この記事では、MBTIの派生理論である「影の機能モデル」における魔女(第6機能)について説明する。
影の機能モデル自体の概要については、記事「影の機能モデル(MBTI派生理論):はじめに」参照。
魔女(第6機能)
影の機能モデルでは、「魔女」という元型が第6機能を包み込んでいるとされる。第6機能がこの元型に関するコンプレックス(魔女コンプレックス)を運用する上での視点・世界観になる。
「魔女」は「老人」や「批判的な親」と呼ばれることもある。「魔女」とあるが、「呪いをかける者」という意味合いはなく、「以前は尊敬されていたが、現在は否定されている存在」という意味合いを持つ。
魔女という影が意識に持ち込もうとしているのは、「良い親(第2機能)」が軽視している知恵である。
魔女が他者に投影された場合、まるで「自分の方が権威者なのに、他人から権威主義的な圧力をかけられて不当に制限されたり、否定されている」ように感じてしまうようになる(実際に、他人が自分を批判しているかどうかは無関係)。
そして、自分の権威を脅かすような視点(第6機能の視点)に「批判的で不機嫌」(ベレンスによる表現)になったり、他者に「何が正しいのかを教えてやる」ために権威主義的な圧力をかけ始めたりする。
魔女は「自我を持ちたい」という人間の欲求を媒介する元型だと言われている。魔女の働きが過剰になった場合、支配的な視点が硬直化して権威主義的になり、自分の知識を過信しすぎて反省することを忘れるようになっていく。「私は知っている!」という自我中心のスタンスに固まってしまうのである。
タイプ別:自分が批判されているような気分に陥る状況
- ISxP(#6=Si)の場合:
「事実を記憶すること」を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - INxP(#6=Ni)の場合:
無意識のうちに個人が認識している事象の意味(どのようなパターンにつながるように見えるか)を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - IxTJ(#6=Ti)の場合:
可変的な論理的原理を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。(Aという視点から見た場合の真と、Bという視点から見た場合の真が異なるもの。より身近な例だと、「Aさんにとっての正しい手順」と「Bさんにとっての正しい手順」が異なるのを許容しなければならない時に、不満を感じる) - IxFJ(#6=Fi)の場合:
個人的な倫理観を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - ESxJ(#6=Se)の場合:
現在の感覚的な経験(物事がどのように見えるかなど)を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - ENxJ(#6=Ne)の場合:
別の仮説的な可能性を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - ExFP(#6=Fe)の場合:
社会倫理や、集団やグループの価値観を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。 - ExTP(#6=Te)の場合:
外部の論理的な秩序(例えば業務の効率化のためのマニュアルなど)を持ちだされると、まるで否定されていように感じたり、不満を感じたりする。
タイプ別:魔女コンプレックスの投影のされ方
- ISxP(#6=Si)の場合
過去の記憶というものを避けたがる(ただし、他者を批判する際に、そうしたものを持ちだすことはある)。くよくよしている他者に批判的になる。
「私は事実というデータの権威者である。あなたは過去に囚われすぎだから、もっと前を見なければならない」(自分自身の過去に対する心苦しい想いを、他者に投影してしまう)
- INxP(#6=Ni)の場合:
なんでもかんでも「全体像」や「大局」から見て、ネガティブな解釈をしはじめる。そうした解釈によって、周囲の人々を批判する。
「私は概念や推論の権威者である。あなたがやっていることはネガティブなパターンに合致しているので、やめるべきだ」(「自分にとって」ネガティブなパターンを感じ取ると、それを相手に投影して「あなたにとって(または一般的に)」ネガティブなパターンだから止めろと言い出す)
- IxTJ(#6=Ti)の場合
論理的な「真実」や「原理」を振りかざして他者を批判する。
「私の論理的思考力は優れている。あなたは全く非論理的だ」
無意識のうちに自分のTiを浅いものだと感じてしまったIxTJが、その「浅さ」を他人に投影してしまい「あなたの」Tiは浅いと批判し始める。
- IxFJ(#6=Fi)の場合
個人的な倫理的正しさや、普遍的な倫理的「真実」を振りかざして他者を批判する。
「私の倫理性は優れている。あなたの行動には人としての誠実さが欠けている」
Fe(周囲や社会に規定される価値観や倫理的正しさ)ばかりを重視して、Fi(人が自分自身で創り出す価値観や倫理的正しさ)を軽んじている自分自身の在り様を、他者に投影する。
- ESxJ(#6=Se)の場合
物事の見た目に非常に批判的で、すぐに粗探しをしてしまう。
「私は目に見える現実の権威である。あなたが作っているものは美しくない」
無意識では、この分野での自分の力不足を感じている。これを他者に投影した結果として、他者が力不足に見えてしまう。
- ENxJ(#6=Ne)の場合
別の可能性や解釈を投げかけられると、まるで攻撃されているような気分になってしまい、反撃してしまう(特にそういった分野の権威性を自分が持っていない場合)。
「私は仮説的なアイデアの権威である。あなたの考えは全く馬鹿げている」
無意識では、自分が異なる可能性や仮説に対応しきれていないことを感じている。それを他者に投影してしまう。
- ExFP(#6=Fe)の場合
社会の調和を乱しているように感じられる他者を権威的に非難する(そして結局、自分自身も調和を乱してしまう)。自分に課せられた基準を参照しようとする。
「私は倫理の権威である。あなたは社会的に悪い行動をしている」
外的な価値観や規範(Fe)と、内的な価値観や規範(Fi)が矛盾していて、前者に逆らって後者を守るような状況下で、ExFPは良心の呵責に苛まれる。それを他者に投影してしまう。
- ExTP(#6=Te)の場合
規則や規定を巡って他者と争い、他者を出し抜こうとする。
「私は論理的センスの権威です。あなたは全く非論理的です」
無意識のうちに、自分の論理が「他者にとってはあまり実用性のないもの」だと感じている。それを他者に投影する。
- PERSONALITY MATRIX Part 2 addendum: archetypes
- Energies and Patterns in Psychological Type: The reservoir of consciousness 1st Edition by John Beebe