この記事では、MBTIの派生理論である「影の機能モデル」におけるアニマ/アニムス(第4機能)について説明する。
影の機能モデル自体の概要については、記事「影の機能モデル(MBTI派生理論):はじめに」参照。
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アニマ・アニムス(第4機能)
影の機能モデルでは、「アニマ(アニムス)」という元型が第4機能を包み込んでいるとされる。第4機能がこの元型に関するコンプレックス(アニマコンプレックス)を運用する上での視点・世界観になる。
アニマという言葉はラテン語で「魂、生命」を意味しており、アニムスはその男性形である。
アニマコンプレックスは劣等機能(第4機能)を内包するため、「劣等コンプレックス」と呼ばれることもある。
アニマコンプレックスは主に異性の親の影響を受けて形成される。劣等機能(第4機能)を内包するアニマは人にとっての「自分に欠けている視点」であり、「好意を抱いた相手」に投影される。
アニマは、その人にとっての「美しくロマンチックな一日」を思い浮かべたときに現れる感情的なイメージとして表現される可能性がある。これはその人にとっての「理想の人物」のイメージにも繋がる。
ただし当然のことながら現実にはそう都合よく「理想の人物」はいないため、理想と現実のギャップに悩まされることになる。
タイプ別:美しくロマンチックな一日
- ISxJの場合(#1=Si、#4=Ne):
「新しい思い出を作る」ために、新しい可能性を模索するような一日。 - INxJの場合(#1=Ni、#4=Se):
鮮烈な具体的体験を誰かと一緒に楽しみ、そこから意味を引き出すような一日。 - IxTPの場合(#1=Ti、#4=Fe):
他者によって彩られた美しい場所を散策し、賞賛に値する技術に触れた一日。 - IxFPの場合(#1=Fi、#4=Te):
合理的な秩序のある、人道的な目的のために作られた組織で、仲間と肩を並べて働く一日。 - ESxPの場合(#1=Se、#4=Ni):
元型や象徴などの概念的な枠組みの世界に一緒に迷い込んだ仲間と、共に夢を実現するような一日。 - ENxPの場合(#1=Ne、#4=Si):
誰かと共にノスタルジーに浸りながら、思わずワクワクするような可能性を探求する一日。 - ExTJの場合(#1=Te、#4=Fi):
「人としての誠実さ」を持つ人物から、「論理的な秩序化」を行う動機付けをしてもらえたような一日。 - ExFJの場合(#1=Fe、#4=Ti):
素晴らしい技術の探求を通して、人と通じ合えるような一日。
タイプ別:劣等コンプレックスの種類
- ISxJの場合(#1=Si、#4=Ne):
新しい可能性に対する劣等コンプレックス - INxJの場合(#1=Ni、#4=Se):
今現在生じている、具体的で実践的な経験に対する劣等コンプレックス - IxTPの場合(#1=Ti、#4=Fe):
社会的、人間的な事柄(社会集団における自分の立場に関わる問題も含む)に対する劣等コンプレックス - IxFPの場合(#1=Fi、#4=Te):
「論理だてて整理すること」などの、環境内に生じた技術的問題(非人間的な問題)を解決することに対する劣等コンプレックス - ESxPの場合(#1=Se、#4=Ni):
無意識の中にある仮説的な枠組み(例えば元型や象徴など)に対する劣等コンプレックス - ENxPの場合(#1=Ne、#4=Si):
実際の体験(例えば学習によって過去に一度は習得した手順などの知識)を記憶しておくことに対する劣等コンプレックス - ExTJの場合(#1=Te、#4=Fi):
人道性(例えば「人としての誠実さ」や「信念」など)に対する劣等コンプレックス - ExFJの場合(#1=Fe、#4=Ti):
論理的理解などといった、個人の技術的知識(非人間的知識)に対する劣等コンプレックス
タイプ別:劣等コンプレックスの投影のされ方
劣等コンプレックスは、次のような形で他人に投影される。
- ISxJの場合(#1=Si、#4=Ne):
支配的な視点(#1=Si)に固執し、「以前学習した知識や経験」に対する他者の無責任さを批判する。 - INxJの場合(#1=Ni、#4=Se):
支配的な視点(#1=Ni)に固執し、目の前のことしか見ないで考え無しに行動する他者の無謀さを批判する。 - IxTPの場合(#1=Ti、#4=Fe):
無神経な振る舞い、または無感情に見える振る舞いをし、社会やグループで一般的に受け入れられている倫理規範や価値観に対して公然と不平を言う。 - IxFPの場合(#1=Fi、#4=Te):
環境を合理化、効率化するような働きかけを批判する。 - ESxPの場合(#1=Se、#4=Ni):
頭ごなしに「そんなの無関係に決まってる」と批判する。 - ENxPの場合(#1=Ne、#4=Si):
過去に学んだ方法を「この問題の解決には役立たない」と切り捨てる。 ExTJの場合(#1=Te、#4=Fi):
防衛的になり、他者の倫理観のほうが「悪い」と思い込み、犠牲者・殉教者コンプレックスを抱くようになる。(犠牲者・殉教者コンプレックス:精神的な欲求や責任を回避したいという欲求を満たすために、わざと自分から苦しみや迫害を求め「こんな苦痛や迫害を背負う自分こそが、精神的に素晴らしい存在だ」と思い込もうとすることに繋がるコンプレックス)
- ExFJの場合(#1=Fe、#4=Ti):
他者を「非論理的だ」と批判する(自分の劣等Tiを投影した結果として、自分ではなく他者の方が非論理的に見える)
アニマとはどのようなものか
劣等コンプレックスの裏側には、人が見て見ぬふりをしているものへの憧れが存在する(第8機能のデーモンも「見て見ぬふりをされている」という意味では共通しているが、あちらは「憧れ」ではなく「脅威」である)。
この「憧れ」は、もしも意識的に直視しようとすれば自覚できることもある(特に中年期は、個性化に伴って自分の内側に目を向けやすくなる)。
◆◆◆
人は無意識のうちに、イデア(自分に欠けている視点を満たせる存在)を求めており、そうした人がそばにいることが、環境に適応するための最善の方法だと思い込んでしまうことが多い。
しかし現実には「実際にイデアを投影した相手」が必ずしも「自分に欠けている視点」を満たせるわけではない。もしもそうであるなら、「IxTPはExFJにしか恋をしない」ということになってしまうであろう(当然ながらそんなことはない)。
他者にアニマの投影をやめるためには、「私が苦手としていることを私の代わりにやってくれ」と他者に押しつけることをやめて、自分自身に欠けていると感じることに真摯に取り組み、自分で上手にできるようになるための努力が必要になる(こうした思想は、ソシオニクスの思想(双対関係というアイデアに基づく相互補完的な関係を良しとする思想)とは異なっている)。
(アニマを他者に投影した際に起きる問題については、記事「ユング心理学:影、ペルソナ、アニマについて - Joseph Campbell」参照。)
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他者へのアニマの投影をやめ、「それもまたひとつの『私』である」と受け入れると、アニマは「内なる知識の泉」「賢者」としての顔を見せ始め、それに伴って無意識へのアクセスが増すことになる。
影の機能モデルでは、人の無意識の中には影(4種類の異なる役割に細部化された、自我異質的な影:反対の人格、魔女、トリックスター、デーモン)があるとされる。劣等コンプレックスと関わりが深いアニマは、こうした影にアクセスする橋のような役割を果たす。
- PERSONALITY MATRIX Part 2 addendum: archetypes
- Energies and Patterns in Psychological Type: The reservoir of consciousness 1st Edition by John Beebe