結論から言うと、当サイト管理人が今までに見かけた文献をまとめた限り、二分法「静的/動的」「プロセス/結果」「宣言/質問」は複数の専門家に有力視されている要素である。
また現在、サイト管理人から見て日本で人気があると思われる要素は「クアドラ」と「機能の次元」である。
下記は非専門家であるサイト管理人が独自にまとめた記事である。異なる見解も多く存在すると思われるが、ひとつの判断材料として見ていただけると幸いである。
目次[非表示]
タイプ判定の根拠にすべき二分法は何か
ソシオニクスには15種類の二分法がある(本サイトで用意しているテストでも、ある程度調べることができる)。タイピングにとって重要なのは、下記の二分法のどれかを考察したい。
どの二分法がタイプ判定にとって重要で、どれがそうでないのかというと、(諸説あるが)下記の説がある。
前提として、下記はソシオニクスのタイプは後天的に変化しないものだという説(Gulenko, Popov)に立っている。
関連記事「ソシオニクス タイプ、DCNHサブタイプ、アクセント」
参考文献「http://ip-socion.narod.ru/razmer_.htm」
タイプ判定の根拠に向いている可能性がある二分法
上記の二分法は、後天的な影響を受けにくいとされる。
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静的/動的とプロセス/結果を組み合わせた場合のグルーピングは下記の通り。この二分法は、認知スタイルと呼ばれる小グループとも対応している。静的/動的とプロセス/結果を判別する際は、認知スタイルが参考になる可能性がある。
- 静的+プロセス:因果的決定論的
:ILE、LSI、SEE、EII - 動的+プロセス:弁証法的アルゴリズム的
:SEI、EIE、ILI、LSE - 静的+結果:ホログラフィック・パノラマ的
:LII、SLE、ESI、IEE - 動的+結果:ヴォーティカル・シナジェティクス的
:ESE、IEI、LIE、SLI
タイプ判定の根拠としては弱い可能性がある二分法
つまり、ユングの二分法に着目しすぎると誤判定しやすいという説である。関連記事「機能の組み合わせ」
この中でも論理/倫理は特に後天的な影響が強いとされる(Tsypine)。関連記事「論理と倫理の正しい理解について」
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質問/宣言は、二分法としての質問と普通の質問の区別が難しいため、タイピングには向かないと考察されている(wikisocion)。
例えば、ソシオニクスそのものに興味を持っている人が、次々とソシオニクスに関する質問をしたのを見て、「これは二分法の質問の表れだ」とタイプ判定者が誤解してしまうことがある(実際には、これはタイプや二分法には関係無い)。詳しくは記事「質問と宣言 - その他の解説と注意事項」参照。
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また戦術/戦略は、特徴描写どころかタイプのグルーピングそのものに混乱があるため、実際にはあまりタイプ判定の材料には向いていない可能性がある(関連記事「モデルG タイプ一覧表 戦術家と戦略家」)
まとめ
上記をまとめると、静的/動的、プロセス/結果、質問/宣言はタイプ判定の根拠に向いている二分法の可能性がある。
しかし、質問/宣言は、経験豊富な判定者にとっては根拠となりうるが、素人には扱いが難しい可能性がある。
タイプ判定の根拠にすべき要素は何か(二分法以外)
二分法の他にもタイプ判定の根拠になりやすい要素と、なりにくい要素がある。
タイプ判定の根拠に向いている可能性がある要素
用語の意味や、具体的なタイプ判別の参考事例は、上記のリンク先を参照。
タイプ判定の根拠としては弱い可能性がある要素
- 機能単体の強弱
後天的に、あるいは状況によって変動しやすいため(Gulenko, Popov, Meged, Ovcharovなど)
関連記事「タイプ、サブタイプ、アクセント」「機能の組み合わせ」 - 符号
+Teや-Siなどのプラス、マイナスのこと。専門家によって分類も定義もマチマチなので。
関連記事「モデルA」「モデルG タイプ一覧表 プラスとマイナス」「機能の組み合わせ」「アルファ・クアドラ (1) by Stratiyevskaya」「機能の符号とタイピング時の注意点」:これらの記事にはプラスとマイナスが出てくるが、定義がバラバラである) 気質や態度
これらはタイプではなくDCNHサブタイプにより強い影響を受ける可能性が指摘されている(関連記事「機能の組み合わせ」)そこから派生して短期的な課題に取り組んだり、何らかのテーマについて話し合っている最中に観察される性格(日常的な意味での性格、つまり気質)や行動、役割を基にタイプを類推することも同様に、誤判定に繋がりやすい可能性がある。
こうした際に観察される特徴は、タイプではなくDCNHサブタイプの影響が相当に強い可能性があるためである。特に同タイプばかりが集まっている場合や、親密な関係性になるほどに、DCNHサブタイプの影響が強くなる可能性がある。(関連記事「DCNHサブタイプとは」)。
動機付けの強さ(その人のモチベーションとなっている機能はどれか)
人のモチベーションは、確かにソシオニクスの機能の働きに依存してはいるが、その強弱はどちらかというと状況や環境に左右されるものであり、短期~長期のいずれにせよ、必ずしもタイプから想定される機能の強弱通りには働かないことがわかっている(モデルAの第1機能は、少なくとも平均以上の強さで働くことが多いが、必ずしも最強であるわけではない)。類型の種類によっては動機に着目すべきものも確かに存在するが(例えばエニアグラムやMBTI)、ことソシオニクスについていえば、「どの機能が人のモチベーションに影響を与えているか」はタイプ判定の材料にはならない可能性がある。
関連記事「機能の組み合わせ」:最もこの記事の参考文献の著者であるPopovは、「機能の活動のバランスを長期的に見た場合、完全に一貫性があるとは言えないものの、多少なりとも一貫性がある可能性はある。そして、この一貫性を生み出すのが「機能間の接続(ブロック)」である」という考察も行っている。
しかし、同様の記事で「モチベーションとして見た場合のソシオニクスとサイコソフィアはある程度紐づけ可能であること」と併せて、別の記事の「ソシオニクスとサイコソフィアの強弱の組み合わせ」といった情報を踏まえると、ソシオニクスの機能の強弱(モデルAの位置)と、モチベーションとしての働き方の機能の強弱にはギャップがある人も相当数いる可能性は高い(例えばソシオニクスはLIIやLIEだが、サイコソフィアはEVFLやFEVLであり、ソシオTiNeやTeNiよりもソシオFiやFeのほうが中長期的なモチベーションとしては強く働いていると推測できる人)。
誤判定を誘発しやすい要素
下記は誤判定を誘発しやすいという説がある。
- クアドラに着目したタイプ判定
一般的によく発生する誤判定パターンには、下記のものがある。
- 自分にとって需要がある第5機能、第6機能に焦点を当てすぎた結果、「自分の第5機能や第6機能が、自分の第1機能や第2機能ではないか」と思い込んでしまうパターン、つまり「自分の双対や活性化にあたるタイプが、自分の本当のタイプだ」と誤解するパターン(例えばILEがSEIやESEを模倣した結果、「自分はSEIだ」などの誤解するパターン)
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したがって、この誤判定パターンを回避するための判断材料が必要になるが、クアドラ経由では自分の本来のタイプと自分の双対タイプを見分けることが出来ないため、クアドラ経由でのタイプ判定は誤判定に繋がりやすいとする考え方である。(これはTangemannの説である。参考:http://socionics4you.com/post-1854?lang=en )
上記の誤判定パターンは、双対関係だけに限らず要求関係でも同様に発生する(例えばILEの場合、EIEを模倣して「自分はEIEだ」と思ってしまうパターン)。
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この誤判定パターンは、「静的/動的」に着目すれば判別可能な可能性がある(詳しくは記事「静的/動的」参照。こちらは要求関係のパターンだけ言及されているが、双対と活性化にも同じことが言える。ただし鏡像との見分けには使えない)。
メモ ①:双対関係、活性化関係、鏡像関係は、必ず同じクアドラになる。例えばILEから見て双対はSEI、活性化はESE、鏡像はLIIだが、この4タイプは全てアルファ・クアドラである。
また、あるタイプから見て双対関係のタイプと活性化関係のタイプは、必ず静的/動的が異なる(ILEは静的、SEIとESEは動的)。一方、あるタイプから見て鏡像関係のタイプは、必ず静的/動的が同じになる(ILEもLIIも静的)。
メモ ②:この第5機能や第6機能を第1機能や第2機能に間違えるパターンというのは、より一般的な言い方をすると「診断に回答する時(あるいは判定者に向けて自己紹介する時)、こうありたい自分、こうあらねばならない自分を想定して回答してしまうパターン(無意識的にそうしてしまう場合も含める)」である。
ところで現実的には「セルフタイプしてみたけど、双対のタイプや活性化のタイプとの間で迷っている」という人はあまりいないのではないかと思う。
ユングの二分法(内向/外向、直観/感覚、論理/倫理、合理/非合理)が3種類以上違うパターンの間違いなど滅多に起らないだろうというという感覚は、どうしても多かれ少なかれあると思うがソシオニクスにおいては
- ユングの二分法はタイプ判定の根拠としては弱いという説がある。
- ソシオニクスの15種類の二分法を考えた場合、全ての任意のタイプ間は必ず8種類の二分法が異なっており、7種類の二分法が同じである。例えばENTpとISFj間であっても、INTpとINTj間であっても8種類の二分法が異なっている。つまり、一見すると全く違いそうに見えるENTpとISFjと、内向、直観、論理が一致していて似た者同士に見えるINTpとINTjを比べた場合、後者のほうが「タイピングの根拠になりにくい二分法(ユング二分法)ばかりが一致している」組み合わせだと言える、。
というものがあるので、これはまるっきり本人が想定できていなかった誤判定のパターンとしてありがちな間違いかもしれない。
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また、サブタイプの影響で本来とは違うタイプに類似する可能性がある。下記はwikisocionからの情報である。
出典:http://wikisocion.net/en/index.php?title=Contact_and_Inert_Subtypes_by_Meged_and_Ovcharov#Additional_notes
接触・不活性 サブタイプ |
強化された 機能 |
防護された 機能 |
弱化された 機能 |
傷付き安い 機能 |
類似した クアドラ・クラブ |
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Ne-LII (Ne-INTj) | Ne, Fe | Ni, Fi | Ti, Si | Te, Se | ベータNF (EIE, IEI) |
Ti-LII (Ti-INTj) | Ti, Si | Te, Se | Ne, Fe | Ni, Fi | デルタST (LSE, SLI) |
Ne-EII (Ne-INFj) | Ne, Te | Ni, Ti | Fi, Si | Fe, Se | ガンマNT (LIE, ILI) |
Fi-EII (Fi-INFj) | Fi, Si | Fe, Se | Ne, Te | Ni, Ti | アルファSF (ESE, SEI) |
Ni-IEI (Ni-INFp) | Ni, Ti, | Ne, Te | Fe, Se | Fi, Si | アルファNT (ILE, LII) |
Fe-IEI (Fe-INFp) | Fe, Se | Fi, Si | Ni, Ti | Ne, Te | ガンマSF (SEE, ESI) |
Ni-ILI (Ni-INTp) | Ni, Fi | Ne, Fe | Te, Se | Ti, Si | デルタNF (IEE, EII) |
Te-ILI (Te-INTp) | Te, Se | Ti, Si | Ni, Fi | Ne, Fe | ベータST (SLE, LSI) |
Ne-ILE (Ne-ENTp) | Ne, Fe | Ni, Fi | Ti, Si | Te, Se | ベータNF (EIE, IEI) |
Ti-ILE (Ti-ENTp) | Ti, Si | Te, Se | Ne, Fe | Ni, Fi | デルタST (LSE, SLI) |
Ne-IEE (Ne-ENFp) | Ne, Te | Ni, Ti | Fi, Si | Fe, Se | ガンマNT (LIE, ILI) |
Fi-IEE (Fi-ENFp) | Fi, Si | Fe, Se | Ne, Te | Ni, Ti | アルファSF (ESE, SEI) |
Fi-ESI (Fi-ISFj) | Fi, Ni | Fe, Ne | Se, Te | Si, Ti | ベータNF (EIE, IEI) |
Se-ESI (Se-ISFj) | Se, Te | Si, Ti | Fi, Ni | Fe, Ne | デルタST (LSE, SLI) |
おわりに
二分法「静的/動的」「プロセス/結果」「宣言/質問」が複数の専門家に有力視されているのは確かだが、論文引用件数2位のGulenkoの学派では、おそらくユング二分法のいくつかに着目してタイプを出している可能性がある(直接Gulenkoや、Gulenkoの学派の専門家がそう発言しているわけではなく、伝聞情報を元にするとそう推測されるものが散見される)。
Gulenkoの学派ではタイピング対象者が映っている動画からタイプ判定するが、ソシオニクスの生みの親であるAushraは、人の外見を合理性/非合理性に特に結び付けているため(参考:https://socioniko.net/ru/articles/aug-duality2.html)、外見からのタイピングの際にユング二分法の合理/非合理を重視してチェックするのは、理論の成り立ち上、まっとうなタイピングだとも考えられる。
日本でセルフタイピングを試みる人の間で人気があるのは、「クアドラ」と「機能の次元」からのタイピングである。そのため、もしも誰かとソシオニクスの話をしたいという場合は、まずこの二点を抑えておくと役立つかもしれない。
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「この要素に着目してタイピングすればOK」「これは見る必要が無い」という断定的な情報はできないが、本記事の内容が少しでも役立てば幸いに思う。