)機能の場合は「選択」を意味します

この「ネガティブさから遠ざかる」現象は、機能の符号の4種の特性の中でも、「規模」特性では観察されません。「方向」特性および「距離」特性でも、そこまで顕著には表れません。「規模」特性において、マイナス符号は範囲の広さ(全体性・グローバル性)として表れます。「規模」特性においてプラス方向へ向かうということは、言い換えると「より具体化すること」を意味しますが、マイナス符号を持つ機能は、具体化を好みません。「方向」特性と「距離」特性から見た場合のマイナス機能は、いくつかの制限(規則や習慣など)に直面した際に、外部に影響を与えずに、「ポジティブな領域」に近い距離に留まり続けるという形で表現されることがあります。このような場合の符号の表れ方は、タイプの典型的な特徴というよりは、むしろそうした典型的な特徴通りではない「歪み」として評価されます。例えばSLEが自分の支配領域を拡大しようとしない場合であったり、SEEが人脈拡大しようとしない場合・自分の利益のために人脈を活用しようとしないというような場合などがこれに該当します。

「品質」特性の場合、「マイナス」が制限される形で表れます。この制限は、社会の一般的評価を受けて生じていると考えられます。不道徳さ、無礼さ、不快さ、汚れ、不潔さ、愚かさ、攻撃性、怒り、怠惰さ、短絡的な思考などといった、社会で一般的にネガティブなものだと評価されることの多い特定の現象が、ここでは制限の対象になります。たとえ多次元性の機能であっても、人はわざわざこのような「ネガティブさ」の中で生きたいとは思わないでしょう。そして、もしも「ネガティブな状態に留まり続けるか」「そこから離れるか」を自由に選択できる場合、ほとんどの人はそこから離れるという選択肢を選ぶはずです。SLI(−Si)は不快感から離れ、SEE(−Fi)は無礼さから離れ、LIE(−Te)は怠惰さから離れ、LII(-Ti)は非論理性から離れるなどといった具合にです。彼らはこのような「ネガティブな状態」に存在することはできますし、さらに言えば、しようとさえ思えば彼ら自身がそうした表現をして見せることもできます。しかしその代わりに、「規模」「方向」「距離」特性という意味での「ネガティブさ」は維持しつつ、「品質」特性という意味では「ネガティブな状態」から離れることを選んで、「ポジティブな状態」に移動することもできます。


タイピングを行う際の重要な注意点:

上記を踏まえ、タイピングの際には、「ネガティブ」からの離脱の原因を明確にするとともに、一つの特性だけ(例えば「品質」特性だけ)に着目するのでなく、他の特性も意識しながら符号を判別するよう心掛けてください。この検証は、Tiだけ、Seだけといったひとつひとつの情報アスペクトだけではなく、I/Eが同じである全ての情報アスペクトについて行うことができます [11]


ネガティブな領域におけるマイナス機能の能力性の例:

−Fi, メンタル, Neでの不確実性がある状況 : ESI
「私は特に目的があってそうしているわけではありませんが、基本的には人との対立を避けています。しかし時には物事を変えたり、楽しむために人と衝突することもあります。でもこれは、その対立が深刻な問題を引き起こしたり、人を深く傷つけたりしない場合に限られます。

 私は『利益に繋がるわけでもないことで、人と言い争いをすべきではない』という思想を持っているわけではありません。むしろ『言い争わなくても済むようなことで、なんでいちいち言い争いをしなければならないのか』と思ってしまいます。昨日、私はあまり私に友好的ではない5人の人間と話をしました。彼らとのコミュニケーションは私には何の得にもなりませんし、もしも彼らに私の不快感をストレートに見せてしまったとしても、私にとって何か不都合なことが起こるわけではありません。それでも相手は『あなたと友達になりたい』と言っているのだから、そうしたいならそうすればいいと思いました。だから私はできるだけ友好的な態度で彼らと接しました。ちなみに私の誰かに対する本当の気持ちは、『ボーナス』という形で表れます。つまり、その人のために他の誰にもしていない特別なことをするのです。私のこの一面をよく知らない人々は、おそらく私を『誰に対してもフレンドリーでポジティブに接する人』と思うでしょう。

 私は、自分が受けた悪事や侮辱をいつまでも忘れませんが、それは単に「私に不快感を与える事実があった」という記録として記憶しているという意味で忘れないというだけです。だから、恨みを抱いたり復讐の夢を見るようなことはありません。ただ『この人は私にひどいことをしたので、悪い人だ』とか『この人は私にネガティブな態度をとっている』という事実を心に留めるだけです。どちらにしても、このような情報は私にとって有益で重要な情報であり、忘れてはならないものです。

 そのため、私は悪いことは些細なことでも全て覚えています。一生忘れません。その一方で、良いことは忘れることがあります。それは、誰が私を悪く扱い、悪意のある行動をしたのか忘れるよりも、危険性が低いからです。

 もうひとつ、私は自分自身や他人に対するネガティブな態度や印象に敏感です。少しでもそれがあればすぐに気づくことができますし、それが誤りであることもありません。しかし、このような悪い関係性に対する敏感さと比べると、良い関係性に対する洞察力はあまり優れていません。たとえば、2日前に私のボーイフレンドが私の友人の一人を、彼の友人(私のボーイフレンドの友人)に紹介しました。私はその2人をずっと見ていましたが、結局彼の友人が彼女に真剣に興味を持っているのかどうかを見極めることができませんでした。ネガティブな態度は見られませんでしたが、2人の関係がどれほど良好だったのかと聞かれると、よくわからなくなってしまいます

 私が人にネガティブな態度を見せるのは、相手と接していて気分を害された時です。こういう時、私はその人との交流のメリットも、対立することのデメリットも頭から抜け落ちてしまいます。もしも私を憂鬱な状態に陥らせるような人がいれば、私はその人とのネガティブな関係を隠すことはできません」

−Fi : EIE [12]
「私は、笑顔、視線、うなずきや肯定的な反応を見せたり、お世辞や贈り物を贈ったり、他人からの失礼な発言から守ってあげたり、相手の問題に注意深く耳を傾け、さりげなく『私たち』と『彼ら』という表現を交えながら、つまり『私とあなたは仲間』であり『私もまたあなたと同様に、彼らからは遠い存在だ』という印象を植え付けるようにしながら、相手にポジティブな態度を表現します。お店の店員が気に入ったら笑顔で『ありがとうござます』と言ったり、5/9の第二次世界大戦の戦勝記念日には、カーネーションを買って特に親しくないけれど素敵だと感じる退役軍人にそれを贈ったりします。ネガティブな態度としては、相手が言ったことを細かくあげつらったり、辛辣な言葉や皮肉、あざけりや軽蔑の態度を示したり、意図的に無視したり、一般的に傲慢だと認識されているような態度、つまり『関わりたくない』ことを示すような態度をとって見せます

−Fe : EII
Q「『反省』という言葉は何を意味すると思いますか?また、この言葉はどのような形で、あなたに関係する言葉だと思いますか?」
A「私にとって『反省』とはネガティブな自分探しを意味します。つまり、良いところを探そうとせずに、悪いところを探して回るという意味です(ちなみにですが私自身は良い面についてはよく知っているので、意識的に探すことはありません)。一般的には、哲学的観点からの内省とは、私の知る限り『自己発見のプロセス』を意味していると思います:

Q「なぜ人は(この場合はあなたは)悪い面を探そうとするのだと思いますか?そうすることが何かしら人生に役立つと思いますか?また、そこで得た情報をどうするべきだと思いますか?」
A「これは、他人から隠れて行うマゾヒズムの一種のようなものではないかと私は思います。また、私にはこれが一つの防御反応であると思えます。自分以上に、自分の悪い所を熟知している人はいないでしょう。だから、あえてあらかじめ自分で悪いところを考えておき、心理的な防壁を作っておくことで、思いもよらない侮辱や攻撃をされたり、自分が傷つけられるような何かをされる危険性が減ります」

機能における「マイナス」の特性は、一方では主にネガティブな要素を選択し、強調するという形で表現され、他方では、余分なものを切り捨てようとする形で表現されます(これは符号のうち「方向」特性を通して観察可能です)。一方で機能の「プラス」に表れるのは、余分な物を取り除いた最後に残るものだけです。彫刻家ロダンによる、作品の本質についての名言『大理石の塊を切り出し、不要な物をすべて削ぎ落す」は、マイナス機能による情報処理の仕方に似ています。こうした情報処理の仕方は、マイナスの符号が付いた機能から生み出された発言中にも表れることになります。

タイピングを行う際の重要な注意点:

プラス符号においても、ポジティブな領域の外側に言及することがあります。形式的には、こうした発言はマイナス機能の発言と似ています。符号を正しく判別するためには、ひとつひとつのフレーズばかりを見るのではなく、総合的な思考パターンを評価する必要性があります。マイナスの機能は「余分なものを取り除くこと」に焦点を当てているため、通常、残されたプラス的要素や、受け入れられる要素については詳細な説明をしません。それに対して、プラスの機能は「マイナスの情報を捨てることで、受け入れられるプラスの部分の説明」を深めようとします


ネガティブな要素やマイナスの出来事を強調した例:

−Ti : EIE
Q「シーケンシャル・ナレーション(連続性のある説明)とはどのようなものだと思いますか?」
A「主題から逸脱することなく、100ページにわたるような『叙情的な脱線』なしに、時間的な連続性を保ちながら説明を進めることを指します。ただし例外として、まず主要なポイントや結論を述べ、その後でなぜ、どのようにしてそうなったのかという説明を行う場合は、シーケンシャル・ナレーションに含まれます」

−Ti : SLI
Q「一貫性とは何だと思いますか?」
A「それは『矛盾とは何か』を言った方がわかりやすいですね」

−Si : SLI
「服飾が美しい人とはどのような人かというと、その外見が調和していて、矛盾や不条理を含んでいない人のことです。人のイメージは、服装だけではなく、その人自身の個性との調和していなければなりません。それら全てが一体となって美しさを生み出すのです。美の本質は、私が言ったように、調和の中にあります。その人を見ていて、心地よさを感じるとき、目障りな何かがない時、その人の全体を見たり、あるいは細部をじっくり観察することに喜びを感じる時。それを見ることが、心地よい時。それが美しさです」

−Si : IEI
Q「『居心地の良さ』と『快適さ』、これらは何を意味していると思いますか?この2つの言葉の違いはなんだと思いますか?また、『居心地の良さ』を作り出すために、あなたは何をしますか?あるいは『快適さ』を作り出すためには何をしますか?」
A「何もイライラさせられるものがなく、喜ばしい環境で、温かい仲間がいる時…『居心地の良さ』は人にとってのホームとなる場所の環境に関するものであり、『快適さ』はどこにでも見つけ出すことができるものです。『居心地の良さ』を作り出そうとする場合、私は普通、全員がお互いのことをよく知っていて、衝突し合う部分のない人々を集めます。『快適さ』を作り出そうとする場合に私がすることは、単純にイライラさせられるような物を取り除くだけです」


「規模」特性

プラス符号を持つ機能に「規模」という特性が与えられる場合、それは局所性、近距離視点、具体性、自身のサークル内での詳細化として表現されます。一方、マイナス符号を持つ機能に「規模」特性が与えられる場合、それはグローバリゼーション、広い視点、機能の普遍性として表現されます。

「規模」特性は、Ti、Te、Ni、Ne、Fi、Siの情報処理の側面で最も明確で容易に観察されます。


プラス (+) の機能:プラス機能の制限

タイピングを受けたボランティアの反応を分析したところ、「人はプラス機能で話す際、その情報についての自分の能力の境界線を明確化しようとする」ことがわかりました。これはプラス機能の特性から導き出される重要な特徴です。例えばLSE(+Te)は最初は自分に馴染みのある具体的なオブジェクトについて話し、EII(+Fi)は具体的な人間関係を語り、LSI(+Ti)は具体的なルールや規則を語り、ILE(+Ne)は具体的な可能性を語ります。

もしも会話がマイナス領域、つまり一般的、抽象的な議論に向けられた場合(またはマイナス領域から質問された場合)、プラス機能を使って答えを出すこと自体は可能ですが、マイナス符号を持つ別の機能によって一般化がはかられることになります。こういう場合、まずプラス領域(具体例、状況)を考え、次に別のマイナス機能による一般化が行われてから(通常、こうした一般化が行われるのは、特定の情報アスペクトや特定の情報の視点から行われます)、回答が出されるという流れになります。例えばSLE(+Te)が仕事についての「全般的な」質問に答える際には、まず彼が行っている具体的な活動の流れが思い出された後で、−Tiによって一般化が行われるという形で回答が出力されます。プラス機能のこのような特性は、機能の符号を判定する際の誤解を誘発する可能性があります

タイピングを行う際の重要な注意点:

タイピングを行う際は、その回答がどのような思考過程を経て出力されたものかを明らかにすることをお勧めします。そのために、追加の質問を行うと有効的です。


能力領域を制限し、境界を狭め、具体化と詳細化を実行するプラス機能の例:

+Ne : ILE
Q「あなたは、どのように自分の人生を見ていますか?」
A「人生を見ているというより、物事を見ているといったほうがいいかもしれません。つまり、特定の角度から物事を見たり、様々な状況から抜け出すためにはどうしたらいいのか、案を考え出したりしています。私にとってはあまりにも当たり前のことすぎるので、具体例をあげるとなるとすぐには思い浮かばないんですが…」

Q「『物事』とはどういう意味ですか?」
A「『人生の見方』というと、グローバルな話に聞こえるんですが、私がいう『物事を見ている』とはそれよりももっと具体的なものです。そして私にとって人生とは、物事が相互作用するフィールドのようなものなのです」

+ Si, 説明そのものは具体的な詳細の列挙です : EII
Q「あなた好みに家具を置いた部屋を想像してください。それはどんな感じの部屋ですか?」
A「軽くて、中くらいの大きさの、柔らかくてふかふかしていて糸が太いカーペットが床に敷かれています。窓はドアの反対側にあり、壁一面に柔らかくてひだがある、クリーム色の薄いカーテンが伸びています。左側にはソファーベッドと、たくさんの枕、椅子が2脚く、それから青の間にガラス製のコーヒーテーブルがあります。右側にはチェスト、その上に鏡、さらにその奥にはPCを置いたテーブルや、たくさんの小物、様々な置物や花瓶を飾った棚がある。そんな居心地のいい、明るい部屋です」

+Ti, 具体化の定義について質問されているのに、具体例をあげるだけで一般的な定義は全く答えていない: LSI [13]

Q「一般的なものを具体化すること、その逆に具体的なものを一般化すること。この動きの定義について説明してください」
A「一般的なものを具体的なものに移行すること:コルホーズ(共産主義国で見られた農業組織形態。所有者は共同体であり、共同労働の原則に基づいて運営される農業組織)から民間経営への移行。その逆:個々の生活形態が、より大きく強力な生活形態の一部になるとき。この場合、独立を保ったまま参加する場合もあれば、強制的に参加させられた場合も含まれます」


マイナス (–) の機能:能力領域に制限がない

マイナス機能は、明確な境界線を持っていません。マイナス機能の能力の範囲には明確な制約や限度がかかっていることを示すようなところが見られず、広範囲に拡大、拡張されます。マイナス機能の領域に関わる質問に対して、人は一般化し、状況を全体的に、または抽象的に「把握」し、詳細や矛盾には深入りしようとしません

マイナス機能に由来する推論を聞き、その行動や反応を観察すると、その人は広大な「マイナス」の領域を持ちながらも、それと同時に規模、スケール、普遍性を失わうことなく、「ゴールデン・ミドル(均整のとれた中央付近)」のどこかに自分の足を定め、「固定」しているかのような印象を受けます。したがって、SLIとLSEは、快適さや清潔さを理想レベルにまで徹底的に突き詰めようとするのではなく、むしろ「許容できる不快さレベル内の領域」に留めようとします。服装についても同様です。SLI、LSEは基本的に、快適であり、便利ではあるものの、極端に洗練されているわけではなく、調和を乱していると言えるほどではないものの、一点の曇りもなく完璧に調和しているとも言えない、その中間の「ゴールデン・ミドル」に留まる傾向が見られます。しかしSLI、LSEは状況に応じて「プラス」を追求し、細部に至るまで緻密に考え抜かれたセンス、色選び、調和性を見せることもあります。このような例外があるとはいえ、マイナス機能からの回答に「ゴールデン・ミドル」の探求という性質が表れることは多々あります。


能力領域のおける制限の欠如、グローバル性の(普遍的な)思考、およびマイナス機能の「ゴールデン・ミドル」に留まる傾向の例:

−Ti, 抽象化 : LII
Q「一般的なものを具体化すること、具体的なものを一般化すること。これらの動きの定義を説明してください」
A「一般的なものを具体化することとは、あるオブジェクトが複数の集合に属しており、その集合の任意の部分集合が共通の特性を持つという情報に基づいて、そのオブジェクトの特性に関する結論を導き出すことです。一方、具体的なものを一般化することとは、オブジェクトの部分集合のいずれかが既知の共通特性を持つという情報に基づいて、多くのオブジェクトの一般的な特性についての結論を導き出すことです」

−Ni : IEI
Q「あなたは『直観に優れている』とおっしゃっていますが、では何故、これからどのような出来事が起こるのかを予測するのが難しいのでしょうか
A「ここでのキーワードは『出来事』です。出来事を予想することは、私にとって難しいことです。私は一般的な状況や環境、権力バランス、あるいは、特定の立場や状況の美的な意味での評価が将来どうなるかを予測(という表現は適切ではなく、むしろ「見る」「感じる」といったほうが正しいですが)できはしますが、具体的に今後発生する出来事を見たり、感じたりすることはできません。実際に発生する出来事というものは、実はかなりランダムなものである可能性があります。そして具体的にどのような出来事が起こるのかという問題に結論を出すためには、大量の事象を詳細に分析しなくてはなりません。これは必ずしも簡単なことではなく、多くの努力を要する作業です」

−Ne, グローバル性 : EII [14]
Q「あなたをよく知る他の人から述べられた、あなたに関する意見を聞いた時、次のうちどのように感じますか?(1) 公正な意見だと感じる、(2) 不当な意見だと感じる、(3) よくわからないと感じる」
A「質問の意味があまりよくわかりません。ただ、意見と言うものを(1)~(3)のそれぞれについて私なりの定義を説明することは出来ます。(1):私との幅広い交流や、私の言動、意見、および関係性の分析に基づいていて、なおかつ愛憎や恨みなどの感情的色付けがないものが、(1) 公正な意見だと私は感じます。これにはポジティブな意見と、ネガティブな意見、両方があります。(2):ここに該当すると私が思うのは、傷つけたり、何らかの利益を引き出すために言われる、出まかせの意見です。(3):意見ではなくただの主張にすぎないような場合、ここに該当します」

Q「この質問を理解して応えようとしたときにあなたが抱いた考えを言ってみてください」
A「私が最初に強く思ったのは、『この質問は漠然としすぎている』ということです。次に、これでは具体的な事が何も書けないということです(これが私の書きたかったことです)。そうして質問に答えている途中で初めて、一般化して答えるのであれば、具体的な記述に縛られずに済むと思いつきました。そこからは簡単です。自分にとって親しい人との関係において、何が公平であり、不公平であり、不明瞭であるかを明確化しようとだけしました」

−Te : LIE
Q「『製品は高品質でなければなりません』という考えについて、あなたはどう思いますか?」
A「製品は、現在の状況に見合った品質である必要があります。そうでなければ需要と供給のバランスが崩れてしまうからです。経済システム全体は、利益を得るために構築されているものです。そして経済的な困難に陥らないためには、不必要な物を購入しないことが求められます。つまり、品質は必要ですが、それはあくまでも現在の状況と目的に合致した程度の品質でなければならないということです」


第1機能(主導機能)による思考のグローバル化と、マイナス機能によるグローバル化

通常、自我ブロックの機能の符号は簡単に特定できます。なぜなら人はこのブロックから積極的に話すからです。ただし第1機能(主導機能)の符号の特定を複雑化する要因があることには注意する必要があります。

タイピングを行う際の重要な注意点:

マイナス符号は機能にグローバル性を与えますが、主導機能も同様にグローバルな特性を持っています(主導機能の符号がプラスの場合でも同様です)。主導機能には人間の発展を促す世界観的な価値が含まれており、主導機能を通じて無限の発展と増大する完璧さへの感覚が生まれます。このような特性が主導機能のグローバル性と関連していると考えられます。主導機能のグローバル性は4次元性と関係している可能性があります。バランスの取れた健全な主導機能では、このようなグローバル性が観察されます。


例:

+Fi : EII [15]
現代社会の最大の問題は、人間関係の問題、特に家族関係の崩壊です。この点について、私は固定観念にとらわれているようなソシオニクスにはがっかりしています。なぜなら、それは『相性の悪いタイプ』を持つ人々が、良い関係を築こうとする試みが最初から無駄であることを指摘しているからです。しかも、多くの人が、タイピストの数だけタイプを持っていることを考えると、恐怖さえ感じます(実際、私はいくつか異なるタイプだと判定された経験があります)。ソシオニクスに対する私の関心は、主にソシオニクスへの恐怖と結びついています。なぜなら、そのようなアプローチは私の人生原則を根本的に損なうものであり、私はソシオニクスから抜け出す方法を見つけようとしているからです。私は社会に善意、相互の温かさ、そして未来志向をもたらしたいと考えています。 しかし、それ自体がソシオニクスによって『そう考えること』を運命づけらた結果なのではないかということを恐れています。私は、以前は異なる考えを持っていました」

これはプラス符号を持つ機能の表れですが、社会全体規模で考えているという点、つまり符号の「規模」特性という観点から観察すると、まるでマイナスの符号が付いた機能からの発言のようにも聞こえます。上述のEIIに見られるスケールのグローバル性は、おそらく同じ自我ブロックに存在するもう一つの機能「-Ne」の持つマイナス符号の影響を受けているのだと考えられます。


「方向」特性

「プラス」符号を持つ機能に付与される「方向」という特性は、その機能が担う範囲内における心理的な方向性(志向性)という形で説明されます。「マイナス」符号は、機能の方向性が、その機能の担う範囲の外側に向かうことを説明しています。こうした外側に向かうという性質は、Seの側面に関する情報を処理する機能で最も顕著に見られます。Seにおける方向性は、空間を捕捉し拡大することを目指す(「マイナス」)、またはそれを保持し守ることを目指す(「プラス」)という形で現れます。

例:

−Se : LSI
Q「攻撃戦略にはどのようなものがありますか?あなたはそれを実行できますか?攻撃は、どのような場合に正当化されますか?」
A「攻撃戦略にはいくつかありますが、私は主に計画的に待つという戦略を使います。もしも罠が巧妙に配置できてさえいれば、いずれ鹿は勝手にその罠に引っ掛かることでしょう。攻撃が正当化されるのは、それが善なる目的のために行われ、かつ成果を上げることが出来る場合です」

−Se : SLE
Q「自分自身と他人をどのように導いていきますか?圧力をかけることは出来ますか?「できる」という場合、どのようにしてあなたは圧力をかけますか?」
A「私自身はいつも、自分に『やるしかない』『どんな犠牲を払ってでもやらなければならない』と言い聞かせて奮い立とうとしています。『したくない』『できない』という言葉はスルーします。そして一度タスクに着手した場合は、それを終わらせようとします。もちろん、常に完了させられるわけではありませんし、最後までそれにこだわるのが必ずしも良いとも限りませんが、基本的にはそんな感じで私はやっています。他の人に対しては、通常、声を上げたり、その人に近づいて適切な程度の発破をかけることもあります。殴って言うことをきかせるというのも、しようと思えばできますが、それは私にとってはやってはいけないことなので、しません。身体的な暴力を振るうのは、弱さの表れだと私は思っています。また、仮にそういう暴力的な手段を自分自身に許してしまうと、いつもの自分の方針である『やるときは徹底的にやる』に従って、本当に徹底的に痛めつけてしまうかもしれないからです。とはいえネガティブな感情は何らかの形で発散する必要があります。その一環として、物を投げたり、テーブルをひっくり返すことがあります。全体的には、私の話し方や身振り、表情、言葉選び、こういったもの全てが、相手からは攻撃や圧力として受け取られることになります」

+Se : LSE
「私にとって、強引に力を振るわなければならない状況は、とても嫌なものです。もしその必要がある場合、自分の身を守るのに集中する方がずっと楽だと感じます。つまり、自分の身を守るために、身を引いたり、避けたり、盾になることはできても、自分から殴りかかることはできないと感じてしまいます。私の父はいつも『攻撃は最大の防御だ』と言っていました。確かにチェスの世界ではそれでいいかもしれませんが、人生においては違うのではないかと思うのです。私が誰かに攻撃を加えている様子を想像することなどできません。たとえ反撃しなければならないような状況だったとしても、不安や、何か正しくないことをしているような感覚を引き起こしてしまいます。公共交通機関を利用しているとよくあることですが、人混みではいつも他人が通りやすいようにするために、あまりスペースを占有しないよう気を付けています。でも多くの人はそうやって私が譲ったスペースを占領してしまい、私が窮屈に身を縮こまらせている様子など気にも留めていません。まるで他人と自分の境界線というものを感じていないか、それとも「自分の」スペースを心地よく占有できさえすれば、「他人の」スペースのことなどどうでもいいのか、とにかくそういうことが平気で出来る人に対して、驚きを感じてしまいます。私自身は、人混みにいなければならない時には、他の人に迷惑をかけないよう努めています」

+Se : SLI
「どうやって攻撃するかについて、考えたことなどありません。そもそも攻撃という概念自体が、私には馴染みのないものです。私の場合、攻撃は自分のテリトリーを守るために必要な場合に限られます。誰かが私のテリトリーを侵害しようとしたり、干渉しようとするような場合だけです。しかも、私が何を求めているのかを相手が理解しておらず、私が極端にイライラしてしまった場合に限られます。私の側が他人のテリトリーを占拠するような例について考えてみましたが、全く思い浮かびません


「距離」特性

符号の性質のうち「距離」という特性は、プラス符号の場合、心理的距離の近さという形で表現され、マイナス符号の場合は、心理的距離の遠さという形で表現されます。距離特性は、FiとSeの情報を処理する機能で最も明確に表れます。「心理的距離」という用語は、意味的には Fi (関係) と Se (境界) の情報アスペクトに関連しています。このことは「心理的距離とは何か」という質問に対する様々なタイプの人々の回答によって確認されています。

Q「心理的距離とは何ですか?」

SLI:
自分と他者とを隔てる壁の密度に似ていると思います。万里の長城のように厚く強固な場合もあれば、透明で空気のような場合もあります。私はそうしたものを、ここでいう壁のようなものとして認識しています。私から見ると、それは内なる盾のように感じられます。時にはカタツムリを連想させることもあります。一方、他者の壁は一種の疎外感として感じられます。私が話しかけても、私の言葉はこの壁に阻まれてしまい、相手まで届きません。壁の密度を決めるのは、おそらく信頼の度合いです。心理的距離が近いことは信頼感や安心感があることを意味し、遠い場合にはそれがありません」

ILE:
親密さの度合いのことです。もし、ある人が私に関心を持ち、親しみやすさを示してオープンに接してくれたら、私はその人の関心をすぐに受け入れて、積極的にコミュニケーションを取り始めます。私の友達になるには、文字通り2週間の親密な交流が必要です。しかし、そのためには私たち両方の生活ペースが一致しなくてはなりません。そしてその場合の心理的距離は非常に近いものだと言えます。もしも私に関心を持ち、親しみを持って気さくに接してくれる場合、仮にその人が面白くない人だったとしても、私にはどうやってその人を排除したらいいのかわかりません。私はマナーを意識しているので、無作法に人を追い出したりは出来ません。ただ出来ることと言えば無視することだけです」

ILE:
私にとっての心理的距離とは、相手にどれだけ接近を許すか、そして、私がどこまで正直でオープンであるか、私が何を許し、何を許さないかを意味します。心理的距離を縮めるということは、相手にさらなる機会を与えるだけでなく、私自身に義務を課すことにもなります。長い距離では単に無視できることでも、近い距離で拒否するのは少し気まずさが伴います。長い距離の関係では、近い距離の関係よりも義務に縛られず、自由に行動できます。特定のサービスを断ることや、望ましくない情報を提供しないこと、自分の意見を抑えること、自分の本当の立場を明かさないようにすること。こういったことは、心理的距離が長いほうが行いやすいです。心理的距離が遠いほど、人間関係は容易になるのです。自分自身がだまされたり、利用されたりする可能性がある場合や、自分の心の深い部分を傷つけられてしまう恐れがある場合、自分の身を守るために、人と一定の距離を保つことが必要になります。他者が自分に対してどのような心理的距離をとろうとしているかという点は、相手が私に対してどのように振る舞っているかによって感じ取れます。もしも相手が心の中では、まるでハリネズミのように針を逆立てていたとしたら、私はそれを感じ取るでしょう。会話に慎重になりすぎていたり、何か口に出していないことがあれば、それもわかります。特に、より信頼関係を築いている人が近くにいる場合は、そういったことをはっきり感じ取れます。壁を作りたい、近寄りたくないという気持ちが伝わってくるのです。そういう時、その人のことがまるで不気味な生物か、冷たい壁のように感じます」

EII:
「心理的距離とは、ネガティブな意味でもポジティブな意味でも、お互いのオープンさの度合いを決める距離のことです。お互いにどれだけ惹かれ合うかに強く依存しているものだとは思いますが、その性質を私が定義しようとは思いません。私は心理的距離を変化させようとは思いません。非常に警戒心が強い人の場合、時間の経過とともに距離が縮まることがあります。簡単に言えば、人がお互いを知るにつれて、互いの信頼の度合いが増し、お互いの内面世界や類似点を理解していくことになります。最初から「共鳴・同調」している場合、親密な心理的距離が設定されることもあります。逆に相手の考えが異質に感じられるような場合は、かなり遠い距離感が設定され、時間が経ってもあまり変化しないということもあり得ます。この心理的距離は、時には分厚くて頑丈な壁のようになることもあります。それはまさに壁のように感じられることでしょう。どうやってその壁を乗り越えたらいいのか、皆目見当がつかないほどの壁です。あるいは、霧のようなものであるかもしれません。霧の奥には、ただ内気なだけの人か、生まれつき疑り深い人かはわかりませんが、何らかの形であなたの身近にいる人が見えることがあります。そして時には距離がないこともあります。そういう人の場合、知り合ったその日に家に招き入れることができます。また、状況によって心理的距離が変わることもあります。例えば『旅を共にする仲間』という効果の影響で、とても内向的な人がオープンになることがあります」

ESE:
「私は心理的距離や、その距離の変化をかなり敏感に感じ取れます。もしも極端に距離を遠ざけ過ぎようとする人がいれば、私は『何が起こったのか』『どのような変化が引き起こされたのか』を理解して、元の状態に戻そうとします。基本的に、相手まかせで心理的距離を決めるよりは、自分で決める方が快適だと感じます。でも時にはどうしようもないこともあります…」

SEE:
「私が人、またはグループとの関係性に応じてどのような行動を取るか。これが心理的距離です。この心理的距離には、私たちの物理的な空間から会話の話題に至るまで、様々な側面が含まれています。私にとっての『距離』とは、その人がどれだけオープンで、誰を、どれだけ自分の近くに置くことができるかを意味しています。私はこの距離を、かなりはっきり感じ取っています(普段はそうだと言う話です。例えば病院で、あまりにも忙しかった時には、それを感じなかったこともあります)。心理的距離を変えるのはその人次第であり、何かを変えたいと思う気持ち次第であり、その人との関係次第であり、変化させる必要性や理由次第であり、つまるところ様々なことに決まります」

文章から「距離」特性を評価する例:

−Fi : EIE
Q「『私は全世界を愛することができる』と誰かが言ったとして、それに『わかる』と思いますか?」
A「そうですね、イエスでもあり、ノーでもあります。私だって、目の前にいる全ての人、そして今この瞬間に目の前にいない、存在すら知らない全ての人、全ての鳥や犬、生まれ故郷の岩や石、そして冬になると凍りついて開けられなくなる、集合住宅のあのウンザリするような玄関ドアも、そんなすべてを愛していますよ。でも、それはかなり表面的な愛だからこそとも言えます。もしかしたら、世界のすべてを包み込むほどの心を持った人など絶対に存在しないとは言えませんが、では、果たしてどれくらいの確率で、そのような人間が実在するといえるのでしょうか。私は、もっと強く、もっと献身的に愛することができることを知っています。そして、この世界のすべての人にとって私は十分ではなく、私の愛する人(a loved person)、私の家族、私の友人のためだけで精一杯なのを私は知っています。つい、愛する人(a loved person)と単数形で話してしまいましたが、私はこれまでに3人と付き合ったことがあります。私は、その人たち3人全員を愛し、また、今でも愛しているといえます。それぞれ違った形での愛ですが、全員を同じように、強く愛しています。そして、私の愛する人リストには、今後も名前が増えていくことでしょう」

−Fi : EIE
Q「一般的な話として、あなたは何人くらいまで人脈を広げられますか?人と交流するにあたって、小規模の人から成る交流関係を求めるほうですか?それとも規模が大きくても問題ないほうですか?」
A「一般的にというのであれば、私にはたくさんの友人がいます。以前、自分のICQ [16]やノートPC、携帯に入っている連絡先を整理した時には、そOCQに300人(最近交流がなかった人を除外した場合250人)おり、ノートPCにもそれと同じくらいの人数の連絡先が友達として登録されていました(しかもそれぞれの連絡先リストにはあまり重複がありませんでした)。さらに、直接会ってはいるものの、連絡先を知らないという人が500人…いえ、もはや正確な数がわからないのですが、とにかくそれくらいいます。だからといって、その人たちと同時に交流しているわけではありません。しかしその全員と連絡を取り合っています。定期的に連絡したり、どこかでばったり会ったり、話をしたりといった感じです。私自身の好みは10人~15人程度のグループですが、20人以上いると、さすがにその場の全員がどうしているのかを把握しきれなくなることがあります。もっとも、人数が多くてもあまり気になりはしません。なぜなら仮に人と会う場合、ゆっくり座ってお茶を飲むような場所で会うわけではないので、すべての人の前に立って話したりしなくても、席を変えながらあちこち移動して一人一人と話をし、全員と二言三言を交わすか、少なくとも笑顔でちょっと接するくらいはできるからです。それでも、私は一対一のコミュニケーションが好きです。一対一だったら、気が散ることなく、お互いに色々な話ができるし、一人の人に集中して、その人から話を聞き、求められていること、必要なこと全てを伝えることができるからです」

−Ni, +Fi : EII
Q「他者の中に、ネガティブな資質を見ることはありますか?それに対してあなたはどのように反応しますか?」
A「普通、私は初対面の人は、よほど外見に問題がない限りはみんなポジティブに見えます。ただ、なぜと聞かれても困るのですが、実際に言葉を交わす前から、ネガティブな感じを受けることがあります。幸いなことに、これ自体はかなり稀なことです。私は他人のネガティブな部分ばかりに集中したりはしません。そもそも何かの実害があるまで、気付かないことのほうがずっと多いです。その一方で、長い付き合いのある親しい人についてであれば、その人の良いところも悪いところも、はっきり説明できます。ただその場合も、悪いところばかりに目を向けたりはしません。こういう人相手の場合、仮に何かその人の悪い部分に直面したとしても、いちいち驚いたりもしません」

こうした例からわかるように、心理的距離が近い(符号がプラス)とは、親密で狭い社会的サークルを示します。そして心理的距離が遠い(符号がマイナス)とは、より広い社会的サークルを示しています。

「距離」特性と「方向」の特性の表れ方の結論:

私たちの観察では、「距離」特性と「方向」特性は、FiとSeの情報を処理する機能にのみ表れました。したがって、これらはそれぞれが符号の一般的な特性というよりは、「規模」特性の中に含まれる、特殊な表れ方の一形態であると考えられます。したがって機能の符号の特性(それぞれ互いに独立した特性として数えることができるもの)は「品質」特性と「規模」特性の2種類であると言えます。しかしこの結論は、「規模」特性が、「右/左(プロセス/結果)」に、「品質」特性が「肯定主義/否定主義」に帰属するとしているV. V. Gulenkoの結論とは一致しません。筆者らの観察によると、「品質」特性と「規模」特性はいずれも「右/左(プロセス/結果)」の特性によって決定されます

E. S. Filatovaも、我々と同様、符号の特性は「品質」「規模」「距離」「方向性」の4種類ではなく、2種類であるという結論に至っています。しかしFilatovaは「距離」と「規模」を残すべきであると考えている点では、我々とは異なっています。「私(Filatova)は、距離と規模という、2つの確実にあると思われる特性を残すべきだと考えております。この場合、プラス符号は、機能の対象物を近距離で、詳細に検証することを意味し、マイナス符号は、遠距離への移動が必要となる大規模な焦点を意味しています」[参考文献6]

1次元性機能の符号

1次元性機能の符号

1次元性機能の符号の評価には、ある種の困難が伴います。1次元性機能から得られる反応は、その人それぞれの経験に基づくものです。多くの場合、その回答は単なる記憶や体験のリストです。機能の符号を評価する観点から言えば、自分の経験のリストからな構成される反応は、具体化・詳細化などのプラス符号と関連付けられますが、実際には、こうした具体化は機能の1次元的な特性によって生じているものであり、符号がプラスだから生じているというわけではありません。したがって1次元性機能に対して符号の「規模」の特性等を推測するのは困難です。評価者が1次元的な機能の発言を適切に評価できず、タイピング対象の人物を近くで観察する機会もない場合は、具体化・詳細化的な反応が観察できたからといって「この人の1次元性機能はプラスである」と断定するのは避けた方が無難です。

例えば、SLEのFiの面でみられる粗雑さは、機能の符号の特性によるものなのか、それとも1次元性の特性(規範パラメータの欠如)によるものなのか。あるいはILEの-Fiと、SLEの+Fiのどちらがより非倫理的なのか。SEEやIEEの1次元性Tiに見られる非論理性は、機能の符号によるものか、1次元性によるものなのか。こうした疑問に、明確な答えを出すことは出来ません。おそらく1次元性機能であっても、継続的な観察の結果、符号の影響をトレースすることはできるとは思われます。符号は、これらの機能の知覚や情報処理の特殊性に、依然として痕跡を残しています。

しかしながら、1次元性機能の特殊性や、タイピングに費やすことのできる時間的限界などのために、符号の痕跡を確認するのは難しいと言わざるを得ません。符号の影響には「より遠く、より一般的な視点から物事に焦点をあてる」というニュアンスもありますが、一次元機能にこうした表現が観察できるか追跡することは、ましてや質疑応答形式でそれを行うことは、非常に複雑なことです。しかし、モデルを熟知し、内省と自己レビューによって自分の反応を特定し、明確化できる人々の経験は、一次元性機能における符号の表われを識別する上で役立ちます。以下に、1次元機能における符号の表れに関するいくつかの観察結果を示します。

第4機能の符号

タイピングの実践の結果、第4機能の符号の表れには、いくつかの特異性が見られました。プラスの符号を持つ1次元性機能は、マイナスの符号を持つ1次元性機能よりも、その側面に関する情報を評価する際に、より「狭い」ように思われます。実を言えば、プラス符号を持つ第4機能の反応よりも、マイナス符号を持つ第4機能の反応の方が、より「痛み」を伴っているように見られます。マイナス符号の第4機能の人には、この機能で自分を守ろうとする傾向があり、「ネガティブさから離れたい」という欲求が明確に観察されます。したがって、LSEは遅刻を非常に恐れており、そのような「災難」(-Ni)を、あらゆる手段を駆使して予見しようとします。そんなLSEと比べると、ESEの第4機能(+Ni)の表れ方は、ずっと穏やかなものです。ESEは楽しいことを期待して、せっかちになったり、我慢しきれないような面が見られます。SEI(第4機能 -Te)は、仕事に対する責任感が非常に強く、良心的で、否定的な評価を受けることを恐れており、多くの仕事を抱え込みがちです。自分の能力やスキルを適切に評価できませんが、それでも仕事をやり遂げようとします。それに対してIEI(第4機能 +Te)は、単純に仕事から逃げようとしたり、過度な仕事の負荷や、一般的に見て不快な活動を避けようとするかもしれません。EII(第4機能 -Se)は、自分ができる全てのことをして、Seが必要となる状況を回避しようとしますが、LII(第4機能 +Se)は、対立的な状況で、まるで闘鶏のように振舞うことがあります。もちろん、これらの例は、これらのタイプの脆弱機能の反応を区別するための指標として見るべきではありませんが、全体的にはマイナス符号を持つ第4機能には「より大きな恐怖」が見られる傾向があります。

なぜそのような現象が起こるのかというと、情報を処理する際に、マイナス機能はマイナスから情報を処理し始めるからではないかと思われます。そして1次元性機能の最初の記憶がネガティブな経験であった場合、それを思い出した後に続く最初の反応は、そのネガティブさから自分を遠ざけようとするものではないかと思われます。

第5機能の符号

第5機能(暗示機能、1次元性)は、その側面で情報を認識した際に、符号に従って処理することができます。そのため第5機能が-FiであるLSEは、自動的に他者のネガティブな態度に気づきますが、それらが自分に向けられたものかもしれないという考えを「放棄」します。そしてネガティブな関係の最初の兆しを認識するとすぐに、自動的な防御反応が起こります(バイタルリング、結果として生じる第8機能 +Seの働き)。

第4機能と第5機能の例:

−Fi : ILE(第4機能が−Fi)
Q「ある人が、あなたに対して明らかにネガティブな態度をとっている場合、あなたはどのような反応をしますか?」
A「イライラして不安になります。その状況について、友人と話し合いをしたいです。一体私のことをどう思っているのか、という感じでです。逆に私の場合、ネガティブな態度を直接表現したりはしませんが、無視はします。その人が言っていることに耳を貸さず、目を合わせないようにします。例えば仕事などの関係で、どうしてもその人と付き合い続けなければならない場合、長い間ネガティブな態度でい続けること自体は出来ますが、実際にはおそらく徐々に和らげることになると思います。侮辱されたことは許すわけではありませんが、関係が改善された場合、警戒心は残りますが、過去にされたことには目を向けないようにします。私はあまり執念深い方ではありません。『罪の報いは必ず受けさせる』という人もいるでしょうが、復讐に人生を捧げようとは思わないです」
A「高圧的な態度で理不尽な主張は、攻撃的だと感じます。そういう場合、私は強い怒りを感じて、粗暴な言葉をぶつけるかもしれませんし、相手を遠くに追いやろうとするかもしれません

−Fi : ILE
Q「対立している相手に、自分の考えを伝えられますか?もしもそれが相手の気分を害しするとしたら、どうしますか?」
A「オープンに、直接的に衝突する方が、私にとってはずっと簡単です。もちろん、私が相手を不快にさせるでしょうが、相手だって私を不快にさせているわけです。喧嘩をしかけることもできます。我慢の限界に達したら、思ったことを全部率直に言って、相手に過ちを思い出させます」

+Ne : SLI(第5機能が+Ne)
Q「あなたはこれから起こる出来事を予測できますか?実際にそれは可能ですか?」
A「努力すればできるかもしれません。でも、それは難しいです」

Q「どのような工夫が必要だと思いますか?」
A「『あなた自身について教えてください』という質問をされると、私は困ってしまいます。相手が私の何を知りたがっているのかが分からないからです。私が子供のころのお粥の話をしたとして、相手はもっと別のことを知りたいと思うかもしれないじゃないですか。質問をするというのではれば、もっと具体的に聞いてほしいと思います」

機能の符号に関連した情報アスペクトの判別

タイピングで機能の符号を判別する際は、情報はモデル全体に伝達され、ほとんど同時に全ての機能によって処理することを念頭に置く必要があります。

タイピングを行う際の重要な注意点:

1つのアスペクトに関する情報処理機能の符号を正しく判別するためには、ブロックの働きだけではなく、マクロアスペクト全体を考慮する必要があります。各マクロアスペクト(オブジェクト、空間、エネルギー、時間)は、黒と白(アイコンの色、または文脈による本質と関係)[17]にわけられますが、これらのアスペクトの情報を処理する機能は、異なる符号を持ちます。

本質的側面と関係的側面を明確に区別することが重要です。それによって、機能の符号を混同しないようにできるからです。例えばFeの本質的側面は、エネルギー状態に関する情報であり、Fiの関係的側面は、エネルギー状態の比に関する情報です。当然ながら関係性の倫理(Fi)を観察する際(つまりFiが表現される際)、感情とエネルギー状態(Fe)の両方が観察される(表現される)ことになります。タイピングをする場合、「私はネガティブな感情を扱うことができない」という回答を期待しないでください。全ての人が、ネガティブな感情を見ることも、見せることも出来るからです。たいていの場合、タイピングされる人はその側面を区別できず、マイナスの領域での自分の反応の適切さを評価できません。こういう人の場合、「誰かに腹を立てること」と「泣くこと」との違いはなく、どちらも「ネガティブな感情」だと考えることでしょう。タイピング実施者の目的は、タイピングを受けている人間の情報アスペクト(FiとFe)のどちらがマイナスの領域に向くかを見つけることです。例えば葛藤状態に置かれた場合(−Feと−Fiの両方の側面に関わる情報がある状態に置かれた場合)に見せる反応は、その人の機能の符号に依存することになります。

このような葛藤状態に置かれた際、その人が+Fiであれば、関係性におけるネガティブさ(否定的なもの)を避けるのと同時に、−Feが生き生きとした反応を示すことになります。−Fiの場合、ネガティブな態度に反応することになりますが、この時の−Feの反応は不十分なものであるかもしれません。処理される情報の品質は、次元性だけではなく、メンタルブロックかバイタルブロックかにも依存します。したがってEIIは、ネガティブな関係を避けつつ、気分が自動的に台無しになります(−Fe)。LSEはFiにおける「ネガティブさ」に自動的に反応し、同時に「ネガティブ」で適切ではない感情(爆発するような攻撃性)を見せてしまいます。SEEは−Fiでの対立に意識的に影響を与えることができますが、感情の表し方は適切ではない可能性があります。ESEの場合、ネガティブな感情の表し方はかなり適切ですが、それと同時に関係を損ねないよう自動的に方向付けられています。

ブロック内の符号を判定する際に最もミスが起こりやすいのが、ESEとEIEのFeの符号です。ESEが−Feで、EIEが+Feなのはなぜなのかを理解していない専門家は非常に多いです。EIEの感情はよりドラマチックに見え(EIEは世界を暗い色調で見ます)、マイナスのFeに向きやすいような印象を受けることが多いです。しかしEIEにとっての「マイナス」は、実際には隣接する機能であるNiから生じているものです。彼らはNiの側面を処理することで、イベントを主にネガティブに捉えますが、それが原因となって、陰鬱で劇的な感情表現が生じているのです。それと同時に、EIEは高揚した感情状態(ここでの「高揚」は「陽気」という意味ではなく「アドレナリンが血潮に渦巻いている」ような、エネルギー的な効用状態を意味します)を維持しようと努めます。そして興味深いことに、EIEの人生の色調を高めるのは、スケール(規模)的な意味でも、質的な意味でも、ネガティブな出来事です。こうした出来事は、EIEの「エネルギー」状態を高めます。しかしEIE自身はそれを喜ばず、ネガティブな感情状態を志向しません。彼らが志向しているのは低下した「エネルギー」状態を避けることです。対するESEは、低い「エネルギー」状態(苦しんだり、泣いたりする状態)に陥りやすい代わりに、必要であれば、あっけなくその状態から離れる可能性があります。EIEと比較すると、ESEは広範囲の感情に適応しており、感情の振り子の揺れにあまり恐れを感じません。対照的な状態(マイナスの存在の手がかり)はESEにとっては完全に受け入れられるものです。

超イドブロックと超自我ブロックの符号

タイピングを行う際の重要な注意点:

面接法によるバイタル機能の符号の特定は、実際にはメンタル機能の符号の特定と違いはありません。しかしながら、バイタルブロックの場合は情報が常に記憶から呼び出されるという事実のために、メンタル機能と比べてより複雑な可能性があります。バイタル機能の回答は、曖昧で、概算的で、言語化するように苦労しているように聞こえるかもしれません。それと同時に、タイピング受験者は、イドブロックの多次元性機能に基づいて自分自身を適切に評価することができます。したがってバイタル機能の符号を判断する際には、その人の多次元性機能から得られる情報に依存するほうが良いでしょう

筆者らがタイピングを行った際の観察結果と、符号に関するさまざまな情報要素の反応を分析した結果、外向性/内向性が同じ機能は、同じ符号を持つことがわかっています。

調査結果

本研究の結果に基づいて、次のように結論付けることができます。

  1. 情報代謝タイプを特定するプロセス(つまりタイピング)において、機能の符号は、V. V. Gulenkoの著書に記載された性質を基に、V. D. Ermakによって行われた説明(「能力領域」)を考慮することで特定可能です。
  2. 社会的進歩リングが左リングのタイプの第1機能(主導機能)にはマイナスの符号が付き、右リングタイプの第1機能にはプラスの符号がつきます。
  3. E/Iが同じ機能同士は、同じ符号を持ちます。
  4. 「規模」と「品質」の特性は、社会的進歩リングに結合されたタイプグループで観察可能です(V. V. Gulenkoは「質」の特性を「肯定主義/否定主義」に関連付けています) [18]
  5. 機能の符号という概念は、モデルAを補完する重要な概念です。各タイプの説明をより具体化するだけではなく、ソシオニクスの実践者にとってはタイプを特製するための追加ツールとしても活用が期待できるものです。

参考文献

  1. Gulenko V. V. Signs of socionics functions. - Kiev, 1989 / / "16." - Vilnius. - 1990. - № 2.
  2. Gulenko V. V. Positivity and negativity of communicative functions. - Kiev, 1998.
  3. Ledin V. Signs of socionics functions.
  4. Ermak V. D. How to learn to understand people. - M., Astrel. - 2003. - S. 131-134.
  5. Eglit I. M. Dimensions of functions. / / Socionics, mentology, and psychology of personality. - 2007. - № 2.
  6. Filatova E. S. Returning to the "signs of socionics functions" of V. Gulenko / / Socionics, mentology, and psychology of personality. - 1998. - № 3.

補足事項

School of System Socionicsにおけるタイプ別、機能の符号の一覧

ILE
+Ne –Ti
–Fi +Se
+Fe –Si
–Ni +Te
SEI
+Si –Fe
–Te +Ni
+Ti –Ne
–Se +Fi
ESE
–Fe +Si
+Ni –Te
–Ne +Ti
+Fi –Se
LII
–Ti +Ne
+Se –Fi
–Si +Fe
+Te –Ni
EIE
+Fe –Ni
–Si +Te
+Se –Ti
–Fi +Ne
LSI
+Ti –Se
–Ne +Fi
+Ni –Fe
–Te +Si
SLE
–Se +Ti
+Fi –Ne
–Fe +Ni
+Si –Te
IEI
–Ni +Fe
+Te –Si
–Ti +Se
+Ne –Fi
SEE
+Se –Fi
–Ti +Ne
+Te –Ni
–Si +Fe
ILI
+Ni –Te
–Fe +Si
+Fi –Se
–Ne +Ti
LIE
–Te +Ni
+Si –Fe
–Se +Fi
+Ti –Ne
ESI
–Fi +Se
+Ne –Ti
–Ni +Te
+Fe –Si
LSE
+Te –Si
–Ni +Fe
+Ne –Fi
–Ti +Se
EII
+Fi –Ne
–Se +Ti
+Si –Te
–Fe +Ni
IEE
–Ne +Fi
+Ti –Se
–Te +Si
+Ni –Fe
SLI
–Si +Te
+Fe –Ni
–Fi +Ne
+Se –Ti


出典:


タイピングで使用される指標

School of System Socionics(機能の次元に重点を置く学派)で使用されるタイピングの指標。

タイピング指標の記事(全4記事):
機能の次元
メンタル / バイタル
高次元 / 低次元
機能の符号

符号がプラス:
  • 反応の不十分さ:一般に受け入れられていることに従わず、痛みを伴う感情の制御を伴う。(1次元性、または符号がプラス(プラス機能が無力領域に置かれた状態
  • 特定の情報要素の側面に対する情報を受け入れる際に、苦痛、恐怖、パニック、劣等感が感じられる。 ⇒ 1次元性脆弱機能の場合が多い)、または符号がプラス(プラス機能が無力領域に置かれた状態)
  • 対象の機能が関わる部分の感情コントロールにおいて、精神的緊張感、精神的疲労感、不快感、否定的な状態、エネルギー消費が見られる。また、ネガティブな評価を受けた時に、痛烈に受け止めてしまう。(低次元性、またはプラス符号:プラス符号の機能におけるネガティブな領域は無力領域と呼ばれ、ネガティブな領域での能力の低さや、ネガティブな領域からの離脱を求める傾向が見られる。)
  • ネガティブな領域で、全く方向感覚がない状態でも、ネガティブさを避けようとする。(符号がプラス。符号がプラスの機能には、ネガティブさに焦点を当てにくい性質がある。ネガティブな領域に迷い込んでしまった場合、そのネガティブさにどう反応すればわからず、ネガティブさを避けようとする。例えば「十年後、あなたに起こりそうな悪い出来事を想像できますか?それはどのようなものですか?(Niがプラス)」「センスが悪い人とはどのような人だと思いますか?(Siがプラス)」とネガティブな内容の質問されても、あまりこれといって何も思い浮かばないし考えたくもない
  • 具体化、詳細の掘り下げ。この具体例としては、本記事の「あなた好みに家具を置いた部屋を想像してください。それはどんな感じの部屋ですか?」という質問に対するEII(+Si)の回答がわかりやすい。(符号がプラス。ただし「自分の経験のリストからな構成される反応」を具体例として列挙することがあるため、判別には注意が必要。関連記事:本記事の「1次元性機能の符号」、および記事「機能の次元 タイピングで使用される指標 経験パラメーター」参照)
  • 局所性・ローカル性(局所性・ローカル性:特定の状況や条件に限定した話。これは、一般化した視点やグローバルな視点からの発言・多くの人や社会を代表した視点からの発言とは逆となる)。能力の範囲を制限したり限定したりする傾向。(符号がプラス、あるいは個人的な見解のみが主張される場合はバイタル
  • その機能が担う範囲の内側に向いた心理的方向性(符号がプラス)
    これだけだと抽象的でわかりにくいが、これは特にSe「自分の領土・自分が支配・所有する空間」の側面で顕著に表れる。機能が担う範囲の内側に向くとは、自分の領土・空間を守り、維持することを意味している。言い換えると人の領地や空間を積極的に奪って拡大することには忌避感を感じるが、自分の既に保有している領地や空間への脅威には立ち向かおうとする。 例えば電車に立って乗っていて、座席が空くのを待っている状況で、自分の隣に立っている人の前の席が空いた時に、その席を強引に奪うことはしないが、自分の目の前の席が空いた時に、自分の隣に立っている人がそこに強引に座ろうとすると、睨んだり、とっさに荷物を置いたり、足や肘で邪魔するなどして、断固として席を確保しようとする
  • 品質特性という点でポジティブな面のみに焦点を当てる。例えば自分の未来を想像した時、なんとなく暗い未来が思い浮かびにくい場合、あるいは暗い未来を意識的に想像してみても、なんとなく最終的にはポジティブな未来になるのではないかと感じる(Niがプラス)。この例では、Niのネガティブな品質=暗い未来に焦点が当たりにくい傾向が観察できる。(符号がプラス)
  • ネガティブな領域における方向性の欠如。例えば「一年後、あなたの身に起こりそうな悪い出来事を想像できますか?それはどのようなものですか?」とネガティブな内容の質問されても、あまり思い浮かばないし、考えたくもないという反応を見せる。または、質問に対する回答がズレていたり、はぐらかされている。(符号がプラス)
  • 自分の力や考えを開示したり、広めたりするのを避ける傾向。(バイタル、または符号がプラス(ネガティブな領域から離脱したがる傾向の表れ))
  • 空間や領土、テリトリーを保護、保全する。(符号がプラス(さらにいえば+Se))

◆◆◆



符号がマイナス:
  • ネガティブな領域で自由に方向性を転換できる場合は、ネガティブさを避けようとする。(符号がマイナス。マイナスの機能は、ネガティブな領域で適切に機能し、ネガティブさへの方向性を持つことができるが、符号に関わらず人間にとって「ネガティブな領域に留まること」自体は満足できる状態ではないため、「ネガティブな領域」に留まり続けるのは好まない。例えば-Feを持つEIEの場合、必要に応じて自分のネガティブな感情を的確に表現できるのと同時に、そうする必要がない時は、なるべくネガティブに認識されそうな感情表現を避けることができる。プラス符号の「ネガティブさを避ける」は逃避的、回避的、見えないフリをする、最初から視界に入っていない、無意識に除外してしまっている状態なのに対して、マイナス符号の「ネガティブさを避ける」は「避ける・避けないのどちらも可能だが、避けた方がいいという選択をして避ける」という違いがある。)
  • ネガティブな分野で方向性が失われない。例えば「一年後、あなたの身に起こりそうな悪い出来事を想像できますか?それはどのようなものですか?」とネガティブな内容の質問をされたとき、はぐらかしたり、拒否したり、ズレた回答をせずに、答えることができる。(符号がマイナス)
  • 一般化と具体化の両方が見られる。(符号がマイナス)
  • ミニマリズムと簡素化(符号がマイナス)
  • グローバル化(普遍化、一般化)、抽象的な思考(符号がマイナス、または/および第1機能
  • その機能が担う範囲の外側に向いた心理的方向性(符号がマイナス)
    これだけだと抽象的でわかりにくいが、これは特にSe、つまり「自分の領土・自分が支配・所有する空間」の側面で顕著に表れる。機能が担う範囲の外側に向くとは、自分の領土・空間を拡大すること(調達・征服・略奪に乗り出すこと)を意味している。例えば自分の好きな音楽を大音量で流したり、バイクの爆音を鳴らして、周囲一帯の空間を自分の支配下に置くことを好んだり、満員電車でまわりの人を肘やカバンで強引に追いやって、少しでも自分が広くて快適な空間を確保しようとする傾向が該当する。
  • 最初はマイナスの領域(ネガティブ、グローバルなスケールから)から情報を評価し始める。(符号がマイナス)


参考:


訳注

  1. ^ 情報アスペクト:FeやTiなどをソシオニクスでは情報要素と呼ぶが、「情報要素」という言葉が人の精神の主観的な性質を意味するのに対して、情報アスペクト(情報の側面)は、現実の客観的な性質を意味する。情報要素と情報アスペクトは同じ記号、同じ名前で表記する。
  2. ^ プロセッサ:パソコンの処理の中枢を担っているハードウェア(CPU)のこと。OS:WindowsやMACのような、人がパソコンを操作するためのソフトウェアのこと。
  3. ^ 要求関係監督関係に基づく社会的進歩リングのこと。
  4. ^ 本記事の最後のタイプ別の符号を記載した表をみればわかる通り、要求関係監督関係のリング(要求する側→される側、または監督する側→される側のタイプの繋がりをリングと呼ぶ。4タイプで一巡する。要求関係、監督関係はいずれも、繋がりの順序こそ異なるものの、4タイプ1組で構成されるリングのタイプ内訳は同じである。例えばILE,EIE,SEE,LSEはいずれも+Ne,-Ti,+Se,-Fi,-Si,+Fe,-Ni,+Teである。)
  5. ^ 機能の次元で有名な学派。
  6. ^ メンタルリング:モデルAの第1機能~第4機能のこと。これらは社会的な活動を担う機能であり、意識的に動作する。 メンタルリング側のスーパーブロック:超自我ブロック(第3機能、第4機能)のこと。
  7. ^ バイタルリング:モデルAの第5機能~第8機能のこと。これらは個人的なニーズを担当する機能であり、通常、無意識のうちに現れることが多い。
  8. ^ ソシオニクスの最初の開発者であるオーシュラは、物理学の観点から情報要素の定義付けをしているため、ここで新たに意味合いを追加するにあたって「物理学に例えるなら~」という視点が出てきている。
  9. ^ つまり+Feだからといって『グレンコが定義したような+Fe的な表現ばかりをする一方で、-Fe的な表現をあまり示さない』わけではないという意味。
  10. ^ Wikisocionでは+Seとなっているが、原文はБС(Белая сенсорика, Si)である。内容的にもSiの内容なので、原文に合わせて訳している。
  11. ^ 例えばILEとIEEは共に第1機能がNeであるが、ILEは+Ne、IEEは−Neとなる。ある人がILEかIEEか判別がつかず、しかも+Neか−Neかもよくわからないという場合であっても、仮にSeがはっきりプラスであれば、符号のルールからNeもプラスであるという推測ができるため、「この人はILEである」と導き出せる。
  12. ^ EIE, -Fi:マイナス符号でも「品質」特性においてポジティブな領域のことが行える。また、ネガティブな領域の行動を、選択の結果として行うことも出来るという例。
  13. ^ Wikisocionでは+Teとなっているが、原文はБЛ(Белая логика, Ti)である。内容的にもTiの内容なので、原文に合わせて訳している。
  14. ^ 最初+Fiで具体化を試みようとした後に、後半の質問で-Neによる一般化を行うことに思い至っている。
  15. ^ Wikisocionでは+Feとなっているが、原文はБЭ(Белая этика, Fi)である。内容的にもFiの内容なので、原文に合わせて訳している。
  16. ^ ICQ:LINEのようなシステムの名前。
  17. ^ この文章の意味の解説:黒と白(アイコンの色)というのは、ソシオニクスの情報要素の図形表記を意味している。例えば■は外向論理Te、□は内向論理Tiを意味する。つまり「外向性と内向性」という意味である。「本質と関係」というのも同様に「機能の外向性」と「機能の内向性」を意味している。これは、ソシオニクスの最初の開発者であるオーシュラの解釈に基づく記述である。オーシュラは情報要素の性質を定義するにあたって物理学のアイデアを取り入れたが、そこで、外向性の情報要素は「単一のオブジェクトの性質」を扱う情報要素であり、内向性の情報要素を「複数のオブジェクト間の関係性」を扱う情報要素だと定義している。「異なる符号を持ちます」というのは、Eglitの解釈では、全てのタイプについて、モデルAの外向性機能がプラスの場合、内向性機能は必ずマイナスとなり、逆に外向性機能がマイナスの場合は、内向性機能が必ずプラスになるというルールの話。本サイトでは翻訳にあたり、通常は「黒の論理」や「白の倫理」という表現が出てきた際は、「外向論理」「内向倫理」という形で訳しているが、今回はユング二分法的な外向性/内向性ではなく、オーシュラの物理学由来の定義(本質/関係)に焦点を当てた話であったため、あえて黒と白の表現を外向性、内向性とは訳さなかった。
  18. ^ 補足事項の表は、横の列はクアドラ縦の列は社会的進歩リング(要求関係、監督関係に基づくリング)という形で描かれているが、社会的進歩リングが同じリングに属するタイプ(例:ILE, EIE, SEE, LSE)同士は、全ての機能の符号が一致していることがわかる。

ソシオニクス・タイプ診断

  カテゴリー
EIE (32) EII (38) ESE (31) ESI (36) IEE (38) IEI (32) ILE (31) ILI (36) LIE (36) LII (31) LSE (38) LSI (32) SEE (36) SEI (31) SLE (32) SLI (38) アマトリカ (3) クアドラ (35) サイコソフィア (32) タイピング指標 (4) タイプ関係 (24) テンポリスティック (1) トライタイプ (29) 機能 (11) 機能二分法 (7) 次元 (5) 情報要素 (13) 診断リンク (12) 二分法 (29) 認知スタイル (4)

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