この記事では、MBTIの派生理論である「影の機能モデル」におけるトリックスター(第7機能)について説明する。
影の機能モデル自体の概要については、記事「影の機能モデル(MBTI派生理論):はじめに」参照。
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トリックスター(第7機能)
影の機能モデルでは、「トリックスター」という元型が第7機能を包み込んでいるとされる。第7機能がこの元型に関するコンプレックス(トリックスター コンプレックス)を運用する上での視点・世界観になる。
「トリックスター」は「ピエロ」や「悪い子供」と呼ばれることもある。第3機能が「良い子供」と呼ばれるのとは対照的である。第3機能がTiの場合、第7機能はTeである。
トリックスター(悪い子供)は、悪戯をして自我を縛ったり、脅威に仕返しをしたり反抗したりするような表れかたをすることが多い。
そしてこのトリックスターを他者に投影すると、まるで相手が「悪い子供」のように見てしまったり、相手から束縛されているように感じてしまったりすることに繋がる。
第3機能の「子供(良い子供)」が「聞きたいこと」を教えてくれるのに対して、「トリックスター(悪い子供)」は「聞きたくないこと」を教える。
トリックスターは、自我が確立した枠組みの中で解決策がないパラドックスで意識を氾濫させる(レノア・トムソン)。これに対して自我は抵抗し続けるか、その代わりに今の自分の自我の枠組みの外にあるものに対してよりオープンになるかのいずれかを選ぶことになる。
タイプ別:自分が束縛されているような気分に陥る状況
- ISxP(#7=Ne)の場合:
別の仮説的な可能性に自分が束縛されているように感じやすい。 - INxP(#7=Se)の場合:具体的な現実(物理的なものなど)に自分が束縛されているように感じやすい。また、こうした現実を、「他人を翻弄したり馬鹿にしたりする手段」として利用することもある。
- IxTJ(#7=Fe)の場合:
社会的価値や社会倫理に自分が束縛されているように感じやすい。また、それを使って他人を罠にかけたり、他人を行動させたり、自分に同調させたりすることがある。 - IxFJ(#7=Te)の場合:
外部の論理的秩序(環境を効率化、合理化するための規則やルール、マニュアルなど)に自分が束縛されているように感じやすい。また、そういった論理的秩序を自分の手でもたらそうとして失敗することがある。 - ESxJ(#7=Ni)の場合:
無意識のイメージや推論に自分が束縛されているように感じやすい。また、それを使って他人を罠にかけて、最悪の恐怖を見せつけようとすることがある。 - ENxJ(#7=Si)の場合:
自我に反する記憶に自分が束縛されているように感じやすい。また、過去の事実によって他人を罠にかけることがある。 - ExTP(#7=Fi)の場合:
個人的価値観に焦点を当てると、自分が束縛されているように感じやすい。またそれを使って他人を罠にかけることがある。 - ExFP(#7=Ti)の場合:
可変的な論理的原則によって、自分が束縛されているように感じやすい(可変的な論理的原則:Aという視点から見た場合の真と、Bという視点から見た場合の真が異なるもの。より身近な例だと、「Aさんにとっての正しい手順」と「Bさんにとっての正しい手順」が異なるのを許容しなければならない時に、自分が何をしても悪い結果にしか繋がらない袋小路に追い込まれてしまったような気分に陥る)。また、可変的な論理的原則を使って他人を罠にかけたり、ふざけたりすることがある。
タイプ別:トリックスター コンプレックスの投影のされ方
- ISxP(#7=Ne)の場合
別の可能性や意味を投げかける人を見ると、まるでその人が悪い子供かピエロであるかのように感じてしまう。
創発的推論に対して途方に暮れると、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に自分がコンセプトや可能性で相手を縛りつけようとする。
- INxP(#7=Se)の場合
激しいスタントをしている人を見ると、まるでその人がピエロであるかのように感じてしまう。また、自分の自我にそぐわないような具体的現実を突き付けてくる人のことを「いじめっ子」のように感じてしまう。
自分が具体的現実に束縛されていると感じると、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に自分が相手を具体的現実で束縛しようとし始める。
- IxTJ(#7=Fe)の場合
他人の社会的行動を批判して、相手を怖がらせる。
自分が社会的ルールに縛られていると感じると、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に自分が社会的エチケットを持ちだして相手を縛りつけようとする。
- IxFJ(#7=Te)の場合
外部環境を合理化したり効率化しようとする人を見ると、まるでその人が悪い子供であるかのように感じてしまう。
IxFJは外部から設定された技術的秩序に混乱し、失敗してしまう、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に自分が技術的秩序を持ちだして相手を縛りつけようと画策する。
- ESxJ(#7=Ni)の場合
象徴化や推論を馬鹿げたものだと考えているが、ストレスを感じると無意識のうちに、そういったものを「生意気な」方法で使用してしまう傾向がある。
無意識の概念的なパターンに混乱したり、途方に暮れてしまうと、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。「相手のせいで、自分の最も悪い直観が当たってしまった」ことを証明することで、相手を束縛しようとする。
- ENxJ(#7=Si)の場合
未来に進むのではなく、過去に住む人々を軽蔑し、しかもそれを歪めて相手を追い詰めることがある。
蓄積された事実に自分が囚われていると感じると、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に相手を蓄積された事実で束縛しようと試みる(これは投影対象の相手が、あたかも「蓄積された事実、例えば過去を持ち出すことに不当に夢中になっている」ように見せかけることを含む)。
- ExTP(#7=Fi)の場合
相手が熱心に議論しているのを見ると、子供じみたやり方で自分もそれに勝とうとする。
ExTPは、自分が「普遍的な価値観などといった個人的な思想に関わる問題」に束縛されているように感じると、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に相手を個人的な思想に関わる問題で束縛しようと画策する。
- ExFP(#7=Ti)の場合
まさにこのような記事で登場するような物事(例えば「自分のコンプレックスを他者に投影する」などといった理論的フレームワーク)を「悪い物事の真の原因から目をそらしているだけの、ただの言い訳」に過ぎないものだと言ったりする。
また、こうした理論的フレームワークに混乱したり、途方に暮れてしまうと、それを相手に投影して「相手から束縛を受けている」ように感じてしまう。そしてそれに反抗するために、逆に「個人的に理解した技術的な内容」で束縛しようとする。
元型としてのトリックスター
影の機能モデルからは少し脱線するが、元型トリックスターという属性を持つキャラクターの中で最も代表的なキャラクターは、北欧神話のロキではないかと思われる。
ロキにはコミカルな神話が多いが、それと同時に争いや不和を引き起こして物語を進める役割を担う神話も多い。ラグナロクを引き起こす破滅的な神であり、ロキという名前自体が「終わらせる者」という意味である。
多くの神々を罵倒する『ロキの口論』などからわかるように、他の人々が語れないような真実を語って風刺する役割を果たしているという意味で、宮廷道化師的なイメージも同居している。
- PERSONALITY MATRIX Part 2 addendum: archetypes
- Energies and Patterns in Psychological Type: The reservoir of consciousness 1st Edition by John Beebe